Eofauna代表で管理人の盟友、Asier Larramendi氏(スペイン/バスク)がものした長鼻類の形態、サイズに関する最新研究論文
('Shoulder height, body mass and shape of proboscideans')が、この度(July 10, 2015)、科学論文誌『ACTA
Palaeontologica Polonica』に受理、掲載される運びとなりました。
論文の反響は大きいものがあり、ナショナルジオグラフィック誌寄稿のBrian Switek氏(著名なサイエンスライター)も、同誌のブログ記事
にて本稿のことを取り上げられています。
彼の前回の論文『Skeleton of a late Pleistocene steppe mammoth from Zhalainuoer, Inner Mongolian Autonomous
region, China(2014)』では、アジア・ステップマンモスのZhalainuouer標本群の形態分析に焦点が絞られていましたが、今回は対象
の射程が24種の化石長鼻類にまで拡大されています。
化石長鼻類の推定体重の算出法として一般的な、現生種の特定部位の骨格に基づくアロメトリー方程式を採用した場合、多くの不備が生
じる(各種形態やプロポーションに、比較的大規模な差異などが存在するため)ということで、代りに精緻なGDI(Graphic Double
Integration)容積法による算出が試みられています。
可能な限り正確を期した推定値の算出に必要な様々な要素、例として長鼻類の正確な肩高の割り出し方や各種形態の比較分析、成長ア
ロメトリーやバイオメカニズムなどの考察もなされていて、この主題に関する総括的な研究が意図されています。
わけても、長鼻類11種の、しかも異なる「サイズレベル」(平均以下、平均、平均以上、大型…という具合に、複数段階の仕分けがされてい
る)にある個体群の推定体重を、それぞれ肩高に基づいて割り出す方程式(Table 7、8 参照)を開発したことは、今後への貢献という点で
評価されたようです。
複数の長鼻類の形態、サイズを扱った研究はこれまでにも散見され、近年ではアールボルグ大学のPer Christiansen博士(デンマーク)
の発表した論文『Body size in proboscideans with notes on elephant metabolism(2004)』(四肢長骨に基づいたアロメトリー
方程式が適用されている)が最重要として挙げられますが、新たにここに、総括版ともいえる研究が加わったと言えるのだと思います。
長鼻目史上、最大、最重量級だったのはどの種なのか
この問いに対する上述のChristiansenの導いた結論では、ステップマンモスおよび、デイノテリウムgiganteum という2種の名前が挙が
っていました。本論文ではこの結論に見直しがなされて、Palaeoloxodonの最大種(ストレートタスクゾウ)と、 Mammut borsoni(ボル
ソンマストドン)の二種が最有力候補として示されています。(そもそもChristiansenが扱ったサンプル内には、マストドン、ステゴドン、ステ
ゴテトラベロドン各属の大型種が含まれていません)
両者は実に長鼻類としてのみならず、パラセラテリウム属の最大種をも凌駕し、最大の陸獣であったことが示唆されていますが、「最大の
陸獣」の座を巡っては、インドリコテリウム科種と巨大長鼻類のどちらを推すのが妥当であるのか、長く意見の対立が継続してきました。こ
こに、一応の結論を得たと言えるでしょうか。
なお、論文の冒頭にも説明があるように、上にリンクを貼ったPDFは、出版に向けての最終稿というわけではありませんので、注意してくだ
さい。言うまでもなく、Copyright material です。
(上)ボルソンマストドン2頭が水辺にいる場面 (中)中期・更新世東欧のコーカサスにて、ステップマンモスとパレオロクソドン大型種、スト
レートタスクゾウの相まみえた場面 (下)後期・鮮新世ケニア産のErephas recki (レックゾウ)とDeinotherium bozasi(デイノテリウ
ム大型種)
ボルソンマストドンについて
テキスト&イラスト: ⓒサーベル・パンサー the Saber Panther
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