糖尿病性足潰瘍
JAMA 2023; 330: 62-75
なぜ重要なのか?
世界中で毎年約 1,860 万人が糖尿病性足潰瘍 (diabetic foot ulcer) に罹患しており、そのうち米国では 160 万人が罹患している。これらの潰瘍は、糖尿病と診断された人の下肢切断の 80%に先行し、死亡リスクの上昇と関連している。
要約
糖尿病性足潰瘍には神経学的、血管学的、生体力学的要因が関与している。潰瘍の約 50-60%が感染し、中等度から重度の感染の約 20%が下肢切断に至る。糖尿病性足潰瘍を有する人の 5 年死亡率は約 30%で、大きな下肢切断 (major amputation) に至った人では 70%を超える。糖尿病性足潰瘍のある人の死亡率は 1000 人年当たり 231 人であるのに対し、足潰瘍のない糖尿病患者の死亡率は 1000 人年当たり 182 人である。黒人、ヒスパニック系、ネイティブアメリカンの人々や社会経済的地位の低い人々は、白人に比べて糖尿病性足潰瘍やその後の切断の割合が高い。
潰瘍を組織喪失、虚血、感染の程度に基づいて分類することは、四肢を脅かす疾患のリスクを特定するのに役立つ。いくつかの介入は、通常のケアと比較して潰瘍のリスクを減少させる。例えば、圧迫を緩和する履物(13.3% 対 25.4%; 相対リスク: 0.49;95%信頼区間: 0.28-0.84)、ホットスポット(すなわち、罹患した足と罹患していない足の間に 2℃ 以上の温度差がある)が発見された場合に免荷を行いつつ足の皮膚評価を行うこと(18.7% 対 30.8%;相対リスク: 0.51;95%信頼区間: 0.31-0.84)、潰瘍前病変の治療などである。
外科的デブリドマン、潰瘍への免荷、下肢虚血と足感染症の治療が糖尿病性足潰瘍の第一選択治療である。ランダム化臨床試験では、創傷治癒を促進する治療や限局性骨髄炎に対する培養結果に基づく経口抗生物質が支持されている。
通常、足病医 (podiatlist)、感染症専門医、血管外科医がプライマリケア医と緊密に連携して行う集学的治療は、通常の治療と比較して大きな下肢切断に至る頻度が低い(3.2% 対 4.4%;オッズ比: 0.40;95%信頼区間: 0.32-0.51)。糖尿病性足潰瘍の約 30-40%は 12 週で治癒し、治癒後の再発は 1 年で 42%、5 年で 65%と推定される。
結論
糖尿病性足潰瘍は世界中で毎年約 1,860 万人が罹患しており、切断や死亡率の上昇に関連している。外科的デブリドマン、体重負荷による圧迫の軽減、下肢虚血と足感染症の治療、そして早期からの集学的治療への紹介が重要である。
1. はじめに
糖尿病性足潰瘍 (diabetic foot ulcer: DFU) は世界で 1,860 万人が罹患しており、米国では毎年 160 万人が発症している。 DFU は身体機能の低下、生活の質の低下、医療機関利用の増加と関連している。治療されないと、足潰瘍は軟部組織感染症、壊疽 (gangrene)、下肢喪失に進行する。
DFU 患者のおよそ半数が末梢動脈疾患を合併している。また、およそ 50%が感染をともない、そのうち最大 20%が入院治療が必要になる。中等度-重症の感染のうち 15-20%が最終的に下肢切断 (lower extremity amputation) に至る。
DFU 患者の 5 年死亡率は 30%、足よりも高位の下肢切断を行った患者では >70%にもなる (…!)。DFU の治療に直接かかる費用は米国では年間 90-130 億ドルと推計されている。
本総説は DFU の疫学、病態生理、診断、治療、予防についての最近のエビデンスを総括する。
2. 疫学
世界で 5 億 5000 万人、米国で 3700 万人が糖尿病に罹患している。世界では毎年 1,860 万人の糖尿病患者が足潰瘍を発症している。1 型または 2 型糖尿病患者の最大 34%が生涯のうちに足潰瘍を発症する。
DFU 患者のおよそ 20%が小さな (足の一部)あるいは大きな (足関節より高位) な下肢切断に至る。感染や進行性壊疽が下肢切断の主な原因であり、DFU のおよそ 50%は感染をともなう。DFU 患者の最大 20%は入院が必要となり、入院患者の 15-20%は下肢切断に至る。
米国では、毎年 15 万例の非外傷性の下肢切断が糖尿病患者において行われている。世界では、毎年 およそ 160 万例の下肢切断が行われている。そのうち 33%は足関節より高位の切断である。
米国では糖尿病関連の足合併症における不公平が一般的である。メディケア受給者 (総数 92,929 名) で新規に糖尿病性足潰瘍または糖尿病性足感染症と診断されたものにおいて、大きな下肢切断を受ける長期的な割合は非ヒスパニック系黒人で 3.8%、人種を問わないヒスパニックで 2.1%、ネイティブアメリカンで 5.1%とメディケア受給者の非ヒスパニック系白人の 1.5%と比較して高かった。
非ヒスパニック系黒人と人種を問わないヒスパニック系の人々では、初診時に糖尿病性足潰瘍および末梢動脈疾患が特に進行しており、下肢の血行再建を試みられることなく下肢切断が行われていた。
メディケア受給者 (総数 643,287 名) において、非ヒスパニック系黒人は非ヒスパニック系白人と比較して糖尿病性足潰瘍と診断されてから 1 年以内に下肢切断に至るオッズ比は多因子で調整後も 2倍高かった (オッズ比 [odds ratio: OR] 1.98, 95%CI 1.93-2.03; P <0.01) 。
