与一から出て来た生き物の記録

奇妙な生き物。早朝の自宅ガレージ奥の「与一」の中から、様々な働きをする者たちが生まれています。その有様と効能の記録です。

そらの物語・48 「一の妄の生中継・4」

2011-01-16 04:35:24 | そらの物語


 


48


「一の妄の生中継・4」


 


あれ??これが見えない設定??と「ネコ」。



常日頃から非現実的な暴漢達も、この現実は受け止めがたい。 今、躍り出てきた「6号」そして、「サイモト」とその友人、「えびすのネコ・ヘビ」、これら全てが突然現れ忽然と消える。  「はぁ????」。”驚く”という以前に、まず受け止めきれず、キョロキョロするのが関の山の暴漢達。 その”唐突な変化”に何んら関係のない「そら」が振り上げた鉄パイプに応戦するべく、同じく鉄パイプを構えていた暴漢は、不意に後ろを振り返ってみたりするが、うろたえる仲間がいるのみだ。 これは”見えない設定”を「かけられた側」の「そら・ネコ・ヘビ・斎元・田川」も同様だった。京橋の街並み、人ごみ、目に映る全てが”色合いのバランスが取れていない、乱れ気味のビデオ画像”のように視覚される。 「スゲえ・・これ、おれらからは見えてて、他からオレらは見えてないんやな?、たかおさん??」。 暴漢達以上にキョロキョロしながら「ネコ」。 「そうそう!!”見えない設定”はみなさんにも上手く反映され始めたようです!奴らからボクたちはもう見えていません!ただ、あまり長時間この状態でいてますと、どんなおかしな事になるかも知れませんので、今のうちに、とっとと逃げましょう!!あ!”サエモト”さん、すんません!申し遅れました!!ボクはHiたかおと言います!お初にお目にかかります!」。 「・・・・・・・・・・・」。 絶句する以外、なすすべの無い「斎元」。 田川も同様、「・・どうも・・」と反射的に”中途半端なおじぎ”はしたものの、目の前で滔々としゃべりだした「生き物」に、”おじぎ”をしている自分こそが非現実そのものだ。 


 


 そしてその事を、怒りの塊となった「そら」に


理解できる様に説明できる”ゆとり”など、


そこに居合わせた誰一人として、持ち合わせるはずがない。


暴漢達の目の前に今現れた「そら」も、「斎元」と「その友人」も、


「そら」を追って来た「ネコ・ヘビ」も、”点滅”を始めている。


これは、”見えない設定”が、人体に反映し始めているのだ。


その唐突な変化に、何ら関係のない「そら」の鉄パイプが、


暴漢の一人に猛然と斬りつける。 この変化が全く理解できない


あわれな暴漢の一人の顔面に、まともに直撃しその場に倒れるが、


この時点で「そら」は暴漢達の誰からも、もう”見えていない”。


「そら」がいかに「接近戦に非力」であったとしても、渾身の鉄パイプをまともに受けて


倒れた暴漢は瀕死だ。 


「あかんあかん!あかん!!あかん!!!」。


「そら」の猛攻に「Hiたかお」が大声で叫ぶが、「そら」の耳にも心にも届いてはいない。


”見えなくなった敵”に対して構える暴漢達は、


どこの何に対して構えているのかさえわからない。


「6号!!!」。とっさに「そら」を取り押さえる「ネコ」と「ヘビ」。


「6号!!もうええ!!もう、ええって!やめろ!!」。


「うるさいっ!!こいつら、みんな”悪るもん”やろ!!全員殴ったる殴ったる殴ったる!!」。


「そら」の怒りは”発作”に近かった。 「そら」を取り押さえたものの、


「ネコ」も「ヘビ」も、この状況を上手く説明できない。


「6号、おれらは・・・取りあえず、取りあえず・・見えてへんねや!だから・・」。


「誰が見えてへんの?どれが見えてて何が見えてへんのや?


取りあえず、こいつら(暴漢)”しばい”たらええのやろ!!


”しばい”たらええねん!!こんなやつら!!」。


状況は理解しないままでの勢いは止めがたい。


こうなると「被害者」は暴漢達の方だ。


 「あかん!あかん!!”しばい”たらあかん!!逃げんねん!逃げるのっ!!」。


「ネコ・ヘビ」の言葉に関わりなく、再度鉄パイプを振り上げる「そら」。


 


ここで、おののく「斎元」が恐ろしい生き物でも見るように


「そ・・・そらくん・・・」。とだけ言って、絶句した。


はっとして、思いだした様に「斎元」の方に目をやる「そら」の瞳は


このピント外れに激情した怒りから、涙が光っている。


「そ・・そらくん、殴るのは・・・・な、殴るのは・・もう、やめよう・・」。


震える「斎元」の声は、まるで虐げられた小動物のようだ。


「殴るのは・・・やめよう・・・」。


「斎元」の言葉を”なぞる”様に「そら」。


 「そや!6号!行くぞ!!パパっと逃げよ!!”サエモトさん”、


斎元さんか?あんたも取りあえず行こ!お友達君も!!」と「ネコ」。


 「そら」の怒りにも驚かされた「斎元」だったが、さらに”不思議いっぱい”といった仕方で


「Hiたかお」を指さして何か聞きたげだが、そのゆとりはない。


「よしお!取りあえず、行こ!逃げよ!!」と田川に促され、それに応じる。


「そら」も「よっしゃ!逃げるんやな!・・・ほんなら、リョ-カーイ!!」。


と理解は出来ていなくとも納得はした様子。


(ヘビ)「取りあえず、バイクで逃げるのには人数オーバーやから・・」。 (ネコ)「そやな!おい6号、おまえは斎元さんとその連れが安全なトコまで逃げるまで一緒に行け。 おまえ、見つからん様に逃げるのは”プロ”やからな!!」。 (そら) 「うん!!」。 (ヘビ)「気ぃつけろよ!!あいつら、たぶんあっちこっちにおるからな!で、たぶん今ごろカイさんが1号と連携を取ってくれてるやろから、その結果どないするんか後で連絡するから!!斎元さん、こいつの電話返したってな!」 (斎元)「あ、はいっ!!」。 (そら)「おいヘビ!!3っつも4っつも いっぺんに言うたら、はじめが何んやったかわからんで!!」。 (斎元)「あはは!!そらくん、大丈夫!!オレが覚えてるから!!」。 (そら)「ほな、OKや!!」。 


(暴漢)「おい・・・おまえら・・・・」。


(Hiたかお)「しもたっ!!!設定が・・・切れとる!!」 (ヘビ)「早や!!ほな行こ!ハ~イ!!ショウ・タ~ィム(笑)!!!」。 


 


 


ーーー 「一の妄」からの乱れ気味の画像は”現場突入”後、冷静さを取り戻していた。 恐らく「一の妄」の突進が始まり、画像・音声共に乱れている間に、「ケリー・糸3番」の必死の説得があったのだろう。 怒りに我を忘れた「一の妄」をどうにかして止めるのは、いつも「ケリー・糸3番」の役目だからだ。 落ち着きを取り戻した画像は「オフィス・和解マンの事務所」に通じる階段から。ーーー


「さて、それでは気を取り直して・・・(ケリーの小声のアナウンス)・・・・みなさん、今、わたくしケリーと「一の妄」は、いよいよ犯行現場のまっただ中に突入した所であります!!ご覧のように、異常に静まり返った暗い階段が続き・・・あ、事務所の明かりが見えて来ました!!若干のざわめきが聞こえて参ります。中には「サソリ」と数名の暴漢たち、そして、未だ拘束されたままの”滝沢何んパオ”と数名の女性事務員が息をひそめているものと思われます!!無事なのでしょうか??」。 「おい!!そろそろ”カマクイ”に電話してくる様に伝えろ!!」。 「はい!わかりました!」。 「・・・・サソリの、サソリの声です!!聞こえましたでしょうか?何か、指示を出している様です。 仲間に電話するように・・・と・・」。 「なあ、何んパオさん、悪い事をしたなぁ・・もうすぐおれ達はここを出るから、もう少し辛抱してくれ。 あんた達を殺す事は、もうしない。 ただ、おれの言った事を警察にシッカリと伝えてくれれば・・の話しやけどな!!頼むで!」。 (何んパオ)「わ、わかった」。  


 


ーガチャ・・・・ー


「ああ!!何んパオです!!何んパオが出て来ました!!恐らく、今、サソリに言われた何かを、外に出て警察に伝えるのでしょう!!」。 「おいっ!!ケリー、何んパオ、撃たれるぞ!!取りあえず、中に入ろう!!武器だけでも取り上げようぜ!!」。 「そやな!!人命が第一や、よも清さ~~ん!!聞こえますか~!!」。


ーーーこのやり取りを見ていた「よも清さん」がーーー


(よも清さん) 「わかりました!!でもくれぐれも気をつけて下さい!!サソリの行動は私達にもわかりません。しかし、何もせずにはおれません。一の妄、最悪は・・・・あなたの”棒”でサソリを”叩い”てもかまいません!!”毒ちわわ”の「毒」が抜けるような効果があるかどうかは分かりませんが、・・・・最悪は”叩いて”みましょう!」。


「つわぁっ!!!」。


そう一声気合いを入れた「一の妄」と「ケリー・糸3番」は、


「サソリ」のいる事務所に突入した。


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そらの物語・47 「一の妄の生中継・3」

2011-01-09 08:05:06 | そらの物語


 


47


「一の妄の生中継・3」


 


「そら」には、この疾走には重要な意味がある、


としか思えないのだった。


久しく放置されていた”盗難スクーター”に飛び乗った勢いのままに、


集合場所のJR京橋駅・「吉野家横の路地」へ向けて、


”サエモト”救助の想いの塊となっての疾走。


片手に握りしめた”鉄パイプ”は、今すぐ暴漢達が襲いかかって来ても、


”応戦OK”の構えで、道行く人々をギョッとさせる程に、気合い十分だ。


「サソリ」が差し向けるであろう、暴漢達と何も知らない「斎元」が、


待ち合わせ場所で落ち合い、「斎元」が”そらの携帯”を渡す、


暴漢達が「斎元」を捕える、うろたえる「斎元」、


「斎元」の顔が苦痛にゆがむ、そう思い浮かべるだけで、


「そら」の想いに応えるべく、懸命にうなり上げる盗難スクーターの、


悲鳴の様なマフラー音さえ、苛立たしい。


 


京橋駅前まで来ると、未だ立て籠ったままの「サソリ」を発信源とする、


大きな騒ぎで、大通りまではみ出した野次馬と警察による通行封鎖の為、


前へ進めない。


「こいつら・・・じゃま!!」。


上空にはどこかの放送局のものか、1台のヘリが滑空を始め、


物々しい空気に拍車がかかる。人、人、人、人だ。


そしてこの中に、”そらの携帯”を返そうと、


田川とともに イソイソとやって来た「斎元」もいたのだった。



 


「はたらき協議会」が開催されて一日と経たぬうちに


このように緊迫した 状況判断に迫られる「協議会」となるとは


私達「生き物」の誰ひとりとして 想像しなかったのだ


現在 「協議会・中央」のPCには 


「Hiたかお」の視点から映し出された


「飛び出してしまった「そら」を追うヘビ・ネコ」の映像と


途切れがちの乱れた映像で


「犯行現場に突入してしまった一の妄」の映像が


交互に映し出され そのどちらもが


”急を要している”事が明らかだ


そして 場合によっては その生中継に登場する


「そら・ネコ・ヘビ・斎元さん・斎元さんの友人の方」に対し


一斉に”見えない設定”を施す必要があるのだ


「見えなくする」事により 安全を確保する為だ


そうした 「人間」に対しての”見えない設定”は


私達としては 未だかつてない事だ


そしてもう一つ 


私達がこうしている間に 19チャンネル「TV大阪」で


放映された”サソリの犯行声明”の中で


「月の者」という言葉が出てきた事を


私達は 見逃していない


これは 大変 不可解な発言であり 


事態を混乱させるばかりなのである


なぜ彼が そうした言葉を知っているのだろうか?


「大調査」が進む中 ある程度の”予測不能”な


出来事の到来は おおむね覚悟はしていた


しかし 「サソリ」の行動だけは あまりに想定外だ



 


「そら」の携帯を持った「斎元」と田川は、京橋駅前の異常な人だかりに、まずは驚いた。「あかんで!たがっち、これ直進は無理や。向こうの、ダイエーの方まで大回りせんとJR側まで行かれへんわ!」。と「斎元」。 「しゃあないな。だいたい、これ、何んの騒ぎなん?」。と「斎元」と同じく急ぎ足の田川。 ”騒ぎ”自体眼中にない「斎元」は「知らん。まあ、有名人でも来てるんとちゃうか(笑)あっ!あそこ、抜けれるで」。と、人ごみが幾分か和らぐ通りを指さして。 「あほ、有名人が来てて、なんでパトカーとか救急車とかあっちこっち いてんねんな(笑)こらあ、事件やでぇ!!なあ、よしお、事件でっせぇ~(笑)」。 「斎元」が指さした方向に向けて「斎元」と歩調を合わせながらおどける田川。 「あはは!!それ、誰の真似(笑)?取りあえず行こ行こ!!」。


上手く人だかりをかわした二人が、待ち合わせ場所の”吉野家・横の路地”に入ろうとするやいなや、二人の背後から「あんた・・・サイモトさん?やんな?」。との声。 振り向いた二人はギョッとした。そこに立つ数名の男たちには見覚えがある。 「はい、そうです。あ、どうも・・・」。


ーー あ・・この人ら、この前の・・ ーー


「斎元」も田川も、同じ事を思い出して、一瞬 不審顔を見合わせた。 鉄パイプ・クサリ・破壊音・怒鳴り声・バイク・・・・・。


「こんなにすぐに見つかるとは、思いませんでしたよ、サイモトさん。で、携帯は?・・・」。と”男たち”のうちの一人。丁寧な話し方には明らかに無理がある。 田川は警戒する視線を「斎元」へ向け、「斎元」は小さくうなずきながら「ええ、ここはよく知ってるんで・・」と答え、すぐには”携帯”を出さなかった。 「そうですか!ははは、じゃあ、携帯をいただくついでに・・」 ”男たち”のうちの一人が、そう言葉をつぐタイミングで、他の数名がポケットから、ジャラジャラという金属音をわざわざたてて、暴漢達お決まりの「鉄パイプ・クサリ」を取り出した。 「サイモトさん、あんたにもちょっとついてきてもらいたいんですけどね・・そっちのお友達も一緒に!」。 


ーー ホラ!!来た!! ーー


あまりにも”暴漢丸出し”の、男たちに「あ・・・携帯は・・い、いや僕は・・・」。と、うろたえる「斎元」を無視して田川。「よしおっ!!あかん!!逃げよ!!ヤバい!!」。


「いやいやいやいや、ヤバくない、ヤバくない(笑)、大丈夫ですよ!!」。 と、とっさに逃げる態勢の二人をサッと取り囲む男たちは、もはや”忘れものの携帯を、本人に代わって預かりに来た者”を演じる気は まるで無しだ。 暴漢達が、不敵な笑顔のまま「逃げる必要は・・・」と一斉に二人に飛び掛かろうというタイミングで、暴漢達の背後から不意に、「わあああああ!!!」という大声と共に、誰も乗っていないスクーターが暴漢たちに荒々しく追突し、それと同時に鉄パイプを振り上げた「そら」が飛び掛かって来たのだった。完全に不意をついての「そら」の激しい登場に、暴漢たちも「斎元」たちもいったん唖然とする。 一瞬静まった乱闘の気配の中心で仁王立ちの「そら」が再度 威嚇の大声。「わああああああ!!!」。


