The Giant Four Tusker Mastodon
© the Saber Panther(Jagroar) (All rights reserved)
北米テネシー州の鮮新世地層から新たに発見された、原始的な四本牙のマストドンの復元画です。本種の発見、記載に携わられた東テネシー州立大学(East Tennessee State University)のC. Widga 博士の監督のもとに描かれています。化石が発掘されたGray Fossil Siteに因み、便宜的に「GFSマストドン」と記しますが、学名などより詳しい情報は追って報せるようにします。
この復元画は鮮新世北米南東部のファウナを描きこんだ風景画の一部をなすもので、完成作にはマストドンの他にも思いがけない動物が複数登場することになりますので、楽しみにしていただきたいと思います。
一つ言い添えておかなければならないのは、上顎の象牙の向きに関してはまだ検討中であり、先が下を向いていた可能性もあるということです。したがって、この復元画での上向きの象牙はあくまでも暫定的な解釈であり、最終的なものではありません。
本種は、近年の化石長鼻類の数々の発見の中でも、特に興味深いものの一つに数えられると思います。
2015年の最初の発掘時点では、ゴンフォテリウム科の種類だと考えられましたが、その後の追加標本の分析を経て、北米マストドンの基底種として分類し直されるに至っています。
新大陸のマストドン科としては確認されている中で最古の種類であり、これまで謎の多かったマストドン科の進化史を探るうえで、大きな前進につながったといえます。
その形態はアルカイックな要素とアドヴァンスな要素との混在に特徴づけられており、特に歯型(dentition)は、更新世氷河期のMammut americanum(アメリカマストドン)のそれとかなりの程度まで重複しているようです。
それでいて、驚くほど伸長した下顎、下顎牙などは同時代のユーラシアに産した、やはりマストドン科の種類であるMammut (Zygolophodon) borsoni (ボルソンマストドン)とも共通する形質要素であり、それは直牙型で5m前後にも達するという上顎の象牙の長さについても、同様です。
サイズに関しても際立った存在であり、雄の成獣個体は肩高がアフリカゾウ並みの3.3m以上になりますが、体形の違いもあって体重は非常に重くなり、推定10トン前後になったようです。すなわち、後世のアメリカマストドンよりも大型であり、恐らく、GFSマストドンは新大陸史上最大の陸獣の一つであったと考えられるのです。
本種に関するより詳細な情報は、二次的な資料ではなく、Widga博士の来る論文を確認してください。完成作にても多少の情報を加筆することになると思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
This restoration of the North American Pliocene mastodon is personally supervised by the very discoverer and the researcher of the species, Dr. Chris Widga of East Tennessee State University. This is a part of my next Prehistoric Safari piece featuring the landscape and fauna of the Pliocene southeastern North America that's going to be uploaded.
One thing I have to add is that the orientation of the upper tusks is still under debate, it may turn out to be pointing downward as in some gomphotheres, so this is only a provisional approach!
One thing I have to add is that the orientation of the upper tusks is still under debate, it may turn out to be pointing downward as in some gomphotheres, so this is only a provisional approach!
The finished version will be higher resolutioned and more fully rendered.
Recently unearthed from the Gray Fossil Site, Tennessee and described by Dr. Widga and his colleagues of ETSU, the fossils of this massive, four tusked Pliocene mastodon should be one of the most exciting prehistoric proboscidean discoveries in recent times.
'The GFS mastodon' was initially believed to be a gomphothere but now being considered as a basal mammutid. It is the first discovery of the pre- lower Pleistocene North American mastodon and thus greatly expanding our knowledge of the evolutionary history of the new world mammutidae about which still quite little is known to this day.
Its morphologies were characterised by an intriguing combination of archaic and derived traits, overlapping to a great degree with those of the Pleistocene Mammut americanum(especially so with respect to dentition), yet retaining such primitive features as a more elongated mandible and conspicuous lower tusks.
We are still under debate as to the orientation of the upper tusks, but in terms of the length, almost straight upper tusks were measuring up to a whopping 4-5 m, comparable to those of the Borson's matodon of Eurasia.
The body size was also quite noteworthy, reaching over 3.3 m high at the withers(about the same height as the African elephant, yet longer bodied and generally more massively built), weighing approximately 10 tons, thus the GFS mastdon slightly outsized the Ice Age Mammut americanum. This size places it as one the largest North American land mammals ever appeared.
For more rigorous, detailed general information on the species, check the upcoming paper by Dr. Widga.
イラスト&テキスト by © the Saber Panther(Jagroar) (All rights reserved)
鮮新世の北米の動物相はわかってないことも多いんですね。
1つ質問したいのですが、このGFSマストドンが生きていた時代には、ゴンフォテリウム科は少し小型だったのですか?
それだけが気になりました。
お久しぶりです。
マストドンは氷河期を最もよく象徴する動物の一つですが、
マストドン科の進化史については北米のみならず他大陸においてもほとんど解明が進んでいないので、
グレイ地層での発見は計り知れないほどの重要性があると思います。
ただ、その全貌が判明し尽くしているとは到底言えませんし、
記事に述べたごく皮相的な情報以上のことは、述べられませんが。
Widga教授率いるETSU研究チームの、今後の調査進展を待つ必要があります。
中新世から鮮新世頃の北米南東部といえば、アメベロドン科
(長鼻類分類上の'waste busket'であると批判されてきたゴンフォテリウム科の分類整理が進んでおり、
現在、アメベロドンの仲間がゴンフォテリウム科に含まれることはありません)
が繁栄していたことが知られますよね。グレイからはアメベロドン科の化石は出ていませんが、
恐らく分布していたと思います。
グレイ固有のゴンフォテリウム科の種類も知られているようですが、各種のサイズについてはどうでしょうね、把握していません。
GFSマストドンは超大型種といえますから、これにサイズ的に比肩できるような種類は、なかったと思われます。
個人的に、GFSマストドンと後代のアメリカマストドン、および、
同時代ユーラシア産のボルソンマストドンとの系統上の関係性について、興味があります。
ゴンフォテリウム科は見つかっているんですね。
ところで、アメリカマストドンにあるとされる長い体毛はこのGFSマストドンに起源がある可能性はありますか?
気になったので質問してみました。
更新世のアメリカマストドンはある程度の体毛を有していたでしょうが、
従来の復元にみられるような密で分厚い体毛であったかというと、その説に根拠があるわけではありません。
Larramendi(2015)の'Shoulder height, body mass and shape of proboscideans'の中に、
アメリカマストドンを含む長鼻類の体毛について詳細な考察があります。