緑の風

散文詩を書くのが好きなので、そこに物語性を入れて
おおげさに言えば叙事詩みたいなものを書く試み

夢のゴンドラ(poem)

2023-03-04 12:48:00 | 日記

 

 

 

夢のゴンドラ(poem)

 

春の日差しの降りかかる舟の上

大男の船長は悠然とオールを漕いでいる

ナーラはパレットに絵具をなすりつけている

ゴンドラはゆったりと動く

ここはヴェニスか蘇州か、それとも夢の中

 

ふと美しい蝶がゴンドラの上にとまる

金色の素晴らしい羽をゆっくり動かす

いのちは花も小鳥も昆虫もそれぞれの形を変えて現れる

DNAの長い鎖が思い出される

ATGCの塩基が暗号のように階段状に並び、

二重螺旋につながっている。

夢想の中では、それぞれの塩基には色がついていた、どんな色だったか忘れた

ゴンドラはゆっくりと周囲の風景を変えながら、進んでいる

 

川の向こうに明珠の街角が見える

ビルの窓には、可憐なバラの花が咲いている

夢見ごこちで見る、ナーラの微笑そして町の静けさ

 

ああ、その時、青空の街角で

パパ、ママと言う兄弟の泣き声がする

上の子の表情は悲しみと苦しみに満ちている

何がかくも悲惨な表情を作り出すのか

ああ、救え、この悲しみをこの地上からなくせないのか

戦争がある、地震があると耳元で、ささやく声がある

 

川の向こうに古典的な古い美しい廃墟の城が見える

遠くで稲光がした。

しばらくすると、空に黒雲が続き

稲光と雷の来襲と共に、夜のように、暗くなった

 

やがて、一瞬の暗闇に光が射すと、

天から聞こえるように

先ほどの緑に満ちた美しい街角で

再び、パパ ママと泣き叫ぶ声がする

雷が天から地に落ち、空間を引き裂くように

その表情に痛ましいものはなかったか

天と地にひそむ神々の心をゆるがすものはなかったのか

ああ この平凡なゴンドラの上で

いのちの神秘を知り

ああ、パパ、ママと叫ぶ子供たちにほほ笑みと食料を渡し

どうしたのと優しい言葉をかけようではないか

 

大男の船長はゴンドラをとめ、

「坊や、どうした」と声をかける

その満面の笑み

それが子供達を救った

ああ、子供たちの美しい笑い声

誰もが慈しみあっている町になった。

そこは、永遠の今が見える広場になっている。

おそらく、そこで、コーヒーを飲む時、永遠が舞い降りてくる

そのような時、どこからともなく祭りの太鼓 祭りの笛が聞こえてくるものだ

 

そうした夢のような幻想からはっとして、ナーラに呼びかけられているのに気付く

ナーラの絵には、青色の川と河岸のビルや広場や森が描かれている

 

確かに今まで気がつかなかったのが不思議なくらいで、あちこちから心地よい小鳥の声

幾種類の声がまるで室内楽のように、自然の音楽をかなでていた。

ナーラの髪は岸に向かって吹く春の微風にひらひらしていた。

この女性そのものを理解するという論理を科学は持つていない

人間は一個の分割できない宇宙なのだ。

この宇宙そのものが生命なのだ。

ゴンドラから見える、鳥のさえずり、アカシアの並木、川の流れ、春の青空そうした全ての風景を一つにする

この人間という宇宙こそが生命なのだ、自然は奇跡であり、人こそ奇跡の人なのだ

鳥のさえずり、アカシアの並木、川の流れ、春の青空、そうしたすべての風景を一つにするこの人間という宇宙こそが神秘そのもなのであり、生命は分割しては理解できない。

せいぜい、そのあまりにも複雑な細胞組織に驚嘆するくらいのものだろう

 

河岸の風景にうっとりすると、「全世界は一個の明珠である」と囁く声がする

 

 

 

 

 