「ビックリした~!!!お・・・おい、このガキって・・・」。と暴漢の一人。 「ああっ!!こいつ・・・サソリ様の言ってた・・・”6号”??」。 「あ!そやそや!!あほや!!はははは!!自分から出て来おった!!」。 「そ・・・そら・・くん」と腰ぬけの態勢の「斎元」。 「おまえ、「えびす」の6号やな?」。と暴漢の一人。 「探しとったでぇ~ホンマに・・」。暴漢の一人が、さかさまにひっくりかえった「そら」の盗難スクーターを蹴り倒し、「6号・捕獲」というこれ以上ない”てがら”の前に、抑えきれない”したり顔”でにじりよる。「あほか!おまえらがおれをさがすんやなくて、おれがおまえらをさがしてここに来たんや!!わからん大人かおまえら!!!」と「そら」。


この瞬間である。「ネコ・ヘビ」と共に”現場”に到着した「Hiたかお」が、鉄パイプを振りかざした「そら」を”目視”したのは。 全てが同時だった。「そら」の鉄パイプに応戦しかかる暴漢。 とっさに「わっ!」と声にならぬ声でうずくまる「斎元」と田川。 「6号!!ちょっと待て!!」との「ネコ」の叫び。 そして、この唐突な展開を「協議会」のPCで見ていた「FA637」が、反射的に”見えない設定”をかけたのは。


 


 


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日記
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そらの物語・46 「一の妄の生中継・2」

2010-12-26 08:44:43 | そらの物語


 


46


「一の妄の生中継・2」


 


ーーー 「一の妄」の視点でのLive画像・京橋駅前、異常に多くの人だかり。


画像は「一の妄」・アナウンスは「ケリー・糸3番」で ーーー


(「Hiたかお」が皆に「あっ!!これ、たぶん”サソリ”の事ですよ!!カイさんのPCでも受信してみましょう!!」。と言うのを受けて、あわてて「カイ」がPCをひっぱり出して来る。立ち上がって出ていく構えの「そら」も、えびすメンバーも、いったんこの”速報”に集中。)


 


   「協議会のみなさ~~ん!!!今、わたくし、ケリーと一の妄は、ここ、京橋駅前、「第2トリガイビル」の前なんですけど・・・ご覧ください!!この”人だかり”!!!この中途半端な時間だというのに・・・大変な人だかりです!!え~、これは今日、昼過ぎに各局で一斉に報じられました緊急速報から、約3時間が過ぎた犯行現場の模様です!!犯人グループは未だ事務所内に人質と共に立て篭もったままで、途中、14:23に1回、そして15:48に2回と、「チュンッ!!」という射撃音が響きました。ピストルでしょうか?小型の小銃か何かでしょうか?詳細はまだ分かっていませんが、中で死傷者が出ている等の情報はまだ入っていません!!中には”オフィス和解マン”の教祖とそして、女性事務員5~6名が拘束されている様子で、連絡は取れなくなっております!!ご覧の様に「第2トリガイビル」と、その前の国道をはさんだ歩道には、多くの警官隊とパトカー、そして、それを取り囲む様に報道陣と野次馬があふれ返っております!!今の所 警察からは、その”射撃音”と”拘束されている”という事以外の発表はなく、膠着状態が続いたままであります!!”中”の状況が全く分からないだけに、突然に人質となってしまった人々の、身の安否が気遣われてなりません!「サソリ」達、犯人グループは、まず3日前に「三菱東京UFJ銀行」の京橋支店の襲撃のあと、指名手配となり一斉捜査となってから、いったん市外へ逃走。そして次の日の夜、「えびす」のコンテナを襲撃しています。この襲撃に動員された暴徒の人数は、「UFJ襲撃」の時の人数の3倍から4倍に拡大。そして今回の「オフィス・和解マン」の事務所の籠城には、ほんの数名で、しかも厳重な警戒態勢の布かれたこの城東区内の「UFJ銀行」の目と鼻の先!!普通では考えられない行動です!恐らく犯人グループはいくつもに散在していて、あの事務所の中から指示を出しているものと考えられます。自爆行為とも取れるこのスピーディーすぎる行動、ちょっと考えられません!!あっ!!ああっ!動きがありました!!!。


中から・・・中から人が出てきました!!人質にされていた女性事務員です!!1名です!!手に何かを持っています!!いや、持たされているのでしょうか?。CD??CDですか?一枚のCDを持って出てきました!!武装した警官隊数名が駆け寄り・・


ーーー チュンッ!! ーーー


ああああっ!!!発砲です!!発砲しました!!


じょ・女性事務員が・・・・・


 


ーーー 女性事務員、警官隊の方へ歩む足取りはそのままに、頭部のみ”痙攣のようなしぐさ”で、その場に倒れ込む。 手に持っていたCDが転がり、慌てて駆け寄る警官隊は間に合わない。居合わせた多くの野次馬の中のそこかしこから悲鳴とどよめきと混乱。女性事務員が倒れ込み、打ち付けた頭部の下から”赤”が断続的に広がる。予期せぬ展開に、とっさにバラバラに”応戦”の構えの警官隊。


動画が急に乱れ、「一の妄」と「ケリー・糸3番」の何やらもめている会話 ーーー


(一の妄) 「おいっ!!ケリー!!あかんわ!!おれ、突入するで!!!こらぁあかん!!止めなあかん!!」。(ケリー・糸3番) 「あかんあかん!!勝手に行動したら!!よも清さんに聞いて・・・」。(一の妄) 「あほか!!人が殺されてるんやぞ!!行くで!!」。


ーーー この会話を聞いていた「よも清さん」もあわてて ーーー


(よも清さん) 「まずいです!!「一の妄」を止めて下さい!!ケリー、聞こえますか?!ケリー!!」。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。


ーーー 画像は乱れつつも、突進する「一の妄」の視線がとらえる映像。人だかり。地面。警官隊。事務所の入り口。音声は「ケリー・糸3番」の何か叫んでいる声。音声も「ガサガサ」というノイズで切れ切れに。 ーーー


(司会・生き物) 「よも清さん、こちらからの声は、もう聞こえていませんね。サソリ・・・。これは・・わたくしもゆるせません!!しかし、このタイミングでの突入はまずい・・。!!でも、人間からは「一の妄」は”見えない設定”になっているから・・」。


(よも清さん)  「いや・・・・そうなのですが、あの中には恐らく「サソリ」がいるのでしょう?!「サソリ」だけは・・」。


(司会・生き物) 「あっ!そうですよ!!「サソリ」からは見えてしまう・・・」。


 


ーーー この「一の妄」からの突然の画像に集中していた「えびすメンバー」も、「司会・生き物」と同じリアクションで ーーー


(カイ) 「そうや!「一の妄」さんはサソリからは見えとるわ!!」。 (ヘビ) 「あ、でもサソリから「一の妄」さんは見えてても、ホラ、京橋の停電の時に”和解マンのふり”で出て行って、それ以来やから・・・・サソリの奴、”和解マンが出てきた”って思うんとちゃうかな?」。 (カイ) 「あ、そやな。 ただ、”和解マンがもう一回出てきた”って奴が思ったとして、今の奴からしたら・・・」。 (ヘビ) 「おれがサソリやったら・・・”撃ち殺す”やろな・・。 だって、ただでさえ、今、完全に包囲されてる真っ最中やろ? ちょっとでも”ややこしい何んか”は、いらんで!」。 (カイ) 「でも、あいつ、”ここ”を襲ってきた時は「鉄パイプ」しか持ってへんかったで。”チャカ”はおかしいやろ?  (ヘビ) 「そやな・・。もしあれから今までに武器の調達をしたんやとしたら・・いや、そんな簡単にはできへんやろ? 1日くらいしか時間たってないし!!」。 (カイ) 「・・・・・・でも、今もあいつ、あの完全に包囲されてる中から”6号の携帯”に電話して、「サエモトさん」と話してる訳やろ?で、たぶん仲間に京橋の待ち合わせ場所に行くように指示して”次”のだんどりしてるって・・・・あそこから出れる確証があるんか??・・・・・・なんか・・・なんか、ごっついスピードで”進化”してない?悪い方向で!!」。 (カイ) 「あかん、ホンマに何するかわからんな!!」。


 (ネコ) 「あっ!!ちょっと待って!!


6号は?!6号がおらんで!!!」。


(カイ・ヘビ) 「しもた!!あいつ!!!・・・」。


(Hiたかお) 「京橋や!!待ち合わせ場所の!!!」。 


 


 ー「ゆきりん」の視点での「えびすメンバー」の画像も、にわかに乱れ出す。「ゆきりん」の視点は、メンバーがこれからどうするのか推し量ろうと、あちこちを右往左往するめまぐるしい画像。ー


(ネコ)「オレ、すぐ追っかけるわ!!ほらカイさん、”鉄パイプ”が一本無くなってる!!あいつ!!・・・」。 (ヘビ) 「オレも行くわ!!」。 (カイ) 「了解!でもおまえ、怪我は・・」。 (ヘビ) 「どうでもええ!!取りあえず、6号や!!」。 (カイ) 「分かった!おれは1号と連携取っとくわ!!無茶はすんなよ!!」。 (ネコ・ヘビ) 「了解!!」。 (Hiたかお) 「おおおおおお、オレもオレも行くわ!!」。 (ネコ) 「あ、たかおさん!!そやそや!たかおさん来てくれた方がいいッスね!!もし乱闘とかなったら連中からたかおさんは見えへんし・・」。 (ヘビ) 「ごちゃごちゃ言うてんと行くで!!」。


ー「ネコ・ヘビ・Hiたかお」が慌ただしく出て行こうとする、乱れ気味の画像。急に「カイ」のPCを通じて、「よも清さん」がメンバーに話しだすー


(よも清さん) 「皆さん!突然にすみません!!わたくしはこの前の”和解マンの折”に電話したものです。ネコさん、ヘビさん、「斎元さんとそらくんの救出」についてですが、もし最悪、暴漢たちとの交戦となってしまった場合、交戦しなくていい様にしたいと思います!」。 (Hiたかお) 「あっ!!よも清さん!!」。 ”(カイ) 「あ!!この前の!!」。 (よも清さん) 「はい、ご存じだと思いますが、こちらの方で”見えない設定”というのがあるのですが、最悪の場合は「そらくん、斎元さん、ネコさん、ヘビさん」の全員に、その”見えない設定”をかけたいと思うのです!!たかおくんも一緒に行くのであれば、たかおくんの視点でそらくん、斎元さんをとらえた時点で、それが可能です。ただ、それは”交戦になった場合のみ”です。 ”見えない設定”にはその後に「点滅してしまう可能性」がありますし、私達「生き物以外」にその設定をかけるのは初めてでもあるからです。 とにかく、暴力には頼らない救出が第一だと思うのです」。  (やる気満々だったヘビは絶句、ネコは突然の「よも清さん」の早い言葉に一旦躊躇し、しかし、よく考えるとその通り、という顔で) 「よも清さん!!OKです!!それで行きましょう!!」。 (ヘビ) 「よっしゃ!わかりました!!よう考えるとオレも今はくだらん怪我のおかげで戦力ダウンやし!!行こ!行こ!!」。 (カイ) 「よも清さん、了解ですわ!!オレもええ年こいて、大人げなかったですわ(笑)!!ありがとうございます!!」。 


ー画像はヘビ・ネコがいったん握った”鉄パイプ”を元へ戻す「カラン!カラン!」という音と飛び出す二人の背中。その後ろを何本もの”予備の鉄パイプ”を抱えた「Hiたかお」が、ちょっと恥ずかしそうに それを「ガラガラ」と戻し、慌ただしくついて行く画像。音声のみで「も~、たかおくんったら!」との「ゆきりん」の声。ー


 


 


ちょうどその頃、19チャンネル、TV大阪。


「サソリたち」が立て篭もったままの「オフィス・和解マン」のニュースの中で、


射殺された女子事務員を通じて警官隊・報道陣に渡ったCDの内容が、


大々的に報じられる事となった。


これは、「サソリ」の側からの「犯行声明」であり、


等の本人の画像をビデオ収録したもので、


「これをTVで放送しなければ、人質を射殺する」


という条件を出した為に、”已む無く”の放送となったのである。


  



 まず、はじめに言っておこう。


おれの「ことば」は”奇跡”である。 


見ての通り、おれは今、「オフィス・和解マン」の事務所を占拠し、


その中心にいる。このメッセージを持たせた事務員については、


冥福を祈るばかりだ。殺す必要はなかったのだが、


おれの徹底した姿勢を理解してもらう必要があったからだ。


しかし、これ以上の命を奪う事はしないつもりだ。


おれ達は何かを要求しているのではない。


要求するものは、もうすでに手に入っているからだ。


これよりおれたちは完全武装を開始する。


この事をわざわざこれを見ている全ての人に伝えるのは、


ちょっと聞きたい事があるからだ。


”おまえたちは、生き生きと生きているのか?”


という事だ。もし、そのように生きているのであれば、


それはそれで良いじゃないか。しかし、もし、そうでないならば、


オレたちと一緒に、あんたの作りたい世界を作ればいい。


おれは見てのように、完全に包囲されている。


しかし、おれの心は、今までにないほど高揚し、自由だ。


そして、澄み切った心で、”悪”を行おうと思う。


完全武装の後、おれは恐らく”進化”しているだろう。


その時は、まもなくだ。


その時が来たら、おれは名前を変えようと思っている。


「月の者」だ。


興味のない者もいるだろう。そして、


興味のある者もいるだろう!


ここを無事に出れたら、連絡先を公表する。


これは、ただ、それが言いたいだけの、


おれのメッセージだ。以上。


そらの物語・45 「一の妄の生中継・1」

2010-12-17 06:04:45 | そらの物語


 


45


「一の妄の生中継・1」


 


           


 


 


  


 (斎元) 「はい、僕は「そら」くんの携帯を預かっているんですが、「そら」くんの知り合いの方ですよね?」


(サソリ) 「・・・・・そうです。サソリといいます。ちょうどよかった!!