さらに、糖尿病性足潰瘍は社会的地位が低く、田舎に住んでいる人に人口比率から予測されるよりも多かった。たとえば、カルフォルニアにおいては、有病率で補正した糖尿病患者における下肢切断の割合は低所得地域は高所得地域の 2 倍だった (割合の絶対値については報告がない)。
田舎に住んでいる糖尿病患者では、大都会に住んでいる糖尿病患者に比較して大きな下肢切断を受ける可能性が社会地理的および医療的要因で調整後も高かった (1 年あたり 3.4% v.s. 2.4%, 調整後 OR, 1.56; 95%CI 1.48-1.65) 。
大きな下肢切断または死亡の割合は田舎に住んでいる非ヒスパニック系黒人の糖尿病患者で高かった (28.0% v.s. 18.3%, 他の田舎に住んでいる糖尿病患者との比較)。
あるメタ分析では、DFU 患者における粗死亡率は 231/1000 人であり、足潰瘍がない糖尿病患者では 182/1000 人だった。66,323 名の DFU を発症した退役軍人を対象にした研究では 3%が壊疽となり、DFU に壊疽を合併した患者では脳血管疾患、心血管疾患、腎臓病で調整した後も死亡率が上昇した (1年生存率 62.7% v.s. 80.8%, DFU 患者コホート全体との比較、HR 1.70 [95%CI, 1.57-1.83]; P<0.001)。
3. 病態生理
DFU は糖尿病性の感覚、運動、自律神経系の神経障害の結果発症する。感覚神経の障害は足の防御に必要な感覚の喪失を来す。運動神経障害は足の変形 (foot deformity) と生体力学的な異常を引き起こす。また、自律神経系の障害は皮膚の乾燥などの皮膚の粘弾性的変化 (viscoelastic change) をもたらす。胼胝 (callus) はこのような変化から生じる。
荷重がかかる足への繰り返す衝撃により小さな外傷や炎症が起こり、胼胝の下に血腫を生じさせる。こうなると、胼胝を除去した際に全層潰瘍 (full-thickness ulcer, 組織損傷が表皮·真皮より下層の皮下組織に及ぶもの) が現れることになる。
他の DFU 形成のメカニズムとしては弱い圧力がかかり続けること、たとえばきつい靴を履き続けることで組織が壊死する場合や、極度に強い圧力が加わること、たとえば鋭いものがぶつかって直接に皮膚を傷害する場合がある。
4. 糖尿病性足潰瘍リスクのスクリーニング
糖尿病患者における潰瘍リスクを評価するために、年に 1 回プライマリケア医または足病医 (podiatrist) によって足をスクリーニングする。スクリーニングには、1. 足の防御に必要な感覚が失われていないか、2. 末梢動脈疾患がないか、3. 皮膚の損傷がないかを含めるべきである。
新規の DFU 患者においては、DFU 発症する前の年に足病医から予防的ケアの診察を受けた人は、受けていない人と比較してメジャーな下肢切断のリスクが低かった (1.20% v.s. 1.80%; OR, 0.61 [95%CI,
0.51-0.72], P <0.001) 神経障害または末梢動脈疾患と診断されたら足病医による包括的な足の評価を検討する。病歴聴取ではあらゆる糖尿病足病変についての問診を含める (図 1)。これらは DFU のリスクを大きく上昇させる。
図 1. 糖尿病性足潰瘍および活動性の糖尿病足病変のスクリーニングとフォローアップ
潰瘍リスク高:
活動性の潰瘍、シャルコー関節 (Charcot arthropathy) または感染 ± 末梢動脈疾患
フォローアップ期間: 1-3ヶ月
有病率: 1.8%
潰瘍リスク中:
足の防御に必要な知覚の喪失、末梢動脈疾患、足の変形のうち、2つ以上を認める。
フォローアップ期間: 3-6 ヶ月
有病率: 4.3%
潰瘍リスク低:
足の防御に必要な知覚が失われているまたは末梢動脈疾患がある。
フォローアップ: 6-12 ヶ月
有病率: 14.2%
潰瘍リスクとても低い:
足の防御に必要な知覚は失われておらず、末梢動脈疾患もない。
フォローアップ: 年に 1 回
有病率: 78.6%
8 件の前向き研究 (1738 名)、1 件の後ろ向き研究 (46 名) 、9 件のランダム化臨床試験の標準治療群 636 名のプールデータを用いた研究では、DFU の再発リスクは 1 年目で 42%、3 年目で 58%、5 年目で 65%だった。
足を守るのに必要な知覚を喪失している糖尿病患者では大径線維ニューロパチー (large fiber neuropathy) が起こっている。1. Semmes-Weinstein 5.07 モノフィラメントによる足の最低 3 箇所以上での圧感覚の評価 (足潰瘍の予測に対する陽性尤度比 11-16) および 2. 128-Hz 音叉 (tuning fork) による振動覚の評価 (on-off 法か振動知覚時間を計測する方法; 陽性尤度比 16-35) は大径線維ニューロパチーの評価に重要である。
これらの器具がない場合は Ipwich Touch Test は代替法として使える。この方法では、検者が患者の足の特定の 6 または 8 箇所に示指で軽く触れたことが知覚できるかを評価する (陽性尤度比 10-15)。
Ipwich Touch Test の解説動画
https://youtu.be/KbMljfRubvQ?si=qbPfZqu86BZkBQ6C
