内分泌代謝内科 備忘録

FGF23 関連低リン血症性くる病/骨軟化症の診断と治療

FGF23 関連低リン血症性くる病/骨軟化症の診断と治療
J Mol Endocrinol 2021; 66: R57-R65

FGF23 は、骨から産生されるリン酸化ホルモンである。FGF23 は、近位尿細管でのリン酸再吸収と腸管でのリン酸吸収を抑制することにより、血清リン酸を減少させる。FGF23 が同定された後、X 染色体連鎖性低リン血症性くる病·骨軟化症(X-linked hypophosphatemia: XLH)や腫瘍性骨軟化症(tumor induced osteomalacia: TIO)のような数種類の低リン血症性くる病/骨軟化症が、FGF23 の過剰な作用によって引き起こされることが示された。

これらの低リン血症患者では循環 FGF23 が高値であるのに対し、ビタミン D 欠乏症など他の原因による慢性低リン血症患者では FGF23 はむしろ低値である。これらの結果は、FGF23 測定が低リン血症の鑑別診断に有用であることを示している。

FGF23 の化学発光酵素免疫測定法は、日本において臨床使用が承認されている。TIO 患者の第一選択治療は、責任腫瘍の完全切除である。しかし、責任腫瘍を見つけ出して完全に除去することは必ずしも可能ではない。

切除不能な腫瘍を有する TIO 患者を含め、FGF23 の過剰な作用によって引き起こされる低リン血症患者に対しては、リン酸塩や活性型ビタミン D が使用されてきた。しかし、これらの薬剤の効果は限定的であり、いくつかの有害事象もある。

FGF23 の過剰な作用を抑制することは、これらの低リン血症疾患に対する新規治療法と考えられている。FGF23 のヒトモノクローナル抗体であるブロスマブ (burosumab) は、XLH 患者における生化学的異常、くる病のレントゲン学的徴候、成長、骨折治癒、石灰化障害を改善することが示されている。ブロスマブは欧州、北米、日本を含む数カ国で承認されている。ブロスマブの長期的影響については今後の研究で検討する必要がある。

FGF23 は常染色体優性低リン血症性くる病 (autosomal dominant hypophosphatemic rickets: ADHR) の責任遺伝子としてクローニングされた。FGF23 はまた腫瘍性骨軟化症 (tumor-induced osteomalacia: TIO) の原因となる液性因子としても同定された。以来、FGF23 はリン酸とビタミン D を制御するホルモンとして働くことが示されてきた。さらに、他のいくつかの低リン血症性くる病/骨軟化症でも FGF23 の過剰な作用が原因になることが明らかになった。最近、いくつかの国でこれらの低リン血症性くる病/骨軟化症の新しい治療法が利用できるようになっている。


FGF23 の機能
FGF23 がクローニングされた後、リコンビナント FGF23 を用いて FGF23 の機能が調べられた。その結果、FGF23 は近位尿細管の刷子縁膜における 2a 型および 2c 型ナトリウムリン共輸送体の発現を抑制し、近位尿細管におけるリン酸の再吸収を抑制することが示唆された。

糸球体でろ過されたリン酸のおよそ 80-90%は近位尿細管でナトリウムリン共輸送体を介して再吸収される。さらに、FGF23 は 25-水酸化ビタミン D を 1,25-水酸化ビタミン D に変換する酵素をコードする CYP27B1 の発現を抑制する。FGF23 はまた、1,25-水酸化ビタミン D の血中濃度を低下させるはたらきをする酵素をコードする CYP24A1 の発現を促進する。これらのビタミンD の代謝に関わる酵素の発現を変えることにより、FGF23 は血清 1,25-水酸化ビタミン D 濃度を低下させる。

1,25-水酸化ビタミン D は小腸の刷子縁膜における 2b 型リンナトリウム共輸送体の発現を促進させる。それゆえ、FGF23 は 1,25-水酸化ビタミン D 濃度を低下させることにより、近位尿細管におけるリン再吸収と小腸におけるリン吸収の両方を阻害し、血清リン濃度を低下させる。

生理的な FGF23 の供給源は骨であり、骨芽細胞 (osteoblast) および骨細胞 (osteocyte) であると考えられている。一方、FGF23 がはたらくのは腎臓であり、腎臓には FGF23 に特異的な受容体が存在することが示唆される。