【久里山不識】

1   読んでいただき、ありがとうございました。

2 年相応の故障のため、三月下旬までお休みします。よろしくお願いします。新しい作品「明珠の町」はgooブログ「空華ー日はまた昇る」に

掲載しました。【2023年 3月  21日】

 


奇跡の人(poem)

2023-02-07 20:34:14 | 日記

 

奇跡の人

1

おお、寒いのに、明珠の街角に

春がそこまで来ている

街角にはまばらに雪がちらついているのに

おお 黄色いフリージアがさっそうと空に伸びている

 

羽がブルーで、可愛らしいルリビタキが鳴いている

おお、その音楽にも似たいのちの喜びの響き

 

もう梅も咲いているかもしれない

や、まだかな、それにしても、もうすぐだ。

小鳥の鳴き声には春のかおりがある。

小川のせせらぎは澄んで、安らぎの光が射している

柳の木には、緑の芽、桜の木には花のつぼみ

 

春が来たら、何をしよう

あの香り豊かなおいしい空気を吸ったら、何をしよう

まず、生きる喜びを感じるだろう

自然の優美さを真実の自己の精神の奥深くでとらえ

町いっぱいに花を飾り、森羅万象の不死のいのちを語ろう

 

ああ、あれから、八十年が立った

地球のあちこちに戦火の火種がくすぶり、

今や人類滅亡の終末時計が二分前という不気味さだ

 

ああ、青空に白い雲、缶コーヒーを飲む手に光が差し込む

この春の日、時は愛と慈悲を指さす。

それなのに、ベンチの上にある新聞紙に終末時計の活字が躍る

池には、水芭蕉の花。

メジロやホオジロの飛び交う緑を眺め、

行きかう平和な人々を見る

 

浦島太郎のような気持で春の池を見るのは誰?

若かった頃には、終末時計などあったろうか。

 

人は忘れてしまったのではないか。

全世界は一個の明珠であるということを

明珠をこわそうとミサイルと核をつくり、

宇宙のいのちに何のいたずらをしようというのか

 

ああ、誰かがピアノを弾いている

路地を流れていく音色の響きは多くの窓に聞こえてくる

人々は春の花を見、やわらかな光を見て、愛と慈悲を知る。

 

祈ろうではないか、平和への声をあげようではないか。

我々の絆を深めようではないか。

 

2

ああ 夏の町に詩人の歌声を届けよう

海水の美しい夏空の下で逞しい肌を見せる男女の群れ

砂浜に耳をよせて聞けば

不思議な海の底のひびき、永遠の祈りにも似たそのささやき

時として 雷雲おこり 大砲のような雷の音と稲光

宇宙の新しい生まれかわりの日のように

その時の天使の合唱のように

聞こえてくる 夜のしじま

あたたかい南風にゆられて、歌声がこの夏の町に送り届けられるだろう

酷熱の太陽に照らされた清潔な町よ

詩人は町の輝くような逞しさを そこに働く人々の労働の汗を愛するのだ

そして夏の夜に飲むビールの歓喜

夏の星空が ひろがる中で 岩にしみいく清流のように 陶酔に酔う時

詩人は生きる喜びを歌にして、この町の人々に伝えよう

酷暑に挑戦する向日葵の逞しさを働く人は汗とビールで知っている

 

あれから 八十年が立った。

便利になり、物は豊かになり、スピードのある生活がおくれる

それで、人はしあわせになったのだろうか

 

核兵器と温暖化の恐怖はその豊かさの裏側にある

核兵器をこの地上からなくそうではないか

 

ああ、夏の小川の素晴らしい水は大地の宝石、それを眺めていたい

いのちは生きた無の中に立ち上る不死のもの

人間は奇跡の人なのだ

我々は忘れてはいないだろうか 愛と大慈悲心の釈迦の教えを

 

向日葵が咲き、夏のいのちを歌っているではないか。

蝉がなき、不死のいのちを歌っているではないか

深い生命の声が聞こえるではないか

大地には無数の昆虫が、空には鳥が飛び交っている

ああ、それなのに人は真理の明珠を忘れてしまったのではないか

 

