緑の風

散文詩を書くのが好きなので、そこに物語性を入れて
おおげさに言えば叙事詩みたいなものを書く試み

緑の風 17 (レモンの歌)と休憩

2022-06-10 19:47:29 | 
休憩【poem】

里山の光(poem)

いのちの朝日と永遠の夕日の美しいこと
森と丘のような沃野は、宝石のような輝きに包まれ
素晴らしい果物と花に満ちた樹木の向こうにはバスの走る街角がある

見よ 里山の五月の光を
そのやわらかい光線は大豆氏の乗るバスの内部で
タンパク質の合成を始めていた。
タンパク質の窓はまるで中世の教会の
赤いステンドグラスのようで、
美しい光が差し込み、全てがバラ色のように輝くのだった。
タンパク質の窓に雪が降りかかる日の物語
タンパク質の窓にオルガンのささやく光の物語
そしてビールの泡のようにあふれでる生命の倦怠
バスの内部に広がった巨大な粘菌のような
タンパク質の静かな紫のあくび

おお、今日も私は花の咲いた植物を持ち、バスに乗る
光に包まれると、バスの内部は葉緑素に満ちる
それは透明で、香りの良い何ともうっとりする葉緑素

まばらな乗客
二酸化炭素のような毒が霧に包まれて
水分をたっぷり、ふくんだ豊かな美しい会話が
若い母と子の間で静かに進行していた。
「ねえ、ママ。何で、人は戦争をするの」
「それはですね。ヒトは悪口をいったり、いじわるするでしょ」
「それが戦争の始まりなの」
「それに、ヒトは武器を持っているでしょ。それに愛のない言葉がはびこっている。
昨日見たセヴィリアの理髪師の中でもね」
「ああ、オペラね」

会話はバラ色の光のヴェールに包まれて
二酸化炭素のような毒を栄養として
五月の細胞を合成する
バスで夢見る思い出はにがく
幻の人生は何を与えんとして今日もいくのか

窓の外の風景を見よ
見よ 街路樹の新緑の梢を
そこでも光をあびた新緑は
真夏の海水を浴びて喜ぶ少年のように
健康そうな笑いを浮かべて
五月のタンパク質を合成する

そして真っ白な酸素をさも気持ちよさそうに吐き出す
おお、今日もあの梢は緑に燃えている
見よ 窓の外の丘の上を
そこにはバラの垣根に囲まれた学校があり
そこから子供達の笑い声が
五月の細胞の中に反響する
おお、今日もあの丘のバラは真っ赤に咲いている
住宅街を通るバスの内部で
私はものうげに光をあび
重苦しい会話に耳を傾けた。

若い男と初音ロボットキミが話していた。
「昨日、歌い終わって、終末時計を見たら、二分前よ」
「なにしろ、核兵器があるから、
それに兵器の進化は異常だ」
「戦争が始まれば、沢山の人が死にますよ」
「人間は利口なんだか、愚かなんだか、分からなくなる」
窓の外は麦畑が続いている。そして、向こうに、海も見えた

そして、私はセビリアの理髪師を思い出していた。
「どんな下らん悪口でも、作り話でも、うまくやりさえすれば町の暇人どもは必ず真に受けますからね。つまり、中傷はそよ風のように来ても、やがて台風になるというわけ」
伯爵が知らない町に来て、令嬢に恋するのだが、
令嬢の資産を狙う恋敵が伯爵をおとしめるには、中傷がいいと思う場面だ。

窓の外の流れる風景に
私は苦しい憧れを感じていた。


【久里山不識】
地球から核兵器を無くそうをテーマにした小説「森に風鈴は鳴る」は パブー(Poboo)で電子書籍にする。
「霊魂のような星の街角」と「迷宮の光」はアマゾンで電子出版
セビリアの理髪師の所のセリフは オペラの中のセリフを短くした文




17 レモンの歌
それから、さらに夜になると、寝台車に行くものもいる。我々三人は若いので、やわらかな絹のようなソファーの自分の席で、そのまま寝る。それでも、吾輩、寅坊はまだあまり眠くない。時々、目をつむったり開けたり、あたりの様子をうかがう。目をつむると、やわらかな緑の柳が清流にかかり、岸辺には花が咲いている。吾輩には眠る前に、時々、こうした幻影が現れることがあり、これが楽しみなのである。

物音で、目をあけると、今までに、そのあたりにいた沢山の乗客はすっかりいなくなり、いるのは我々三人とライオン族のおまわりさんとヒョウ族の若者と虎族の若者モリミズと猫族の娘ナナリアだけになった。
鼻歌が聞こえて来る。かすかな声だが、どうもおまわりさんの鼻歌のようだ。