身体所見では、胼胝、趾間の浸軟 (interdigital maceration)、肥厚爪 (thickened nails) など真菌感染症や爪床への圧力上昇を示唆する所見がないか確認する。槌趾 (hammer toe) 、鉤趾 (claw toe) などの趾の変形 (digital deformity) は趾節間関節 (interphalangeal joint) の背側への突出および中足骨頭部 (metatarsal heads) の足底表面への突出が目立つようになると現れてくる。そして、これらは潰瘍の頻発部位である。
地面や靴との接触による圧力を受けるつま先 (tip of toe) も潰瘍ができやすい部位である。
足関節の背屈 (dorsiflexion) および底屈 (plantarflexion) の可動域の評価は尖足 (equinus deformity) の検索に使える。すなわち、足関節の背屈 0度未満の場合に尖足を疑う。尖足は足前方の足底圧を上昇させる。1666 名の糖尿病患者を対象にした前向き研究では 10.3%に尖足を認めた。
重度の尖足
https://www.researchgate.net/figure/Preoperative-photographs-demonstrating-severe-foot-equinus-position-with-substantially_fig8_289999626
シャルコー関節 (Charcot arthropathy) は神経障害を有する患者で関節の変位 (joint dislocation) をともなう足骨折と定義され、糖尿病患者の 0.3%に認める。シャルコー関節は明らかな足の変形を来しやすく、DFU、特に足中部 (midfoot) と足関節/足後部 (ankle/hindfoot) の DFU のリスクを上昇させる。シャルコー関節のおよそ 40%が組織欠損をともなっているが、創部以外に片側の発赤、熱感、腫脹を認める場合、あるいは深部静脈血栓症 (deep vein thrombosis) を認める場合はシャルコー関節を疑う。
糖尿病患者のシャルコー関節
https://www.nature.com/articles/nrendo.2009.174
足関節 (後脛骨) および足背における脈拍の触診は足の血流評価の基本であるが、感度も特異度も高くない (感度 71.7%, 特異度 72.3%)。DFU のおよそ半数は末梢動脈疾患を合併しているので、臨床医は DFU 患者に対しては非侵襲的な足関節上腕血圧比 (ankle-brachial index: ABI) や足趾上腕血圧比 (toe-brachial index: TBI) かつ/または循環器専門医へのコンサルトを検討するべきである。
5. 糖尿尿病性足潰瘍の評価
5-1. 分類
DFU の分類基準は多いが、ほとんどは組織欠損の程度に注目したものであり、感染や虚血の合併については強調されていない。同様に多くの虚血肢の分類が存在するが、最終的な段階まで組織欠損や感染を考慮せず虚血の程度に注目している。
創傷·虚血·足感染 (Wound, Ischemia, Foot Infection: WIfI) 分類は 3 つの要素 (創傷、虚血、足感染) を組み合わた方法として開発、検証されたものであり、DFU 患者が下肢を失うリスクを正確に評価できる。この分類では、組織欠損、虚血、足感染の程度を 1. なし、2. 軽度、3. 中等度、4. 重度の 4 段階に分類する。WIfI 分類は DFU の重症度を決定·共有し、多職種によるケアチームを速やかに組織するのに役立つ (図 2)。
図 2. WIfI 分類
https://www.google.com/imgres?imgurl=https%3A%2F%2Fwww.researchgate.net%2Fpublication%2F372076410%2Ffigure%2Ffig1%2FAS%3A11431281178697018%401691019461112%2FWound-Ischemia-and-Foot-Infection-WIfI-Classification-of-Limb-Threat.png&tbnid=99MZoC2Z8IcybM&vet=10CAIQxiAoAWoXChMI2I-vyPTWhQMVAAAAAB0AAAAAECU..i&imgrefurl=https%3A%2F%2Fwww.researchgate.net%2Ffigure%2FWound-Ischemia-and-Foot-Infection-WIfI-Classification-of-Limb-Threat_fig1_372076410&docid=z-vqWGWZT9kO8M&w=850&h=909&itg=1&q=wifi%20classification%20system&hl=ja-JP&client=ms-android-kddi-jp-revc&ved=0CAIQxiAoAWoXChMI2I-vyPTWhQMVAAAAAB0AAAAAECU
WIfI 分類のスコアが高いと、下肢切断のリスクが高く、血行再建の必要性を決定するのに利用できる。1 年以内の下肢切断の可能性は、WIfl スコア 1, 2, 3, 4 点ではそれぞれ、0%, 8%, 11%, 38%だった。
5-2. 感染の評価