      

3

ああ 秋の町に手紙を届けよう

秋晴れと雨の日の交替という楽器にも似たうつろいやすい空の人生

そして又、若い男女の青春期にうちこむスポーツと読書

それらすべてを、この青空は知っている

澄んだ青空にも 曇る空にも いのちの芸術を感じる

震える魂のペンを手にして白い便箋にむかうのだ

やわらかい日差しに満ちた秋の町に

冬の到来を予感させる寂しさがあるにしても

こんなにも穏やかな日を恵んだ天をたたえる詩を書き、手紙の一部としたのだ

 

この手紙が町に届けられる時

町は学校の運動会や文化祭も終わり

街路樹の紅葉がしだいに落ち葉となっていく

 

      4

ああ、冬の町に、孤独の詩を届けよう

雪降る日 ハートは永遠の重みのために 深い憂いに包まれている

あたたかい部屋の中で 本を読みながら寒さが外の世界を荒らしまわっていることを感じる時

宇宙の寒さと終局を感じてしまう

ああ、今、あの星は冬の寂寥とした荒野にかこまれていかなる寂しさを味わっているのだろう

そして又この星は、燃えつきた愛の炎に再び点火するエネルギーを待っている

宇宙の広大さに目を向ける時

冬の町のショーウインドーがクリスマスと正月にはさまれて

にぎやかな飾り はなやかな歌声に満ちているけれども

月夜の晩に感じる あのぞっとする孤独

その中で予感される死への旅路をあの星も、この星も、さし示しているように思われてならないのだ

だが、そうした にぎやかな冬の町に予感される死をはらいのけて

生命の歌を たえず生きつづけていく愛の詩を送ろうと思う

 

 

        5

ああ あれから 八十年が立った。

雪は綺麗で、物語を生むが、生活している人は大変だ。

 

そして熱いコーヒーを飲む 生きる喜びを感じる時だ

この生きる喜びを守ろうというのが平和憲法だ。

 

今の憲法は基本的人権と九条で、人類の歴史に燦然と輝く宝石のようなもの

確かに、地球には弱肉強食の軍備が増強されて、不安を感ずる人は多い

 

終末時計は二分前なのだ。

どこかの国が平和のイニシアティブ、核兵器廃絶の旗を振らねばならないのだ

それは九条を持つ日本ではないか

 

世界の人は軍縮に目を向けるべき時にきている

格差と差別のない社会を実現し、目を宇宙の神秘に向けようではないか

人はみな仏性なのだ、神秘の生命体なのだ。奇跡の人なのだ

愛と慈悲心を知った者だけがこのいのちの深い神秘を知っている。

 

 

 

【久里山不識】

1 読んでいただき、ありがとうございました。それから、まだ小説「森に風鈴は鳴る」を読まれていない方は、ぜひこの機会にパブ―で電子書籍にされていますから、ぜひお読みになってくれればと思います。無料です。よろしくお願いします。

2 全ての日本人は日本を守り、平和が長く続くように、願っていると思います。ただ、どうやって守るかで意見が分かれます。

国会で議論するしかないと思います。国会議員の責任は重いと思います。議員を選ぶ国民の責任も重いと思います。[ 意見が違うから といって、マナー違反をする人がいるとすれば、それは教養ある人とは言えませんね。民主主義の基本も知らない人だと思います  ]

 


未完成(Poem)

2022-12-24 20:25:13 | 日記

       未完成【poem】

 

哀愁に満ちた音楽が流れているどこかのカフェーでコーヒーを飲みながら

僕は原子について考えていた。

空っぽの原子でつくられた僕は悲しみに満ちて喜びに震える花を見詰めていた。

 

全てのものはいのちに満ちた原子でつくられている

原子の組み合わせが分子を生み、森羅万象が生まれる

分子はDNAをつくり、生物をつくる

この壮大な不思議さを思い、コーヒーを飲むと、嫌なことは全てを忘れ

大自然と人間の神秘を思う

 

