2月5日・水曜日
ここまで必死になって書いてきた。壊れた惠子のことを書くのはつらい。
しかし、何も言わないのは、もっとつらい。
すべてが折れそうになる。砕けそうになる。歯を食い縛って記してきた。
そして、今日の出来事を書くのはこれまで以上につらい。
でも、続ける。
惠子は私の太陽だった。そして、おんぶにだっこ、すべて彼女まかせだった。
二人での海外旅行。その手配もアテンドも惠子の仕事。
ビジネスでの切った張ったも惠子。
彼女は太陽。それを軌軸に、私たちの宇宙は動いていた。
その太陽が、突然、壊れた。沈んだ。
生活のひとつひとつが、すべが軌道を逸脱しはじめた。
突然、惠子が顔をゆがめ、
一人、声を押し殺して泣いていることが多くなった。
当初は知らぬ振りをしていた。
ポール・マッカートニーのコンサート見ていて、泣き出す。
どうした?手を握って言う。私はもう歌えなくなった。
過去に伝説のロックのライブ・ステージを演じたことのある惠子。
唇をかみしめさめざめとなく。
事務所で一人だと、三日前のコーヒーをわかして飲んでいるというと、
可哀想と泣く惠子。
話せない。歩けない。私は直るのだろうか。不安に襲われるのか、
突然涙を膨らませる。ぬぐおうともせずに一点を見つめている。
情緒不安定、この上なし。
こんな体で生きている価値があるのか。意義があるのか。などと言い出したら…。
私には説得する言葉がない。すべがない。
もうやめよう。はい、今日は、おわり。