糖尿病性足感染症は主に臨床的に診断され、発赤、腫脹、化膿、波動、リンパ管炎 (lymphangiitis) などの感染徴候を 2 つ以上認めることで示唆される。DFU 患者の全てで創部の培養検査を行うことを支持するランダム化比較試験の結果はない。
他に糖尿病足感染症を示唆する所見がない場合、赤血球沈降速度 >70 mm/h は骨髄炎 (osteomyelitis) の診断精度を改善させる助けになる (陽性尤度比 11)。
特に入院患者では、骨髄炎の検査前確率が高いので潰瘍底にゾンデを差し入れると骨に達する所見 (positive probe-to-bone test) と単純 X 線写真の組み合わせは骨髄炎の診断に十分であり (陽性尤度比 14)、他の高価な画像検査を追加する必要はない。核磁気共鳴画像法 (magnetic resonance imaging) は特に臨床的な評価と単純 X 線写真の所見がはっきりしない場合には有用であり、骨髄炎診断に対して一貫した精度を示している (陽性尤度比 3.6, 感度 93%、特異度 75%) 。また気づかれていなかった膿瘍を発見したり、深部の感染がどのくらい広がっているのかを判断するのに役立つかもしれない。骨髄炎の診断については、今でも骨生検と培養がゴールドスタンダードである。
5-3. 末梢動脈疾患の評価
下肢の末梢動脈疾患 (peripheral artery disease) は足関節上腕血圧比 (ankle-brachial index: ABI) で非侵襲的に評価できる。ABI はドップラーで計測した足背 (dorsalis pedis) および後脛骨の (posterior tibial) 動脈の脈圧を上腕動脈の脈圧で除すことで求められる。
ABI <0.90 の末梢動脈疾患診断に対する感度は 98%、特異度は 85%である。しかし、糖尿病患者ではしばしば下肢動脈の中膜石灰化を伴っており、末梢動脈圧が偽高値となるため、末梢動脈疾患に対する ABI の感度は低くなる。このような患者では、足趾上腕血圧比 (toe-branchial index: TBI) が利用できる。趾動脈の方が中膜石灰化が起こることが少ないからである。TBI <0.70 は末梢動脈疾患と矛盾しない所見である。
趾の血圧 >30 mmHg, 経皮的酸素分圧 (percutaneous oxygen pressure) >25 mmHg, 皮膚灌流圧 (skin purfusion pressure) >40 mmHg は速やかな潰瘍治癒と関連している。
3789 名の被験者を含む 25 件の研究を対象にしたメタ分析によると、経皮的酸素分圧は潰瘍治癒と下肢切断に対して高い精度で予測できることが示されている。
潰瘍治癒に対する経皮的酸素分圧の感度は 0.72 (95%信頼区間: 0.61-0.81)、特異度は 0.86 (95%信頼区間: 0.68-0.95) で、診断オッズ比 15.81 (95%信頼区間: 3.36-74.45) だった。
これに比べると潰瘍治癒に対する ABI (<0.9, >1.3 をカットオフとした場合) の予測精度は低く、感度は 0.48 (95%信頼区間, 0.36-0.61)、特異度 0.52 (95%信頼区間, 0.42-2.64)、診断オッズ比は 1.02 (95%信頼区間, 0.40-2.64) だった。
皮膚灌流圧 >40 mmHg は潰瘍治癒に対して陽性尤度比 4.86-6.40 で対応する陰性尤度比は 0.03-0.40 だった。
104 名の対象者を含む 4 件の研究のメタ分析では、足趾の収縮期血圧 <30 mmHg の場合、>30 mmHg の場合と比較して下肢切断後に創が治らない相対リスクが 2.09 倍高かった (95%信頼区間: 1.37-3.20; P = 0.001) 。
経皮的酸素分圧測定の実際
https://www.google.com/imgres?imgurl=https%3A%2F%2Fi.ytimg.com%2Fvi%2FjAudCrnz3YE%2Fmaxresdefault.jpg&tbnid=vSq1uu5NdyaQ-M&vet=1&imgrefurl=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3DjAudCrnz3YE&docid=yMuZm68nK3zUCM&w=1280&h=720&source=sh%2Fx%2Fim%2Fm1%2F2&kgs=38cd30ab4b4ff1f1&shem=abme%2Ctrie
皮膚灌流圧測定の実際
6. 治療
6-1. 糖尿病足潰瘍のリスクが高い患者
足を守るために必要な感覚が失われておらず、末梢動脈疾患がなく、足病変の既往がなく、足潰瘍のリスクが低いと判断される患者はプライマリケア医または足病医による 1 年に 1 回のフォローアップに戻す。
足潰瘍のリスクが高い糖尿病患者は適切な足のセルフケアと靴の選び方について教育を受けるべきである。
足の感覚低下、末梢動脈疾患、足の変形のうち 2 つ以上のリスク因子を持つ場合は足潰瘍のリスクは中等度であると判断され、足にフィットし、足にかかる圧を軽減する質の高い靴を作るために、足病医、ペドーシスト (pedorthist, 靴と足の専門装具士) 、装具士 (orthotist) から、靴の専門家 (shoe specialist) に紹介するべきである。