FGF23 は FGF ファミリーに属する。ヒトとマウスでは FGF23 ファミリーのメンバーは 22種類ある。ヒトの FGF19 はマウスの Fgf 15 のオーソログ (ortholog: 異なる種間において相同な機能をもつ遺伝子群) である。FGF ファミリーのメンバーは FGF 受容体 (FGF receptors: FGFRs) に結合することが示されている。FGFR 遺伝子は 4種類あり、さらに同じ遺伝子から異なるスプライシングを行うことで多くの FGFR のサブタイプが生じる。しかし、これらの FGFR のサブタイプの発現は基本的に組織特異的ではない。

腎臓において FGF23 と結合するタンパク質を探索したところ Klotho が見出いだされた。これに続く研究の結果、FGF23 は Klotho-FGFR1 複合体に結合することで作用することが示された。

FGF23 は FGFR1 の下流にある extracellular signal-regulated kinase (ERK), AKT, ホスホリパーゼ Cγ など複数のシグナル伝達系を活性化する。腎臓における FGF23 の作用については主に ERK 経路を介しているようである。


FGF23 の翻訳後修飾
FGF23 遺伝子は 251 個のアミノ酸をコードしている。N-末端の 24 アミノ酸はシグナルペプチドを構成している。FGF23 タンパクの一部は分泌される前に 179 番目のアルギニンと 180 番目のセリンの間で切断される。このプロセシングは FGF23 タンパクの R-X-X-R モチーフを認識する酵素群が行っている。全長 (full length) のFGF23 タンパクは上記のような生物学的な活性を持つのに対し、プロセシングによって生じた N-末端および C-末端のフラグメントは不活性である。

178 番目のスレオニンにムチン型の O-結合グリカンが付加されると 179番目のアルギニンと 180 番目のセリンとの間のプロセシングが阻害される。この糖鎖修飾 (glycation) は GLANT3 遺伝子にコードされる polypeptide N-acetylgalactosaminyltransferase 3 と呼ばれる酵素によって開始される。

一方、family with sequence similarity 20, member C (FAM20C) による 180 番目のセリンのリン酸化は FGF23 のプロセシングを促進する。

したがって、FGF23 の濃度および活性は FGF23 の転写と翻訳だけでなく、FGF23 タンパクの翻訳後修飾によっても制御される。


FGF23 産生の制御
FGF23 産生と血清濃度を制御するしくみについては完全には理解されていない。FGF23 は血清リン濃度を制御しているので、血清リン濃度が FGF23 産生および FGF23 濃度に影響を与えるのではないかと考えられてきた。高リン食はヒトとマウスで血清 FGF23 濃度を上昇させるのに対し、健常ボランティアに対してリンを静脈注射して数時間にわたって血清リン濃度を上昇させても FGF23 濃度は上昇しなかった。

血清カルシウム濃度の制御においては、血清カルシウム濃度の上昇は副甲状腺の細胞表面に発現しているカルシウム感知受容体 (calcium sensing receptor: CaSR) を介して数分以内に PTH 分泌を阻害する。一方、血清リン濃度の制御においては FGF23 濃度は PTH のように素早く制御されることはなさそうである。

最近の研究によると、リンに対する反応においてはFGF23 タンパクの翻訳後修飾が重要であることが分かった。マウスにおいて高リン食を 2週間与えると予想された通り、血清リン濃度と血清 FGF23 濃度が上昇した。しかし、高リン食を与えても大腿骨 (femur) における Fgf23 遺伝子の発現は変わらなかった。一方、高リン食は骨における Glant3 遺伝子の発現を上昇させた。このことは高リン食は FGF23 タンパクの分解を抑制することによって血清 FGF23 濃度を上昇させることを示唆している。さらに詳細な in vivo および in vitro の研究から、リンは FGFR1-FGF 受容体の基質である 2a-ERK 経路を介して Glant3 遺伝子の発現を促進することが明らかになった。これらの結果は FGFR1 がリンに対する FGF23 の制御におけるリン感知のメカニズムの少なくとも一端を担っていることを示している。

リンだけでなく、1, 25-水酸化ビタミン D と PTH が FGF23 産生を促進させることが報告されている。すでに述べたように、FGF23 は 1,25-水酸化ビタミン D 濃度を抑制し、PTH 合成と分泌を抑制することが報告されている。これらの結果はリン代謝を制御する FGF23, リン酸、1,25-水酸化ビタミン D、PTH が関わるネガティブフィードバックループが複数あることを示している。

