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「おみおくりの作法」

勝手に英国版“おくりびと”だと思っていたシウ。
まったく違うものだった!

ロンドンの公務員、ジョン・メイ(エディ・マーサン)44歳。
彼の仕事は誰かの死から始まる。
孤独死した人を埋葬することだから。


前半はジョンの暮らしぶりと、仕事ぶりが淡々と描かれる。
毎日同じものを着て、同じ道を通勤し、同じものを食べる。魚の缶詰とパンとりんごと紅茶。
何度か登場するその食事はまったく美味しそうではないし、彼の生活に素敵な雰囲気はかけらもない。
仕事はさらに退屈そう。
死者の部屋でレコードを探り、葬送の曲を決める。
死者の宗教にのっとった葬式を企画し、たった一人の参列者となる。
不謹慎だが、そのあまりの実直ぶりは、思わず笑いがこみ上げるほどおかしい。

赤の他人である死者を弔うにあたり、ジョンの頭に上司の言う“事務的に”という考えはない。
彼は仕事に誇りを持っている。一通り調査し、葬儀を行う頃には、ジョンは孤独な死者にとっての唯一の友人となっているのだ。
関わった死者の写真を密かにアルバムにコレクションしているジョンは、始めは不気味にも見える。
しかし彼の人柄がわかってくるにつれ、そんな行動もたまらなく愛おしくなってしまう。

エディ・マーサンはイギリスを代表する名優の一人。
天才にも凡才にも見えるのが良い。個性があるような無いような、彼の風貌はどんな役柄もこなせる。
特に今作では真面目くさった顔で、時折ちらっと見せる愛嬌(あいきょう)が印象的。
 死者に真心を尽くすことは大事だが、たしかにジョンはやり過ぎかもしれない。
しかし誠意をもって行動することは、貴重なつながりを生み、豊かさに通じる。それこそが人間ならではの醍醐味だと思う。
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