足潰瘍のリスクが中等度の患者については足病医による 3-6 ヶ月毎の評価を受けるべきである (専門科のコンセンサスに基づく、米国糖尿病学会の糖尿病足病変ガイドライン国際作業部会の推奨)。
末梢動脈疾患患者では血管の専門医の評価を受けた方が良いかもしれない。糖尿病足潰瘍があり、足関節部の血圧 <50 mmHg または、ABI <0.5、足趾血圧 <30 mmHg、経皮的酸素分圧 <25 mmHg の場合はすみやかに血管の評価を行うべきである。末梢動脈疾患があり、免荷とデブリドマンからなるエビデンスに基づくケアを 4-6 週間続けても糖尿病足潰瘍が治らない場合は血管評価の結果の如何に依らず血管外科へのコンサルトを検討するべきである。
糖尿病足潰瘍の既往がある、あるいは糖尿病足潰瘍で部分的な下肢切断を受けたことがある人は最もリスクの高いカテゴリーである。このような人々は潰瘍再発のリスクを軽減するために、足の形や変形に対応した圧迫を緩和する靴や装具が必要であり、これにはカスタムメイドの靴や深さのある靴の中敷き(insole) が含まれる。
足潰瘍が治癒した人は 1-3 ヶ月毎にスクリーニングと専門科によるフットケアを受けるべきである (表 1)。
足潰瘍が治癒した人については皮膚表面温度計 (dermal thermometer) で潰瘍の母地となる炎症部位を特定することはメリットがあるかもしれない。5 件のランダム化試験における 772 名を対象とするメタ分析では、家庭内で皮膚温をモニターし、ホットスポット (すなわち患足と健足の温度差が >2℃) がある場合に歩数を減らすようにすると、皮膚温のモニターを行わない場合と比べて糖尿病足潰瘍を生じるリスクが減った (18.7% v.s. 30.8%, RR 0.51, 95%CI 0.31-0.84; P = 0.008)。
dermal thermometer
https://jfootankleres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13047-020-00421-z
6-2. すでに糖尿病足潰瘍がある患者
活動性の糖尿病足病変の治療のフローチャートは図 3 にまとめてある。
6-2-1. 創部の管理
6-2-1-1. デブリドマン
デブリドマンは創傷治癒を促進するために行われる標準的な治療である。創床 (wound bed) および創傷縁 (wound edge) の壊死組織や肥厚した角質、異物、細菌を除去することで治癒が促進される。ガイドラインでは毎週あるいは隔週の定期的なデブリドマンを推奨しているが、ランダム化比較試験は行われていない。
525 の米国の医療機関で治療された慢性的な創傷 154,644 例を対象にした研究では、毎週デブリドマンが行われた患者ではより少ない頻度でデブリドマンが行われた患者と比較して有意に創傷治癒の頻度が増えた (55% v.s. 28%, P <0.001)。
6-2-1-2. 免荷治療
潰瘍に対する荷重を減らすことで足に繰り返しかかる機械的ストレスを軽減することは、潰瘍治療において重要な要素であり、創傷治癒しやすい環境を作ることになる。
足底の潰瘍に対する最も効果的な免荷 (off-loading) は膝の高さで装着する着脱不能の免荷器具 (knee-high nonremovable off-loading device) である。これにはトータルコンタクトキャスト (total contact cast: TCC) と knee-high walker がある。トータルコンタクトキャストは、装具士が最小限のパッドで作成する特殊なギプスブーツである。knee-high walker はマジックテープ (Velcro) やストラップで装着する既製品の (prefabricate, プレハブ) ブーツである。両者とも荷重を広い面積に分散することができ、通常の靴と比べて潰瘍にかかる圧力を 80-90%減少させる。
knee-high nonremovable off-loading device
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8471745/
total contcact cast
https://www.ogikubo-hospital.or.jp/m/dep/m_footcare/#:~:text=%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E6%80%A7%E8%B6%B3%E7%97%85%E5%A4%89%20%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%82%B9%E3%83%88%E6%B3%95&text=TCC%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E4%B8%8B%E8%85%BF%E3%81%8B%E3%82%89,%E3%82%AE%E3%83%97%E3%82%B9%E5%9B%BA%E5%AE%9A%E3%81%99%E3%82%8B%E6%89%8B%E6%B3%95%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