レモンよ! 君の瞳に愛と死を見る奥の深さ
おお、やわらかな黄色の毛を身体にまきつけて
僕の日記に嵐を吹き起こす
熱情の恋人よ。涙の嵐に吹き荒れる緑の風景

おお、夜はそこまで訪れた。海の衣ずれの音と共に
やさしくふりかかる君の黄金の髪
おお、そして神秘に光る町の灯のような君の瞳
僕は大森林の芝生の上で君とたわむれ、笑う。
これこそ、人生。

永遠のやさしい月夜の晩に僕はレモンに魅入り
愛の深まりの中で夢を見る

ライオン族のおまわりさんの声はそこで急に小さくなり、聞こえなくなってしまった。
吟遊詩人が微笑して、「レモンで思い出したが、僕にはこの有名な詩がすきだな」
彼の声も珍しく小さかった。
おまわりさんに遠慮したのだろうか。

そんなにもあなたはレモンを待っていた
かなしく白く明るい死の床で
わたしの手からとった一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズ色の香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱっとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智慧子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた

詩人川霧さんはふとそこでやめた。おまわりさんの声が再び聞こえたからだろう。何て言っているのだが、はっきり聞き取れない。
「月夜の砂漠の中に彷徨う隊商のように」だけがやっと聞こえた。
ちょっと見ると、ライオン族のおまわりさんの目に涙が光って、鼻水が流れるような感じがあった。

吾輩の耳は猫の耳であるから、聞こえは抜群にいいが、二人の詩の最後まで聞こえなかったのは残念だった。吾輩の胸にも響く吟遊詩人の詩は、高村光太郎の「レモン哀歌」である。おまわりさんの方は分からない。何で逞しいライオン族のおまわりさんがその詩を歌い、かすかな涙を光らせていたのかは勿論、分からない。ただ、人間というのはどんなに強そうに見える人でもそうした一片の悲しみの詩をかかえていることがあるのだろうと、吾輩は思った。
それでも、吾輩は何か素敵なものを見たような気がしてしばらくぼんやりしていると、すると、ライオン族のお巡りさんの鼾が聞こえて来た。

そのすきをついたのか、ヒョウ族の若者が猫族の娘の所に行き、
「ねえ、付き合ってくれよ」とねこなで声で言う。
「ここで、お話するくらいならいいわよ。でもあたし、ティラノサウルス教って苦手なの」
虎族の若者が来て、「おい、あまりしつこくするなよ。悪いだろ」
「なんだと。お前が出るまくか」
「それに彼女のブログは匿名なんだぜ。何でそれを虎族の小母さん達に喋っちゃうのさ。悪いと思わないのかい」
「うるせえな。ティラノサウルス教よりスピノザ協会の方がいいって書いてあるから、虎族の小母さんの心の栄養にいいと思っただけだよ」
「君はティラノサウルス教なんだろ」
「そうだよ。しかし、あれはヒットリーラが一時心酔した強者の哲学だからね。もう少し、弱い人の立場に立った慈悲の心があった方がいいと思っているよ」
「なるほど。そこまで分かっているなら、彼女の邪魔をするべきではなかったな」
「何だと。貴様」
ヒョウ族の若者はナイフを振り上げる。
「腕力じゃ、僕に負けるからって、ナイフを出すとは。彼女がおまわりさんを呼ぶわけだよ。ところで、おまわりさんは寝ているな」

ここでハルリラが立ち上がり、素早くヒョウ族の若者が持っているナイフを取り上げる。ハルリラの動作の敏捷さに驚いた。
「やめたまえ」
ヒョウ族の若者もこの猫族の女の子ナナリアが好きだったのだろうが、彼の恋慕の情の嵐は理性の壁を破ってしまったと思える。以前から、虎族の若者とヒョウ族の若者でこの恋人ナナリアの取り合いがあり、一編の恋愛確執の物語があったのだろう。吾輩、寅坊はそういうことに興味がないでもなかったが、その時はただ、状況をはらはらして見ているばかりだった。

「おまわりさん」とナナリアが声を上げた。おまわりさんは驚いたように目を覚まして、ラグビーの選手のように物凄い勢いで「逮捕だ」と雄叫びをあげながら飛んで来て、ヒョウ族の若者の手首をつかんだ。なるほど、先祖がライオンだけある、居眠りからダッシュまでの変わり身の物凄い敏捷さには百獣の王の血が流れているようだと、猫である吾輩は思った。
こうして、ライオン族のおまわりさんは男を逮捕すると、別の車両に連れて行ってしまった。