この苦悩に満ちた現世にもたらすその美と喜びはどこから来るのか

もしも仮に異次元から舞い降りてくる天使の合唱だとしたら

野の百合が宮殿より美しいと言った偉人の言葉が分かるではないか

 

何という沢山の人生の物語があることか

これほどの物語を宇宙は必要としたのか

 

そもそも、物語をつくる原子はまるで空っぽなのに、

その空っぽの原子が森羅万象を生むとは

 

丘陵のような山の見えるカフェであれ、

オフィスであれ、

ルリビタキの鳴く里山であれ、

我らはわずかの人と話をする

そこが夕焼けの時であれ、

そこが真昼の光に満ちた時であれ、それがさわやかな朝であれ、

我らはわずかの人と話をする

しかし、地球には八十億の人が生きている

コハクチョウの泳ぐ平和の国もあれば、混乱した国もある

戦争をしている国もある

それ故にこそ、

メジロのように楽しんでいる人もあれば、悲しんでいる人もいる

しかも、全ては原子の膨大な離合集散という幻のような中で起きる

いわば無といういのちの海のような原子の中で繰り広げられる物語

それは、全世界は一個の明珠ということではないか

 

 

そして、人は長くても百年近い生を生きると

明珠のいのちの中に滑り込む、死ぬのだ、生きるために

どんなに、華やかな生活をした人も

どんなに孤独の人生を生きた人も旅立っていく

 

 

明珠の中では、すべての情報とすべての法がいのちとなって

又、沢山の物語をつくる準備をする、子宮のように

 

もともと、真空に近い原子でつくられた人間が森羅万象を見て

いつの日か、森羅万象は明珠の中に、消えていき

そして、明珠の中で、新たな森羅万象の創造の働きが始まる

やがて、それは天命となり、「私」を生む

周囲には沢山の「私」がいる

 

そもそも物質は原子で出来ている。

その原子は殆ど空っぽのようで、空っぽでないいのちの海のよう

その空っぽの原子が天命によって肉体になり、森羅万象になる

 

我らはその壮大な大自然の風景を見て

その崇高な美しさに圧倒されている

しかし、それが幻を見るようで、天命に従っているとは

色即是空 空即是色

 

 

我々は肉体と共に生きている

原子も真空も生きているのではないか

多くの素粒子がうまれたり、消えたり

大きくくつくと、物になり、

星になり、そこから生物という生き物になり、

だが生き物という点では、

大きくなった生物も、まだ石ころになったばかりのものも、

原子も分子も

植物も変わりないのではないか

これが仏性の流れ、仏性に死がないということではないか

仏性は一個の明珠ではないか、子宮ではないか

そうとなれば、輪廻転生は必然ではないか

生まれ生まれ生まれて、生の始めに暗く、死に死に死んで死の終わりに暗し、と

空海が言ったではないか

 

森羅万象としての大自然そして人間

生まれては消え、消えては生まれ、生命の大海は悠々と深いいのちをたたえている。

 

これで、戦争や争いが無意味であることが分かるではないか

核兵器をなくせ、温暖化阻止

 

梅が春の知らせであり

満月がヒトの心を魅了するように

未来の子供達のために

我ら大人は平和のために手を組もう

 

 

【久里山不識】

謹賀新年  今年もどうぞよろしくお願いします。

今回の詩は書く方から言うと、テーマが難しいので、完璧を待っていてはいつ掲載できるか分からない。それで、詩のタイトルを「未完成」としました。一番言いたいことは、以前から何回も繰り返し言っている内容で、小説「森に風鈴は鳴る」のテーマになっている「核兵器なくせ、温暖化阻止」であり、早く戦争を終えて平和になって欲しいということです。

 

