先日6日木曜日、ずーーーっと行きたかった『大塚国際美術館』に行って来ました。
この写真は、夕方帰る時になって撮ったので、陽射しが少し違ってしまっています。
ここが入り口です。上の方に見えるのが美術館の建物ですが、この山の中に埋もれた感じで建てられています。(^^;)
この美術館は1998年にオープンしたので、もう22年も経っているんです。
上高地で働き始めた2002年には、存在に気付いていたので、もう20年近く、行ってみたいと思いながら行っていませんでした。
どうして切実に行きたいと思わなかったのかと云うと、やはり『陶板に写しただけの絵としては偽物』という気持ちが強かったからだと思います。
でも、いつだったか、この『陶板に絵を写す』ことがどんなに難しい技術だったかというTV番組だったかを見てからでした。
真っ平らな陶板を作ること自体が難しいところに、印刷の技術。
その2つを駆使してこの美術館が出来たということを知ってからは、行きたい美術館第一位! になったのでした!
でも人気の美術館だったので、きっと混んでいるだろうと思う気持ちと交通が不便と聞いていたので、ちょっと億劫だったのですが、このコロナ禍、外国客はいないし、きっとツアー客もいない、学校もまだ夏休みになっていないところもある6日、行ってみようかなと思って、アクセスを調べると、なんと美術館前に停車する京都発の高速バスが運行していると知り、絶対に行く!と決めたのでした。(^^;)
私が予約した時の高速バスの、座席指定状況は下の通り。
何だか嫌な感じ。団体客がいるのかな…、と思ったのですが、行こうと決めたのだからと、1席予約。これが前日でした。(^^;)
当日のライブカメラ日記にも書きましたが、京都7:40発の高速バスに乗るために、家を出ないといけないのが、少し余裕を見て6:10だったのですが、目が覚めたのが、6時。絶句…! 一瞬、もう行くのをやめようかと諦めたのですが、いやいや、ここで止めたら、きっともう2度と行けないかもしれないから、と一念発起して最短時間で行けるコースを検索して、6時半に家を出れば間に合うと確認して、用意。
京阪電車の七条駅で降りて、タクシーに乗って京都駅に余裕で到着することが出来ました。
ただ、いつも利用する高速バス乗り場は八条口にあり、烏丸口発のバスは初めて。
お上りさんのようにターミナルをうろうろしてしまいました。駅から一番近い乗り場でした。(^^;)
で、バスに乗ってビックリ。乗客は、ビジネスマンらしき人3名と、父子の帰省客、そして私の6人だけでした…!
コロナ禍のバス運行。かなり定員を減らしての予約だったようです。
京都駅を定刻の7:40に発車して、途中少し渋滞に巻き込まれましたが、
この橋を越えるとすぐ。左側に美術館はしっかりと見えましたが、初めてだったので、全くわかりませんでした。(^^;)
30分遅れの10:40に到着しました。バス停は、本当に美術館の真ん前でした!
長々と前置きを書くのがいつもの悪い癖…。
入り口にはチケット売り場がありますが、ネットで事前購入しておくのが、簡単です。
入り口前で検温(36.2度でした。)してもらい、中へ。
見上げると長い長いエスカレーターが…。外で見た山肌を上って行っているところ。
41mあるのだそうです。中央の階段は使いたくない…。(^^;)
開館後、約1時間で下りて来ているカップルの意味がわかりませんが、同じ時間にこのエスカレーターを使っているのは、前の親子だけ。(^^;)
普段なら、こんなんじゃないはず…。
エスカレーターで着くのは、地下3階。
この日はじっくり鑑賞する気満々で来たので、しっかりイヤホン鑑賞ガイドを借りました。
イヤホンは自分のを使用してもいいということだったので、使い慣れたイヤホンが使えて良かったです。(^^;)
さてさて、ようやく館内の情報を案内するところまでやって来ました。(^^;)
一番最初に見るのは、
『システィーナ礼拝堂』
ミケランジェロによるフレスコ画。正面の壁画は『最後の審判』です。
天井画は『天地創造』ほか。間口20m、奥行き40m、高さ16m。原寸大。環境展示と呼ばれる展示方法だそうです。
たくさんベンチが並べてあり、座って、ゆっくり眺めることが出来ました。
紅白で『米津玄師』さんが、中継で歌った場所としても有名ですが、大相撲の横綱白鵬関が結婚式をあげたり、ここで羽生さんが将棋の対戦をされたりしたこともあったようです。
地下3階は古代や中世の壁画や礼拝堂の環境展示が多く、最初の『システィーナ礼拝堂』も良かったのですが、イタリアのパドヴァというところにある『スクロヴェーニ礼拝堂』がとっても良かったです。
これがその内部。壁画には聖母マリアの生涯とキリストの生涯が描かれているのですが、天井の青い色が印象的で、両側にベンチがあり、ここでもしばらく眺めていました。
私がいた時には、父子1組しかいらっしゃらず、その父子も静かに眺めていました。
この場では、言葉が出ないです。偽物とは何か。本物を見たわけではないので、これが全く同じなのかどうかはわかりませんが、きっと本物はこんな風に明るい光の中で見ることは出来ないはず。フレスコ画を守るために。暗い中で見ると有難味が湧くかな。(^^;)
これは反対側。入り口側。
最後に少し時間が出来た時も、ここにもう一度来て、時間まで過ごしました。館内でお気に入りの場所になりました。本当に素敵でした。
本当の場所にも行ってみたいな…。
エスカレーターで地下2階へ。
地下2階は、ルネサンスとバロックの展示があります。
有名な絵画があふれ返っているので、別の意味で疲れます。(^^;)
大好きな『ボッティチェッリ』の『ヴィーナスの誕生』。172.5cm×278.5cm
大きな絵だった。こんなに大きいとは思わなかった…。
でも、この絵より、
この『春』が好きだったので、展示されていて、良かった!