FGF23 産生は上記以外の複数の因子によっても影響を受ける。腫瘍壊死因子-α (tumor necrosis factor-α: TNF-α) 、インターロイキン-1b (interleukin-1b) などの炎症性サイトカイン、鉄欠乏、エリスロポエチン (erythropoietin) は FGF23 産生を促進することが示されている。これらの因子は慢性腎臓病患者における高 FGF23 血症を仲介している可能性があると考えられている。加えて、最近の研究によるとリゾフォスファチジン酸 (lysophosphatidic acid) が急性腎障害において FGF23 産生を誘導することが示されている。さらに、遺伝子改変マウスモデルを用いた研究では膜型 Klotho と G タンパク共役受容体の巨大複合体が FGF23 産生を促進することが示唆されている。また、インスリンとエネルギー制限が FGF23 産生を低下させると報告されている。これらの因子はそれぞれ全く異なる細胞内シグナル伝達経路 (JAK-STAT, 低酸素誘導因子 1a, ERK, フォスファチジルイノシトール-3 キナーゼ、AMP-活性化タンパクキナーゼ) を活性化させる。現在のところ、これらの異なる因子がどのようにリンとビタミン D の代謝の維持のために FGF23 の生理的制御に関わっているのかは分かっていない。


FGF23 関連低リン血症性くる病/骨軟化症
FGF23 が同定されてから、ADHR や TIO 以外のいくつかの低リン血症性くる病/骨軟化症が FGF23 の作用過剰によって起こることが示されている。この中では、小児における X 染色体関連低リン血症性くる病 (X-linked hypophosphatemic rickets: XLHR) が最も頻度の高い遺伝性低リン血症性くる病の原因である。成人の X 染色体関連低リン血症 (X-linked hypophosphatemia: XLH) と小児の XLHR の責任遺伝子はポジショナルクローニングによってクローニングされ、PHEX (phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosomes) と名付けられた。PHEX は短い細胞内 N 末端部位をもつ II 型膜タンパクである。PHEX は主に骨と歯に発現している。

Hyp マウスは XLH のマウスモデルであり、Phex 遺伝子の 3' 部位が欠損している。Hyp マウスの骨では FGF23 が過剰発現するが、FGF23 過剰発現の詳細なメカニズムは不明である。

他の遺伝性低リン血症性くる病 (常染色体劣性低リン血症性くる病 1, 2 [autosomal recessive hypophosphatemic rickets 1, 2: ARHR 1, 2] など) でも、FGF23 は骨において過剰発現していると考えられている。しかし、責任遺伝子の変異がどのようにして FGF23 の発現を亢進させるかについてはほとんど分かっていない。

ADHR 患者では FGF23 の 176番目のアルギニンまたは 179番目のアルギニンが他のアミノ酸に置換される変異を認める。このアミノ酸置換がある場合、変異タンパクは179 番目のアルギニンと 180 番目のセリンの間のプロセシングに抵抗性となる。プロセシングに対して抵抗性になることは血清 FGF23 濃度の上昇に寄与すると考えれる。しかし、このタンパク切断に対する抵抗性だけでは ADHR 患者における FGF23 高値と低リン血症は説明できない。

すでに述べたように、FGF23 産生はいくつかの因子によって制御されている。したがって、FGF23 のアレルの一方に変異があったとしても、FGF23 産生の生理的な制御機構は FGF23 の過剰産生を抑制するに違いない。ADHR 患者においては、他の環境因子が低リン血症となるのに必要そうである。実際、ADHR 患者の生化学的異常と疾患の表現型は変動する (wax and wane) ことが知られている。特に鉄欠乏は疾患活動性に影響を与える因子であると考えられている。

FGF23 に変異を持たない人では、鉄が欠乏すると FGF23 遺伝子の転写および 179番目のアルギニンと 180番目のセリンとの間のタンパク切断が促進され、FGF23 濃度とリン濃度を正常に保たれる。一方、ADHR 患者では変異 FGF23 タンパクがプロセシングに対して抵抗性であるために FGF23 濃度は上昇する。理論的には、FGF23 の転写を促進する他の非生理的な環境因子も ADHR 患者における FGF23 高値と低リン血症を誘導し得る。