米国とオーストラリアで行われた 2件の国レベルの調査ではそれぞれ 2%, 15%の患者しか免荷治療として TCC を使用していなかった。臨床医は TCC を使用しない理由として患者の好みを挙げることが多い。代替手段として着脱可能な装具もあり、潰瘍にかかる圧力を減らすことはできるが、着脱不能な装具と比べて創傷治癒の効果は劣る。14 件のランダム化試験 (対象者 1083 名) のプールデータから、着脱不能な装具は着脱可能な装具と比べてより高い創傷治癒の頻度と関連していた (81.9% v.s. 66.1%; RR 1.24, 95%CI 1.09-1.41, P = 0.001) 。
腰と装具に活動度モニターを装着した被験者 20名を対象にした研究では、装具を装着している間は装着していない間と比べて 28%しか日常的な活動を行っていないことが報告された (345 [SD, 219] 分 v.s. 874 [SD, 828]; P = 0.01)。
着脱可能な装具の使用が適切ではなく、着脱不能な免荷装具使用しても潰瘍が治癒しない場合は、免荷を目的とした再建手術 (surgical reconstruction) は有用かもしれない。
最近の単施設で行われた足趾の糖尿病性足潰瘍 16 例を対象としたランダム化比較試験の結果 (腱切除術を行った群で 100%治癒に対し、腱切除術を行わなかった群で 37.5%治癒, P = 0.03)から、第 2-5 足趾 (lesser toe) 先端の足潰瘍に対しては屈筋腱 (flexor tendon) 腱切除術 (tenotomy) が第一選択となった。
足底前部の潰瘍 (plantar forefoot ulcers) に対してはアキレス腱伸長 (Achilles tendon lengthening) が潰瘍再発のリスクを減らすかもしれない (RR, 3.4; 95%CI, 1.4-8.2)。
6-2-1-3. 創部の被覆 (wound dressing)
糖尿病足潰瘍の最適な被覆についてはデータは限られている。被覆材は糖尿病足潰瘍の性状 (部位、炎症の有無/程度、滲出 [extdate] の量) に基づいて決めるべきである。
被覆は組織の成長と上皮の移行 (epithelial migration) を促すために、過剰な侵軟 (maceration) を避けつつ湿潤な環境とするべきである。炎症の悪化と創部やその周辺と長期間接触による障害を防ぐために過剰な滲出を除去する被覆剤を選択するべきである。一般的に、滲出の少ない創部ではハイドロゲル (hydrogel) が好まれ、滲出が多い創部ではアルジネート (alginate)、ハイドロファイバー (hydrofiber) が推奨される。
ハイドロゲル
https://medicaldressings.co.uk/hydrogel-dressings/
アルジネート
https://www.woundsource.com/product-category/dressings/alginates
ハイドロファイバー
https://www.convatec.ca/advanced-wound-care/aquacel-dressings/hydrofiber-technology/
新しい局所治療薬のいくつかは多施設ランダム化試験で創傷治癒を促進することが示されている。フィブリンシーラント (topical fibrin) と白血球·血小板パッチ (leucocyte platelet patch) は大規模なランダム化試験で有効性が示されている。
フィブリンシーラント
https://www.jnjmedtech.com/en-US/product/evarrest-fibrin-sealant-patch
白血球·血小板パッチは患者自身の白血球、血小板、フィブリンのディスクであり、ベッドサイドで患者の静脈血を遠心することで作られる。このディスクは創部に付着される。
白血球·血小板パッチ
https://www.semanticscholar.org/paper/Use-of-an-autologous-leucocyte-and-platelet-rich-on-L%C3%B6ndahl-Tarnow/00eecb07238e1afcd21ec39a917cf947464b5a85
上記の局所療法を行った群では、糖尿病足病変に関する国際作業部会 (International Working Group on the Diabetic Foot) によるガイドラインに記載されている標準治療 (免荷、デブリドマン、透湿性ドレッシング) を行った群と比較して 20 週後の時点で有意に創傷治癒の頻度が高かった (n = 269; 34% v.s. 22% 創傷治癒; OR: 1.58; 95%信頼区間: 1.04-2.04; P = 0.02)。
過去 20 年で胎盤由来製品の創傷治癒促進効果が検討されてきた。これには成長因子やコラーゲンを豊富に含む細胞外マトリクス、創傷治癒を促す可能性がある細胞が含まれる。
よく使われる胎盤由来製品は、1. 冷凍保存された (cryopreserved) 胎盤と、2. 乾燥保存したものである。前者は成長ホルモンだけでなく、生きた細胞も含むのに対し、後者は成長ホルモンは含むが、生きた細胞は含まない。
感染や虚血をともなわない、糖尿病足潰瘍を対象にした 11 件の多施設ランダム化比較試験 (被験者 655 名) のメタ分析では、胎盤由来製剤を使用された患者は、同様のケアとアルジネートまたはフォームドレッシング (foam control dressing) で治療した患者と比較して、12-16 週の時点で糖尿病足潰瘍の完治の頻度が有意に高かった (66.9% v.s. 34.1%; RR, 2.0; 95%CI, 1.67-2.39; P <0.001)。