「ここにすわりませんか。モリミズさん」と吟遊詩人が言った。
虎族の若者モリミズは「ええ、ありがとうございます」と言って、「綺麗ですね」と窓の外を指さした。
何時の間に、月は窓わくから見えなくなり、代わりに、見えたのは、青白く光る銀河の岸に、銀色の空を背景にした色とりどりの薔薇の花が、もうまるで一面、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。

アンドロメダ銀河鉄道の先の方で多くの鳥達が飛びたったようなのです。
天空に舞い上がる極楽鳥のような色とりどりの小柄な鳥の本当の名前は分かりませんが、熱帯にいる赤いインコ、青いインコ、黄色いインコのような不思議な美しさを持っています。
それがピアノの音のような美しい音を大空全体に響かせて、それから舞い上がり、キラキラ光る星を飾るさまは、まるで江戸の隅田川の空に上がった花火のようです。
確かに、周囲の下の方は何か水晶のような美しい水が流れているのかもしれないと、吾輩は思ったのです。
たえず、ピアノ・ソナタのような、美しい響きがまるでそれが列車の音であるかのように聞こえるのでした。何という美しい音楽だろうと、吾輩は思わず思ったものです。
虎族の若者は満足そうに、吾輩と吟遊詩人とハルリラのそばに、空いている一か所にゆったりと座りました。


「すごいね。さすがにハルリラさんは武士だね」と吾輩は言った。
「おまわりさん居眠りしていたから、心配してずっと見ていたんだよ。娘さんが危ないと思ってね」とハルリラが言った。
「助かりました。僕も空手二段の腕前があるのですけれど、ナイフを出されると、やはりこちらも相当怪我をする覚悟がいりますからね。それにしてもライオン族のおまわりさんは呑気ですね。それに比べあなたの敏捷なこと」と虎族の若者モリミズが言った。
「相手がナイフを持っていましたから、ちょつと気を使いました。でも、刀を出す相手とは思いませんでした。そんなことをしたら、武士として失格ですからね」とハルリラは言った。
ちょつとした沈黙があった。
「どちらへ行かれるのですか」とモリミズが吟遊詩人の方に声をかけた。
「この次は、惑星アサガオでおりようと思っているのですよ」と吟遊詩人は答えた。

                  
「ああ、あそこですか。僕もそうですよ。ご案内しましようか。」とモリミズは言った。
「君には、ナナリアさんがいるのではないですか」と吟遊詩人は微笑した。
「あの子は惑星アサガオではおりないと思いますよ。なにしろ、あそこは今、革命の動乱期ですからね。僕が危険だから、この惑星は飛ばして、次の惑星で降りるように説得しました。
惑星アサガオは熊族の王朝が長く続き、ロイ二十世という王様が専制的に支配しているのですが、これがまた税金問題で国民を苦しませていましてね、国民はあの消費税には我慢がならないと色々不穏な動きがあるのですよ」
「それで、虎族の君がそんな所に行って、何か目的でも」
「ええ、惑星アサガオの民衆には、鹿族が多いのですが、これが貧しくてね。明日のパンさえ、手に入らない、中には餓死者が出るあの国の首都のお城では、お姫様が『パンがないなら、ケーキを食べればいいじゃないの』と言いながら、王様は消費税を二十パーセントに引き上げるなんて言っているんですよ。
貴族の中には虎族やライオン族がいましてね、僕の遠い親戚の虎族の伯爵から僕は呼ばれているのですよ。彼は貴族でありながら、この熊族のロイ王朝の政治のやり方に反発していましてね。ウエスナ伯爵というのですが、彼はインターネットで地球のスピノザを勉強していたものですから、僕がスピノザ協会に入ったと言ったら、喜んで僕を招待してくれたわけです」
「熊族の王朝にまで、やはりテイラノサウルス教があるのですか」とハルリラがモリミズに聞いた。
「や、あれは伝統的に虎族の宗教ですから、ロイ王朝は熊族ですからね、ブロントサウルス教でしょう」
「それはどんな考えのものなんですか」と吟遊詩人が聞いた。

「あれは草食系のせいでしょうかね、なにしろ、紙が好きなんですな。お札をどんどんすって、インフレにして、消費税などの税金を増やして、貧しい庶民を困らし、富んだ貴族や大金持ちや富裕な商人からは税金をとらないのですよ。おまけに、貧しい庶民にまわす福祉の金は、軍事力を誇示する戦車をつくる金に化けてしまうというわけです」
その時、向こうから、猫族の女の子ナナリアの声が聞こえた。モリミズを呼ぶ声だ。
「それじゃ又。惑星アサガオに降りる間際にご案内します」と言って、モリミズは離れた。

