道しるべ
除々に灼熱化する地球のかたすみ。澄んだ水の流れる谷合に、建売住宅が並んでいた。一軒の民家だけが、特殊な波動を発信している。世界を救うための秘密実験基地、ギャラリースタンプだ。目を凝らせば、そこはジャングル。
10台ほどのモニターに、ビデオ映像が流れている。「おじさん、おばさん、危ないよ! さあ、手を繋ごう」。「ここは向こうの向こうの、そのまた向こうの今、ここなのだ!」。「おれの形よ、永遠なれ!」。「わたし達は、生き延びる!」。
・・・事物は、人は、どのように「自」であるのか? ・・・どうしたら「他」と重なり合えるのか? ・・・隙間をもてるのか? ・・・「存在」とは、どのような現象なのか?
映像は惑星の歴史を繰り返し流しているが、会場は廃墟。室内には、さまざまな「絵」や「文字」が取り残されている。唸るような、呟くような声も聞こえる。気配のインスタレーション。だが、人類は死滅している。かつてメディアは魂を奪い去る装置であった。研究者 泉太郎は、あえてそれらを用いて奪われた魂の所在を確かめている。万物の関係性を、そして時の流れを変換しようとしている。
泉氏に質問した。「****、ですか?」。彼は目を上に向けた。指令が出ているのだ。「相手の顔を見るな。両目、上を向け!」。彼の手はオレを握りつぶしていた。喜ぶべき事だ。敵ロボットは、叩き潰せばいい。けれど次の瞬間、彼は前を向いて真っ直ぐに答えた。やはり目の前はジャングル、現代という迷路なのだ。
彼はひたすら研究を重ねている。緻密な探索を続け、その営為を作品として提示する。ロボット達は、そこに魂を認知し、笑い・怒り・悩み始めるだろう。やがてシステムが完成すれば、泉太郎は神になる。マシンの電子回路は喜びの火花を散らして遮断され、新たな命が誕生するに違いない。これはそんな、未完成でなければ成立しない、無垢でひたむきなアートである。・・・今のところ。
*************
泉太郎展 「ジャングルブック」 は 7月27日(日) まで、
鎌倉 十二社 の Gallery Stump Kamakura で、 開催されています。
※ 13:00 ~ 20:00
http://stump2.sakura.ne.jp
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2008-07-25 11:45:17 up
除々に灼熱化する地球のかたすみ。澄んだ水の流れる谷合に、建売住宅が並んでいた。一軒の民家だけが、特殊な波動を発信している。世界を救うための秘密実験基地、ギャラリースタンプだ。目を凝らせば、そこはジャングル。
10台ほどのモニターに、ビデオ映像が流れている。「おじさん、おばさん、危ないよ! さあ、手を繋ごう」。「ここは向こうの向こうの、そのまた向こうの今、ここなのだ!」。「おれの形よ、永遠なれ!」。「わたし達は、生き延びる!」。
・・・事物は、人は、どのように「自」であるのか? ・・・どうしたら「他」と重なり合えるのか? ・・・隙間をもてるのか? ・・・「存在」とは、どのような現象なのか?
映像は惑星の歴史を繰り返し流しているが、会場は廃墟。室内には、さまざまな「絵」や「文字」が取り残されている。唸るような、呟くような声も聞こえる。気配のインスタレーション。だが、人類は死滅している。かつてメディアは魂を奪い去る装置であった。研究者 泉太郎は、あえてそれらを用いて奪われた魂の所在を確かめている。万物の関係性を、そして時の流れを変換しようとしている。
泉氏に質問した。「****、ですか?」。彼は目を上に向けた。指令が出ているのだ。「相手の顔を見るな。両目、上を向け!」。彼の手はオレを握りつぶしていた。喜ぶべき事だ。敵ロボットは、叩き潰せばいい。けれど次の瞬間、彼は前を向いて真っ直ぐに答えた。やはり目の前はジャングル、現代という迷路なのだ。
彼はひたすら研究を重ねている。緻密な探索を続け、その営為を作品として提示する。ロボット達は、そこに魂を認知し、笑い・怒り・悩み始めるだろう。やがてシステムが完成すれば、泉太郎は神になる。マシンの電子回路は喜びの火花を散らして遮断され、新たな命が誕生するに違いない。これはそんな、未完成でなければ成立しない、無垢でひたむきなアートである。・・・今のところ。
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泉太郎展 「ジャングルブック」 は 7月27日(日) まで、
鎌倉 十二社 の Gallery Stump Kamakura で、 開催されています。
※ 13:00 ~ 20:00
http://stump2.sakura.ne.jp
2008-07-25 11:45:17 up