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「一の妄の生中継・4」
あれ??これが見えない設定??と「ネコ」。
常日頃から非現実的な暴漢達も、この現実は受け止めがたい。 今、躍り出てきた「6号」そして、「サイモト」とその友人、「えびすのネコ・ヘビ」、これら全てが突然現れ忽然と消える。 「はぁ????」。”驚く”という以前に、まず受け止めきれず、キョロキョロするのが関の山の暴漢達。 その”唐突な変化”に何んら関係のない「そら」が振り上げた鉄パイプに応戦するべく、同じく鉄パイプを構えていた暴漢は、不意に後ろを振り返ってみたりするが、うろたえる仲間がいるのみだ。 これは”見えない設定”を「かけられた側」の「そら・ネコ・ヘビ・斎元・田川」も同様だった。京橋の街並み、人ごみ、目に映る全てが”色合いのバランスが取れていない、乱れ気味のビデオ画像”のように視覚される。 「スゲえ・・これ、おれらからは見えてて、他からオレらは見えてないんやな?、たかおさん??」。 暴漢達以上にキョロキョロしながら「ネコ」。 「そうそう!!”見えない設定”はみなさんにも上手く反映され始めたようです!奴らからボクたちはもう見えていません!ただ、あまり長時間この状態でいてますと、どんなおかしな事になるかも知れませんので、今のうちに、とっとと逃げましょう!!あ!”サエモト”さん、すんません!申し遅れました!!ボクはHiたかおと言います!お初にお目にかかります!」。 「・・・・・・・・・・・」。 絶句する以外、なすすべの無い「斎元」。 田川も同様、「・・どうも・・」と反射的に”中途半端なおじぎ”はしたものの、目の前で滔々としゃべりだした「生き物」に、”おじぎ”をしている自分こそが非現実そのものだ。
そしてその事を、怒りの塊となった「そら」に
理解できる様に説明できる”ゆとり”など、
そこに居合わせた誰一人として、持ち合わせるはずがない。
暴漢達の目の前に今現れた「そら」も、「斎元」と「その友人」も、
「そら」を追って来た「ネコ・ヘビ」も、”点滅”を始めている。
これは、”見えない設定”が、人体に反映し始めているのだ。
その唐突な変化に、何ら関係のない「そら」の鉄パイプが、
暴漢の一人に猛然と斬りつける。 この変化が全く理解できない
あわれな暴漢の一人の顔面に、まともに直撃しその場に倒れるが、
この時点で「そら」は暴漢達の誰からも、もう”見えていない”。
「そら」がいかに「接近戦に非力」であったとしても、渾身の鉄パイプをまともに受けて
倒れた暴漢は瀕死だ。
「あかんあかん!あかん!!あかん!!!」。
「そら」の猛攻に「Hiたかお」が大声で叫ぶが、「そら」の耳にも心にも届いてはいない。
”見えなくなった敵”に対して構える暴漢達は、
どこの何に対して構えているのかさえわからない。
「6号!!!」。とっさに「そら」を取り押さえる「ネコ」と「ヘビ」。
「6号!!もうええ!!もう、ええって!やめろ!!」。
「うるさいっ!!こいつら、みんな”悪るもん”やろ!!全員殴ったる殴ったる殴ったる!!」。
「そら」の怒りは”発作”に近かった。 「そら」を取り押さえたものの、
「ネコ」も「ヘビ」も、この状況を上手く説明できない。
「6号、おれらは・・・取りあえず、取りあえず・・見えてへんねや!だから・・」。
「誰が見えてへんの?どれが見えてて何が見えてへんのや?
取りあえず、こいつら(暴漢)”しばい”たらええのやろ!!