TIO は稀な傍腫瘍症候群 (paraneoplastic syndrome) である。TIO の原因で最も多いのは骨軟部組織腫瘍であり、病理学的には混合性結合組織亜系リン酸塩尿性間葉系腫瘍 (phosphaturic mesenchymal tumor, mixed connective tissue variant: PMTMCT) と診断されるものである。これらの腫瘍は FGF23 を過剰発現する。しかし、FGF23 が過剰発現するしくみについては明らかではない。TIO を引き起こす腫瘍の一部は fibronectin (FN)-FGFR1 または FN-FGF1 の融合遺伝子を持っている。さらに、TIO を引き起こす腫瘍の一部は Klotho を発現していることが示されている。これらの融合遺伝子や Klotho/FGFR1 複合体からのシグナルが FGF23 の過剰産生に関与していることはあり得る。

鉄の注射製剤が FGF23 関連低リン血症を引き起こした例も報告されてきた。鉄欠乏性貧血患者で FGF23 の転写とプロセシングが亢進しているところに、鉄の注射製剤が FGF23 のプロセシングを阻害するために FGF23 が高値になるのではないかと考えられている。


FGF23 関連低リン血症の診断
FGF23 関連低リン血症患者の生化学的特徴は慢性的な低リン血症、近位尿細管でのリン排泄閾値 (tubular maxim transport of phosphate per glomerular filtration rate: TmP/GFR) 低下、1,25-水酸化ビタミン D 低値から正常定値、そして FGF23 正常~高値である。

FGF23 がクローニングされてから、さまざまな種類の FGF23 に対する ELISA が開発された。インタクトアッセイでは FGF23 のプロセシング部位の N 末端と C 末端をそれぞれ検出するモノクローナル抗体を用いている。この方法では、生物学的活性がある FGF23 のみを測定する。一方、C-末端アッセイでは 2種類の C 末端に対する抗体を用いる。このアッセイでは、インタクト FGF23 と FGF23 から切り出された C-末端フラグメントの両方を検出する。C-末端アッセイで測定された FGF23 濃度は FGF23 遺伝子の転写または翻訳量を反映すると考えられている。

インタクトアッセイと C-末端アッセイで測定された FGF23 値は通常はよく相関する。どちらのアッセイも臨床的には有用だろう。しかし、FGF23 タンパクのプロセシングが促進される状況では両者の値は大きく乖離する。以下に述べるように、日本ではインタクトアッセイが臨床検査として承認されている。

FGF23 関連低リン血症患者とは対照的に、他の原因による慢性低リン血症患者ではインタクト FGF23 濃度は低い。さらに、TIO 患者において責任病変を切除すると FGF23 は速やかに低下する。半減期はおよそ 20-60 分であり、一部の患者では測定不能となる。

これらの結果から、慢性低リン血症かつ/または他の低リン血症に関連する代謝変化は FGF23 産生を抑制することが示唆される。したがって、FGF23 濃度測定は FGF23 関連低リン血症の診断に有用そうである。私たちは慢性低リン血症患者において Kainos アッセイで >30 pg/mL の場合は FGF23 関連低リン血症の存在が示唆されることを提案している。

2019年に日本で自動化された化学発光酵素免疫測定法 (chemiluminescent enzyme immunoassay: CLEIA) による全長 FGF23 (full-length FGF23) 測定が臨床検査として承認され、FGF23 関連低リン血症の診断とフォローアップの目的での使用に対して医療保険の適応となった。低リン血症患者に対する FGF23 測定は日本以外の国では承認されていない。

ビタミン D 欠乏はくる病/骨軟化症の重要な原因である。ビタミン D 欠乏によるくる病と XLHR はどちらも低リン血症と PTH 高値を呈し得る。25-水酸化ビタミン D 測定はビタミン D 欠乏によるくる病の診断に重要であるが、ビタミン D 欠乏によるくる病と XLHR とでは、25-水酸化ビタミン D 濃度がかなりオーバーラップしている。さらに、両疾患では、血清カルシウムと PTH の濃度もオーバーラップしている。一方、FGF23 濃度は両疾患を完全に区別することができる。