その電話を本人に返すんで、ちょっと”京橋駅”まで持ってきてもらえませんか?」。


(斎元) 「京橋駅、ですね?京橋駅のどこらへんまで行けばいいですか?」。


(サソリ) 「ああ!来れば・・・すぐにわかりますよ!ひひひ・・・・あんたは6号の、いや、「そら」の知り合いか何か?」。


(斎元) 「いえ、知り合いでも無いんですが・・知り合ったっていうか・・取りあえず、友達です」。


(サソリ) 「おおおっ!あんた、ナイスやわ!”友達”ね!!うん、ナイスや!で・・・」。



 


 


ーーー はじめに 「ゆきりん」からのLive画像(「そら」を囲んで えびすメンバー) ーーー


(ネコの携帯をにぎりしめて「そら」。ちょっと興奮気味の面持ちで) 「おいっ!たかお!! そんなトコで倒れてるばあいとちゃうぞ(場内・笑い声)!」。 


(横たわりながら、点滅の余韻に少し震え気味の「Hiたかお」) 「あほか!!誰のせいでこうなってるんか・・・イテテ・・・」。


(そら) 「たかお!!電話OKってメール来たから、電話するで!!なあ!ちかちかしてる暇ないで!!おれが今からこの「サエモト」に電話するから、たかおがバシッと、ココの行き方を説明しなあかんで!!」。


(Hiたかお) 「そらぁ説明はなんぼでもするけど、おまえ、たまには自分でちゃんと説明せえよ!それに”ちかちか”って・・・おまえもいっぺん”ちかちか”させたろか!!どんだけ痛いか・・・あ、それやったら、おまえ電話代わる時たいがい黙って急に代わるやろ??自分からオレに電話代わる前に、せめて「だれそれに代わりますので・・」くらいはキチンと言う事なっ!!OK??」。 


(そら) 「OK!!リョ~カ~イ!!ほな行くで!」。


pi  pi・・・・pipipi


・・・・・


(ネコ) 「おっ・・・電波わるいか?なかなかつながらんな?」。 (カイ) 「ホンマやな?その”サエモト”さんって、山の中かどっかかな?」。 (ヘビ) 「いやあ・・最近の携帯やから、山の中でもたいがい繋がるで!」。


・・・・・・・・


「・・・・現在この電話は通話中の為、お繋ぎできません。 現在この電話は・・・」


(ネコ・カイ・ヘビ) 「???通話中??な・・なんで?」。


(ヘビ) 「おかしい!おかしいおかしい!!それはおかしいで!!だってこれ、6号の電話やけど持ってるんはその”なんちゃらさん”やろ?そんな、人の電話で勝手に・・」。 (カイ) 「あっ!!ひょっとして、誰かから電話かかってるとか?!」。 (ネコ) 「いや、でもおまえ(そら)の携帯番号知ってる人って・・・」ここにいる俺らと・・・あとは1号と・・・・・・」。


(カイ・ヘビ・ネコ) 「・・・・サ ソ リ や!!!」。 (えびすメンバーの表情が”サっ”っと険しくなる。 カイ) 「いや、サソリとは限らんで。1号かも・・」。 (ヘビ) 「いやいや、今、1号は仕事中やわ!!1号は仕事中はメールも難しいくらいやから、それはない、間違いないな!!サソリや!!サソリがどっかからか電話して来とんねや!!」。 (カイ) 「サソリはでも今、指名手配中やろ?しかも関西連合からも追われて、逃走真っ最中やろ?? のんきに6号に電話してるゆとりなんか・・」。 (ネコ) 「ええ??何んの用事や??って言うか・・・・あ、話し中って事は、その”サエモトさん”と何か話してるって事やんな?・・・・・ヤバくない??いや、ヤバいやろ!!今のサソリと話しって激ヤバやん!!!」。 (カイ) 「あっ!!ホンマや!!今のあいつ・・・・何するかわからんわ!!ヤバいわ!!その”サエモトさん”!!!」。 


ガタッ!!!


(突然「そら」立ち上がり)


「おれ行って来る!!!!」。 (カイ)「6号!ちょっと待て!!場所もわからんやろ?それに、行ったとして・・・どうすんねん?」。 (そら) 「行って・・・取りあえず行く!!」。 (カイ) 「あかん!あかん!!ちょっと待て!!」。 (Hiたかお) 「ちょっと待ってな・・・(と言いつつ、さっき協議会でFA637が斎元の住所を突き止めたのを思い出し、それをもう一度聞こうとして、一拍考えて、やめる。 次に「ゆきりん」に向かって協議会にいるFA637に)お~い!FA637!!この通話の相手って誰なのか、確認できるかな?」。 


ーーー えびすメンバーのやり取りの画像に集中していた生き物の中からFA637が進み出てーーー


(FA637) 「すみません!通話相手の確認は相手の情報がないので、できません。しかし、その通話を”3者通話”に切り替える事はできますよ!!こちらで勝手にそうするのは失礼ですが、この場合は緊急事態かもしれませんので。”3者通話にした上で、こちらは何も言わずに黙っていれば、その”サエモトさん”とサソリとの話は丸聞こえになります」。 (Hiたかお) 「”3者通話”!!よっしゃ!!それで行こう!!で、その3者通話をスピーカーホンにしといたら、えびすのみんなにも聞こえるし、協議会のみんなも聞こえるわな!!ねえ、カイさん、ボクの仲間が”3者通話”にできるって言うてますんで、それでどうです?」。 (カイ) 「ええ?そんな事できるんですか?たかおさん達って便利にできてますね!で、たかおさんは今、誰と話してるんですか?ゆきりん?」。 (ゆきりん) 「あたしじゃなくて・・えっと・・」。 (Hiたかお) 「説明はあと!あと!!でFA637、どこをどうすれば”3者通話”にできるのかな?」。 (FA637) 「「」ボタン長押しでいけると思います!」。 



pi・・・


「  」 (ゆきりんからの画像には「ネコ」の携帯のみ)


「・・・・・ですね。はい、2人で行くつもりです。」 (サソリ)」「お~っとっと・・・できたら一人で来てもらえたら、こちら的にはうれしいんですけどねぇ・・・まあ、いいか・・・」。 


ーーーえびすメンバー、「あっ!やっぱりサソリや!!」という面持ちで顔を見合わせる ーーー


(斎元)「えっ??僕一人で、ですか?」。 (サソリ)「あ、いやいや、いいですよ2人で!2人でも3人でも!!で、一応、あんたの”お名前”を教えてもらえますか?」。 (斎元)「あ、はい、斎元っていいます」。 (サソリ) 「”斎元”さん、ですね!OK!!わかりました!!じゃあ、京橋駅のJR側の”吉野家”の横手のちょっと人通りが少なくなる所、知ってますね?」。 (斎元)「ああ!!バッチリ知ってますよ!大丈夫です!!そこまで行けばいいんですね!!」。 (サソリ) 「そうそう!だいたいの服装も一応聞いておいてもいいですかネ?」。 (斎元)「ああ、服装ですね。めっちゃ分かりやすいですよ。”優しさ倉庫”って会社の作業着のままです、2人とも!」。 (サソリ) 「”優しさ倉庫”の作業着、ね!分かりました!ちなみに、この電話をしてるオレ自身は、今ちょっと取り込んでて、そちらには行けないかも知れませんけど、親しい者が”斎元さんですね?”って声をかけますんで、待ってて下さいね。斎元さんが預かっているのは、あいつ(そら)の携帯だけですね?」。 (斎元)「えっ?いえ、手帳とかカードとかも・・あれ?「そら」くんとは会ってないんですか?ん?聞いてないんですか?」。 (サソリ) 「いやいや!!聞いてます聞いてます!!確認です!!今はさっき言ったように、オレの方が”取り込んで”るんで・・。いやぁ、斎元さん、ありがたい!やつ、困ってたんんで、喜びますよ!!」。 (斎元、一緒にいる田川と顔を見合わせ、「んんん?困ってる?って??・・・という表情」)。(斎元)「それじゃあ、今からすぐに出発し・・・・・」。


ーーー息を殺してこのやり取りを聞いていた「ヘビ」が小声で、「カイさん、これ、人質ですよ!多分!!」。うなずきながら「そやな、サソリの目的は・・・・この斎元さんを”だし”に・・・6号や!!」と「カイ」。ーーー 


(サソリ) 「了解です!!こちらもすぐに、その親しい者に向かわせますね!!本当にありがとう!!」。 (斎元)「いえいえ!!どういたしまして!!それでは後ほど!!」。


pi ・・


 


ーーー 再び「ゆきりん」からの画像 ーーー


「おれ、行くわ!!」。と手早く身近にあった鉄パイプを掴んで飛びだそうとする「そら」。 「あほ!!ちょっと待て!!おまえだけやったら無理や!!何人で来るか、わからんぞ!!俺も行くわ!!」。と「ネコ」。「カイさんもヘビも負傷してるやろ?そやから、取りあえずおれと6号で・・・」。 「ぼくも行きますわ!!奴らからボクは見えへんし!!」。と急に「Hiたかお」。「ボクがやつらの後ろから・・・・」。


ーーー ここで突然に、この「ゆきりん」からの「えびすメンバー」のやりとりの画面にかぶせるように


「一の妄」からの”速報”が飛び込んできた。


 


 


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そらの物語・44 「はしみ荘の緊迫」

2010-12-08 16:47:14 | そらの物語


 


44


「はしみ荘の緊迫」


 



 


ずっと、そればかり想いつめていた斎元は、


唐突な「そら」との出会いを経て一夜明けても、


未だに信じがたい高揚感はそのままだった。


 ”信じがたい”とはいっても、今自分の目の前に置かれた小さな携帯電話は、


確実な”これから”を予感させ、老朽化したこの「はしみ荘」に


ゆさぶりをかけるような勢いで斎元の心に現実的だ。


どう考えても、”あの子”は、”おれ”とつながろうとしていた。


いや、それは自分の妄想などではない。


突然で、一瞬ではあったが、起こった事柄を順序立てて考えると、


間違いなくつながろうとして、そしてこの携帯を・・・・。


ー おれを・・どっかに、つれていって 


今にもこの携帯から聞こえてきそうな、そのセリフ。


「絶対に、電話してくる・・・


しかも、”おれがこの電話を持ってる”と知った上で!!」。


斎元の目には、モノクロのイメージの強いこの部屋の、


隙間だらけのくたびれた畳みも、キチンと閉まってはくれない窓も、


全てがフルカラーで色めき、そして緊迫して見えるのだ。


部屋の風景は、何も変わっていないのに、全てが今までと違う。


「そら」の携帯の充電器の差し込み口が、


自身の充電器と同じである事を確認した「斎元」は、


電池が切れないように、そっと充電していた。


「そら」の携帯が「斎元」の充電器によって充電されていく。


それだけで、身もだえしそうな”歓喜”がわき出して来るのはなぜか?


これは、あの豪雨の中での一瞬の「そら」との語らいの中で、


ほとんど会話らしい会話は交わされていなかったにもかかわらず、


すでに”「そら」の意思”を言葉を超えたところで受け止め、


それに応えている、という”歓喜”なのかも知れない。


 


 


この日の昼過ぎに、「そら」からの一本目のメールが届いた。


ーーおれわ「そら」ていいます


はんかちお かやしたいので


それと ちよとだけ”おはなし”とか


あんたと したいです ーー


 「おれわ」・「はんかちお」・「かやしたい」・「ちよとだけ」・・・・。


斎元は、この日本語としては不手際なメールを、


何度も何度も読み返し、もう「声」が聞こえて来ているような、


あふれる愛しさで、緊迫するばかりだ。


そして、かなりの時間考えた末、「そら」の携帯から


「そら」が指定した「ネコ」の携帯へ、


いつも言葉の多い「斎元」としては、必要最小限の返信をした。


わっ!!!!


「斎元」の背後から、突然の大声。


「び・・びっくりするがな!!」。 親友の田川が上がり込んでいた事に、まったく気づかなかった「斎元」。 「普通、気がつくで(笑)!、よしお!」。 「何か言うて入ってこいよ~!!」。 「あほ!何回も言うたって!聞こえてる素振りがないから、勝手に上がって来たんや、で、どうなん??その後の進展は?ハイ、コーヒー」。 「あ、さんきゅ!」。 田川の買ってきた缶コーヒーを受け取る「斎元」。 その質問は、何より今一番聴いてほしかった質問だ。 「聞きたい(笑)?」。 「わっ!!何?その気持ち悪い”笑顔”(笑)」。 「きもち悪いとかって言うなよ(笑)!!来たで来たで来たで!!メール!!見せへんけど(笑)」。 「えっ?あの、そらって子から?」。 「まあ・・ハイ!!」。 「いやいや、そらあ、見せんでいいけど、何んてメール来たん?」。 「・・・・んんんん、とっても・・とっても、いいメール(笑)」。 「おいっ!わからんぞ(笑)」。 「今そのメールの返事を送ったトコやわ。 取りあえず、この携帯とか手帳とか、返してあげなあかんやろ? どこまで持って行ったらいいかなって送った」。 「うわ!進んでるがな!ええ(笑)?これってアレか?”斎元くんとそらちゃんの恋物語”の始まり(笑)??おれ、目ぇ~瞑っとこか(笑)??」。 「あほ!!」と、真っ赤になった顔を隠す「斎元」。


pi・・・pipipi・・・・


メールが来ました! メールがきました! メールが・・・


  「ええっ??もう返事??早やっ!!!」。驚く「斎元」。 「うそっ!!どんなん?どんなん??」。 突然の着信音に、思わず「斎元」の持つ「そら」の携帯を覗きこんでしまう田川。


pi



「さえもとくんえ」


あんたは さえもとくんですか


おれはすぐにはんかちお


かやすといいました


そやのに かいさんが


せんだくしてからと ゆうので


あしたにかやします


だからあしたに おれのでんわ


もてきたら いいかんじになります


おれのうちは なないろにいてます


ばしよとかは おれがむずかしい


ことばのせつめがわからんから


あたまがよわいからです


でんわおしてもいいですか?


そしたらたかおがうまいこと


せつめおするのです


こんなながいはなしおかいたのわ


おれはさえもとくんのことが


すげえきになているからです


よるとか あさとかも ずうと


ようさん(沢山)おもてるのに


なかなかあえないのです


 


 


「・・・・・・・・・・さ、さえもとくん・・・」。 「なあ、よしお、この子って・・・」。 二人とも言葉につまった。 「そら」の”療育手帳”をそっと見ながら「斎元」が言った。 「うん、一生懸命・・・・一生懸命、返事、書いてくれた・・・」。 「なあ、よしお、この”かいさん”とか、”たかお”とかって、この子の仲間かな?」。 「わからん、わからんけど、取りあえず電話OKメール送るわ」。 pipipi・・・・・。 「なあ、よしお、この仲間チックな人は、たぶん、あのバイクの人とちがうかな?ちょっと”いかつい系”の・・・」。 「うん、おれ的に抵抗はあるけど・・・ええわ、何んでも!”何でも出てこい”や!」。 「おっ!!”さえもとくん”、男前!!」。 「うるさい(笑)!たがっち、そこのメモとボールペン取って・・・」。


pu・・ pu・・pu・・


puurururur!!   pururururu!!!・・・


「来たぁっ!!!(斎元・田川)」。


Pi・・・


「もしもし・・・・」。


「・・・・・・・・・・」。


「あれ??もしも~し、そらくんの携帯電話ですが・・・??」。


「・・・・・・・・・・」。


「あれれ??電波悪いんかな??・・もしも~し!!」。


 


 


「・・・・・・・おまえ・・・6号と、違うな?」。



 


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そらの物語・43 「Hiたかおの報告」

2010-12-02 16:51:21 | そらの物語


 


43


「「Hiたかお」の報告」


 


「ゆきりん」からの報告に次いで 


各定点での「大調査」の進捗状況の報告が行われた


注目はやはり「京橋駅近辺」での様々な動きであった


「和解マンの動き」・「そらの動き」・「「月の者」の存在の可能性の高い優しさ倉庫」・


他にも「毒ちわわ」や「サソリの動き」など 「大調査」を進めていく上で


きわめて重要な出来事の全てが 「京橋」に集中しているからだ


しかし その他にも 「守口市駅」や「萱島駅」近辺 「枚方市駅」など


京阪線の中核を担う駅・近辺にも多くの仲間が配置されている


この報告が 順次行われていった


報告といっても 淡々と語る生真面目な「生き物」もいれば


自慢の歌やダンスを披露する者もいて


「はたらき協議会」は活気のある盛り上がりとなっていった


途中 2~3時間に1回は 休憩をはさみながら


時刻は夕刻を過ぎたころ


 注目の生き物・「Hiたかお」からの一報が入った



「Hiたかお」      「毎度まいどまいど!!、協議会の皆さ~ん!!Hiたかおです~!!連絡が遅くなって、ホンマ、スンマセ~ん!!今、”点滅”はバッチリ止まってゴキゲンですわ!」。


