タイトル 「勇子とカラーモジョ」
ここは小学校の裏門からそう離れていない細い路地、ここに電脳ペットを売る違法露天商が現れて3日目になる。
小学生の間では、この露店で売られている様々な色付きの電脳ペットが、お年玉換算の50分の1で買えるとあって、ちょっとしたブームになっていた。
そして5日目。電脳警察の調査が入っていることを、露店商の主人は永年の勘で察知するのだった。
「おおきになー。ふぅ、ぼちぼち、この辺で店を閉めるか。 んっ?」
「お嬢ちゃん今日も来たのかい?」
「・・・」
「おじちゃんな、そろそろ別の小学校に行かんとあかんねん。」
「えっ。」
「こう見えても、あちこちから呼ばれて忙しいんやで。」
「次はどこいくの?金沢三小?兼六小?」
「もっと遠い外の県や。」
「ふーん。」
ツインテールの女の子はお客さんが来る度に遠巻きに様子を眺め、お客が去ると露店に近づいて、電脳ペットをただ見つめる事を繰り返していて、2日目から露天商の主人に顔を覚えられていたのだった。
(ポツポツ)「あ、雨か。早く畳まないと。ちょ、ちょっと、お嬢ちゃんスカートまくって何してんねんな。」
「雨に濡れてかわいそう。」
「これは電脳ペットだから大丈夫やで。」
「そう・・・。」
「お嬢ちゃん、そんなに電脳ペットが好きなんか?」
「・・・うん。」
「じゃあ持って帰るかい?」
「ほんとに?」
「ああ、1匹だけどあげるよ。」
「あっ。でも、お金が無いし、それにペットを見られたらママに怒られちゃう・・・。」
「じゃあこの子ならおとなしいから、あんまり鳴かないし、きっとおとなしくしててくれるよ。」
そう言うとおじさんは、仲間に踏み付けられて弱っていた、深緑色の一番小さな電脳ペットをゆう子にあげたのでした。
「ありがとう。わぁ、暖かくてふわふわだ。あ、お金は?」
「そんなもんいらへん。その代わり大事にしたってぇな。」
「うん。 あ、寝ちゃった。」
「きっとお嬢ちゃんの手に包まれて安心したんやな。」
「わぁ、かわいいなぁ。」
「おーい、ゆう子。」
「あ、お兄ちゃん。」
「ゆう子探したぞ。ほら、雨が雪になる前に帰るぞ。」
「ねぇ、見てこれ。」
「どうしたんだい、それ。」
「あのおじちゃんにもらったの。」
「お金は?」
「いいって、いいって、気にせず持って帰りな。」
「え、いいんですか?」
「あぁ、毎日来てくれたお礼だ。(さくらになってくれたしな)」
「ゆう子。じゃ、お礼を言って。」
「いいから、いいから、早く帰んな。」
「あ、ありがとうございます。」「ありがとうございます。」
おじさんはさっと露店を片付け、くわえタバコを吐き捨てると、近くに停めてあった軽のバンで走り去っていきました。
「そういえばあの子、メガネ掛けて無かったよなぁ・・・。まっ、いいか。」
「おにいちゃん。この子ね、モジョっていう名前にする。」
「モジョか、かわいい名前だね。」
それから5日後。持って帰った電脳ペットは、コタツの中の小さな菓子箱の中で短い生涯を終えたのでした。
同様に他の子供たちが買ったカラーの電脳ペットも、ほとんどが長生きすることはありませんでした。
勇子は命の暖かさと儚さを知るとともに、少しだけ世の中の仕組みを知るのでした。
以上
これは、私が小学生だった頃、よく小学校に近い路地裏で売られていた、 カラーひよこ の思い出話です。
他にも肝油ドロップとか、おがくずの中に入ったカブトムシのサナギなど、訳の分からないものが、なぜかこっそりと売られていたのを覚えています。
電脳メガネの世界になっても、多分、そんなペットや裏モノを売る人も現れるんじゃないかと想像してみました。
そう遠くない未来に、リアリティのある電脳ペットも発売されると思いますが、子供達にちゃんと命の大切さが伝わる商品であって欲しいです。
それでは、えーっと、電脳コイルの原作も、もう読んじゃいましたけど、まだ、読んでいない人のために、ネタばらしは次回以降のお楽しみに。
原作が出てもネタが尽きないので、まだまだ考察はやりますよー。
話数:NO DATA
ネタ属性:妄想小説
キャラ:勇子,信彦,モジョ,露天商
バージョン:5.16
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