FGF23 関連低リン血症の治療
TIO 患者の治療の第一選択は責任病変の完全な切除である。これによって全ての生化学的異常は正常化し、骨軟化症は治癒する。しかし、TIO の責任病変は身体のどこでも存在し得、しばしば局在診断は難しい。さらに、腫瘍を見つけることができても、腫瘍が存在する部位や患者の健康状態によっては切除できないこともあり得る。

切除不能な TIO を含む FGF23 関連低リン血症患者に対してはリン酸と活性ビタミン D 補充が行われてきた。これらは XLH の小児および成人の石灰化障害を改善させ、TIO の症状を低減させることが示されてきた。しかし、これらの薬剤によって治療された場合でも XLHR 患者の身長は健常者よりも低くなる。さらに、二次性-三次性副甲状腺機能亢進症、高カルシウム尿症、腎石灰化、腎結石、下痢などの副作用もある。リン酸は 1日に何回も服用しなければならないため治療遵守の問題も起こる。上記の理由から、より良い治療法が求められていた。

FGF23 の過剰な作用が XLH や TIO などの FGF23 関連低リン血症の原因となるため、FGF23 活性の阻害が新しい治療法になるだろうと考えられた。FGF23 は KIotho/FGFR1 複合体に結合し、ERK などの細胞内シグナル伝達経路を活性化する。したがって、FGF23 の Klotho/FGFR1 複合体への結合を阻害することと、FGFR1 または ERK 経路を阻害することは FGF23 活性を抑制し、Hyp マウスにおいて低リン血症を改善させることが示されている。さらに、FGF23 に対する抗体は低リン血症、くる病および骨石灰化の障害、Hyp マウスの握力を改善させることが示されている。これらの基礎研究の結果から、ヒトの FGF23 に対するモノクローナル抗体であるブロスマブが FGF23 関連低リン血症に対する新しい治療法として開発された。

成人 XLH 患者 38 名を対象にした第 1 相臨床試験において、ブロスマブ単回静脈注射は血清リン濃度と 1, 25-水酸化ビタミン D を用量依存的に上昇させた。続く、成人 XLH 患者を対象にした第 1/2 相臨床試験では、4 週毎にブロスマブを皮下注射すると血清リンと 1, 25-水酸化ビタミン D が 1 年以上にわたって持続的に上昇することが示された。

安全性プロフィールは好ましいもので、薬剤に関連する有害事象で最も頻度の高いものは注射部位の反応だった。

小児 XLHR 患者を対象にした第 2 相臨床試験では、ブロスマブは血清リンおよび 1, 25-水酸化ビタミン D 濃度を上昇させ、くる病の画像所見を改善させることが示された。この試験では、小児患者においては 2 週間毎に投与した方が 4 週間毎に投与する場合よりも効果的だった。

小児患者を対象にした第 3 相臨床試験では、ブロスマブは従来の活性ビタミン D とリン酸補充による治療と比較して、血清リン、TmP/GFR および 1, 25-水酸化ビタミン D を上昇させ、アルカリフォスファターゼを低下させ、くる病の画像所見、臥位時の (recumbent) 身長·立位時の身長、Z スコアを改善させた。

成人 XLH 患者を対象にした第 3 相臨床試験では、ブロスマブは偽薬と比較して、骨の石灰化、WOMAC 身体機能および強度スコアを改善させ、骨折治癒を促進した。さらにブロスマブは血清リン、1, 25-水酸化ビタミン D 濃度を上昇させ、骨軟化症を改善させた。これらの結果から、ブロスマブは 2018年から欧州および米国を含むいくつかの国で XLH または XLHR 患者に適応となった。現在、ブロスマブの適応はアジア、南米、中東の国々にも広がりつつある。ブロスマブの適応疾患は国によって違いがある。いつくかの国では、XLH または XLHR に加えて TIO 患者に対しても適応がある。さらに日本では FGF23 関連低リン血症に対しても適応がある。

しかし、現在のところブロスマブが XLHR 患者の身長を正常化させるかどうかについては分かっていない。また、ブロスマブが XLH 患者の腱付着部炎 (enthesopathy) や歯の問題 (dental problems)、難聴などの合併症に対して影響を与えるかどうかについても分かっていない。腎機能や異所性石灰化などのさまざまなパラメータに対する長期的な安全性については今後の研究で明らかにされる必要がある。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33295878/
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