「司会・生き物」    「OH!!!たぁ~かぁ~お~君!!まいどまいど!!もう、大丈夫なのかい?」。


「Hiたかお」     「はい!一時はどないなるかと思いましたが、今、こちらに「ネコ」と「そら」が帰って来たんですけど、・・・全然、全くサッパリ大丈夫ですわ!!”点滅”は起こりません!!取りあえず、こちら「えびす」の最新情報ですが、「そら」がどこかで電話を落としてきたって事で、「カイ」さんに事細かに聞かれた所、”落とした”んじゃなく、”渡した”ってのが正解だったんですよ!!!「そら」は都合の悪そうな事は”ウソ”でゴマカしてしまうんですが、すぐにバレます(笑)。 で、で、ですね・・その渡した相手ってのが、どうも”例の人物”みたいなんですよ!!!ボクの”点滅”の原因!!「そら」が恋してしまった「しらない人」!!!!(場内、大きくどよめく)」。


「司会・生き物」     「ええっ???会ってたの?その人と??どこで?どうやって?」。


「Hiたかお」     「その事について、今、「えびすメンバー」とやり取りをしてるトコですわ(ここでHiたかおの視点で「そら」と「えびすメンバー」のLive画像・場内、更にどよめく)   


 ---画像ーーー 


(カイ)「ええ??飛び出して行った後に??」。 (そら)「うん、そんときにぃ、何んかはなししょうと思ってたら、”あいつら”がガガ~って来て、ネコも来て、そんで、大急ぎでネコの”ケツ”にのかって・・・」。 (カイ)「で、逃げしなに、とっさに携帯電話を渡した?」。 (そら)「そうそう、携帯をわたした・・ってか、放り投げた(笑)」。 (カイ)「なるほど!!それやったら、今はその携帯は、そのおまえの言う”しらない人”が持ってるって事やな?で、何か連絡はして見たの?」。 (そら)「別にぃ・・・・してないっていうか・・・」。 (ネコ)「してた!してた!!メールしてたがな!!オレの携帯から(笑)!!!」。 (そら)「した?・・・かなあ??(もじもじしながら)」。 (ネコ)「あはは!!ついさっきの事やで(笑)!!送信履歴見せたろか?(笑)」。 (そら)「あっ!!おれ、ねむた~くなって来たから、寝てし~まおっと!!」。 (ヘビ)「出た(笑)!!ごまかし様のない事でも、平気でごまかす(笑)!!っていうか6号、オレらはおまえがその”しらない人”ってのと「くっつく」のを、応援したろうと思って聞いてるんやで!それに、携帯ないままやったら困るやろ??」。


「FA637」     (このやり取りを見ていた「FA637」が突然に) 「たかおさん!たかおさん!!!お話中に申し訳ございません!!」



今、そらの携帯の、”現在地の位置情報”を確認できました!!(場内・大きなどよめき)


「FA637」は「Hiたかお」より配信される「えびすメンバーとそら」のやり取りが始まり


「そら」の携帯が今、”しらない人”の所にあると聞いて間なしに


「そら」の携帯の”現在地”の取得にかかっていた


こうした”通信にかかわる事”全般は 「FA637」の専門分野であるからだ


「Hiたかお」     「まいど!FA637!で、今、こいつの(と、そらを指して)携帯は・・・どこらへん?」


「FA637」     「はい、大阪市城東区、野江1丁目、京阪電鉄の”野江駅”すぐの文化の2階です。 文化の名前は「はしみ荘」。その部屋の住人は”斎元 よしお”という人物です。 電話番号と携帯メールアドレス、PCのアドレス、あ、Blogもやってるみたいですね。URLもあります!ここまで、今確認できました。 どうしますか? もっと詳細を名前と住所から”10項目Hit ”で調べる事ができますが・・・」


「Hiたかお」     「そやなあ・・そやなあ・・・・」


「よも清さん」   「たかお君、FA637、”位置情報”のみ、にしておきましょう! その10項目のHitのうちのいくつかは、その”斎元 よしお”という方の個人情報にも抵触しますし、そらとその人物が、今どのくらいの関係にあるのかを私達がもう少し把握してから、必要であれば調べる、という感じでどうでしょう??」


「Hiたかお・FA637」     「あっ!了解~!!」


「よも清さん」     「ただ、どうやってその”斎元”という人物とそらを、自然な流れで結び合わせる事ができるのか?・・という所ですね」


 


ーーー 画像 ーーー


  (ネコ)「なあ6号、おまえが送ったメール、みんなに見せたらあかんかなあ?」。 (ヘビ・カイ)「あっ!!見たい見たい(笑)!!」。 (そら)「いいよ・・別に・・」。 (Hiたかお)「それって、送信してから、何んか返信はあったんかな?」。 (ネコ)「いや、さっきこっちに向かう途中に送信したっきり、今の所は何も応答な・・・・


pi・・・pi・・・pipipi!  pipipipi!!


メールが来ました! メールが来ました! メールが・・


(ネコ・カイ・ヘビ・Hiたかお)「来た来た来た来たああ~!!」。


(ネコ・携帯を開けて、それを見ずに「そら」に渡す)「はい!6号!!おまえの”彼氏”から(笑)?かな?」。 (そら・うれしそうに、ちょっと困り気味に真っ赤になって受け取りながら)「”かれし”って・・そうじゃなくて・・・」。 


(この会話にかぶせるようにHiたかお)「て・・て・てて点滅点滅点滅!!ぅぅ・・うわあああ!!」 


---Live画像も点滅ーーー


「司会・生き物」     「お~い!!たかおく~ん!!画像がぁ・・・・画像が点滅してるよ~!!!お~い!!大丈夫か?~!!(場内・どよめき)」。


「Hiたかお」          「と・・・とと取りあえ・・・うっ!うわああああ!!」


「司会・生き物」     「お~い!!たかお君!!画像が点滅していて何も見えないよ!!」。


「よも清さん」     「急いで!!ゆきりんに画像を変わって!!」。


ーーー「Hiたかお」による画像が点滅により荒々しく切断されてすぐ、「ゆきりん」の視点に移るーーー


「ゆきりん」     「えっ?えっ?? そらくん、これ、見てもいいの?(ゆきりんの声と、画像にはネコの携帯の液晶画面・場内の全ての生き物が一斉に集中)」。 (そら) 「うん!いいよ!!ゆきりん!でも、おれが一番のりで見てからやで!だって、おれの携帯からおれに来た、おれのしらない人メールの大事なメールやからな!!」。 (カイ)「はっはっはっは!!6号、言いたい事はちゃんと伝わってるけど、日本語おかしいぞ(笑)」。


 


「始めまして!!」


宮田 そらくん、ですね?


僕は斎元よしおといいます。


始めまして


そらくんの携帯と手帳を


返したいのですが、


どこまで持っていったらいいのか、


この携帯にメールを頂けませんか?


あと、日時も教えて下さい。


こちらの都合を言うと、


日中は僕は仕事なので、


できれば夜の方がいいのですが・・


よろしくお願いします


(そら) 「・・・かんじ・・・ばっかしで、読まれへん・・。カイさん、これは、何にっていうてるの?」


 


こうして「カイ」の代読は始まり 「そら」と「斎元」二人の距離は


私達全ての「生き物」と「えびすメンバー」をも挟み込んで


一気に近づいたのだ 


 


 


そらの物語・42 「ゆきりんの報告」

2010-11-20 04:51:19 | そらの物語


 


 42


「ゆきりんの報告」


 



 


「はたらき協議会」開催後間なしに 「ゆきりん」からの報告が入ってきた


通常 私達の連携は 各々の内面を通じて 


言葉や画像・動画 文書も含め あらゆる通信を行っている


しかしそれは あくまで各々の間でのやり取りに限る


今回 「協議会・開催中」についてのみ 会場に設置したPCを通じて行い


参加している全ての「生き物」の間で 共有できる”しくみ”となっている


こうする事で 臨場感ある”やり取り”が可能となるのである



 


司会・生き物    「Hey!ゆきりん、ぽち、Hiたかお君とえびすの状況を伝えてもらえるかな? 君が今見ている画像がこちらでも見えるようにしてあるから、ざっと見まわしてくれるとこちらの皆はとてもラッキーだよ!」


ゆきりん       「うん、わかった。 ほら、たかおくんは点滅したまんま。(Hiたかおが点滅しながら横たわるLive画像・笑声・歓声) で、まだ”おしゃべり”はできないよ。死んでるみたいに寝てるから。あたしとぽちと子供たちは「1号」から「なないろに戻ろう」って連絡があって、ちょっと前に「なないろ」に着いたところよ。カイさんとヘビと一緒よ。」


司会・生き物    「OK!了解!!でもゆきりん、今の「なないろ」は危険じゃないか? サソリたちがまた襲って来るかも知れないよ?」


ゆきりん       「うん、おなじ事を、カイさんも言ってたわ。でも、だいじょうぶだって、1号が・・・・ええっと・・・1号が・・・。 ねえ、ぽち、1号が何んて言ってたっけ??」


ぽち          「おおおお、追われてるのは・・のは、おおおれたちじゃなくて、ささ・サソリだから・・って言ってたよ!!ししんぱいないって。」


司会・生き物     なるほど!それは、サソリが警察に追われてるって事?? でも それなら先の襲撃の時も、サソリ達は警察に追われてる最中の事だったんだから、今も安全とは言えないんじゃないの??」


ゆきりん        「んんんん・・・・それは・・ねえ、ぽち、1号は何っていってたっけ??う~ん、何っていってたっけ・・・・」


ぽち           「う~ん・・・・。う~ん・・ななな何んだっけ・・たたたかおくんなら、たかおくんなら・・ちゃんと覚えてるんだけど・・」


ゆきりん         「あっ!!そうよ!!そうそう!!”サカナ”って人が何んだかっていってたわ!!」


司会・生き物      「??”サカナ”って人??それは、何?」


ゆきりん         「思いだしたっ!!暴走族の”親玉”よ!!その人。 たぶん、怖い人・・。そらくんの昔のお友達のパパよ。 そう、1号と話してたの!!その人がサソリを”シマツ”するって!!いやね・・やくざって!!あたし、大っキライ!!そういえば、そらくんも「なないろ」に向かってるみたいよ!!「ネコ」と一緒に。そらくん、携帯が繋がらないから、「カイさん」がずっと「ネコ」と連絡を取り合ってるわ。たぶんそらくん、携帯 落としちゃったのよ。サソリがイヤな事いうから、すごく怒って・・・・」


司会・生き物      「Thank You!!ゆきりん!!ざっと状況はわかったよ!ありがとう!じゃあ、また新しい事がわかったら連絡待ってるね~!!あと、たかおくんが回復するようだったら、連絡するように伝えてね!」


ゆきりん         「は~い!!」


 


 


国道163号線の昼過ぎ


交野・寝屋川方面から大阪方面へむけて 


派手なマフラー音が響き渡った


重く空気を裂いて走るような 大型バイクならではの重厚なマフラー音は


疾走する「ネコ」のバイクだ


「そら」を乗せた「ネコ」は 「サソリ」達暴漢の追跡をかわした事がゴキゲンだ


一方 後ろに乗った「そら」はちょっと複雑だった


「サソリ」の放った言葉・・・・ 「◎◎◎」 「役立たず」


そしてその直後の 思い続けていた”彼”との出会い


ただ「そら」はこんな時でも 簡単にその場の空気に流される


疾走しながらの「ネコ」の大声は あまりにゴキゲンで


「そら」の中で巻き起こっている 整理のつかない想いを


吹き飛ばす勢いで その勢いに流されて 何んら問題がないのだ


 疾走しながらの 二人の大声での会話は


道行く人々を振り向かせる ”楽しげな怒鳴りあい”の様だ


「ネコ」は20代で 「そら」はもうすぐ15歳


まだ若い二人の勢いを 豪快なマフラー音が代弁するように響き渡る


 「1号からメールがきたぞ!!」と「ネコ」。 「何んてぇ??」と身を乗り出して「そら」。 「おまえの携帯にも来てるやろ? 1号からのメール!!”なないろに帰ろう”ってメール!!」。 「おれの携帯は・・おれの携帯は・・・えっと、たぶん、落とした!!」。 「あほかっ!!落としたらあかんがな!!」。 「あかん、とか言われても、あれへんから・・・・たぶん、落としたっ!!」。 「しゃないなあ!!取りあえずつかまれ!!飛ばすぞ!!」。 「OK!!飛ばせ飛ばせ~!!。 「はっはっは!!200?で行っとこか(笑)!!!」。 「しょぼい!しょぼい!!500?くらい出しとけ~!!」 。 「あほかっ(笑)!!」。 



 「な、ネコ、おまえの携帯かしてくれへん??」。「何?何すんねん?」。 「うん、おれの携帯に電話してみる!!だれか拾ってるかもしらんやろ?」。 「あっ!なるほどな!!でも、拾ってても、かかってきた電話には出んかもな、それに、電池、残ってるかな?」。 かなりのスピードで走りながら携帯をまさぐり出し、「そら」に渡すのには、ちょっと危険なスピードのままの「ネコ」。 「とりあえず、やってみ!」。 


Pu・・Pu・・Pu・・・Pururu・・・「あ、つながった!!」。 Pururu    Pururu   Pururu


「・・・・・あかんなぁ!!あかん あかん!取れへんわ」。 「やっぱ、あかんか!!ほんなら、もし、誰かが拾ってくれてるとして、メールとか送ってみたらどう?見ぃひんかな?」。 「あっ!!さっすがネコ!!なかなかのわるだくみやな!!」。 「わるだくみとちゃうがな(笑)。取りあえず、タイトルの所に”この電話を拾ってくれた人へ”とか書いたら、ひょっとして見るかもな!!」。 「OK!!」


二人はそんな大声でのやり取りをしながら、間もなく「なないろ」に到着しようとしていた。 この日、二人が走り抜けた163号線は、いつもと違う”不穏な空気に満ちていた。 特に大阪市内に入ると、その異常さは際立っていたが、疾走する二人はまったく気づかなかった。 163号線に通じるあちこちの側道から、あわてた様子の何台ものパトカーが京橋方面へ向かっている。 明らかにスピード違反の「ネコ」のバイクにも目もくれずに。 京橋駅前で、大きな事件が起こっていたのだ。



おれのけいたいおもってる


”さいもと”てかいてある


 はんかちの


おれのしらない人へ


「ネコ」てゆうおれのなかま


のやつのけいたいから


おれがおれのでんわに


めーるです


おれわ「そら」ていいます


はんかちお かやしたいので


それとちよとだけ”おはなし”とか


あんたとしたいです


このでんわに


でんわおください


 


そら


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そらの物語・41 「第2のファイル」

2010-11-09 03:37:50 | そらの物語


 


41


 


「第2のファイル」


 



自分達の”はたらき”を整理する


そうした意味合いの色濃い「はたらき協議会」ではあるが


「生き物」の中でも まだ若い”大調査”の研修生たちにとっては


ちょっとしたお祭りの様な 楽しげな結集である事も確かであった


しかし 協議会の日程を目前に 全ての「生き物たち」に分け持たれた


”お祭り空気”は一変してしまった


「おがた」の”尻”に


「新しいファイル」が挟まっている事が明らかとなったからだ


”挟まっていた”というよりは プリント・アウトされていた という方が


正解かもしれない


どうやら「おがたの尻」は 何らかの仕方で


「月の者関連のネットワーク」と通信が取れる環境にあり


必要に応じて 「それ」を受信できる”尻”のようなのだ


まるで「尻型のプリンター」のようだ


しかも 「言葉」を持たない「おがた」に


その発信源の所在をいくら聞いても 


涙目で困惑するばかりなのである


私達にとっての”大問題”は


常に「おがたの尻」から 始まるようだ


 


ファイルの内容は下記の通りだ


 


月の者256N    不定期・発信


 


1900・06・22  初起動 確認


1919・03・01 返還拒否 確認


1920・12・07  生き物バージョン5220076mbpより離脱  確認


1920・12・08  再度 返還拒否  確認


1940・05・21  誤作動頻発 進化の可能性  確認


1951・01・20  生き物バージョン0008099mbpより離脱 データ解凍に失敗  確認


1953・04・?  誤作動  確認


1962・10・06  全てのバージョンから離脱  未確認


1966・?・?  動きアリ  未確認


1990・?・?  動きアリ  未確認


199?・?・?  他生命とのリンクの可能性 検知  未確認


2004・?・?  「おがた」への発信  確認


 


これは恐らく「月の者」がどう進化していったかの記録に


まず間違いない  しかも1900年に”初起動”が確認されている


108年も前に「月の者」は誕生し 2度も「返還」を拒否した というのか?


