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三千里コラム-首席代表の「格」をめぐり、南北当局会談が中止

2013年06月12日 | 南北関係関連消息

キム・ヤンゴン朝鮮労働党統一戦線部長



12日にソウルで開催が予定されていた南北当局会談が、首席代表の「格」をめぐる異見を解消できず、中止となりました。

 北側はカン・ジヨン祖国平和統一委員会事務局長を団長に、南側はキム・ナムシク統一部次官を首席代表として名簿を交換しましたが、北側は南側首席代表が直前になって長官から次官に格下げされたことを理由に、会談保留の立場を表明したのです。

 前回の記事で紹介したように、南北当局会談を準備する実務接触で双方は、議題と首席代表の人選をめぐって17時間ものマラソン協議を続けたものの、合意には至りませんでした。
 
 首席代表をめぐる対立は、南が統一部長官のパートナーとして北に労働党統一戦線部長を指名し、合意文に明記するよう要求したことが発端でした。北は南北長官会談の慣例にないこととしてそれに応じず、結局それぞれ別途の発表文を出したわけです。

 南の発表文は「南側首席代表は南北問題を責任を持って協議・解決できる当局者」、北の発表文は「北側団長は相級当局者とする」となっています(原文の「サン」は「上」ではなく、長官を意味する「相」。日本のメディアが上級担当者と表記しているのは誤読)。当局会談の前日に、南が首席代表を次官に格下げしたのは、北がキム・ヤンゴン統一戦線部長を派遣しないと判断したからでしょう。

 朴槿恵政府の統一部は「現時代に相応しい、南北会談の新たなルール」を目指しているそうです。しかし、5年ぶりに再開する南北長官会談で相手側の首席代表を指名し、「受け入れなければこちらも格下げする」との姿勢が果たして賢明だったのか、疑問を抱かざるを得ません。

 イ・チェジョン元統一部長官はこの点に関し、「我々がこれまで、北に誰それを首席代表にと指名したことはない。そんな要求を出して会談が成功するだろうか。逆の立場で考えるべきだ」と述べ、「政府の無礼」と指摘しています。

 個人的もしくは社会的な関係で、「格が違う」という言葉を用いるのは、相互のレベルに圧倒的な「格差」が存在する時ではないでしょうか。今回の決裂を見ると、南北の首席代表に極端な「格差」があったようには思えません。相互理解の精神があれば、充分に受容できる想定内の「格差」でした。

 南北対話ではこのように、しばしば「格」の問題が浮上します。ただ、南北関係が複雑でややこしいのは、双方の政治制度と社会体制が違うために、職位の「格」を比較するのが容易ではないからです。

 これまでの南北長官会談で、南は統一部長官、北は内閣の責任参事が首席代表でした。北の内閣責任参事は、南では無任所長官に該当します。聞きなれない職位ですが「格」にこれといった問題は生じませんでした。

 今回、南が北の労働党統一戦線部長を指名したことは、二つの点で違和感を与えます。まず、いかに北が党中心の体制とはいえ、政府当局間の対話で労働党の対南責任者を指目したことです。筋違いといえるでしょう。もう一つ、より重要な「格」の視点です。北の統一戦線部長は、決して南の統一部長官と「同格」ではありません。労働党の統一戦線部は、南の統一部と国家情報院を兼ねています。強いていうなら、副総理レベル(それも筆頭)の職責です。

 ただ、南の立場も理解できる側面があります。北の祖国平和統一委員会書記局長が、南の長官格ではないという不満です。南の基準で見れば、書記局長は統一部長官より下位の職位といえるでしょう。しかし、複雑なのはこの職位が、北では南の統一部次官よりも上位格だという点です。

 長期に渡る分断の歳月は南北に異なる体制を定着させ、双方に同格・同級の職責が存在することを困難にしました。この現状を冷静に直視し、相互の体制を尊重する立場で出発するしかありません。今回、南北当局間の交渉過程を見ていると、双方の不信感と対決意識の根深さに、今更ながら分断の過酷さを思わずにはおれません。

 南北の当局は互いに、会談を実りあるものとする努力よりも、相手の機先を制し対話での主導権を握るために力量を費やしているように見えます。せっかくの機会を無にしてはならず、南北海外同胞の統一願望に応えるためにも、速やかに対話再開への決断を下すべきです。

 無意味な「格」論争に時間と労力を消耗するべきではありません。
 いま必要なのは、会談の「格」ではなく、南北間の和解・協力と平和統一に対する当局者(最高指導者を含め)の強い意志です。 (JHK)

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
でも、悲しみ苦痛は消えない (chongfa)
2013-06-13 11:14:51
いつの日か帰らむ 故里へ
統一なりし我らの祖国へ
友よ ともにーーーーーあの頃は帰れると信じていた


どうせ、私は亡国の民
南にも北にも住めない身です
もはや迎えてくれる
人もない
夜ごと飲む酒あびる酒
せめて 今宵は
夢で逢いましょう
父母よ兄弟よ姉妹よ
ーーー―お酒も飲めない身になりました


あなたにも私にも明日がある
確かなものなど見えないけれど
朝のない夜 ないという
それを信じて
夜明けまで
われらの真実
詠おうよ

われらの夢を謳おうよ
われらの統一歌おうよ
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おり込み済み (sangtae)
2013-06-13 10:40:16
会わなくてそっぽ向くより、会って争うことがいい。
どちらにしても必要としている相手だから。
夫婦生活50年近くもなると、怒りも通じなくなる。
多少の認知症もいいものだ。
よたよた歩く妻に、どこへ行けと言えるのか。
南北に対し、海外にいる我々は、我々のためにも、できることはないのか。
一喜一憂することはない。
まず、戦争がなければいい。
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無題 (朴容民)
2013-06-13 04:27:26
天よ

我が祖国が統一して何が悪いのか
一体、誰が損をするというのか
一体、誰が悲しむというのか

もういいじゃないか…

細かい事は後で考えればいいじゃないか…

心配はいらないよ
きっとうまくやれるさ
南も北も空の色は同じ

急ごうよ。

日が暮れてしまってからでは厄介だ…

統一地図のインクが消えないうちに

臨津江の流れが変わらぬうちに


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《保留》通達を、《中止》と歪曲報道 (檀倍達)
2013-06-13 00:42:56
日本のマスコミは問題外としても韓国のマスコミもこの真実に対しての過程を知らないようで一方的な先入観と想像の範囲で記事を書いています。新聞記事というよりも小説の領域のようです。
そんな中、統一ニュースのデスクブリーフィング(社説)( http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=102915 )が客観的かつ適切な記事を載せています。
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恥ずかしくもある (maneappa)
2013-06-12 20:42:52
残念な結果でした。
それにしても、さすがのJHKさんですね。
どういう見方をするのが良いか、すごく勉強になります。
いつもありがとうございます。
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言葉が出ない (chongfa)
2013-06-12 19:29:04
情けなくて、言葉が出ません。
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