EXPLORER 研究は、240 名の軽度の末梢動脈疾患を合併している糖尿病足潰瘍の患者を対象にオクタ硫酸スクロース (sucrose octasulfate) ドレッシングとリポコロイドドレッシングの創傷治癒効果を比較した二重盲検の試験である。これによると、20 週の時点で前者では 48%、後者では 30%で創傷治癒を認めた (調整後 OR, 2.6; 95%CI, 1.43-4.73; P = 0.002)。
高気圧酸素療法 (hyperbalic oxygen therapy) は末梢動脈疾患をともなう糖尿病性足潰瘍の標準治療のみでは創傷治癒が得られない場合の補助療法となるかもしれない。この可能性は複数のランダム化臨床試験から示唆されているが、結果には一貫性はない。
最近のランダム化比較試験のメタ分析とシステマティックレビューによると、局所酸素療法 (topical oxygen therapy) は標準治療で治癒しない (4 週間目の時点で <50%の潰瘍治癒) 糖尿病性足潰瘍では検討しても良いかもしれない。最も新しいメタ分析の結果では、局所酸素療は対照と比較して有意に創傷治癒の頻度が高かった (43% v.s. 28%; RR, 1.59; 95%CI, 1.07-2.37; P = 0.02)。
過去 20 年で糖尿病患者の足の複雑な創部や手術後の創部に対する補助的治療として陰圧閉鎖療法 (negative pressure wound therapy) が広く行われてきた。複数のよくデザインされたランダム化比較試験で、部分的な下肢切断と糖尿病足潰瘍両方に対して陰圧閉鎖療法は創傷治癒を改善させることが示されている。9 件のランダム化比較試験 (被験者 943 名) の結果をまとめたランダム化比較試験では、陰圧閉鎖療法は創部を湿潤環境に保つケア (moist wound healing) と比較して、高い創傷治癒と関連した (OR, 3.60; 95%CI, 2.85-5.45; P <0.001)。陰圧閉鎖療法は創部を浅くし、肉芽組織で覆われた創床 (wound bed) を作り出すことに最も効果的である。創床が肉芽組織で覆われた段階で皮膚移植や先に述べた創部のドレッシングに切り替えることを検討する。比較できるデータはないが、皮膚移植は組織欠損の範囲が大きい場合に検討するべきである。小さい創部に皮膚移植を行うと治癒に時間がかかるからである。
米国糖尿病学会は最近、標準的なデブリドマン、創傷ケア、免荷による治療に対する反応が乏しい創傷に対しては閉鎖陰圧療法および局所酸素療法の使用を推奨した。糖尿病足病変の国際作業部会は手術後の創部に対してのみ閉鎖陰圧療法を推奨している。
高気圧酸素療法
https://www.mayoclinic.org/tests-procedures/hyperbaric-oxygen-therapy/about/pac-20394380
陰圧閉鎖療法
6-3. 感染をともなう糖尿病性足潰瘍
糖尿病性足感染症に対して早期に治療を開始すると、入院と下肢切断のリスクは減少する。感染をともなう糖尿病性足潰瘍患者 668 名を対象とした単施設で行われた研究では、医療機関への紹介が 1 日遅れる毎に下肢切断と死亡のリスクが 0.6%上昇した (OR, 1.006; 95%CI, 1.003-1.010; P <0.001)。
糖尿病性足潰瘍にともなう感染の多くは表層に限局しているが、深部組織の感染巣を除去するために外科的な介入が必要になることもある。軟部組織の急性感染をともなわない前足部の骨髄炎では、抗菌薬治療は手術と同様に効果的かもしれない。前足部の骨髄炎と糖尿病足潰瘍の患者 46 名を対象に、1. 外科的切除と、2. 外科的切除後に 10 日間抗菌薬治療を行う場合、3. 90 日間抗菌薬治療のみを行う場合にランダムに割り付けた単施設試験が行われた。治癒までの期間の中央値は抗菌薬治療群で 7 週間、外科的切除群で 6 週間だった (P = 0.72)。群間で小規模な下肢切断の頻度に差はなかった (16.6% v.s. 13.6%; P = 0.34)。
6-4. 末梢動脈疾患をともなう糖尿病性足潰瘍
下肢の再灌流 (lower extremity revascularization) は包括的高度慢性下肢虚血 (chronic limb-threatening ischemia) の足に動脈血を供給することを目的としている。組織の治癒に再灌流が必要な包括的高度慢性下肢虚血の患者では、再灌流の遅れは創傷治癒遅延と関連している。478 名の患者を対象にした後ろ向き観察研究において、再灌流を行った患者では創傷治癒の早さが改善した。さらに、56 日以内に再灌流の紹介を受けた患者は、それよりも長期間を経てから紹介を受けた患者と比較して治癒までにかかる時間が短かった (HR 1.96, 95%CI, 1.52-2.52; P <0.001)。314 名の糖尿病患者を対象にした後ろ向き研究において、下肢の再灌流を 14 日以上待った患者では、それよりも早く再灌流を行った患者と比べて広範囲の下肢切断の頻度が高かった (OR 3.1; 95%CI, 1.4-6.9)。