この内容も含めた協議とするには


当初 予定していた「国松自治会館」では あまりに公すぎるので


急遽 人通りの少ない「国松中池 治水公園」に 会場を変更した



人通りの少ないこの公園の 大きな石碑が並ぶ場所 


多くの「生き物たち」が集結するのには ゴキゲンな場所である


協議会は数日にまたがって行う予定で 当日参加できない「Hiたかお」や


「一の妄」と連携が取れる様にPCも設置し いよいよの本番となった



司会・「生き物」  ーーー  ただ今より、「はたらき協議会」を開会いたします(拍手・歓声)。開会に先立ちまして、「Hiたかお」くんですが”点滅異常”の為、欠席となりました(どよめき)。現在は「えびすメンバー」の”なないろ”で寝込んでおります(笑)。あと、もう二名、「一の妄」くんと「ケリー・糸3番」は、暴徒となった「サソリ」追跡の為、欠席となりました事をお伝えいたします。3人とも”大調査”には欠かせない重要な位置におりますので、それぞれの部署よりの連携をシッカリと取りつつ、合わせて私たちの自由闊達な意見交換も行い、「行動的な協議会」として参りたいと思いますが、皆さん!如何でしょうか!!(賛同の大拍手・歓声)。まず初めに、「よも清さん」よりご挨拶を頂きます。


 


「よも清さん」  ーーー  連日の、各定点での”大調査”、本当にご苦労さまです!!冒頭から、司会の方よりありました「Hiたかお」くんの”点滅異常”についてでありますが、原因は「そらの恋心」であり、その解決については「恋心の成就」こそが適切である、と考えます。そこで、この「協議会」の中で若干の”実験”を行って参りたい。 現在「Hiたかお」くんの近くには「ゆきりん」と「ぽち」と「えびすメンバー」がおり、皆で手当をして頂いておりますが、”原因”である「そら」は別行動をしております。 まもなく全員は合流すると思われますので、合流した時点でその方途を探りたいと思います!この場より、何んらかのアプローチを皆で検討したいと思います。 「そら」が誰かに恋をしているのであれば、私達も全員でその「恋の成就」をサポートして行こうではありませんか!!!!(賛同の大拍手・歓声) 次に「一の妄」くんと「ケリー・糸3番」ですが、先ほど「連携を・・」という話もあったのですが、かなり危険な状態でありますので、こちらからの発信はしないでおこうと思います。 私達が「協議会」をしている事は二人とも知っておりますので、何んらかの変化があれば必ず連絡頂ける事でしょう!その内容によっては、皆さんの中から何名かが応援に出動する事もあるかも知れません。その時には「我先に!!」との決意で、この「協議会」を運営して参りたいと思いますが、皆さん!如何でしょうか!!(賛同の大拍手・歓声)


わたくしの方からは、以上であります。


 


司会・「生き物」  ーーー  ありがとございました!!


続きまして・・・・・


 


 


このように「はたらき協議会」は盛大に開催された。ちょうどその頃、「なないろ」を襲撃した「サソリ」たち暴漢は、半数以上が現行犯逮捕となり、もとより「追われる身」であったのが、更なる「逃走」を余儀なくされていた。 これは自業自得でもあったが、「サソリ」の発想は違っていた。


ー最高や・・・オレは・・・やっぱ、最高や・・何んでもやったる!「えびす」も、「関西連合」も、「ポリ」も・・・・全て天誅や。撲殺にしたる・・・。んん? おかしいか?・・いや、それでいい。 まずは・・・・「金」やな。銃器で武装する必要がある。そして、”「関西連合」を獲る。 その為に、いま、一番簡単に”手に入るもの”・・・「6号」や。 ー


「サソリ」。 彼は幼少より”生きる目的”が見つからないままに、流されるがままに今まで生きてきた。解っていた。それではいけない と。そのストレスからか、破壊的な発想が常に多かった。その結果が暴走族であった。そこで、その中で”君臨”していた「1号」と出会い、何かを感じた。 しかし、それだけ、であった。 彼の思う”何か”と、「1号」の持つ”何か”は違っていたのだ。 次に宗教団体「オフィス・和解マン」の”滝沢 何んパオ”との関係が始まった。 きっかけは「1回目の和解マンのビラ」をめぐって、”たまたま”が続いたのだ。 「雇用契約書」をたまたま拾った。 そして、”たまたま”「和解マン」を探していた「何んパオ」と出会い、その契約書が「何んパオ」にとって数百万円の値打ちがあると知り、「オレは”それ”の体験者だ」と思わず言った。 そこからだ。 単純に「何んパオ」からは”大金の匂い”がしたのだ。 そして、JR京橋駅で”奇跡の様な体験”をし、彼の中で何かが吹っ切れた。 うんざりするような、この現実の全てを変える事ができる確信が、彼の中で立ち上がったのだ。


ー 今のオレは生き生きしている。


「悪」とは・・・こんなにも、気持いい。


今まで、何を迷っていたんやろう・・・ ー


「サソリ」の後を、こっそり尾行していた「一の妄」と「ケリー・糸3番」は、数名の集団となった「サソリ」たち暴徒が一台のワゴン車で、一旦は離れていた”京橋”へ向けて疾走するのを確認し、「はたらき協議会・本体」との連携を取るタイミングを探していた


 


 


 


 


 


 


 


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そらの物語40 「邂逅・後篇」

2010-08-01 13:57:15 | そらの物語


 


40


「邂逅・後篇」


 


 ・・・・ そら ・・・・


か ・・・。


濡れた”さつき養護学校の学生証”にも、”療育手帳”にも、そう書いてある。


「おいおい、その携帯、ヤバいんとちゃうか??」 と田川。


無意味に、濡れた自分のTシャツで「そら」の携帯を拭きとる仕草をしてみて、


「水没は・・・・」と言ってパチッと携帯を開いてみる「斎元」。


「免れているっぽい!、一応、液晶はついてる」。


「斎元」は「そら」の携帯をすぐ閉じて”はっ”として、もう一度パチッと開けてみる。


「あほ!!よしお!余計濡れるぞ!それに、人の携帯、勝手に・・」。


「あっ!!!・・・」。


携帯の”待ち受け画像”を見た「斎元」が思わず声をあげた。


 


「こ・・これ・・・・!!」。


「えっ?何?、どした?」と田川。


「斎元」はいったん田川の不審な面持ちに目をやり、もう一度”待ち受け画像”、


そして、何か言おうとして、「いや、なんでもない・・・」。


「何?何??何???」 興味シンシンの田川。


「何んでもないって!それよりも、早よ、どっかに”避難”しよ!!」。


今、心に浮かんでいる事を、そう言って上手くごまかすのに、この雨は好都合だ。


二人はあわてて手短に”避難”できる、商店街のアーケードへ向けて走った。


ー何かを投げかける様な瞳ー


ー妙になれなれしい、話し方ー


ーこの”待ち受け画像”ー


そして、


おれを、つれていって


走りながら、これら全てが「斎元」の中で、一本の線につながろうとしていた。


ー  ・・これって・・・・・・  


 


 


 


一方、”難”を逃れた「1号」達は、身を隠す為、京橋駅前の「水滸伝」に入り込んでいた。


「1号」は肩。 「カイ」は両腕。 「ヘビ」は背中。


みなそれぞれに負傷した身体を引きずって、あまり欲しくもないアルコールをオーダーしていた。


「Hiたかお」と「ゆきりん」と「ぽち」は無傷だったが、座敷席の角に3人並んで陣取って座り、


一連の乱闘について、もめていた。


「たかおくん、最低!!めっちゃ最低!!」と憤慨して「ゆきりん」。


「たた・たかおくん、ななな・殴るって事は・・は、よも清さんに、おお、怒られるよ」と、


めずらしく「ぽち」も怒っている。 「ぼぼ、暴力は・・きき・禁止!!」。


「しゃあないやろ!!あの場合!!”ヤらな、ヤられる”って場合!!だいたいおれは、ああいう場合、黙ってじいっとするのは・・・無理や」。


と「Hiたかお」。 「たかおくんなんて、キライ!大っキライ!!」。


「はっはっは!もめないもめない!」と「カイ」。 「ゆきりんが正解だし、ぽちも正解!!たかおさんも正解です!!でも、ここで、”もめる”事は間違いですね!!」。 「カイさん、そうやけど、その通りやねんけど・・でも、やっぱり、あたしはたかおくんが殴ったのは、許せないよ!!」。と納得のいかない「ゆきりん」。「そそそそそらくんは?そ・そらくんは、ど・どうしたんかなあ?どこなんかなあ?」と、案外機転のきく「ぽち」は、言い出したら止まらない「ゆきりん」の関心の矛先を自然に変える。


「ヘビ」が「それが、さっきから電話してんやけど、6号もネコもつながらん!」と応じた。


「1号」が「まあ、大丈夫やろ。ネコも6号も、逃げ足はごっつい早いから」。


「おれもそう思う!そのうち連絡あるわ!心配ない!ところで・・・」と「カイ」。


「これから先、どうするか・・やな」。


「うん、問題はそれや」と「ヘビ」。「なないろには帰らん方がええわな、1号?」。


「今日は・・な。」と考えながら「1号」。 


 


この居酒屋での短時間の話し合いで、


「Hiたかお」・「ゆきりん」・「ぽち」は寝屋川へ、「1号」・「カイ」・「ヘビ」はバラバラに解散し、


明日、どこかで落ち合う事となった。 


話し合いの中で、「Hiたかお」は特に、”サカナ”という人物に興味シンシンで、


根掘り葉掘り「1号」に質問した。


興味シンシンだった理由は、「そら」の過去の友人関係についての認識が


何もなかった事もあるし、「サソリ」の今後の動向を考えると、


「そら」の安全の為には必要な情報だと感じたからだ。


 


 


「そら」と「斎元」は 繋がりつつあったが


私たちがそれを知るのはもう少し後になる


今回のこの事件をうけて 私たちは


「えびすメンバー」の安全をも考える必要があるとの認識にたち 


「一の妄」の「サソリ」捜索を 24時間体制のさらに警戒度の高いレベルとした


この日「Hiたかお」が聞いた”サカナという人物とその息子”についても


「はたらき協議会」での格好の議題となるだろう


 


「はたらき協議会」へ向けての さまざまな動きは


いよいよ内実を備えたものとなりつつある


現時点ではバラバラに起こってきている出来事が


まもなく”一本の線”でつながる日が近いのだ


 


 


商店街のアーケード下に”避難”した「斎元」と田川は、身震いしながらも、


起こった出来事を整理せずにはおれない心境だった。


「よしお、今の子って、おまえが詩に書いてた子やろ」。と田川。


「え?誰が?」。”うわの空”の「斎元」。 「誰がっておまえ、今の子の話し以外、


他に何があるねんな!(笑)」。 「あ、ああ(笑)、そうやなあ、え?なんで分かるん??」


「いや、そらぁ分かるやろ!おまえと、あの子の空気っていうか・・まあ、”男のカン”(笑)」。


「そんな”カン”ってあるん(笑)?」。「はっはっは!取りあえず、どうすんの?


電話置いていってるから、連絡はいろいろ付けようはあるな。返してあげなあかんし。


それって、手帳?」。 「うん、”療育手帳”って読むんかな?障害のある子?かな?」。


ー 返してあげな・・・ -


そう思う「斎元」は、真剣な顔になろうとして、しかし、ちょっとニヤけ気味だ。


フッと又、脳裏をかすめる”「和解マン」の説明書き”


”足下ニ泉アリ”という事を忘れなければ・・・・・


ー”足下”・・・おれの足元・・・、おれが、今、しなければならない事?ー


「ああっ!!会社に電話せんままやった!!」。


「ああ!よしお!ホンマや!!どうすんねん?明日、めっちゃ行きにくいぞ!」。


「するっ!!今、する!!」。


ピッピッピッピッ・・・・・


即座に会社の電話番号をプッシュする「斎元」。それを見て田川は、


今日一日、あれだけ”電話する勇気”がわかずにウジウジしていた「斎元」を思いだし、


ちょっと吹きだしそうになった。


「あ、もしもし、斎元ですが、はい!そうです!!あっ!す、すみませんでした!


はい!大丈夫です、明日は、はいっ!行きます!全然、行きます!!


はいっ!がんばります!!」。


田川は「くっくっく!」と笑いをこらえている。


「おいっ!たがっち!!明日、寝坊とかできへんから、帰ろ帰ろ帰ろ!!早く!!」。


 


”避難”したにもかかわらず、びしょ濡れのままの田川。その袖を引っ張る「斎元」も、


同じくびしょ濡れのままで、”精気”に満ちている。


 


 


 


そらの物語39 「邂逅・前編」

2010-07-31 04:33:04 | そらの物語


 


39


「邂逅(かいこう)・前編」


 


黒の多い、沈んだ濃淡の


水墨画のような曇天なんかに なんら関わりなく、


お互い自分の事で”いっぱいいっぱいの二人”がぶつかった。


心に強く想っていた”その子”が出し抜けに現れ、目の前で泣いている。


この「状況」は 唯それだけでも、ぶつかられた側の「斎元」には”容量オーバー”だ。


 


それは「そら」にしても同じ。怒り心頭で「なんなら道行く人全てに


ぶつかってやる」くらいの勢いで逃走中だったから。


「サソリ」が言った言葉。 それは「そら」に言ってはならない言葉だ。


たとえふざけて言った”ことば”であったとしても、その”ことば”を、


生涯、覆す事ができない、生涯背負って生きなければならないと、


マイナスの方向で、リアルに心に感じてしまったならば、


言われた側の「心の重み」を、”健常者”は理解できるだろうか?


