夏の暑い日に

今となれば何であんな小説に凝っていたのかよくわからないけど
片岡義男の本で
『ボビーに首ったけ』っていうのがあった。
どんな話なのかほとんど忘れちゃったけど
カッコイイ男の子が出てきて
バイクで最期を迎えてしまうの。
たしか、そんな部分だけは覚えている。
そのころのシウは中学生かな～

大人になったらバイクに乗る。
（髪の毛はもちろん、長く伸ばしてね）

そんなことを思っていた。

それから何年経ったかな・・・
いまだにバイクに乗ってない。
（一度スーパーカブを買ったけど
　全然乗らないから電動自転車に替えちゃった）
シウが人生を閉じる時
きっとバイクに乗らなかったことを後悔するかも。
でも、バイクに乗ったらシウの性格だと
絶対死ぬっていう自信があるの。

シウの通勤路には
急カーブが続く峠道があるのだけど
シウはそこをいつもすっごく飛ばしているのね。
前に車があったらたいてい抜かす。

この間、
前の車を抜かしてカーブを曲がった途端、
交通事故を目撃した。

事故の瞬間ではなくて、
ちょうど救急車にストレッチャが運び入れられる所だった。
そこには人が乗っているらしかったけど
頭から足の先まですっぽり緑の布で包まれていたの。

彼（あとで男の人って知った）が乗っていたバイクが
見たこともないほどグチャグチャになって
大型車の前輪の下にはまり込んでいた。

多分
スピード出しすぎて
カーブを曲がりきれず、
右車線に滑っていったのだ。


この暑い夏が始まった時、
彼はこれが自分の最後の夏になるなんて思わなかっただろう。

次の日
同じ道を通った時
そこに花束が供えられていた。

スピード出しちゃだめ。