NPO法人 三千里鐵道 

NPO法人 三千里鐵道のブログです。記事下のコメントをクリックしていただくとコメント記入欄が出ます。

韓国の国会議員総選挙-野党か勝利する道は?

2016年01月24日 | 三千里コラム

労働法の改悪阻止とゼネスト決起を訴え行進する民主労総(1.23,ソウル駅前)



4月13日、韓国では第20代国会議員総選挙が実施されます。1月22日の時点で各党の議席数は以下の通りです。与党「セヌリ党」157、「トブロ民主党(以下、民主党)」110,「正義党」5,「無所属」20。無所属のうち15人は、アン・チョルス氏をはじめ、民主党を離党し「国民の党」結成(2月2日に創立大会)を準備している議員たちです。

李明博・朴槿恵と保守政権が続くなか、韓国の民主主義は大きく後退しました。また、自殺率や老人の貧困率、最低賃金に満たない勤労者の比率などにおいて、韓国は「経済協力開発機構(OECD)」加盟国の中で第一位を占めています。青年失業率の高さや非正規職勤労者の比率も、世界のトップクラスです。金大中・盧武鉉政権期に導入された新自由主義の経済政策が、保守政権の下で更に深化したことで韓国は極端な格差社会となりました。昨年の統計によれば、上位1%の階層が国富の26%を占めています。上位10%に拡大すると、その占有率は66%になります。

4年前の総選挙と大統領選挙で、「経済の民主化」が最大の争点になったのは当然のことでした。富の公正な分配と福祉の拡大を要求する有権者に対し、最も熱弁をふるったのがセヌリ党と朴槿恵候補です。過ぐる4年の間、与党と大統領が掲げた「経済民主化」の公約は死文と化して久しく、もはや誰も省みようとはしません。ところが、政権交代を求める声はまだ、多数世論とはなっていないのです。『韓国ギャロップ』が1月22日に発表した世論調査結果によると、各政党別の支持率は「セヌリ党」38%、「民主党」19%、「国民の党」13%、「正義党」3%の順です(支持政党なし:26%)。一方、朴槿恵大統領への支持率は39%(先週に比べ4%の下落)、不支持率は49%となっています。

多数の市民は現政権に不満を抱いていますが、現存の諸野党に次期政権を託すだけの期待や希望を持てないようです。3野党が連帯し候補を一本化しても、ようやく与党に対抗できるレベルなのです。しかし、市民が切望する社会改革への展望を、どの政党もまだ、公約として提示していません。“新しい政治”を掲げて政界入りしたアン・チョルス氏は、イメージだけが先行しています。「民主党」を離党して結成する「国民の党」も“中道路線”を志向するそうですが、「改革なき中道」は「保守」の別称に過ぎません。世論調査の推移を見ると、「国民の党」に対する旗揚げ当初の期待値が徐々に下降しています。参考までに、昨年11月から12月にかけて開催された民衆決起大会に、アン・チョルス氏は一度も顔を見せていません。彼と行動を共にした議員たちも、殆どが“過激な行動”を批判する側に立っています。

1月19日、こうした現状を憂い、次期総選挙での勝利と民主主義の回復を目指す市民たちが声を上げました。野党勢力に連帯と団結を訴え、仮称「フォーラム、再び民主主義を!」の結成を呼びかける集会が開かれています。以下に、20日付『オーマイニュース』の記事を要訳します。(JHK)


「今回の総選挙は民主主義と傲慢な権力、経済正義と経済独占の戦いです。大韓民国の未来のために、平和統一と民主主義を渇望する国民が必ず勝利しなければなりません。それは野党勢力の連帯なしには不可能です」。1月19日午後2時、ソウル市中区のフランチェスコ教育会館で開催された「フォーラム、再び民主主義を!」の結成に向けた集いでの発言だ。

野党の分裂によって総選挙の惨敗が予想される状況で、かつて民主化運動に献身した各界の元老たちが再び集まった。宗教、文化芸術、言論、学者、農民、労働、女性、法曹、市民運動の各分野から、166人の人士が野党勢力の連帯による候補一本化を主張したのだ。

呼びかけ人の一人であるハン・ワンサン元副総理は、「韓国の民主主義が再び絶壁に立っている」と現政局を診断した。『茶山(タサン)研究所』(茶山は丁若の号:訳注)のパク・ソンム理事長も、「茶山先生は200年前に、悪政を行う統治者は民衆が起ち上がって権座から引きずり降ろさねばならないと教えた。専制君主の時代にはそうしたが、民主主義の社会では引きずり降ろす方法が選挙しかない。国民の力で総選挙に勝って、政権交代を実現しなければならない。こんな暴政の下で、どうして暮らせようか!」と発言した。

