内分泌代謝内科 備忘録

米国におけるナースプラクティショナーと医師助手による診察は急増している

米国におけるナースプラクティショナーと医師助手による診察は急増し、診察の 4 分の 1 を占めている
BMJ 2023; 382: e073933. https://doi.org/10.1136/bmj-2022-073933

目的
医療機関受診のうち、ナースプラクティショナー (nurse practitioners: NP) や医師助手 (physician assistant: PA) が担当する割合と医師が担当する割合の経時的変化、および臨床的セッティング、疾患、患者の属性別の変化を検討すること。


背景
米国では、NP と PA の数が増加している。労働統計局は、2019 年から 2031 年にかけて、NP の数は200,000人から359,000人(80%増)に、一方、医師助手の数は120,000人から178,000人(48%増)に増加すると予測している。

しかし、これまで、NP や PA が提供するケアの割合やケアの種類を定量化することは、間接請求(incident-to または shared visit billing とも呼ばれる)の使用によって妨げられてきた。間接請求では、NP や PA が患者のケアのほとんどを提供するが、サービスの請求は監督医師の下で提出される。

2022 年に発表された新しい方法では、間接請求の訪問を特定する方法が説明され、2010 年から2018 年の間に、全米で NP や PA の訪問の 44%が間接請求されたと推定された。したがって、NP や PA が直接請求した訪問のみを調査する先行研究は、米国の医療システムへの彼らの関与を大幅に過小評価し、逆に医師の関与を過大評価している。

米国の医療システムにおける NP や PA の関与をより明確にするため、従来のメディケア請求における間接的な請求を特定し、NP や PA による診察の割合と、それが臨床的なセッティングや疾患、患者の属性によってどのように異なるかを推定した。


方法
米国における伝統的メディケア保険制度の全国データを用いて横断的時系列研究を行った。メディケア利用者(すなわち、65 歳以上の高齢者、永続的身体障害者、末期腎疾患患者)のうち、20%の無作為サンプルを抽出して解析対象とした。

外来および介護施設における医師、NP、PA が行った診察の割合を調べた。また、外来のセッティングと疾患によってこの割合がどのように異なるかを調べた。


結果
2013 年 1 月 1 日から 2019 年 12 月 31 日までの 2億7,600 万件の受診が解析対象となった。

2013 年から 2019 年にかけて、NP および PA による訪問診療の割合は、14.0%(95%信頼区間: 14.0-14.0%)から 25.6%(95%信頼区間: 25.6-25.6%)に増加した。

対照的に、この期間中、患者 1 人当たりのプライマリケア医の年間平均受診回数は 4.0 回(標準偏差5.5)から 3.3 回(5.1)に減少した(18%減)のに対し、患者 1 人当たりの専門医の年間平均受診回数は 4.2 回(8.3)から 4.1 回(7.9)にわずかに減少しただけであった(2%減)(図 1)。

図: NP および PA による診察の割合の推移 (右上)
https://www.bmj.com/content/bmj/382/b

2019 年の時点では、NP または PA による診察の内訳は、眼疾患: 13.2%、高血圧: 20.4%、不安障害: 36.7%、呼吸器感染症: 41.5%と疾患によって異なっていた。

NP や PA から何らかのケアを受ける可能性が最も高かったのは、低所得者(2.9%増)、地方在住者(19.7%)、身体障害者(5.6%)であった。


結論
米国では、NP や PA による診察の割合が急速に増加しており、現在では全医療機関の診察の 4 分の 1 を占めている。

この結果は、NP や PA が医師に取って代わっているという考えを支持するものではない。むしろ、NP や PA は、ある種の診察に重点を置いており、臨床医と互いに補完し合っている。

各疾患において、NP や PA の関与には大きな違いがあり、急性疾患(呼吸器感染症や尿路感染症など)や精神疾患では NP や PA の関与が高く、心臓病や眼疾患では NP の関与が低い。

NP や PA と比較すると、プライマリ・ケア医は新患診察が多く、定期診察は少ない。意外なことに、一人当たりの医師訪問数が少ない米国の地域では、NP や PA の訪問数も少ないことがわかった。この発見は、チーム医療へのシフトを反映しており、NP や PA が医師とともに診療することが多いということを意味するかもしれない。

また、障害者や低所得者である可能性が高い若い患者や、地方に住んでいる患者は、NP や AP によるケアを受ける可能性が高いという結果も出ている。NP や AP はまた、介護施設における高齢患者のケアにもますます関与するようになっている。

これらの結果を総合すると、米国では NP や AP が、十分なサービスを受けていない地域により多くのケアを提供していることが示唆される。

先進国の中では、米国は国民一人当たりの医師数が少ないという点で異例である。今回の結果は、米国が NP や PA への依存を高めることで、この相対的不足に対処してきたことを浮き彫りにしている。NP や AP は、現在、他の多くの国でも働いており 、米国で観察された傾向は、他の国々が自国の臨床医不足にどのように対処するかを考える際に、参考になるであろう。

https://www.bmj.com/content/382/bmj-2022-073933
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