吾輩はしばらく寝た。詩人もハルリラも寝たのだろう。

ふと吾輩が目を覚ました時は、ハルリラの寝息が聞こえるくらいあたりは静かでした。アンドロメダ銀河鉄道はどのあたりに来ていたのでしょうか。星の輝く中に黒い森のようなものが続くかと思えば、その横を見えないアンドロメダ銀河の川が音もなく、トコロテンのようにやわらかく、もっと透明な流れとなっているようで、不思議な大きないのちの水があらゆる星屑とすれ違いながら、その時出すみかん色の美しい光はたとえようもないものでした。

時々、なにやら吹く野原の風のような音がまるで弦楽器の響きのように、聞こえては消えていきます。

「ああ、この次の惑星アサガオは波乱の舞台のような感じもする」と吾輩はロイ王朝のウエスナ伯爵がどんな人か想像しながら、そんな独り言を言うのでした。
大きな向日葵や柳の木のようなものがまるで並木道のようにえんえんと続くではありませんか。向日葵、菜の花、柳のようなものが星のように輝き、
向こうにトパーズという宝石のような黄色みがかった惑星アサガオがゴムまりほどに見えてきました。
吾輩は殆ど歓喜の声をあげました。なにしろ、地球の京都では、あの主人の銀行員が我輩にゴムまりをなげつけて、吾輩がごむまりにじゃれるのを子供のように、喜び、腹をかかえて笑ったのを思い出したものですから。あれでは、どちらが猫か分かりませんね。

どちらにしても、今の吾輩はどういうわけか、猫族の人間として、服まで来て、さっそうとアンドロメダ銀河の旅を続けているのです。
これほど、生きる喜びを感じる時はありません。
それにしても、ハルリラは静かな武士です。顔も優しい感じがしますが、腕はかなり太いです。筋骨隆々としたエネルギシュな肉体が服の中に隠されていることがなんとなく感じられる外見です。
吾輩はつくづくハルリラの顔を見ると、どうしても仏像広目天を思い出してしまうのです。

「銀河がこんなに美しいのは目に見えない何かを隠しているからだ」と思いました。「何だろう。それは。」
どこからか、銀河のはての丘陵から何かの旋律が聞えてくるようでした。
「そうだ。いのちだ。目に見えないいのちを銀河は持っている。」

ふと、気がついた時はもうゴムまりではなく、バレーボールほどの大きさに惑星はなっていて、相変わらず、トパーズのような少し黄色みがかった巨大な宝石のように思えたものでした。
「銀河は目に見えないいのちを持っている。だから、こんなに美しいのだよ」
と吾輩、寅坊は虎族の若者の目を見ながら、そう言った。
そう言って、吾輩はこんな風に言ったのは、映画を見たあとの吟遊詩人のいのちの講釈が我輩の無意識の海の中に入っていて、それが噴水のように言葉となったのだなと思った。
なにしろ、自然は神の現われだとスピノザは言っていた筈だと虎族の若者は言っていた。

何時の間に、吟遊詩人もすっかり寝て、気持ちよく目を覚ましたと見え、すがすがしい目をして、吾輩に向かって言った。
「僕はここに杜甫の詩集を持っている。」と吟遊詩人はややふるぼけた小型の薄い本を見せた。「それから、この首にかけているヘッドホーンを耳の方にあてると、僕の好きなバッハやベートーベンが聞こえてくる」と言って、微笑した。
吾輩は、吟遊詩人はいのちの話をするのだなと直感した。
「杜甫の詩を読んで、そこに展開する千年前の不思議な絵巻物のような光景を頭に浮かべて感動する時、そこにいのちを感ずる」
「それに」と吟遊詩人はヘッドホーンをなでながら、「これは素晴らしい。最近はベートーベンをよく聞くんだが、そこに宇宙のいのちを感ずる。芸術は知識でもない、技術でもない、ただ素直に聞き、感動することさ。ロダンは感動こそ、芸術のいのちというが、こういう素晴らしい音楽を聞いて、感動した時もそこにいのちの躍動を感じる。これは絵でも詩でも同じこと」
吾輩は吟遊詩人が映画の感想を言った時と、似たことを言っていると思った。あの時には、虎族の若者モリミズがその席にはいなかった。
吟遊詩人は吾輩の心を読んだのか、優しい目を吾輩に向けて、微笑して、さらに話した。
「寅坊君が言うように、銀河は目に見えないいのちを持っている。だから、こんなに美しい。その通りさ。勿論、銀河のような巨大な宇宙ばかりでなく、可憐な花を見ても風に揺れる植物を見ても、いのちを感ずる。いのちというのは形がない、目に見えない、しかし、我々の肉体が単なる物質の集合体でないと我々が知っていて、「いのちがある」と誰でも言うように、いのちというのは、感ずる心がある人には、いたる所に、いのちがある。
僕はトラカーム一家で過ごしていた時、何冊かの歴史の本を読んだが、その中でも「安土桃山時代」と「明治維新」は面白かった。貧しい百姓の出から、信長に仕え、天下をとり、その豊臣の天下も結局、徳川に譲らざるを得なかった歴史の動きは実に面白い。明治維新も同じ。下級武士たちが動きだし、やがて、長く続いた徳川政権を倒す、このあたりの人々の動きを見ていると、そこに不思議なドラマ、つまり、歴史物語といういのちを感ずる。
いのちはいたる所に感ずることが出来る。
星の輝き、空気の心地よさ、風の梢を揺らす音、小鳥の声いたる所にいのちを感ずることが出来、そして、いのちをささえているのは愛であり、大慈悲心である。これを不生不滅の霊性と言っても良い。そういう風に、いのちというのは不思議なものだよ。」