「あいつ、絶対、殺したんねん!!」。そんな気持でいっぱいの「そら」は、


顔中”消炎剤”だらけのまま頬だけ、流れてほしくなかった涙のあとが乾いて、


「筋」になっている。


 


「あっ!!!」 とだけ「斎元」は言って言葉につまった。 


一緒にいた田川は、ほろ酔い気分のご機嫌な調子で、かたまる「斎元」にかわって、


「あ、ごめんね、このお兄ちゃん酔っ払いやから(笑)」と謝った。


「あ!!”しらない人や”!」と、急に明るくなって、「そら」が言った。


「こんなとこにおった!


”しらない人や!!こんなとこにおった!」。


突然の事でも、「そら」は何も考えずに”「パっと」ものが言える”のに対して、


「斎元」は考えてからでないと、何も対応できず、いよいよ「かたまる」ばかり。


二人の”酔っ払った兄ちゃんたち”を見ている「そら」。 瞬きした拍子に、


残っていた涙が頬に付いた”筋”の上をすっと流れた。


「斎元」の脳裏に浮かんだ”ことば”


ーー  水分をよく拭いとる事  ーー


「斎元」はおもむろに”携帯”していた「和解マンのハンカチ」を取り出し、


「あ・・  な、涙、出てるから、これで・・・・」と、「そら」に差し出した。


一緒にいる田川は、「斎元」の”緊迫ぶり”と ”ハンカチ”を受け取る「そら」を見て、


「あっ!!」と思い、口をつぐんだ。  


-この子・・・よしおの言うてた・・・・・-


「あ・ ・ どうも・ ・ 」。と「そら」。 ”ありがとうが言えない”「そら」の、


精一杯の感謝の言葉は”どうも”。 そして


「んん??なんか、書いたあるで、これ」と、涙を拭いて”ハンカチ”を広げてみて「そら」。


「”さ”と、 ”い”と、 ”も”と、 ”と”ってなってる。何んやこれ?」。


「それ、お、おれの・・・」。と言葉がもつれて上手く言えない「斎元」。突然に、


ボタッ!ボタッ!!ボタボタッ!!ボタボタボタ!!!


暗い曇天が裂けて噴き出した”洪水”の様な激しい「雨」。


道行く人々も「うわあ!」と言いながら、足早になる。


3人共傘は持っていなかったが、これでは傘があってもつぶれてしまいそうな勢いの激しい「雨」。


「あははは!!これやったら、なんぼ拭いてもびちょびちょやで!!」。


消炎剤も涙のあとも、一瞬で押し流す勢いの大雨。


「ホンマやな!一緒やな!」と、初めて日本語らしい言葉が自然になった「斎元」。


「斎元」の言葉が激しい雨音で聞こえなかった「そら」は、


”しらない人”の言葉をわざわざ打ち消すように降り出した大雨が面白くて笑顔で、


「えっ?何んて?」。


「なんぼ拭いても一緒やな!!って!」大声で言いながら、「斎元」もなぜか笑顔。


二人のそばで、田川は違和感を感じた。-あれ?こいつら、知り合い?いや、違うよな?-


「斎元」と「そら」の間に、言葉を超えた何かが通じ合おうとしている。


今さらこの雨をどう避けても手遅れなので、


三人共”濡れたい邦題”でいい、というかまえだ。


 


「あの・・・お、おれ・・・・」。


「斎元」には、何か言おうとする「そら」の子供のような肩のラインが、


跳ね返る激しい雨で浮き彫りに光って見えて、しかし、言葉が聞き取れない。


 


「おれが・ ・ ・ おれの ・ ・おれの・・・」。


 


「そら」は自信のない事を言う時、小声で「おれ」を連発するが、その後が出てこないのだ。


ーおれの・・ーの後の言葉を、この豪雨を押し退けてでも、強引に”キャッチ”しようと「斎元」。


「えっ??何??」。


 


「おれを ・ ・・おれを、どっかに、・ ・・どっかに・・・


 


 


おれを、どっかに、つれていって ・・・」。


 


 


「ど、?・・・・・」。


 


「・・ ・うん・・・。おれを、つれていって・・」。


 


再び硬直する「斎元」。「そら」の言葉よりも、自分の心臓の音の方が聞こえてきそうな「斎元」。


大雨は立ち尽くす3人もろとも押し流す勢いで、


全てを打つ様にたたきつけ、自然の大きさを示すようだ。


突然に「大声」が響いた。「おった!!ガキ!!おったおった!」。大雨をものともしない暴漢達の大声と、マフラー音、次いで「そら」の知っている者の大声。


「6号!こっちや!逃げろ!!」。 「ネコ」だ。「6号!!早く!!」。「おいおいおい!な、何んや?こいつら??」と田川。 「斎元」を見つめていた「そら」の目に、急に厳しい光が戻った。「斎元」たちの前方から暴漢達のバイク、後方から「ネコ」。「そら」は唐突に「ネコ!!」と叫んで二人の間をすり抜けて走りだした。 唖然とする「斎元」と田川のすぐ近くを、何かが飛んできて二人をかすめた。 暴漢達が放つ”クサリ”や”鉄パイプ”だ。「わっ!!」と咄嗟にうずくまる二人の向こうで、ガシャン!!という何かが破壊した音。鉄パイプかクサリがどこかに当たって何かが潰れている。次いでバイクの派手なスリップ音と派手なみずしぶき。”わっ”と顔を上げた「斎元」が見たのは、暴漢達に先んじた「ネコ」のバイクが「斎元」たちのすぐそこに荒々しく急停車し、その”ケツ”に飛び乗ろうとする「そら」と、急停車して間なしに急発進の「ネコ」と呼ばれた男だった。「待て!!こらぁガキ!!」と次々に「ネコ」のバイクを包囲する位置につけて来る4~5台の暴漢のバイクは、「斎元」と田川など引き殺しても気にも留めない勢いだ。 「6号!掴まれ!!行くぞ!」飛び乗り遅れて落ちかけの「そら」の腕を捕まえて走り始める「ネコ」。 「ネコ」の”ケツ”に収まった「そら」は振り返り、「斎元」に何か言おうとしたが、もう遅い。「・・・!!」。 「そら」は荒っぽい「ネコ」の運転に飛ばされぬ様にしがみつきながらも、ポケットをまさぐって、出てきたものの全てを、呆然とする「斎元」に向かって”やみくも”に投げつけた。 


ー携帯電話・療育手帳・学生証・そして、友達と作ったカード


一瞬の出来事すぎた。うずくまった「斎元」と田川が立ち上がった時には、「待て!クソ野郎!!」という罵声共々、「ネコ」と呼ばれた男も暴漢達も去っていこうとしていた。 すぐに遠のく”騒ぎの集団”の向こう、ちらちらと「こちら」を振り返る「そら」は、すぐに見えなくなった。


次に思いついた言葉。


ー危険が伴いそうな予感があれば「深追い」はしない事ー


恐ろしいほど”今起こっている事”に対してピッタリ対応している”和解マンのおみくじの説明書き”の言葉。


ボトボトになって肌に張り付いたTシャツを引きはがしながら、


”あの子”が自分に向って投げつけて行った物品を拾い集める「斎元」。


「おれ、絶対殺されると思った!!」と田川。 「で、それ、何投げて行ったん??」。


「あ・・・


みやた・・・そら・・・。


 


そら、 か・・・・・」 。


そらの物語38 「”サカナ”という人物」

2010-07-22 11:49:19 | そらの物語


 


38


「”サカナ”という人物」


 


「なあ1号、おれの下で活躍するってのは、どうや?」


「1号」と対峙するように挑発的な笑みの「サソリ」は、


「1号」のいかなる回答も期待しない様子だ。


部屋の隅で震える「ゆきりんとぽち」は、”イヤイヤの仕草”をしながら


事の成り行きを見つめているが、「暴力全般」について完全否定だ。


それは、私達「生き物」の徹した生命のルールである。 なのに、


鉄パイプを何本も抱え、交戦の構えの「Hiたかお」は、


そのルールに反しているのである。 彼は暴漢が”「ヘビ」と「カイ」を殴った”


という事が許せないのである。


「そうやな・・・うせろ・・・・・って答えたら?」 と「1号」。


暴漢達も「ネコ」も「6号」も、「1号」と「サソリ」の動向を見つめて、


鉄パイプを握り締めて集中している。


負傷した両腕を抱えるように、よろめき気味に「カイ」が言った。


「そ・・それはおまえ、えびすから出て行って、な、何か始めてるって事か?」


骨折の痛みらしき強い鈍痛は裂ける様に痛み、話す言葉を弱くする。


「はは!カイさん、”年寄り”は余計な事言わん方が身の為やで。


あとで”往生”させたるからな!」と「サソリ」。


「おれはもう、今までのおれと違うんや、カイさん。ニュース見たかぁ?おれが出てたやろ?!”指名手配”やで!!ゴキゲンや!!わざとよく目立つように体中にスミ入れたんや。ええ感じやろ??これなら、どっから見てもまさに”極悪”や!!おれは、”関西連合”を獲る!!1号、あんたができなかった、関西の頂点におれは立つ! 「あいかわらず・・・頭わるいな」と「1号」。「なあサソリ、宗教の次はギャングごっこか?よそでやってくれへんか?」薄ら笑いを浮かべながら「それがあかんねや。6号にも用事があってな・・」と「サソリ」が言い終わる前に「おまえ!みんなめっちゃ心配してくれてたんやぞ!!あほっ!!あほすぎやろ!!」 と「6号」。「おまえがなかなか帰って来えへんから、みんな、おまえのこと、どないしたんか話ししたり、おまえの部屋に見に行ったり、おまえの後をつけていったり、カイさんもおまえが帰ってくるかも知らんからって、メシおまえの分もつくってたりして・・・・」怒り心頭の「6号」は言葉につまる。


「ありがたいなぁ!ホンマに!!ありがたい限りや!”飼い犬は、いつか主人をかみ殺して強くなる”って話し、知ってるか?おまえみたいな”◎◎◎(差別用語)”にはちょっと難しいやろけどな、まあ、黙っとけよ、”◎◎◎”くんは!後でおまえだけおもろいトコに連れていったるわ」。


ー ・・・◎◎◎やと・・・・・ ー


この「◎◎◎」で、失いかけていた意識からさめた「ヘビ」は「おい!サソリ!!◎◎◎って・・・おまえ、ブっ殺したろか!!」と出し抜けに、手元にあった「消火器」を掴み取り「サソリ」に投げつけ、乱闘の開始を待つ暴漢達に不意に殴りかかった。 「◎◎◎は、あかんやろっ!!!!」。一斉に「1号」、「ネコ」、「Hiたかお」、「カイ」、「6号」も鉄パイプを振り上げて殴りかかり、暴漢達も入り乱れてそれに応戦。 一気に混戦する中、「サソリ」に投げつけられた「消火器」が暴発し、所構わず噴出す消炎剤は「なないろ」全体が”◎◎◎”という差別用語に怒るようだ。「◎◎◎と違うわ!◎◎◎と違うわ!◎◎◎と違うわ!!殺したる!!!」


ー◎◎◎ー・・・・障害を持つ人の全てをあからさまに貶める言葉。そうした卑劣なことばを面と向かって言われた事なんてなかった「6号」は、噴出す消炎剤で真っ白になるのも構わず「サソリ」に襲いかかったが、接近戦にはあまりに非力だ。


同じく真っ白になった「サソリ」は「6号」の振り回す鉄パイプを易々と掴み取り、それを奪い取った上で「6号」を床に突き倒し、「はっはっはっは!!◎◎◎って、おまえ、意味知ってて言うてるんか?”世の中のお役に立ちません”って意味やで!!どや!勉強になっ・・・・」。「サソリ」の”赤いサソリが這い回る横顔”に「1号」の足蹴りが炸裂し言葉を止めた。「サソリ」は不意打ちによろめきながら、しかし応戦の構え。「1号」が何か言おうとしたが、全てを打ち壊したい勢いの「6号」の叫びが早かった。「おまえら、みんなどっか帰って死んでまえ!死んでまえ!!」ただでさえ”情緒不安定”だった「6号」の怒る瞳は、涙に光って「サソリ」を睨みつけた。そして勝ち目のない乱闘そのものを否定するように、さらに大勢の暴漢達が待ち構える「なないろ」の外へ叫びながら走り出てしまった。


「みんな死んでまえ!!」


暴漢達の鉄パイプをかわしながら「1号」、「ネコ」、「ヘビ」が一瞬、視線を交わした。


「ネコ!!!」と、「1号」。  -6号を追え!!-


そう「1号」の視線は言っている。


 即座に追いかけて出ようとする「ネコ」に、暴漢が襲い掛かろうとしたが、目に見えぬ衝撃に打たれ、倒れた。「Hiたかお」だ。暴漢達に「Hiたかお」は見えない。 一拍おいて「サソリ」も「おいっ!!あの◎◎◎を捕まえろ!!」。 誰に対しての指示かわからない暴漢達は、統率が上手く取れず、皆一瞬鉄パイプを持ったまま、「え?誰が?」。「あほっ!!誰でもええから行け!」と「サソリ」。 修羅場の外で待機の暴漢達にどよめきが起こり、何名かが「6号」を追いかける様子。「6号」の逃亡で、修羅場となった「なないろ」は不穏な空気はそのままに、一旦沈静化し、「6号」と「ネコ」が飛び出して行ったドアから、さらに数名の暴漢達があわてて「サソリ様!」と口々に言いながら入ってきた。


ー10名・・・いや、20名・・・もっとか?ー


「1号」は頭を抱える「サソリ」から目を離さずに、外の暴漢達の勢力数をざっと推し量った。ー「なないろ」の廃材置き場いっぱいに入って20名ほど。こちらは負傷した「カイさん、ヘビ」、そして「たかおさん」。「ゆきりんとぽち」は連中からは見えないから大丈夫だが、戦力にはならないー


「1号」は”ムダな戦い”はしない。


消炎剤が未だ煙立つ、開け放たれたドア。その外の暴漢達の足元を”さっ”と「赤い光」が走った。 「ポリや!!」。 暴漢達の誰かが言った。 


ーええタイミングや・・ー と「1号」。


「なあ、1号、おれの仲間にならんねやったら、残念やけど、死んでくれ」。 微妙によろめきながらもパトライトに気づかないほど殺す気満々の「サソリ」。 「そうやな、じゃあ、30秒でしとめてもらおか。30秒は・・超えるなよ」。 少し笑う「1号」。 「はっはっは!1号さようなら。一撃で・・」と鉄パイプを振りかざした瞬間、「サソリ様!!ポリですわ!!」と暴漢の一人が駆け込んで来た。切りつける様な「サソリ」の鉄パイプが「1号」の顔面からそれて肩を力まかせに打つ鈍い音と、「1号」が消炎剤を蹴り上げる音。「わっ!!」という暴漢の声。全てが同時だ。「天誅や!!」と再度叫びながら、もう一撃の「サソリ」を全く無視した「1号」が、駆け込んで来た暴漢の方へ猛然と走りながら「カイさん!ヘビ!走れ!!」。乱闘の構えの全ての暴漢達の意表をついた逃走だ。 


