劇症 1 型糖尿病は細小血管障害の高リスク群である: 日本における国レベルの 5 年間の観察研究
Diabetologia 2007; 50: 531-537
目的・仮説
本研究の目的は、1B 型糖尿病の新しいサブタイプである劇症 1 型糖尿病患者における微小血管症の発症を評価することである。
材料と方法
全国的な調査において、劇症 1 型糖尿病患者 41 人と年齢・性別が一致した 1A 型糖尿病患者 76 人を 5 年間追跡した。
糖尿病発症後 12 ヵ月ごとに以下のデータを記録した:7 点血糖値、HbA1c 値、尿中アルブミン排泄量、血清 C-ペプチド値、血圧、1 日のインスリン投与量、重症低血糖エピソードの頻度、神経学的検査および眼底検査。
結果
微小血管症の 5 年累積発症率は,劇症 1 型糖尿病で 24.4%,1A 型糖尿病で 2.6%であった。
Kaplan-Meier 法による縦断的研究では、各微小血管症の累積発生率は 1A 型糖尿病よりも劇症 1 型糖尿病で有意に高く、それぞれ網膜症 9.8%対 0%(p = 0.014)、腎症 12.2%対 2.6%(p = 0.015)、神経障害 12.2%対 1.3%(p = 0.010)であった。
HbA1c の平均値は追跡期間中、劇症 1 型糖尿病群と 1A 型糖尿病群で同等であった。しかし、平均 M 値、平均インスリン投与量、重症低血糖エピソードの頻度は劇症 1 型糖尿病群で有意に高く、平均食後 C-ペプチド値は劇症 1 型糖尿病群で有意に低かった。
結論/解釈
これらのデータは、劇症 1 型糖尿病患者は糖尿病発症からの内因性インスリン分泌の欠如に関連した糖尿病性微小血管症のハイリスクサブグループであることを示唆している。
所感
劇症 1 型糖尿病の細小血管障害の頻度はおそろしく高い。HbA1c の値については急性発症 1 型糖尿病と差がないこと、劇症 1 型糖尿病の方がインスリン使用量が多く、低血糖が多いことから推測すると、劇症 1 型糖尿病の方が低血糖が多いことが細小血管障害が多い原因になっているのかもしれない。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17235525/