                    【つづく】





【作者から】

この素晴らしい大切な「いのち」を傷つける行為がこの地球で行われてきたことは大変残念なことです。その筆頭が「戦争」でしょう。
この恐ろしい戦争を経験して平和になっても、人は人を平気で傷つけることが行われているのはちょっとニュースを見ただけで分かります。
禅では、人は仏性であるとか、もっと深い言い方では、無仏性であるとか言い、白隠和尚などは仏と人間は紙一重であると言い、人間の中に素晴らしいいのちの宝があることを示していますが、どうもこの百年間ぐらいの戦争などの歴史を見ていると、親鸞が言う「人は愚かな悪人で救いようがない、それを助けようとなさっているのが阿弥陀仏だ、阿弥陀仏の回向によって仏の世界に導かれていく」という方が現代には相応しいのかと思ってしまうことがあります。阿弥陀仏って、な~になんて、最近の仏教離れの人に聞かれてしまいそうですが、私は難しい話は横において、
「大慈悲心に満ちた宇宙の不生不滅のいのち」と言って、そう間違いはないと思っています。

そのいのちを傷つける行為は日本国憲法によって、禁止されています。私達の「いのち」は 日本国憲法によって守られているのです。例えば、基本的人権。

さて、いのちを傷つける悪の象徴たる戦争ですが、下記の記事が目にとまりましたので、掲載させていただきます。
かなり前の記事で恐縮ですが、ハ月十五日【2015年】の東京新聞の朝刊に九十三歳の瀬戸内寂静さんの特に若い人たちへのエールが掲載されていました。
長い珠玉のような文章の最後の方にこんな言葉がありました。
「安保法案が衆院で可決される結果は想像していたわよ。それでも反対しなきゃならないと思ったの。いくら言ってもむなしい気もするけれども、それでも反対しなければならないの。歴史の中にはっきり反対した人間がいたということが残るの。そのときは「国賊」だとか言われても、どちらが正しかったかを歴史が証明する。一生懸命、小説を書いてきて分かりました。
若い人が立ち上がってくれたことは本当に力強いことです。
法案は参院でも可決されるかもしれない。
もしそうなったとしても力を落とさないでほしい。
立ち上がったという事実はとても強い。
負けたんじゃない。いくらやってもだめだとは思わないでほしい。
闘い方が分かったんだからこの次もやっていこうと思ってほしいわ。運動に参加した人は、その分の経験が残ります。
若い人たちは行動する中で自分が生きているという実感があると思う。
未来は若い人のものです。
幸せも不幸も若い人に襲い掛かるんだから。
われわれはやがて死んでいく人間だけれども経験したことを言わずにいられない。法案を通した政治家も先に死ぬのよ。残るのはあなたたち。闘ったことはいい経験になると思います。むなしいと思われたら困るのよ。どっかでひっくり返したいね。
いい戦争はない。絶対にない。聖戦とかね。平時に人を殺したら死刑になるのに、戦争でたくさん殺せば勲章をもらったりする。おかしくないですか。矛盾があるんです。戦争には。」



【参考】レモン哀歌全文
そんなにもあなたはレモンを待っていた
かなしく白く明るい死の床で
わたしの手からとった一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズ色の香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱっとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智慧子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それから山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まった
写真の前に挿した桜の花かげに
涼しく光るレモンを今日も置こう















緑の風 16 (窓の月)