『全国挺身隊問題対策協議会』のキム・ソンシル代表は、「慰安婦問題の外交で惨憺な結果をもたらした朴槿恵政権を交代し、新しい社会を作らなければならない。そのためには国民の行動を促すしかない。国民の心に訴えて民主主義を回復しよう!」と強調した。

ハム・セウン神父は閉会辞で「民主化の元老、市民社会、野党などすべての人たちが結集し、野党候補を一本化して与党に対抗しよう。国民に希望を提示しよう!」と訴えた。ハム神父は、2月4日午前10時に国会憲政記念館で開かれるフォーラムの出帆式に、野党の各代表を招請する計画だと明らかにした。

また、人権運動家のパク・ネグン氏から「金大中・盧武鉉政権の失敗を克服し、新しい民主主義を志向すべきだ。過去への回帰を意味する‘再び民主主義を!’という名称は再検討すべきだ」との指摘があった。提案者の中からも「正しい指摘だ。現在の名称は仮称であり、名称の論議は常に開かれている。望ましい名称を考えて行こう」との意見が表明された。

以下の内容はフォーラム提案者の一人、『自由言論実践財団』キム・ジョンチョル理事長のインタビューである。

「韓国は今、総体的な絶望状態に陥っている。政治、経済、社会文化、言論など全てのものが崩壊している。大統領府が立法権を侵害し与党の院内代表を追い出す韓国は、民主国家でなく専制国家だ。正常な民主国家なら辞退したり弾劾されて当然の当事者(朴槿恵大統領)が、反省どころか長期政権を目論んでいる。来年の大統領選挙で政権交代を実現できなければ、日本の自民党のように守旧・保守勢力が国家を支配することになる。これが恐ろしい。」

-与党の長期執権体制を阻止するためにフォーラムを結成するのか?

「朴槿恵とセヌリ党の長期政権を防ぐためには、第2の民主化運動が必要だ。民主化運動の元老だけでなく、50代、40代、30代、そして20代の学生たちまで一つになって、野党が連帯するように圧迫しなければならない。政治の指向において差異があっても、アン・チョルス新党と正義党など野党勢力が連帯して、国民による公認と推薦を通じて野党候補を一本化し、セヌリ党と1対1で戦う総選挙構図を作るべきだ。全野党を網羅した「共同選挙対策委員長体制」を作って国民公認などができるように、私たちのフォーラムが影響力を発揮するようにしたい。」

-歴史の転換は青年たちが起ち上がってこそ可能だった。現在、大多数の青年は政治や現実問題から目を背けている。動力である青年の無関心が憂慮される。

「李明博・朴槿恵政権は、若者たちを政治や現実問題に無関心な世代に作り上げた。就職活動とアルバイトに没頭するしかないので、恋愛、結婚、出産、幸福な家庭など、人間らしい未来を放棄せねばならない世代が生み出されている。そうした自暴自棄の若者たちが憤っている。いつか若者たちは目覚め、起ち上がるだろう。若者の絶望が自身の能力不足が原因ではなく、悪しき政治がもたらしたものだと悟り団結するだろう。私たちの民族史をふり返ってみよう。東学農民革命と3・1独立運動、1960年の4月革命と80年の5月光州抗争、87年6月の民主化抗争など、民衆が起ち上がって歴史を変えた。私たちには民主化の潜在力がある。」

-権力による不正選挙にどう対処するのか。メディアの否定的な役割も憂慮される。

「李明博・朴槿恵政権は不正選挙を通じて登場した。来年の大統領選挙でも、不正が起きる可能性はある。野党の分裂と与党の圧勝、そして長期政権を主導するのは、李明博・朴槿恵政権が掌握した言論である。李明博・朴槿恵政府が掌握した言論と公営放送が野党の分裂を助長しており、国民は野党に対して冷笑的だ。進歩的な言論さえも、野党の分裂を興味本位に報道する場合がある。遺憾なことだ。自主的な言論と独立したメディアが、連帯を通じて洗脳された国民を目覚めさせ、保守的な言論に対抗しなければならない。これまでのどの選挙よりも、言論の役割が大きい。」

-野党の候補一本化は可能だろうか? 朴槿恵政権への、鉄壁とも言える支持率を越えることができるだろうか?

「野党勢力の連帯によって候補一本化に成功すれば、40%の支持率を回復することができるだろう。確かに、朴槿恵大統領とセヌリ党は40%台の“コンクリート支持率”を誇っている。だが、総選挙の勝利と政権交代へのカギは、中間地帯にいる20%台の主権者が握っている。アン・チョルス新党をはじめとする野党が連帯して候補一本化を成し遂げることで、民主主義と政権交代に対する確信を与えることができれば、中間地帯の主権者たちが移動するだろう。墜落した大韓民国を救い苦しむ国民を蘇生させたいのなら、野党候補の一本化を推進して国民に希望を与えねばならない。」