再灌流を行うにあたっては、手技にともなうリスクの評価と下肢動脈の解剖学的な分布に基づいて系統的なアプローチを取るのが良いかもしれない。包括的高度慢性下肢虚血のほとんどの患者では再灌流を提案されるべきであるが、再灌流が予後を改善するかどうかの術前の判断には、1. 高齢、2. 基礎疾患の存在と重症度、3. 生活機能障害、4. 期待される生存期間の長さは重要な要素である。もともと歩けていない人 (non-ambulatory at baseline) やフレイルの患者など一部の患者では再灌流を行わずに下肢切断を行うという判断は適切かもしれない。
包括的高度慢性下肢虚血に対する治療としては、手術も血管内治療も適切である。手術 (大伏在静脈 [great saphenous vein] をグラフトとして用いたバイパス手術など) か血管内治療 (71.8% が糖尿病患者) を行った 1434 名の患者を対象とした研究では、大きな下肢切断または下肢へのインターベンションの再施行または死亡によって定義される重大な下肢の有害事象のリスクについては、手術が血管内治療よりも優れていた (42.6% v.s. 57.4%; HR, 0.68; 95%CI, 0.59-0.79)。
7. 長期の管理、フォローアップ、予後
多職種チームによる介入 (構造化された糖尿病フットケア) は糖尿病関連の下肢切断を減らすことが示されている。多職種チームの構成や活動は決まっていないが、一般的には少なくとも 1 名の専門医 (多くの場合は内分泌内科医、感染症医、プライマリケア医) と 2 名以上の外科系専門医 (血管外科医、足外科医、整形外科医、形成外科医) が参加している。
18 件の研究 (被験者: 38,608 名) のプールデータを用いた解析では、多職種チーム導入後の大きな下肢切断の減少についての通常治療と比較したオッズ比は 0.40 (3.2% v.s. 4.4%; OR, 95%CI, 0.32-0.51; P <0.001) だった。多職種チームには薬剤師と履き物の専門家も加えるべきである。
1587 名の被験者を含むランダム化比較試験についてのメタ分析では、治療用の靴は通常のケアと比較して有意に糖尿病性足潰瘍の罹患率を減少させた (13.3% v.s. 25.4%; RR, 0.49; 95%CI, 0.28-0.84; P <0.01)。治療用の靴の効果については他のランダム化比較試験の結果をまとめたメタ分析でも支持されている。
多職種チームには創部ケアや感染症、末梢動脈疾患の専門家以外にリハビリテーション、栄養、精神を専門とする医師も加えるべきである。糖尿病性足潰瘍は健康関連の生活の質に大きな影響を与え、糖尿病性足潰瘍の患者ではうつが多い。2117 名の被験者を含む 11 件の研究をまとめたメタ分析では、糖尿病性足潰瘍患者の 47%でうつの症候を認めた。うつは糖尿病性足潰瘍の死亡率上昇と関連していた。253 名の糖尿病性足潰瘍患者を対象とする単施設で行われた研究では、うつのエピソードがある場合の死亡率は、うつがない場合の 2 倍 (HR 2.09; 95%CI, 1.34-3.25) 、軽度のうつに限っても 1.93 倍 (HR 1.93; 95%CI, 1.00-3.74) 、大うつをともなう場合は 2.18 倍 (HR 2.18; 95%CI, 1.31-3.65) だった。
糖尿病性足潰瘍の患者は程度の差はあれ、低栄養がある。糖尿病性足潰瘍患者 1565 名を対象にしたメタ分析では、6021 名の足潰瘍のない糖尿病患者と比較して、ビタミン D 濃度が低値で (平均差, -6.48 nmol/L; 95%CI, -10.84~-2.11 nmol/L; P <0.004)、ビタミン D 欠乏 (<50 nmol/L) の頻度が高かった (36.5 v.s. 21.6%; OR, 2.53; 95%CI, 1.65-3.89; P <0.001)。栄養への介入についての研究はないが、血糖コントロールの最適化と十分量の蛋白摂取には利益があるだろう。
血糖コントロールについては、12,604 名の糖尿病性足潰瘍患者を対象とする 47 件の研究についてのメタ分析で HbA1c と空腹時血糖の上昇とともに下肢切断のリスクが上昇することが示された (HbA1c >8% v.s. <8%: OR, 4.80 [95%CI, 2.83-8.13], 空腹時血糖 >126 mg/dL v.s. <126 mg/dL: OR, 1.46 [95%CI, 1.02-2.09])。しかし、HbA1c のカテゴリーと創傷治癒との間には関連を認めなかった。
厳格な血糖コントロールが初発または再発の潰瘍リスクを減らすことを示す質の高いエビデンスは欠けている。
8. 予後
糖尿病性足潰瘍の 30-40%は 12 週目の時点で治癒するが、23%の患者は 12 ヶ月経っても治癒しない。何らかの治療を行った後の糖尿病性足潰瘍の再発率は 1 年後の時点で 42%、5 年後の時点で 65%であると推測された。最近の 129名の患者について糖尿病性足潰瘍の再発率を検討した縦断研究では、同じ部位に潰瘍が再発するケースはわずか 17%であり、48%で対側の足に潰瘍が再発した。再発率の高さを考えると、糖尿病性足潰瘍の患者はフットケアチームによってサーベイランスを続けることが必要だろう。
元論文
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37395769/