小説の推敲は進んでいません。まず、やることは欠点を探すことです。

今、思っていることは アンドロイドロボットの描写に手を入れる必要があると、感じていることです。

これからは、ロボットの時代が来ると思います。ただ、小説は2006年を出発点として始まっていますので、ロボットの進化の知識を正確にしないといけないということです。

私の年も八十寸前となり、あちこち故障が出て、手術寸前という所も出ています。そういうわけで、又 ゆっくりペースでやらせていただきますので、よろしくお願いします。

 

【私のもう一つのブログgoo[空華ー日はまた昇る ]と、FC2のブログ「猫のさまよう宝塔の道」と「永遠平和とアートをめざす」もよろしく 】

 

 

 


異次元の遊歩道の道(poem)

2022-11-03 14:48:18 | 日記

15  異次元の遊歩道の夢(poem )

  異次元というのはひょっとすると、ひょっとした所にあるのかもしれません。

都会の片隅の小さな片隅の広場にも、優しい秋の光に照らされてとろとろしていると、夢見心地になってくる。

はっと気が付いた時には、私は 自転車でゆるやかに美しい音をたてて、星空を走っていたのです。

不思議です、銀河の先の方で花火のようなものが上がったのです。天空に花咲いた赤・青・黄色と様々な色の薔薇の花のようなひろがり、ランのような花の広がり、向日葵のような花の広がりとピアノの音のような美しい音を空全体に響かせて、それから散っていくのはちょうど、歌川広重の両国花火を思い出させるような不思議なものを持っていました。

確かに、江戸時代の隅田川も綺麗だし、花火も良かった。

やがて、美しい宇宙の景色が見えてきました。

天空からたくさんの紫色の藤の花がこぼれ落ちるように咲いている空間が続くかと思えば、梅の花が咲いていたりする野原が見えたり、牧場が見えたり、森は小鳥やきのこを始めとしたあらゆる生き物の宝庫といういのちの光に輝いているのです。

細長い銀色の帯のような銀河の川の水は水晶よりも美しく透明で、なにやら、ピアノ・ソナタのような美しい響きをたてて、どんどんと流れているのです。

 

そして、あちこちにカワセミが飛んでいるではありませんか。

カワセミを見て、ふと、どこかの寺の懐かしい遊歩道を思い出したのです。

そして、同時に、そこの瑠璃色の川に垂れ下った桜の小枝にいたカワセミを思い出しました。全体にブルーで、腹の方はみかん色の美しい鳥です。

すると、不思議なことに、私の目に、見える景色の向こうの方に、美しい銀色のカフェー

が見えたのです。

小麦色の遊歩道の向こうには、見事な向日葵畑が見え、広い石畳の遊歩道の横にはカフェーがまるで幻のように光りながら、その向こうには美術館のような建物、いくつもの彫刻がある間隔を置きながら、銀色にきらきら輝いているのです。

 

そしてカワセミが飛んでいます。中には私の自転車と並行して、しばらく飛んで、さっと向こうに飛び去るのもありますが、その美しいこと、生命力に畏敬の念をおこさざるを得ない、神秘な力を感じるのでした。

星空には、この世のものとは思えぬ美しい鐘が鳴り響いてきました。

私の行く手の大空の中に、不思議な惑星が見えて来ました。満月のように丸く美しい光を四方に放っているのです。

 

それから、そばで、自転車に乗っている背の高いほっそりした男がテノールの美しい声を響かせていました。

  「私は知りたい、美しい遊歩道のある街角がこの地上にあることを

そこには美しい花と果物が道の端を飾り、

カント九条と人権は全ての街角で確立され、武器のない平和の町

歩くことが楽しい遊歩道が至る所にあり

緑の柳がおおう清流は道のそばに美しい響きをたてて流れ

人々の美しい微笑は澄んだ空気のように至る所に見られ

緑の葉の光にほほえむようにあちらこちらで歓喜の歌が聞こえる

我らは期待に胸を震わせて,次の町に足を踏み入れる」

  