『ヴィーナスの誕生』と同じくらいの大きさでした。この絵の鑑賞も、誰にも邪魔されることなく眺めることが出来ました。大満足の時間でした。
この地下2階で一番の売りは、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の
修復前と、
修復後の同時展示です。
これは、ここでしか見ることが出来ない! 陶板技術も、転写の技術も素晴らしいから価値があると思わせてくれる。
私は、修復前の方が好きかな…。(^^;)。
『レオナルド・ダ・ヴィンチ』と云えば、この絵が展示されていないわけはない。
大きな絵は、どうしても陶板の継ぎ目が気になるけれど、これくらいの絵の場合は、その気になる継ぎ目もないので、絵として見るけれど、そうなるとやっぱり頭の片隅に本物じゃないという気持ちが出てしまう。だからかな、ここで留まる人は少ない…。
『フェルメール』コーナー。
有名な『真珠の耳飾りの少女』もちゃんと展示されていました。
でも、フェルメールの絵で一番好きなのは、
この絵。『デルフトの眺望』です。思ったより大きな絵でした。96.5×115.7cm。
オランダのデルフトは、焼き物で有名な町です。私はヨーロッパで興味のある国はオランダ。そして一番行きたい場所は、デルフトでした。
360年前のデルフト。やっぱり今でも一番行きたい場所です。この美術館に来れば、いつでもこの絵に会えるんだなぁ…。
フェルメールの展示から次に進むのに、この通路を通るのですが、ここは吹き抜けになっているところをわざわざ通らせる…。
高所恐怖症の私はこういうちょっとしたところが結構怖くて…。他の方が、とろとろ歩いている状態でなくてホントに良かった。
下を向いて、ただただ小走りにひたすら歩きました。対岸の展示は、あまり好きではなかったので、もうここを通ることはないでしょう…。(^^;)
ただ、外に出ることが出来ました。モネの『大睡蓮』の場所です。
陶板に転写したモネの傑作。屋外の自然光で見ることが出来るなんて…。
ここでも、人がほとんどいませんでした。もっとも、とっても暑かったからもあるんですけど…。(^^;)
『大睡蓮』の陶板の周りには、池が作られ、実際にスイレン鉢がたくさん置かれ、スイレンがきれいに咲いていました。
地下2階なのに、外に出られるというのは、山の傾斜地に立っているからこそ。(^^;)
そのあとは、またエスカレーターで地下1階に上がります。
地下1階はバロックの続き、宮廷画家ゴヤの豪華な絵と、ゴヤの家の『黒い絵』を見た後、近代に続きます。
ゴッホのヒマワリが7点並んで展示されているのも、ここだけ。見比べるのも面白い。ここが一番密度が高かったように思います。(^^;)
ゴッホの絵の中で好きなのは、
『星月夜』です。ゴッホの絵が並んでいる中に、この絵があって、うれしかった! またきっと来よう。この絵が見られるんだから…。
この絵は、ミレー。『晩鐘』です。もちろん、有名な『落ち穂拾い』も。
『晩鐘』は、以前も大好きな絵で書きましたが、大好きな安野光雅さんの『ふしぎなたね』の最後の絵に呼応します。
また、大昔、私がまだ小学生の頃だったか、京都の美術館でミレーの特別展が行なわれたことがあったと思うのですが、その時に見た初めての本物の絵がこの『晩鐘』でした。『落ち穂拾い』よりも好きでした。
ね、こんな風にアップにすると、絵の大きさがわかりません。これが今まで本で見ていた時との違いです。この絵の大きさは、ずっと覚えていました。
絵の前で、思わず「覚えていました。」と、心の中で話しかけてしまいました。
この絵は、思ったより小さかった。もっと大きな絵だと思い込んでいました。
ハムレットのオフィーリアと云えば、このミレイのこの絵を思い出しますよね。流れる川に身を投げたオフィーリア。
手前の花は、きっと『バイカモ』
上高地の清水川でも清らかに咲いています。初めて清水川の上流で咲いている『バイカモ』を見た時、この絵を思い出しました…。
驚いたのは、
この『モネ』の『ラ・ジャポネーズ』。
とっても有名な絵です。私は、この絵はもっともっと小さいと思っていました。
それがなんと、231.6×142.3cmの2mを超える大きな絵だったんです。唖然…。
この絵のモデルは、モネの妻カミーユ。愛する妻を等身大で描きたかったのかも。
幸せそうに笑うこの絵が好きでしたが、もっと好きになりました。
そして、今回、気に入った絵は、この絵。『叫び』で有名なムンクの絵です。
『ダグニー・ユールの肖像』です。
独特の絵を描くムンクが、好きな女性をこんな風に描くのですね…。とってもステキ。
この女性は結局ムンクを選ばず、他の作家の妻となるのですが、ムンクの思いがとても伝わって来るように思えました。
ドガのコーナー。ね、誰もいないでしょ。ドガのところだからではなくて、他のところもこんな感じだったんです。絵を堪能することが出来ました。
そして、そして、この地下1階で、一番驚いて、一番感動したのが、
この『皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠』でした!