2022-06-03 15:38:52 | 日記


26 窓の月

アンドロメダ銀河では、たくさんの星が蛍の群のようにゆらめき、流れていく中で、日光菩薩、月光菩薩が美しい幻のように舞い、きらびやかにそして慈悲に満ちた光を放っている。どこからか、ハレルヤの歌も聞こえてきた。ハレルヤ。ハレルヤ。猫である吾輩は ハレルヤという言葉を聞いた途端、よく京都で吾輩の主人の銀行員が好きだったヘンデルの曲を思い出した。でも、アンドロメダ銀河で聞いた曲はヘンデルの「ハレルヤ」にどこか共通のものを感じはするが、歌詞はまるで違うものだった。
皆、しばらく呆然と、窓の満点の星に気をとられているようでした。
 
ハレルヤ
星の光あふれる蝶の舞いよ、あなたは宇宙の舞踏
宇宙にあふれるいのちの舞い
月の光あふれる小鳥の舞いよ、あなたは大きないのちの流れ
ハレルヤ

ハレルヤ
その大きないのちを何と呼ぼう
父とも母とも違う、昔の人は神と呼んだ
東洋の人は仏と呼んだ

吾輩は目をつむって、さらに耳をすますと、目の前に花園が広がった。幻影だろうか。
最初は深紅の薔薇園から、紫陽花のような青い花と様々な色の花が流れるように見える。


ハレルヤ
名前で、百合を見ている人は百合の真実を見ていない
名前で、薔薇を見ている人は薔薇の真実を見ていない
脳から見た世界は美しい複雑系の模様のようだ
それでは宇宙の崇高ないのちを何と呼ぼう

ハレルヤ ハレルヤ
今のヒトは宇宙の真実に名をつけたいと思う
名前がない、これが人の病を深くする
しかし、名前があっても、それが真実のいのちを見失わせる
名前で争うからだ。
悲しみ、苦しみ、
そして、脳から見た世界は争いに満ちている

ハレルヤ ハレルヤ
何と呼んだらよいのだ。
ヒトは争わないで、平和をつくるために
いのちの宝をヒトは何と呼ぼう
ハレルヤ

ハレルヤ
自我を忘れる時
見えて来る光
それは今、ここに存在する
名前のない形のない目に見えない宇宙生命は今、ここに存在する
ハレルヤ  ハレルヤ

ヒトは何かで争っている
それでもヒトに武器など必要ない
我らは仏性という兄弟なのだ
ハレルヤ  ハレルヤ
ただ息をして、心を愛で満たして祈れ
そしていのちに感謝して、深く祈れ
ハレルヤ  ハレルヤ


ハレルヤが終わり、急にシーンとなり、「君は心の綺麗な人だ。珍しい人だよ」と虎族の若者の声が吾輩の耳に聞こえた。
猫族の娘ナナリアはわけもなく頷いた。
「心が綺麗と言われても、何も考えていません。ただ、ハレルヤがあんまりすばらしかったので」とナナリアは答えた。
「だから綺麗なのさ。普通の人は何か考えている。僕は君を見た時から、本能的に惹きつけられていた。無心なの」
「無心って」
「つまり、自分の頭であれこれ思うじゃない。蝶の舞いや、ハレルヤ・コーラスのような歌を聞いて何か考えることがあるじゃない。故郷のことを思い出したり、あれこれ思ったり」
「蝶の舞い。ハレルヤ・コーラスのような歌。そうですね。美しいですね。そういう風景に淡い光が射しているような意識だけあって、そこに「あたし」という自我が消えて、いなくなった気がしたことがあったみたい」
「なるほど、やはり、君は珍しい人だ」
吾輩はこの会話も気になっていたし、虎族の若者の動きも気になった。

窓の外の見える風景の範囲に、急に満点の星空一杯という風になると、虎族の若者が目を覚ましたように立ち上がった。

若者は、虎族の奥様「チロ」さんの後ろを回って、我々の方に歩いて来て、「座ってよろしいですか」と聞いた。
「どうぞ」とハルリラが言った。ハルリラの隣に若者が座ったので、必然的に彼は吾輩の正面にいることになる。吾輩の隣の吟遊詩人はヘッドホーンをはずし、首にかけ、銀河鉄道の窓の外を眺めている。


虎族の若者はハルリラに向かって「虎族の小母さんから、逃れるには、
ここがいいね。ところで、君は聞こえて来る歌声のような人だね」と言った。
「俺? 」とハルリラは目を丸くした。ハルリラは驚いたのだろう。
若者がナナリアのような妖精に言う言葉なら、理解できるが、若者のハルリラのような武人に対する礼儀の奇妙さに、吾輩、寅坊は目を丸くしたのだ。ただ、あとで知ったことだが、虎族の青年が好意を持った初対面の刀を持った武人に、こういう挨拶が見られるのはその頃の習慣だったらしい。
「ところで、君さ」と明らかに、吾輩の目を見て言った。
「吾輩 ?」と答えた。
「そうだよ。君と彼女は同じ猫族じゃないかい。耳がいいから、あの話、聞こえたろう、どう思う」
「あの話」
「彼女は匿名でブログに流している。本当に親しい人、数人しか知らない筈だ。
それが今はこの銀河鉄道の皆にナナリアさんのブログが知られている。
こんなことは普通起きないよね」
と虎族の若者は言って、しばらく目をつむって、今度は目を大きく見開き、思い切ったように、「ヒョウ族の若者はどうして知ったのだろう。無理に聞いたんじゃないかな」

