前作の28thシングル:Silence Blueから5ヶ月ぶりにリリースされたこの29thシングル。
前作が春のミディアムテンポだったのに対して、秋のミディアムテンポでしっとり大人の楽曲である。
ジャケットからも如実に現れていて、その色使い、表情、やわらかく優しい、シスターのような衣装で立つギリシャ神話の女神像のような石川秀美である。
ちょうどこの時期、お昼の番組「笑っていいとも」のテレフォンショッキングにて前紹介のバブルガムブラザーズのBro.KORNより紹介され、
1989年9月18(月) 石川秀美が登場。タモリの帰省に合わせてスタジオが福岡のフジテレビ系列のテレビ局から放送。
新曲であるこの曲の紹介と、福岡の産地料理についての感想など話していた。
ちなみ次に紹介したのは河合奈保子。「最近、髪を切られて、すっごくかわいく大人っぽくなられて!大人な方なんですけどね」。
その際の伝言メッセージに、
「最近舞台で忙しい奈保子さんへ、私も観に行きたいのですが、私自身も舞台の仕事が入っており観に行けなくてすみません。お体壊さないように、頑張ってください。」
と言ったようなものだった事を記憶している。
さて、楽曲についてであるが、
とてもCOOLでスタイリッシュなアレンジが施され、後の90年代に通じるR&Bなアプローチである。
この曲が収録されたオリジナル20th(ラスト)アルバム:PRECIOUSはサンフランシスコのスタジオ録音というあたりも、洋楽センスが濃厚な所以。
20thシングル:LOVE COMES QUICKLY~霧の都の異邦人~を踏襲した感じ。
あれ?この曲はコケたんじゃなかったっけ?と思うあたりと、
全曲もミディアムであっただけに、ノリの良いアップテンポを期待していたのになぁ。
Funkyな♪Da! Da! Da? Da!あたりをシングルとしてきって欲しかった。
とは言うものの、この頃の石川秀美のイメージ像を現すには十分なクオリティ高い大人曲ではあるのだが・・・
作家陣は後期の石川秀美作品に多々登場する人達。
特に作曲家の中崎英也は他の歌手作品にもたくさん曲を提供しているのだが、
非常にやわらかいメロディラインが特徴と思われる。
この曲においても、とても心地よいGROOVEが流れ、聴き絆される。
その意図を汲むように石川秀美のボーカルも包み込むような深い愛で歌う世界観。
語りかけるような、まろやかな歌唱法も随分と自分の歌唱法として確立している。
セールスにおいては非常に残念ながらチャートインせず。
なかなかこの時代に、このテンポの曲が人気を博すとは考えにくい。
1989年といえば、ダンスミュージックも日本ではかなり普及し人気だった背景を考えると、この手の路線でセールスを出すには非常に難しい。
せめてタイアップでもあれば、というところだが、タイアップもなく世に存在している事さえ伝えられない有様である。
一般視聴者には、毒にも薬にもならない無個性な曲と歌唱とみられがちなのが惜しい。
難しいなぁ。商業的か芸術的か・・・
当時、まだ少し残っていた音楽番組で何度か歌ってるのを見た事があるだけに、もっと戦略を練るべきだったのではないだろうか。
また、この曲からレコード市場的にCDシングルへとソフト媒体の変遷がなされ、シングルCDのみのリリースとなった。
一応、プロモーション用として、ラストEP盤が存在する。
ビデオ:AVIATION
DVD:アイドル黄金伝説 石川秀美
にもこの曲は収録されており、MTVとなっている。
個人的にはとても好きな曲で、大人の年齢になった現在にはとてもハマル。
本来の石川秀美の得意とする楽曲路線ではないが、アイドルからアーチストへと変貌した石川秀美のキャリアにとっては必要な大人曲でもある。
リズムとアレンジが何といっても秀逸である。また、聴く度に以前よりも説得力を増した石川秀美のボーカルに聴き惚れるのである。