15 異次元の遊歩道の夢(poem )
異次元というのはひょっとすると、ひょっとした所にあるのかもしれません。
都会の片隅の小さな片隅の広場にも、優しい秋の光に照らされてとろとろしていると、夢見心地になってくる。
はっと気が付いた時には、私は 自転車でゆるやかに美しい音をたてて、星空を走っていたのです。
不思議です、銀河の先の方で花火のようなものが上がったのです。天空に花咲いた赤・青・黄色と様々な色の薔薇の花のようなひろがり、ランのような花の広がり、向日葵のような花の広がりとピアノの音のような美しい音を空全体に響かせて、それから散っていくのはちょうど、歌川広重の両国花火を思い出させるような不思議なものを持っていました。
確かに、江戸時代の隅田川も綺麗だし、花火も良かった。
やがて、美しい宇宙の景色が見えてきました。
天空からたくさんの紫色の藤の花がこぼれ落ちるように咲いている空間が続くかと思えば、梅の花が咲いていたりする野原が見えたり、牧場が見えたり、森は小鳥やきのこを始めとしたあらゆる生き物の宝庫といういのちの光に輝いているのです。
細長い銀色の帯のような銀河の川の水は水晶よりも美しく透明で、なにやら、ピアノ・ソナタのような美しい響きをたてて、どんどんと流れているのです。
そして、あちこちにカワセミが飛んでいるではありませんか。
カワセミを見て、ふと、どこかの寺の懐かしい遊歩道を思い出したのです。
そして、同時に、そこの瑠璃色の川に垂れ下った桜の小枝にいたカワセミを思い出しました。全体にブルーで、腹の方はみかん色の美しい鳥です。
すると、不思議なことに、私の目に、見える景色の向こうの方に、美しい銀色のカフェー
が見えたのです。
小麦色の遊歩道の向こうには、見事な向日葵畑が見え、広い石畳の遊歩道の横にはカフェーがまるで幻のように光りながら、その向こうには美術館のような建物、いくつもの彫刻がある間隔を置きながら、銀色にきらきら輝いているのです。
そしてカワセミが飛んでいます。中には私の自転車と並行して、しばらく飛んで、さっと向こうに飛び去るのもありますが、その美しいこと、生命力に畏敬の念をおこさざるを得ない、神秘な力を感じるのでした。
星空には、この世のものとは思えぬ美しい鐘が鳴り響いてきました。
私の行く手の大空の中に、不思議な惑星が見えて来ました。満月のように丸く美しい光を四方に放っているのです。
それから、そばで、自転車に乗っている背の高いほっそりした男がテノールの美しい声を響かせていました。
「私は知りたい、美しい遊歩道のある街角がこの地上にあることを
そこには美しい花と果物が道の端を飾り、
カント九条と人権は全ての街角で確立され、武器のない平和の町
歩くことが楽しい遊歩道が至る所にあり
緑の柳がおおう清流は道のそばに美しい響きをたてて流れ
人々の美しい微笑は澄んだ空気のように至る所に見られ
緑の葉の光にほほえむようにあちらこちらで歓喜の歌が聞こえる
我らは期待に胸を震わせて,次の町に足を踏み入れる」
私と青年とは、星空の途中で、自転車をとめ、少し話をしたのです。
「(町案内)にはどう書いてある? 」と青年は聞きました。
私は 細長い銀色のタブレットのようなものに現われた町の地図を指を使って、少しずつ動かし、見とれるように見ていました。
そして宝石のように美しい水晶のような板の上に、絵画のような地図が広がっていました。見ると、いくつもの駅や塔、それからカフェー、寺院、教会、それから、地下水から湧き出る泉や森が散在しているのです。そうした場所からは宝石のような青や緑や黄色や素晴らしい金色の光が輝いています。地図には、いりくんだ網のようにあちこちの遊歩道がつながっているのですが、街角にかかる多くの小さな鏡には、そうした建物が映り反射して、不思議な美の世界をつくっていました。
私達は小麦色の遊歩道の方に入って行きました。上空から見ると、美しい紅葉色の家が並び、大地は小麦色なのです。
さわやかな空気があふれていました。柔らかい日差しにあふれ、まるで小春日和の夕暮れのようです。駅前広場には、大きなテレビがあって、近くの惑星の戦争の様子が実況放送されています。沢山の人が死んでいます。そこはカント九条がなく、武器があふれた惑星で知られています。
駅の前の、若葉色の彫刻のように見えるプラタナスの木に囲まれた、長い小麦色の道に出ました。周囲は色々なお店が並んでいました。金色の街灯には、ハンギングバスケットにりんどうの花が紫色に輝いて咲き、それがずうっと続くのです。空には、いつの間にか銀河の星がいくつか輝いていました。
奈良駅から春日大社に至る長い散策ストリートのような美しい小麦色の通りでした。真ん中の道に、時たま自転車が静かに、ゆっくり通るばかり、両側にある広い遊歩道には、町の人たちがゆったりと歩き、どこかの店に消えていきました。
そのようにして、私と青年は親友のように、その小麦色の道を、肩をならべて行きますと、とある銀色のカフェーが目につきました。我々は自転車を降り、並木道とカフェーに挟まれた長く広い石畳の小麦色の遊歩道に足をとめ、そばの銀色のカフェーに向かったのです。
でも、全ては夢でした。ああ、私はそんな夢を見て、何故かそこが私の遠い永遠の昔に歩いた美しい街角の小麦色の遊歩道であるような気がして、懐かしさのあまり、涙が一粒湧き出たのです。
(完)
【久里山不識 】
読んでいただき、ありがとうございました。体調がよくないことと、諸般の事情により、二週間ぐらい(創作・見る )を休みますので、よろしくお願いします。
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