70の瞳

笑いあり涙あり、36人の子どもたちが生活する児童養護施設「さんあい」の出来事や子どもと職員の声をお聞きください。

さよなら、トカ(再掲) その4

2015-09-11 10:00:00 | 愛すべき子どもたち

「ト、トカー。」わたしは叫んだ。なぜかもうトカとしゃべるのが最後かのしれないと思ったから。「ト、トカ。どうして? 私たち友だちなんだよ。ねーってばー、ねー。」

 「ハミー来てくれたんだね。

「あたりまえでしょ。」

 「ありがとう、うれしいよ。おかげで食べられずにすんだよ。」

「ねぇ~、どうして何もいわずに行ったの、どうして?」

 「それは、ハミーを守りたかったから。」

「えっ。」

 「あのねー、ハミーの家の近くでうわさ、いや事件があって。」

「えっ、なんの事件?」

 「それは、、、ヘビにかまれて人が死んじゃう事件。だからヘビのすみかに行って、ヘビ

を押さえつければ、きっとハミーの家にヘビはこないから。」

「ト、トカー。」

 「どうしたのハミー。」

「わたし知らなかった。」

 「大丈夫だよ。」

「トカ」

 「ぼくハミーが大好き。」

「トッ、トカー。」

 「大好きだから、守りたい。だってハミーは、ぼくの、ぼくの、大切な友だちだもん。」

「はっ、はっ、トカー。」わたしは泣いていた。こんな結末なんか望んでいない。なのに。

 「あの、ハミー、約束しよう。

「何を?」

 「ずっと友だちだちってこと。」

「うん。ぜったい、ぜったい友だち。」

「あのね、ひとつ言いたいことがあったの。」

「なに?」

「ありがとう。」

「わたしも、、、、トカ。」わたしは気づいていた。目をつむり冷たくなっていくトカを。

「トッ、トカー!」わたしは叫んで泣いた。つらいというか、悲しい。トカ。わたしが泣いていると虫さんたちがやってきた。

 「トカは無地か?」

「トカが死んじゃった。」

 「えっ!」

「守れなかったトカを。」

 「・・・・・」

「トカ~~」わたしは泣き続けた。その場でずっとずっと、、、。

 

そして新しい夏がきた。

トカを思い出しては祈り、またトカに会いたいと願った。

また会えたら、こういいたい。

「ありがとう。」と、そしていっしょに曲つくりたい。

 

 ===終わり

深谷市のゆるキャラ「ふっかちゃん」大好き!

 


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
会えなくても友達もそういう気持ちも大切にしたいね (juju)
2015-09-11 16:51:22
いい話です。小説だけじゃなく絵本になったら尚更かな?と想像出来ました。
返信する

コメントを投稿