「どうかしら」といつの間に、虎族の奥様「チロ」さんは我々の前に突っ立っていた。
虎族の若者はそれを無視したように言った。
「僕にすら、彼女は教えていないんだぜ。僕はたとえ、知ったとしても、そんなことをあちこち人に喋らない程度の礼節は心得ている。そんなことをやるから、ヒョウ族の奴はきらわれるんだよ。ライオン族のおまわりさんだって、僕のために来たなんて思われると迷惑な話で、ヒョウ族の若者のために来ているんだよ。
僕はストーカーなんてしないからね。あいつはそういう陰険なことをやるから、ストーカーだなんて思われて、あの猫族の女の子がおまわりさんに頼むことになるのよ」
「そうかもね」とチロさんは言った。

相変わらず、ピンクのカーディガンを着たチロさんは立ったまま、座っている虎族の若者に声をかける。彼はがっちりした体格で黄色い口髭をはやして、つぶらな瞳をキラキラさせていた。
「あなたは何でティラノサウルス教に入らないの。ヒョウ族の子が入っているというのに」
「それはティラノサウルス教がよくないと思うからさ。スピノザの方がいい」
「親念はどうなの」
「親念。ああ、大統領演説で名前を知ったくらいだ」
「ティラノサウルス教には、虎族の三分の一がこのグループに入っているのよ。良い教えに決まっているじゃないの。あなたは虎族なんでしょ」
「虎族だって、ヒョウ族だって、猫族だって、同じヒトさ。ヒトは自由な意思で、自由に自分の考えをつくることが出来る。それに、君達も大統領演説を聞いただろう。ティラノサウルス教は間違った教えだったから、ヒットロリーラはああいう演説をしたのじゃないか。猫族を差別するなんていうのは真理に反するよ。真理には全ての人に対する愛がないとね、
だから、長時間労働をなくし、大きな経済格差をなくしていこう、差別をなくそう、自由と平和と福祉を大切にしようというスピノザ主義の考えに共感するのさ」と言って、彼は立ち上がった。
虎族の若者はチロさんをやり過ごし、吾輩の前の方の入口に近い所に座っている美しく可憐なナナリアに、近づいた。さすがに、チロさんはそのまま自分の席に戻り、むっつりしていた。

吾輩は耳をすました。猫の聴力は地球のヒトの三倍あるとはよく知られたことだが、こういう時には役に立つ。そういう風に、聴力にはひどく自信があるので、彼らの話も興味があるので、耳をすまして、無理に聞いてしまった。
時々、ハルリラが「何 聞いているのさ」と聞くと、吾輩は「しいっ」と指を口にあて、「あとで教える」と黙らしてしまう。
吟遊詩人はヘッドホーンで何かを聞きながら、窓の外の星空を眺めている。

「ここに座っていいかい。虎族の小母さんがうるさくて」と虎族の若者モリミズ君。
「いいわよ。でも長くいると疑われるわよ」とナナリア。
「誰に」
「ライオン族のおまわりさん。トイレに行ったんじやないの」
「ライオン族のおまわりさんはヒョウ族の若者を見張っているんだろ。君はヒョウ族の若者に自分のブログを喋ったのかい」
「あら、喋ってないわよ」
「そうだろうな。僕に知らせないくらいだから」
「あなたなら、教えてあげてもいいわよ」
「それはありがたいが、君のブログは虎族の小母さんにもれて、このアンドロメダの列車の多くの人は知っているぜ」
「どうして、あたし、喋ってないのに」
「ヒョウ族の若者が君のことを徹底的に調べ上げたのだよ。勿論、ブログも隅から隅まで、調べたんだと思う」
「そんなことで分かるの」
「君と少し、趣味の会話などしているだろ。それを手かがりに調べ上げるのさ」
「恐ろしい人ね」
虎族の若者モリミズは「僕は」と言って黙った。
「分かっているわよ。おまわりさんは、あのヒョウ族の若者がストーカー行為するから来ているのよ。自宅にいた時にも、押しかけてきたりしたんだもの」
「何でそんな奴と知り合ったのだよ」
「町の図書館で雑誌、読んでいたら、声をかけてきたのよ」
「ふうん」
「そういうことはよくあるわよね」
「うん、まあな。僕と君が知り合ったのはスピノザ協会だよね。スピノザの汎神論、つまり自然イコール神という考えからすれば、僕は神が変身と進化をなしとげてきて、今の僕という存在がある。そういう風に神を知ることによって、自然と、騎士道精神は守るようになる」と虎族の若者モリミズは微笑して言った。吾輩は彼が「エメラルド」という虎族の小母さんが言っていた騎士道精神をここで使ったのが、何故かおかしかった。
騎士道精神は魔法界だけでなく、虎族の教養ある一部の人達にも浸透している価値観のように思われた。