”しばい”たらええねん!!こんなやつら!!」。
状況は理解しないままでの勢いは止めがたい。
こうなると「被害者」は暴漢達の方だ。
「あかん!あかん!!”しばい”たらあかん!!逃げんねん!逃げるのっ!!」。
「ネコ・ヘビ」の言葉に関わりなく、再度鉄パイプを振り上げる「そら」。
ここで、おののく「斎元」が恐ろしい生き物でも見るように
「そ・・・そらくん・・・」。とだけ言って、絶句した。
はっとして、思いだした様に「斎元」の方に目をやる「そら」の瞳は
このピント外れに激情した怒りから、涙が光っている。
「そ・・そらくん、殴るのは・・・・な、殴るのは・・もう、やめよう・・」。
震える「斎元」の声は、まるで虐げられた小動物のようだ。
「殴るのは・・・やめよう・・・」。
「斎元」の言葉を”なぞる”様に「そら」。
「そや!6号!行くぞ!!パパっと逃げよ!!”サエモトさん”、
斎元さんか?あんたも取りあえず行こ!お友達君も!!」と「ネコ」。
「そら」の怒りにも驚かされた「斎元」だったが、さらに”不思議いっぱい”といった仕方で
「Hiたかお」を指さして何か聞きたげだが、そのゆとりはない。
「よしお!取りあえず、行こ!逃げよ!!」と田川に促され、それに応じる。
「そら」も「よっしゃ!逃げるんやな!・・・ほんなら、リョ-カーイ!!」。
と理解は出来ていなくとも納得はした様子。
(ヘビ)「取りあえず、バイクで逃げるのには人数オーバーやから・・」。 (ネコ)「そやな!おい6号、おまえは斎元さんとその連れが安全なトコまで逃げるまで一緒に行け。 おまえ、見つからん様に逃げるのは”プロ”やからな!!」。 (そら) 「うん!!」。 (ヘビ)「気ぃつけろよ!!あいつら、たぶんあっちこっちにおるからな!で、たぶん今ごろカイさんが1号と連携を取ってくれてるやろから、その結果どないするんか後で連絡するから!!斎元さん、こいつの電話返したってな!」 (斎元)「あ、はいっ!!」。 (そら)「おいヘビ!!3っつも4っつも いっぺんに言うたら、はじめが何んやったかわからんで!!」。 (斎元)「あはは!!そらくん、大丈夫!!オレが覚えてるから!!」。 (そら)「ほな、OKや!!」。
(暴漢)「おい・・・おまえら・・・・」。
(Hiたかお)「しもたっ!!!設定が・・・切れとる!!」 (ヘビ)「早や!!ほな行こ!ハ~イ!!ショウ・タ~ィム(笑)!!!」。
ーーー 「一の妄」からの乱れ気味の画像は”現場突入”後、冷静さを取り戻していた。 恐らく「一の妄」の突進が始まり、画像・音声共に乱れている間に、「ケリー・糸3番」の必死の説得があったのだろう。 怒りに我を忘れた「一の妄」をどうにかして止めるのは、いつも「ケリー・糸3番」の役目だからだ。 落ち着きを取り戻した画像は「オフィス・和解マンの事務所」に通じる階段から。ーーー
「さて、それでは気を取り直して・・・(ケリーの小声のアナウンス)・・・・みなさん、今、わたくしケリーと「一の妄」は、いよいよ犯行現場のまっただ中に突入した所であります!!ご覧のように、異常に静まり返った暗い階段が続き・・・あ、事務所の明かりが見えて来ました!!若干のざわめきが聞こえて参ります。中には「サソリ」と数名の暴漢たち、そして、未だ拘束されたままの”滝沢何んパオ”と数名の女性事務員が息をひそめているものと思われます!!無事なのでしょうか??」。 「おい!!そろそろ”カマクイ”に電話してくる様に伝えろ!!」。 「はい!わかりました!」。 「・・・・サソリの、サソリの声です!!聞こえましたでしょうか?何か、指示を出している様です。 仲間に電話するように・・・と・・」。 「なあ、何んパオさん、悪い事をしたなぁ・・もうすぐおれ達はここを出るから、もう少し辛抱してくれ。 あんた達を殺す事は、もうしない。 ただ、おれの言った事を警察にシッカリと伝えてくれれば・・の話しやけどな!!頼むで!」。 (何んパオ)「わ、わかった」。
ーガチャ・・・・ー
「ああ!!何んパオです!!何んパオが出て来ました!!恐らく、今、サソリに言われた何かを、外に出て警察に伝えるのでしょう!!」。 「おいっ!!ケリー、何んパオ、撃たれるぞ!!取りあえず、中に入ろう!!武器だけでも取り上げようぜ!!」。 「そやな!!人命が第一や、よも清さ~~ん!!聞こえますか~!!」。
ーーーこのやり取りを見ていた「よも清さん」がーーー
(よも清さん) 「わかりました!!でもくれぐれも気をつけて下さい!!サソリの行動は私達にもわかりません。しかし、何もせずにはおれません。一の妄、最悪は・・・・あなたの”棒”でサソリを”叩い”てもかまいません!!”毒ちわわ”の「毒」が抜けるような効果があるかどうかは分かりませんが、・・・・最悪は”叩いて”みましょう!」。
「つわぁっ!!!」。
そう一声気合いを入れた「一の妄」と「ケリー・糸3番」は、
「サソリ」のいる事務所に突入した。
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