私と青年とは、星空の途中で、自転車をとめ、少し話をしたのです。

「(町案内)にはどう書いてある? 」と青年は聞きました。

私は 細長い銀色のタブレットのようなものに現われた町の地図を指を使って、少しずつ動かし、見とれるように見ていました。

そして宝石のように美しい水晶のような板の上に、絵画のような地図が広がっていました。見ると、いくつもの駅や塔、それからカフェー、寺院、教会、それから、地下水から湧き出る泉や森が散在しているのです。そうした場所からは宝石のような青や緑や黄色や素晴らしい金色の光が輝いています。地図には、いりくんだ網のようにあちこちの遊歩道がつながっているのですが、街角にかかる多くの小さな鏡には、そうした建物が映り反射して、不思議な美の世界をつくっていました。

私達は小麦色の遊歩道の方に入って行きました。上空から見ると、美しい紅葉色の家が並び、大地は小麦色なのです。

さわやかな空気があふれていました。柔らかい日差しにあふれ、まるで小春日和の夕暮れのようです。駅前広場には、大きなテレビがあって、近くの惑星の戦争の様子が実況放送されています。沢山の人が死んでいます。そこはカント九条がなく、武器があふれた惑星で知られています。

駅の前の、若葉色の彫刻のように見えるプラタナスの木に囲まれた、長い小麦色の道に出ました。周囲は色々なお店が並んでいました。金色の街灯には、ハンギングバスケットにりんどうの花が紫色に輝いて咲き、それがずうっと続くのです。空には、いつの間にか銀河の星がいくつか輝いていました。

  奈良駅から春日大社に至る長い散策ストリートのような美しい小麦色の通りでした。真ん中の道に、時たま自転車が静かに、ゆっくり通るばかり、両側にある広い遊歩道には、町の人たちがゆったりと歩き、どこかの店に消えていきました。

そのようにして、私と青年は親友のように、その小麦色の道を、肩をならべて行きますと、とある銀色のカフェーが目につきました。我々は自転車を降り、並木道とカフェーに挟まれた長く広い石畳の小麦色の遊歩道に足をとめ、そばの銀色のカフェーに向かったのです。

でも、全ては夢でした。ああ、私はそんな夢を見て、何故かそこが私の遠い永遠の昔に歩いた美しい街角の小麦色の遊歩道であるような気がして、懐かしさのあまり、涙が一粒湧き出たのです。

           (完)

【久里山不識  】
読んでいただき、ありがとうございました。体調がよくないことと、諸般の事情により、二週間ぐらい(創作・見る )を休みますので、よろしくお願いします。


呼吸(poem)

2022-10-15 12:57:54 | 日記

 

呼吸(poem)

 

君の瞳は見るだろう

目には見えないという異世界の神秘の町

緑の樹木にオレンジの果実はなり、

様々の小鳥がさえずり、遠くまでつらなる緑の丘のような景色には

美しい青空と城のような白い雲が流れ

丘の中央には、ちょっとした大理石のカフェーがあり

その前の広場では、ヴァイオリンをひく娘がいる

人々は椅子に座り、テーブルの上にある果物に手を出し

耳から響く天界の音色に耳を傾ける

そうだ、そんな世界が

君の瞳の目の前にある

 

 

何? 見えないって、ちょっと呼吸に意識を集中するだけだよ。

座り方も考えた方がいいな。

 

どうですか。見えたでしょ。

何? 今度は稲光と雷だって

何 ~に。  君のいる所には避雷針があるし

屋根が雨を防いでくれる

この緑と小川と丘の壮大な大自然の上を稲光がまるで自然の花火のように光り

音はまるで 優れた音楽の始まりのようで

君はまた、この大自然の神秘に感動するだろう

 

何? 良いことばかりでない

大雨の土砂災害だのいのちにかかわる酷熱だの、地震だのと恐ろしい自然の怒りを

どう見れば 良いかって

 

さあ、安全な場所に避難して沈黙するしかないな

しかし、君。

そうした大自然の怒りには不条理さを感じるだろう

 