「おまわりさんは ?」
「食堂車に行ったのじゃないか。よく頻繁に立つライオン族のおまわりさんだよ」
「あたしを守ってくれる役目なのに」
「君が頼んだのだろ」
「わたしは個人的なおつきあいは困ると言っただけなのに、ヒョウ族のあの人はしつっこいわ。ストーカーよ。あたしは取材で、この列車に乗っているのに、あの人はくっついてくるんだから。
それにしても、地球という惑星のことを少し取材してみたら、地球も大変みたいね。純粋な子供の中にいじめが目立つのは、大人の社会に格差だの、ブラック企業だの、一部の親の子供虐待だの、金銭至上主義だの、大人の社会の一部にまともでない所があるからよ。
この間は身体障害のある人の施設で沢山の人が、元職員に殺されたんですって、みんな生きる価値がある筈なのに、勝手に変なことを言って、あんな怖ろしい事件を起こすなんて。少し狂ってるわ。
社会に余裕がないのね。競争が激しいし、格差も激しい。長時間労働が習慣化して世の中の雰囲気は表看板は美辞麗句で飾られるんだけど、中身は歪んでいる。だから、いじめが起こるのよ。
地球の兵器の発達も少し異常よ。もう少し、大人の社会をまともにしなくてはね。どう、そう思わない ?」

虎族の若者モリミズは地球の知識はないらしいが、スピノザ協会に言及した。
「スピノザ協会がそういう社会の悪い所を一番、問題視しているよね。僕は同感だ」

「おまわりさんがいたんじゃ、彼もしつこくは出来ないだろ」
「でも、あのおまわりさん、ひどくのんびりしているわ。そういう人をわざと派遣したんじゃないかと思って。だって、警察署の幹部って、たいてい虎族でしょ。猫族を守ることなんかあまり真剣に考えていないのよ」
「君は虎族に偏見を持ちすぎるよ。少なくとも、ぼくは君が虎族に抱いているような人間じゃない」
「どんな風に違うっていうの。虎族ってエリート意識が強くて、猫族を嫌っているじゃないの。それなのに、あなたは」
「僕はそういうことにこだわらない。人間は平等さ。先祖が誰だって、いいじゃないか。文化の違いがあるのは認めるけど、それを使って交流して、お互いを高め合うことがたいせつなのじゃないかな」
「それはあたしもそう思うわ。スピノザ協会もそう教えているわ」
「そうさ。全ての人は神が変身し進化してきた存在だから、平等さ」
吾輩、寅坊はそれを聞くと、京都の吾輩の主人が「すべての人は仏性を持つ。衆生と仏は水と氷りのようで紙一重だ」という江戸時代の白隠の詩を口ずさんでいたことを何故か思い出した。

ヒョウ族の若者が帰ってきた。中々鋭い目つきをしたヒョウ族の若者だ。
虎族の小母さま達の所は挨拶だけして、吾輩のずっと背後の席に座ったらしい。
どさりと音をたてて座った。何か、乱暴で、投げやりな気持ちが見え隠れするような気がしたのは吾輩の思い過ごしか。
そこから、あの猫族の娘が見やすいのかどうかは分からないが、かなり離れているとは思う。何か、視線が彼女に向けられていると思うのは吾輩、寅坊の思い過ごしか。

夜になると、食堂車に行くものもいる。我々三人はそこを動かずに、その席で食べていた。窓の外に大きな黄色い丸い月が見えた。地球の月とどこか違う、どこが違うと指摘することよりも、吾輩の耳には、良寛の俳句「盗人に取り残されし窓の月」が響いた。月を見れば、見るほど、何故か、吾輩の耳に「盗人に取り残されし窓の月」という俳句が繰り返し聞えて来る。
「月は花みたいだね」とハルリラが言った。
吾輩は何か嬉しくて、笑った。ハルリラも微笑していた。
吟遊詩人は食事を終えると、ヴァイオリンを弾き出した。彼の好きなチゴイネルワイゼンだ。甘く美しく、ちょうど車窓を流れる月のようだった。


                      【 つづく 】






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