無数のパトライトに取り囲まれた「なないろ」内外の暴漢達と「サソリ」。いきり立つマフラー音とともに「1号・カイ・ヘビ」が逃走するのを、あわてて方向転換し追跡しようとする白バイ。


「ちくしょう・・逃げるか!」と「サソリ」は苛立たしげに散らばった消炎剤を蹴り上げて、彼らを包囲しようとする無数のパトライトに動揺する暴漢達に大声で指示した。


「警官どもにも、天誅を下せ!!」


 


 


今日一日降り続いた雨は小雨になってはいても、これから本降りの気配だ。 


「1号&Hiたかお」・「カイ&ゆきりん」「ヘビ&ぽち」の3台のバイクは、京橋から少し離れた公園で停車していた。 「1号、大丈夫か?」と「カイ」。「カイさん、その言葉、そっくりそのまま返したるわ(笑)」。   「「6号とネコ」はどうなったかな?」と「ヘビ」。 「「ネコ」が何とかしおるやろう。電話してみよか・・」と「カイ」が痛む手で携帯を開くと同時に着信音。


「んんっ??関西連合・本体???」 「えっ??連合・本体から??なんで?今?」と「カイ」。 考えながら「1号」が「カイさん、取り合えず出てみて」。 「何んやろ??」


ーピッー


「もしもし、カイの携帯か?」。 「はい、そうですが・・」。 「そこに、1号はいてるか?」。  「カイ」は「1号」に警戒した面持ちで目配せした。 「カイさん、代わって」と「1号」。  「はい、1号ですが?」。  「1号か。連合・本体のものだ。”サカナ”が直接話しがしたい、とおっしゃってる。 今から言う電話番号にかけてくれ」。 「了解」。


”サカナ”という呼び名の人物。


関西連合の全てを統括する人物。昨年末の大阪府警による一斉摘発で、多くの逮捕者を出したものの、未だに組織そのものは頑強に維持されている。 それはこの”サカナ”という人物の聡明な指揮による。年齢も姿も、族達には知らされておらず、「1号」の様な”方面のTop”の前にしか姿をあらわさない。 ”スゲエ人らしい”と、族達の間では話されている、ゴッドファーザー的な人物である。


「1号」は言われた通りの番号をプッシュした。


「もしもし、1号ですが・・・・」。 


「・・・・・・・・1号か。お久しぶり。元気か?」。


あなたは”サカナ”ですか?突然に何んでしょうか?」。


「あまえの所のサソリが難儀な事になっている。もう、そっちには来たか?」。


「はい、大勢で来ました」。


「・・・・そうか・・。一つ聞きたいんだが、おまえの所の新顔のガキおるやろ?その子の本名は”宮田そら”か?」。


「はい、そうですね」。


 「サソリはこっちにも来たぞ。”5mio-dipt”って薬物(通称・ゴミオ)と金で暴徒を組織している。私を狙って来たようだが、門前払いにした。私の組織が欲しい様だ(笑)。考えのない奴が次にする事は決まっている。私の子供だ。しかし、それもムリとなると・・・私の息子とおまえの所の”宮田そら”は、無二の親友なんだ。気をつけろよ」。 「もう、来ましたよ(笑)。わざわざ、ありがとうございます」。”サカナ”「そのガキも含め、えびすの無事を祈る」とだけ言って通話を終えた。


 


一方暴漢達をまいた「6号」は京橋の商店街を走っていた。”まいた”とはいえ、未だそこかしこにそれらしき大男たちが自分を探しているのは、”野生のカン”でわかる。


ドン・・・


「そら」がぶつかった人は、飲みに出かけた田川と斎元だった。


 


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そらの物語37 「サソリ様」

2010-07-14 14:55:37 | そらの物語


 


37


「サソリ様」


 


気になる事は その場で口に出さずにはおれない「ヘビ」は


皆が「そっとしておこう」との 暗黙の了解にたって


”あえて話題にしなかった”「今朝の事」について


ダイレクトに直撃した 


「なあ6号、おまえ今朝、なんで部屋に閉じこもってたん? どっか 具合でも悪かったんか?」


「1号・カイ・ネコ・Hiたかお・ゆきりん・ぽち」のうち


特に「ゆきりんとぽち」以外は 「6号の返答」に対して微妙に身構える風だ


ー6号が いかなる突飛な事を言い出しても、それに対応しなければならないー


という なんだか妙な緊迫感


それに関連して おおいに”痛い目”に遭わされている「Hiたかお」は特に


ただの会話だというのに ”覚悟を決める”ような冷や汗が滲んでいる


「うん、ぐあいが悪かった」 と「6号」は応じてすぐに


ー何んでも言えよー との「1号メール」を思い出した


「なあ、男が男を好きになったら、


やっぱそれはへんたいプレイってことか??


  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  


全員が一瞬の沈黙の後 大爆笑が巻き起こった


「はっはっはっはっ!!6号!おまえ、やっぱ、おもろいわ!」と


手を叩いてゲラゲラ笑う「ヘビ」


「はっはっはっは!6号の中ではもう”プレイ”まで行ってるんやな!」


 


一応真剣に”言ってみた”つもりだった「6号」も 


”そんなにおもしろかったのか!”といった具合に笑い転げる皆の空気に流され


「あははっ!やっぱ、へんたいプレイはおもしろいって事やなぁ!!と何に対してかはわからない様な納得の口ぶり


「ちがうちがう!あっはっはっは!!6号、ちがうって!!」と更なる笑いを起こした


このちょっとした笑いによってー「6号」がどんな突飛な事を言い出しても、


対応しなければならないー といった緊迫感は開放され、話しやすい空気になった


「カイ」は「6号、おまえなんかちょっと赤くなってるぞ」と、笑い気味の冷やかし半分に


「6号」を小突いて「ええ?”それ”って、この前コンビニで見かけた


”兄ちゃん”の事か?」と、さらに踏み込んで問いかけた。 しかし、この問いかけは、


「Hiたかお」にはまずかったのだ


「カイさん、そうやねん・・・おれ、それを考えたら、ココんとこが(と自分の胸をさする仕草)めっちゃ”しんどい”感じになるねん・・・」との「6号」の返答にかぶせる様に


「いたいいたいいたい痛い痛い痛い痛い痛いって!」


と又”点滅”し始め その痛みに絶えかねて飛び跳ねる様に身をよじっている


「あっ!あかん!たかおさん!タオル!!」 「1号」があわてて「濡れタオル」を


「Hiたかお」に押し当てると”じゅじゅじゅう~!!”という音と共に


濡れタオルの水分を蒸発させて 収まった


「もう・・かんべんして・・・」 うつぶせたままうなだれる「Hiたかお」は


そう愚痴ろうとしたが 「6号」の「今の心のうちにあるもの」を思うと


その先は言えず 再び”点滅”が来るならば それは耐えるしかない


「ネコ」が解決策を模索しながら、言った


「う~ん・・6号は、その兄ちゃんと、どうなりたいん?」


「どうなりたい??あ!それは・・それは・・・・う~ん・・・・・それは・・・・・」


いよいよ混迷する「6号」  皆はこの問題の相手が「女」であれば


回答はいくつも用意はあったのだ しかしこの場合は・・・・


問いかけた側の「ネコ」も 言葉につまる「6号」をどうフォローしてやれば良いか


わからなくなってしまった


・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・


少しの間 全員沈黙 


「なあ、6号」 と「1号」


「おまえ、迷ってる時って、”ダサ”いな」


そう言って、「6号」の腕をグッと掴みよせ 子供にするように抱きしめて


「なあ6号、大丈夫!いったん男が、本気で心の底で想った事は、まちがってない。


おまえが迷ってしまうくらい大事に想っている事やったら、それはきっと良いことに違いない。


 おれは、そう思うで。おまえは、進んだら良いだけやん!!」

 

皆は「そや!そや!!」とばかりに明るくなった


 


 


ガタッ!!!!!! 


突然に「なないろ」の重いドアを蹴り開ける激しい音についで


「おい、おまえら!天誅やぞ!!」


と4~5名の「えびすメンバー」と同じく”北斗の拳体型”の暴漢が乱入して来た。突然の荒っぽい訪問者は、不意をつかれ驚くメンバーを見下ろして、もう一度「天誅(てんちゅう)が下ったって、言うとんねや!!」と一括すると同時に先頭の男が早い動きで、手に持つ鉄パイプを振り下ろし「6号」を中心に囲んでいたテーブルが、乗っていた食器もろとも砕け飛んだ。


とっさに殴りかかるのは、こうした場合いつも「ヘビ」だったが、砕け飛んだテーブルを避ける隙に もう一人の暴漢の鉄パイプが直撃していた。 鉄パイプの殴打は時として一撃で致命傷となる。 無言でうずくまる「ヘビ」の打ち所は”ヤバ”そうだ。  「カイ」があわてて「おいおいおいおいおまえら!!なんや!いきなり!!」と、暴れる気配満々の暴漢たちににじり寄ろうとするや即・もう一撃の鉄パイプが「カイ」の顔面を狙って振り下ろされ、両腕でそれを受けても骨折は免れない。「”ザコ”はすっ込んどけや!!!」衝撃に倒れこむ「カイ」に浴びせられた言葉 ”ザコ”。  これには「ネコ」が反応し「”ザコ”って・・おまえら・・」と、殴りかかろうとするのを「1号」が手で制し、先頭の暴漢に向かって言った。「”おじゃまします”も、なしか?」。    少し落ち着いた口ぶりの暴漢が「あんたが1号か?」。  「で?何んの用事かな?」。 この一瞬の合間に「1号」も「ネコ」も、部屋に隠された自分たちの鉄パイプの位置を目で確認した。    隅の方で震える「ゆきりん&ぽち」と「Hiたかお」は、その視線を追った。 「6号」は暴漢を睨みつけていても下手な反撃はしない。 開け放たれたドアの向こうには、さらに大勢の集団が見える。ガタッ!!という物音。 暴漢からは見えない「Hiたかお」が、「1号」にその鉄パイプを放り投げる音と、 先頭の暴漢のわき腹に”それ”が突き刺さる音がほとんど同時だった。 「1号」の放った鉄パイプは暴漢のわき腹を貫通している。 「取り合えず、ミネ撃ちや」 と少し笑う「1号」。


それを合図に一斉に「ネコ」と「6号」が、「Hiたかお」が放り投げる鉄パイプを手に襲い掛かった。「おまえら!!」と応戦しようとする暴漢達の足元に、先の”串刺し”になった暴漢がうめきながらたおれ込んだが、かまわず”鉄パイプ”どうしの交戦は開始されようとしていた。 が・・・・


ここで又、唐突に「よっしゃ!そこまで!!」  という大声が「なないろ」の外の小雨の中で、何かを待って待機する集団の方から響いた。 それに構わず鉄パイプを振り上げて殴りかかる「ネコ」と「6号」が”ギョッ”とした。 「はいはい、ストップ!」と言いながら、修羅場になろうとしてた「なないろ」の中にゆっくりと入って来たのは、「サソリ」だった。  ”ギョッ”とした理由は入ってくるタイミングもあったが、「サソリの顔」だった。  タトゥーだか”スミ”だかわからない真っ黒に着色された顔面に無数の小さな「赤いサソリ」が這い回る絵柄。 恐ろしい病の様な顔。暴漢達が”さっ”と道を開け、いかにもその”ボス”の登場である、と言いたげな、ゆっくりとした動きで、「1号」の前に歩み寄った。


「おかえり、”友達”・・ようけできてんな」 と「1号」。 「なあ、1号、”おれの仲間”にならないか??」と「サソリ」が笑みをうかべた。


 


 


 


 


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そらの物語36 「そらの起き上がりコブシ」

2010-07-08 11:48:58 | そらの物語


36


「そらの起き上がりコブシ」


 


「そら」が おかしくなった


壁に向かってあぐらをかいて座り 「起き上がりコブシ」の動きをしながら


時折 携帯を見つめては 笑っている


その日は朝から「Hiたかお」もおかしかった


特にハッキリと”おかしくなった”のは この日の早朝からだったので


この”おかしな二人”を発見したのは 当然 早起きの「カイ」だった


いつもなら「カイ」が起き出す 午前5時過ぎには


もう「なないろ」に到着している「Hiたかお」が


「なないろ」の廃材置き場で ”点滅”しながら気絶していたのだ


記録的な豪雨となるこの日の 早朝の廃材置き場で


「たかおくんが死んでしまった!!」 


「ゆきりんとぽち」が大騒ぎで走り回っていた為に


「Hiたかお」の発見は 幸いにも雨が降り出す前となったのだ


「なないろ」について間なしに彼を襲った激しい”点滅”は、「1号」・「ネコ」・「ヘビ」たちが起き出してくる頃になると「マメ電球」程度に収まってはいたが、痛ましく横たわる身体のあちこちから軽く”煙”が立ち昇っていた。閉じこもった「そら」は、起き出してきた皆が いくら呼びかけても「起き上がりコブシ」のままだ。


”ドンドンドンッ!!!”とドアを叩きながら 「お~いっ!!6号~!!!」と「カイ」。「あいつ、聞こえてるのに・・・無視やな・・」。 「なないろ」の寝室は、寝るスペース程の広さしかないのでドアを叩く音が聞こえない、という事はまずない。 「お~いっ!6号~!メシにしよぉ~!出てこ~い!」。 「おれのせいかも知らんわ・・おれ、一ヶ月くらい前・・・あの時、めっちゃ怒らしたから」と自分で言っておいて 徐々に責任を感じて小さくなりそうな「ネコ」。「だからぁ、どんな事言うてんって!?」と 「ヘビ」。3人の”北斗の拳体系”の男達がドアの前に集合して ゴチャゴチャ話す姿は 少し可愛げがある。 その後ろから「・・いや、原因は・・・携帯や・・あいつの携帯電話」。「Hiたかお」が 痛みの残る弱い声で言った。 「あっ!たかおさん、気が付いた?」と「1号」が、「Hiたかお」の頭を冷やす為に 炊事場でタオルを濡らしながら「たかおさん、”煙り”まだ出てるで(笑)」と続けた。「1号さん、すんません・・あの原因はあいつの携帯の写メですわ。”写真、撮るから”って、昨日一緒に行ったんですよ、そこのコンビニに。で、何撮るんかなって思ってたら、入り口の所に灰皿あったでしょう?アレばっかし”バシバシ”撮りだして・・その後、あいつがその写メを見るたんびに、ボクが点滅する・・・やめろって言うても”もう一回だけ”とか言うて、またパチッと携帯を開けて、で、ボクがまた・・・そんな感じで。今、たぶん、又それを見てたんでしょう?」。 「うん、さっき見てたけど・・今は・・・起き上がりコブシですねぇ・・」と「ヘビ」。「カイ」が思い出した。「ああっ!!たかおさん、あの時の”あれ”ですね!あああっ!思い出した!あの、ヌボ~っとした感じの”兄ちゃん”がおって!・・」。「そうそう、たぶん、原因はそれですね!その”兄ちゃん”を写メ見て思い出してるんですよ!!あれから時々、今みたいな感じになったり、ならんかったり。 今朝はそれが最高潮やったって事ですね、要するに」。「んんんん??でも、何んで?その”兄ちゃん”の事を??知り合いでもないんでしょ?、あ、また起き上がりコブシ」 覗き見る体勢のまま「ネコ」。「うん、”しらない人”って言うてたな」。


「・・・・・ボクの予感では・・奴の携帯を見るときの表情とかから考えられるのは・・」。「考えられるのは??」


「恋です!!」  「はあ??」  



 「なないろ」の朝はこの様に始まった


”しらない人”について 様々な憶測や解釈をひとしきり語りあって


結局は「よくわからん」という所に落ち着く以外なく 


皆 降り出した雨の中を それぞれの仕事へ出発した


「そら」は 閉じこもったまま 何ら返答ははしないままだった


 


昼過ぎになって 寝室から出てきた「そら」の携帯がなった 


「あ、なんか来た!」


それは「1号」からのメールだ


おい、6ごう! おまえ、さいきん、なんかへんやな?だいじょうぶか」 


「6号」に返信をさせる”コツ”は 「ひなかな」で分かり易く書くこと と


「絵文字」を入れる事だ


おいいちご! へびがいちごのこと愛してるてゆうてたで


こらっ6ごう おまえ、ちゃんと おれのしつもんにこたえろ!おまえ、さいきん、なにか、なやんでるんか??」


なにゆうてんの?」


「わからんふりするな なにか、なやんでることは ばれてるぞ しんぱいごとでもあるんやろ??メールでいいから言うてみ!」


ちょっとタイミングを空けて「そら」メール


しんぱいことわいろいろあるでいろいろおもてかんがえて しんぞうのところがごちやごちやとなでます


「そうか。それやったら、じぶんひとりでなやまんと、おれでも、カイさんでも、えんりょせんと、うちあけたら、だいぶんすっきりするぞ


うん」  「いつでもいいぞ、おまえが”よっしゃ”っておもったときに、はなしてくれたらいいから


いちご おれうまくゆうわれへんから、ゆうのやめとくわおれはだいじようぶです


「わかった!でも、みんなおまえの家族やからな おまえのこと、みんなしんぱいしてるから、今、いろいろかんがえて、しんどいのやったら、しばらくゆっくりして、そのあとで、元気になったらええ!