この絵を描いた人物の名前を知らなくても、この絵を知らない人はいないでしょう。教科書に必ず載っていた。ルーヴル美術館所蔵の大作です。
大きい絵だとは知っていました。でも、621×979cmだったとは…。横幅10m!
その絵が実物大で目の前にあるのは、圧巻でした。
この絵の前5mくらいのところに、鑑賞するために、ソファが置かれているのですが、私はそこに20分位いました。素晴らしかったです。本物じゃないのに! その大きさに圧倒されてしまって。ナポレオンがその威厳を誇示するために描かせ、満足したと伝えられているこの絵。そりゃ、満足したでしょ。(^^;)
私も大満足でした。そして、この前で感動していた20分位の間、この絵のある部屋に来られたのは、10人位でした。目の前の絵を全然邪魔されることなく堪能出来ました。
1階には、エレベーターで上がります。少人数で乗るのと大人数で乗れるのと2基ありました。
出るとレストランと目の前に庭園が広がっていました。
向こう側に見えるのが、本館。本館で現代とテーマ展示が行なわれています。
この時点で、13:40。結構へとへとになっていました…。(^^;)
お腹も空いていたのですが、とりあえず現代とテーマ展示を見ることを優先。
本館1階。
ピカソの『ゲルニカ』です。説明するまでもないですね。
この絵もカメラに写り切らない大きさです。349×777cm。自然光の中で見ることが出来ます。8月6日にこの絵を実物大で見ることが出来たことは、私にとっては、とっても意味深いことでした。ピカソがこの絵に込めた思いを静かに受け止めたいと思っています。
2階ではレンブラントの自画像の数々が一堂に…。
この辺りまで来ると、結構周りの観光客の方もヘロヘロ気味。
私もあんな風に見えているのかなと思うと、ちゃんと休憩しないといけないと思い、レンブラントさんから逃れるように、別館へ。
本館を出たところから、別館を見ています。大鳴門橋が見えています。
暑かったのですが、この庭園、一面が芝生で、とっても広々として良かったです。
『レストラン・ガーデン』で食事をすることにしました。
『鯛めしとうどんセット』税込1000円。
うどんは、鳴門わかめと油揚げがたっぷり入って、すだちも効いていて、美味しかったです。柔らかい少し平打ちのうどんでした。
帰りの高速バスは、16:52に美術館前を出ます。
ゆっくり食事をして、レストランを出たのが、14:50。あと2時間。
展示ガイドを見渡すと、見ていなかった絵があったりして、地下2階と地下1階を行ったり来たり。途中で、ナポレオンに会いに行ったりして、過ごしました。
閉館が17時。16時半頃から閉館のアナウンスが流れ、ミュージアムショップで会社用にお土産のクッキーを買って、また長いエスカレーターに乗りました。
そして、最初の写真に戻ります。
車で来られている方を乗せて駐車場に向かうシャトルバスが、何台も何台も来ていました。車で来られても、美術館までのアクセスに困ることはないでしょう。
最後に、この『大塚国際美術館』は、大塚製薬の創立75周年記念の事業として設立された美術館です。
偽物と本物について。館内で無料で配布されている『マップ&ガイド』や有料の図録に、初代館長の「一握りの砂」という言葉があり、そこにこの美術館設立の経緯などがわかりやすく書かれているのですが、『学生の頃にここで絵を鑑賞し、将来新婚旅行などで海外で実物の絵を見てもらえたらうれしい』と書かれています。
本物の絵は劣化するけれど、陶板の絵は変わらないというのです。
こんな素晴らしい美術館を1つの企業が果敢に挑んでいるところに感動します。今さらながら、大塚製薬という会社を見直しました。
ただ、少し不安なのは、今回コロナ禍で人が少ない時に出かけたので、とても空いた中でゆっくり鑑賞できましたが、次に行った時、普段の状態に戻っていたら、びっくりしてしまうかもしれません…。そこが心配。
館内のエレベーターに30~40人が一度に乗れるような大きなタイプがあったんです。
そこに1人で乗った時、ここにいっぱいになるくらい人が来ているのが本当だったんだ…、と思いました。
今回のようにガラガラじゃないかもしれませんが、行ってみられることをお勧めします!
現代のコーナーに、大好きなノーマン・ロックウェルの絵が展示されるようになるといいなぁ…。(^^;)