それに戦争

特に始まったら、おしまいの核戦争

その前に、人が止めるしかないだろう

雷は止められなくとも、核は止められる。

何でこんなに美しい曲が流れる所に、恐ろしい核を落とす必要があるのか

全ての国の人よ、助け合って、核兵器を捨てさせよう

 

君は聞くだろう。神秘な音楽を。

音楽が響くと、色々な町が見えたり、消えたりする

宝石のように、厚いガラスの中に明るい光線が 沁みとおっていくように

音楽があたりの世界を支配し、

タバコの煙のようにゆらゆらとたなびく幻想的な霧の中に突然美しい街角が出現する

南欧的な色彩豊かな町や白壁の町、時には日本の古民家や蔵屋敷であったり、

花と緑ゆたかな坂道で魅惑的な古い家が並び、その先に、森に囲まれた広場がある。

 

 

何?どんなにいいものが見えても、痛いことがある。

うむ、良い薬がある。それを飲み、緑の丘で、しっかり座禅せよ

あるいは瞑想せよ

さすれば、美しい音楽が聞こえてくる

そこには美しい樹木とそよ風

そして無数の小鳥の鳴き声

キノコもあるし、蝶々も飛ぶ

小川のせせらぎは優れたピアノソナタのようだ

 

おお、もしかしたら、君は不思議な光景を見るかもしれない

真夏の日、神殿のような大理石の廃墟の上に瀕死の美しい虎が一匹、横たわる

死はこの虎の美の姿を破壊せず、ただ、眠りたるごとくみごとに肌の瑞々しさを保っている

この時、月の光が虎に見入る、死神が幻のように浮かびあがる

死神は黒いマントを着て、深紅の血を口から煙のように吐きながら虎の息を窺う

 

虎の目は静かにつむり、風一つない真夏の夜

この大理石の神殿で、不生不滅のいのちを持つ猛虎と死神は争っている

突然ガラガラと響く悪魔の軍勢のごとく響きの悪い享楽的な音楽が雨あられのごとく鳴りだす

死神の吐く火の粉は虎の肌にあたって、はじけくだけ、

黄金の毛も肌も一層の美を強調している

今、風前のともしびとなった虎の生命はわが町の運命と似たようなものだ

死神にさらされた虎のような悲劇を待つ文明はいたるところにある

ヒトよ、何度 戦争をすれば、戦争はやってはいけないと学ぶのだ。

政治家に全てをまかせるのではなく

四方八方から、文化交流と話し合いの雰囲気を盛り上げる、

互いの文化の良さを見詰めることだ

 

そして、しばらく呼吸に意識を集中する。息を吸うことを、意識する。吐くことに意識する。

さすれば、君は貧しさのない国を見るだろう

全ての人が助け合う街角

公害も少しづつ克服できている

その助け合いの精神で、温暖化も克服しよう

 

人類危うし 危機だ。

色即是空、空即是色、空とは仏性と、民衆が目覚める日が来る

そして、欲望にまみれた場末から、郊外に出る

そこには、美しい花園がある。

音楽は突如、変調しそしてやがてその健康さをとりもどす

おお、音楽の中に咲いた幻のような街角の美しさよ!

そこで、やわらかい光を浴び、コーヒーを飲もう

 

 

 久里山不識 ]
この詩は小説「森に風鈴は鳴る」の応援歌になります。
小説はまだ推敲する気持ちはあります。創作というのは「完全」に到達するのにはきりがありません。ご意見がありましたら、よろしくお願いします。現代詩も同じです。満足して公開しているわけではありません。先へ進めるために、今日はこのレベルで、公開しようということです。創作というのは普通の文章とはまるで異次元の文の美を追求する作業だと思います。それだけに、手紙やエッセイを書くのとはまるで違った大変な困難さがあります。それを超えた時の創作の喜びは生きる喜びだと思います。


アマゾンで電子出版されている長編小説「迷宮の光」と「霊魂のような星の街角」もよろしくお願いします。