これ みんなおまえのなにてかいてるの?」


 みんな、おまえの”かぞく”って書いてある


かぞくやなそれわいいかんじやななんでもゆうたらいいねんな?」


そういうことです


この「1号」とのやり取りの結果、この日の夜には無事「6号」は皆と食卓を囲む事ができた。「1号」はメールの事については何も言わず、「そら」も普通にしていた。皆はこの日の雨で仕事がどれほど大変だったかで、のどかに盛り上がっていた。


豪雨の夜、「なないろ」の外には5~6台の、不審なバイクが停車した。 


その者達は、「なないろ襲撃」の気迫に満ちている。


 


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そらの物語35 「おみくじの内訳」

2010-07-02 04:35:11 | そらの物語


35


「おみくじの内訳」


 


「それ!絶対、おかしい!!」


と田川。 「・・対応って、早すぎやろ?」


小さな小包には「斎元よしお様 ”和解マンおみくじ在中”」


と印字された「佐川急便」の送り状。


「だって、おれ、悩みごとがあるとしか言うてないし・・しかもこれ、


電話切って、すぐ、郵便・・・やろ?いやいや!それは・・・有りえへんで!」


「っていうか、そんな対応、ムリやろ?物理的に・・郵便屋は、普通やった?」


「うん、知ってる郵便屋やから、これ、ちゃんとした郵便物やわ・・・」


「??おまえの悩み事も聞かんと、で、電話切って即、郵便・・・。うそやろ?


あっ!それにおまえ、電話で、自分の住所とか言うてないな!」


「あっ!ほんまや!名前も!苗字しか言うてないのに、


”斎元よしお様” とか書いてある!」


「ええ~っ???ますますわからんで!どういう事や?」


「おれに聞くなよ!」


「その小包、発送日とか何ってなってる??」


「発送日、あっ!今日や!で、着日も今日!!


「んんんんん・・・・・電話の相手は?普通?怪しい感じは無かった?」


「無かったな。めっちゃ”普通”で、女の人で・・


で、なんか、女の人の声の向こうで、コールセンターみたいな、


電話がじゃんじゃんかかってて、たくさんのオペレーターが対応してるような、


音が聞こえてた・・・」「??どういう事や・・・」「何から何まで、さっぱり・・わからん」


「もっとわからんのが、夕方にもオレ、電話してみたんや。 


NTTの”使われておりません”ってアナウンスやん、


そやのに、さっきの電話の女の人は、”何時何分にお電話くださった斎元


さんですね” とか言うてたし・・。」


「おいっ!!」と、どこかから誰かが覗き見ていないか、二人揃って気になり


息を潜めてキョロキョロしてみるが、静まった「はしみ荘」の


その他の住人が見ているテレビの音声が聞こえるのみで、


他に雨が少し小降りになったような、どこかから滴るしずくの音くらい。


あくまで現実は現実だ。 


ありのままに、あまりに普通に「はしみ荘」の雨の夜だ。


「誰も・・・・おらんわなあ・・・・」 「うん、そんな気配もない」


「・・・・・」


「よっしゃ!、よしお、開けよ開けよ!!取りあえず、開けてみよ!」


「おっけ!!」


 中には、「小さなハンカチ」と、その説明書きのような紙。


「何?これ???」


「ハンカチ」の真ん中には、大相撲の番付表のような肉太な文字で、


「さいもと」と刺繍が入っている。


こうなると、次第に「笑い」が込上げてくる二人。 「ハハ・・」


「で、その説明書きはなんてなってる?」と、


”ちょっと笑い気味”の田川が、「斎元」の広げる「説明書き」に、


身を乗り出して集中する。


 


 


斎元様!おめでとうございます!!


当たるもハッケイ!当たらぬもハッケイ!


「和解マン・おみくじ」


まずは、郵送の内容をご確認下さい。


1・ハンカチ(刺繍入り)・・・1点


2・説明書き・・・・1点


 この「ハンカチ」は、今後のあなたの「本当の想い」を遂げる為の、


最大のアイテムとなりますので、いつでもどこでも取り出せる場所に


大切に保管・もしくは携帯して下さい。


使用方法は様々ですが、よく、水分を拭い取る事に、


ご使用される事をお勧めいたします。 この使い方が、この「ハンカチ」の効力を、


もっとも効果的に引き出す仕方であるという事を、くれぐれも明記のうえ、


ご使用下さいますよう、お願いいたします。


運勢としては、「出す」と「出さない」とでは、「出す」を取ると、「吉」。


「雨」は、今のあなたには、ラッキーな展開へと導くアイテムとなるでしょう。


「親しい友人」との飲み会も、「雨の日」が「吉」。


でも、「飲みすぎ」は禁物!明日も仕事だという事をわすれないように!


起こる事柄の全てに対して、あなたがもともと本来持っている「優しい気持ち」で


対処するだけで、事柄は好転するでしょう。


ただ、危険が伴いそうな予感があれば、「深追い」はしない事です。


全体運としては、「足下二泉アリ」という事を忘れなければ、


友人関係・恋愛・仕事のすべてが、上昇傾向になってゆきます。


その上昇傾向は、長続きはしない、という事も忘れない様に。


 You   must   become   happy  !!


 


 


「これ・・・何??おみくじ?・・占い???」 


「あかん・・・おれ、頭痛いわ(笑)」


「さ・い・も・と」と、刺繍の入ったハンカチを裏にしたり表にしながら、


「雨に濡れたら、拭け・・・・って事か?」と「斎元」。 


「それ、でも、さっきおまえが電話してから用意した物じゃ・・・ないわな」


「取りあえず、”携帯”しとくわ(笑)」


「”親しい友人との飲み会は「吉」”やろ? ちょっと行こか?京橋とか?」


「そやな!!ちょっと小降りになってるし」 「”飲みすぎは禁物”らしいで(笑)」


 


 


これは 私達にとっては


重要な事である 


「和解マン」との 最初の”直接のコンタクト”であったから


そしてまた このコンタクトが


私達の「はたらき協議会」よりも「前」であり


私達の誰もが この事を全く知らなかったという事が


何より 重要だったのだ


もし この時から私達と彼らとの接点があり そして 


私達と「和解マン」との 何らかのコンタクトが成されていたならば


この年の秋頃より頻発し始める事件も


未然に止めれたかも知れないし


その中で失われてしまう”尊い命”も


守れたかも知れないのだ 


 


「斎元」と田川がいそいそと出かけた京橋から、


少しはなれた所に位置する「なないろ」では、「えびすメンバー」の中に


異変が起こっていた。 ちょうど、「斎元」と田川が「仕事が云々」、


「和解マンのおみくじが云々」し始めた、その数時間前くらい。


「そら」の様子がおかしかったのだ。 


 


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そらの物語34 「和解マンの助け舟」

2010-06-28 05:44:33 | そらの物語


 


「和解マンのたすけ舟」


 


夕方になっても降り止まない雨の威力は、


老朽化してもしぶとく生きながらえる「はしみ荘」に、


とどめを刺す勢いで降り続ける。


「斎元」はついに会社に連絡を入れる勇気が出ないまま、


自らの弱さが招いた罪悪感によるダメージを受けて、


何もせずにいるだけで弱っていく生物のようだ。


精神的には踏ん張っている、でも現実的には何もしていない。


時間が過ぎるほどに、敗退者の実感に押しつぶされそうになりながら


目には見えない重症を負って、精神的に逃げ惑うばかりだ。


ー・・・電話すれば、いい。 それだけやん・・・ー


 


「はしみ荘」のきしむ階段を、誰かが足早に上がってくる音が聞こえる。


そして、重症をこらえる「斎元」がいる部屋に向かってくる音。


ーあ・・誰か来る・・・ー


ガタッ!!! 出し抜けに、ノックも何もせずに田川だ。


そして、憐れなほど慌てふためく「斎元」の顔を見るなり、


「あほか、よしおっ!!なにしてたんや!!」


飛び上がりそうに驚く「斎元」は、


狭い部屋のどこにも隠れようもなく、首をすくめた。


「おまえ、今日みたいな日に、しかも連絡もしてへんやろ!!


あほか!!なにしてたんや!?!」


と田川は大声で怒鳴りつけた。 「斎元」の田川を見る表情は


目鼻がバラバラになりそうに崩壊し、「あ・・うっ・・わ・・」としか言えない。


「・・・・・・・・って、冗談、冗談!!」


今日一日”へこみ”続け、考え続けたのであろう憐れな親友に、


優しい田川は怒る事ができない。 それは田川の良い所でもあり、


悪い所でもあった。 本当は本気で怒ってやろうと思っていたが・・


顔を見ると言えない。


「で、どうしたん?病気とかとちゃうんやろ?朝、おれが電話した時、


元気やったやん?」 そう聞く田川の作業着は、あちこち雨で濡れて、


大変だった一日をやり切った汗の匂いが、精気に満ちている。


「・・・うん。」としか言えない「斎元」は、


何に切迫しているのかわからないまま、「・・たがっち、おれ、病気やわ・・・」


と言葉を継いだ。


「はい!、取りあえず、缶コーヒー」と、


「斎元」分のコーヒーを放り投げる田川。


 


 


話しは、今日の仕事の話から始まったが、やはり中心は


今「斎元」がはまり込んでいる混乱の解決には、


その原因が何か、という方向に流れた。


「たがっちな、おまえにしか言われへんけど、実はおれ・・」


「何?不治の病にかかったか(笑)、あと3日の命やとか(笑)?」


「ちがうちがう!たがっちって・・・・・・・」  「おれが?何?」


「・・・・・・・・同性愛って・・・どう思う?」


「まあ、変態やな!」  「・・・・・・」


黙り込んでしまいそうな「斎元」。


「いやいや、なんやねんな?遠慮せんと言えよ!あれか?


お前がこの前blogに書いてた、”男の子” の事?」


「・・・まあ、だいたい、そのへんかな・・」 「ふ~ん・・・」


「あれに書いた通りやねんけど、最初はこんなんとちゃうかったんや・・


blogネタっていうか・・詩のネタっていうか・・」


「うん、おれも、そう思ってたよ。 ”おっ、今度はBoyネタで行くか?って


思ってた」


「そう、ところが今、”それ”以外の事が考えられへん・・・って言うか・・・


一瞬も”その事”が頭から離れてくれへん・・・・」


「うんうん、要するに、”マジ”になってしまった、


って事やろ!別に、それでいいんちゃうか??」 


「たがっち・・・・もう、友達・・・やめるか?、キモいやろ?」


「あほっ!おれはおまえがどうなったって、友達は友達やと思ってる、


そんな簡単に”うらぎりもの”にするな(笑)」


「・・・・たがっち・・おれ、ちょっと感動してるわ」


「いっぱい感動しろよ(笑)、泣いてええぞ(笑)。」


 


「斎元」のPCのまわりに、書きさしの「詩」の草稿がちらばる中に、


「”なやみ無用”の和解マンのビラ」を見つけた田川。


「なあ、それ、電話してみた?


あなたの思いが本当・・、なら、つながるんやろ(笑)」


「してみた。何回も。”現在、使われておりません”や(笑)」


「今やったらつながったりして(笑)」


「何回もしたんやって・・・こうやろ・・・」


と携帯の発信履歴を出して、プッシュする「斎元」。


0120・・783・・640


プップップッ・・・・・・プルルルル!  プルルルル!!!


「あっ!!」 「あああっ!!」


まさか、本当につながるとは思ってもみなかった二人は


顔を見合わせて、「!!!」という表情。


「はい!和解マンです!!もしもし?」


「で・・でた!!!!」


「おっ、よっよしお・・・出てみ!出てみ!!出てみ!!」


慎重にうなずきながら「斎元」。


「も・・・・・・もしもし・・・・」


「あ!もしもし~!!和解マンでございますが・・・」


若い女性の、事務的ではあるが、さわやかな声。


「・・・・・あのぅ・・・」 「お客様ですね!!お電話、ありがとうございます!


和解マンでございます!」


「あの・・・さ・斎元といいますが・・・あの・・・」


「斎元さまですね!!失礼いたしました!


先ほど、16;28分にもお電話いただいておりました斎元さまですね!


つながりにくくなっておりまして、大変失礼いたしました!


遅くなりましたが、ご用件を伺わせて戴きます!!」


話しやすそうな、女性の声。「斎元」は一瞬、田川の顔を見て


「あのう、ちょっと悩み事がありまして・・・その・・」


 「はい!万事、承りました!!


ただちに、ご対応させて戴きます!!


お電話、ありがとうございました!!」


プツ・・・・


唖然とする「斎元」は、目線が泳いでいる。


「え?な何んて??」と田川。 「・・たいおう・・するって・・」。


間髪を入れず、玄関から「斎元さ~ん!!郵便で~す!!」


との男性の声に、二人ともビクっとして、もう一度顔を見合わせる。


「びっビックリするわ!!よしお、郵便や!普通に、郵便や」


「お、おう・・」と郵便物を取りに出る「斎元」。


「あ、こちらにサイン、お願いしますね~」といつもの郵便配達のおにいさん。


「たがっち、何んか来たわ」 「通販?」


「ありがとうございました~」と玄関から郵便配達のおにいさんの声。


いそいそと、受け取った郵便物を見て、


二人とも飛び上がりそうに目を見開いたまま「あ!!」という


表情のままに、もう一度顔を見合わせた。


そこには、きれいな文字で


「斎元よしお様 ”和解マンおみくじ在中”」と印字してあった。