4月9日(土)13時~姶良市文化会館(加音ホール)において『姶良地区市民公開講座「痛みからの解放」~ペインクリニック~』が公益社団法人姶良地区医師会主催により開催されました。
開会挨拶・・公益社団法人姶良地区医師会 会長 佐藤 昭人先生
講演は4人の講師がパワーポイントを使用して、それぞれが専門的な立場で具体的に話をされましたので、私の理解した範囲で概要を紹介します。
講演①『痛み治療の最前線~ペインクリニックとは~』・・田代 章悟先生
○痛みには、急性痛(発症~3か月未満)と慢性痛(3か月以上)の2種類あるが、急性痛は治癒とともに消失、警告信号としての役割を果たす必要有益な痛みである。慢性痛は治癒した後も長期間持続し警告信号としての役割はなく、不要な痛み、有害な痛みである。
○ペインクリニックは痛み治療専門(麻酔科の一部門)として、日本では1962年(アメリカでは1936年)に誕生し、あらゆる痛みの診断・治療を行っているが、その中でも神経ブロック療法は、ペインクリニック最大の治療法である。
○ペインクリニックは慢性痛で改善の余地の可能性を諦めかけた痛みに希望を与えるものであるが、専門医は鹿児島では12人(東京の約1/20)と少ないため、鹿児島大学病院麻酔科では、医学部学生教育、研修、国内留学による技術向上、関連病院への出張診療、メディアによる広報などに取り組んでいる。
講演②『急な痛みから長引く痛みまで~神経ブロックの治療~』・・大納 哲也先生
○神経ブロックとは抹消神経などに局所麻酔薬を作用させて、その部位よりも抹消の神経への伝達を抑制する治療法・・脳・脊椎神経や交感神経節の近傍に針を刺して、局所麻酔薬または神経破壊薬も用いて化学的に、あるいは高周波凝固法や圧迫などによって物理的に、神経機能を一時的にまたは長期間に遮断する方法。
○局所麻酔薬を使った神経ブロックは、けがや手術の痛み、急にでてきた痛み(急性痛)及び傷が治っても続く痛み、痛みで動かせなくなった関節や筋肉の痛み(慢性痛)の両方に効果がある。
○慢性痛に神経ブロックが効果がある理由・・〔痛み〕⇒交感神経の緊張=血流障害、筋緊張、不動⇒疼痛物質の滞留、浮腫、筋緊張による痛み、収縮による痛み⇒〔痛み〕の連鎖を遮断するからであり、痛みに合わせて治療法を選択している。
講演③『治りにくい痛みの時に~先進治療:脊髄刺激療法など~』・・清永 夏絵先生
○インターベンショナル治療とは内科的治療(薬物治療)と外科的治療(手術)の中間に位置する治療で侵襲度もその中間であり、痛みの原因の部位・痛みを伝える神経を直接狙って治療するので、副作用が少なく、他の治療より有用性が高い場合がある。抗凝固薬内服中などの人には治療できない場合もある。
○神経ブロック(神経遮断)の中の高周波熱凝固法が適応される三叉神経痛は強い顔の痛み(一瞬の走るような痛み)が洗顔、化粧、髭剃り、食事、歯磨き、会話などで誘発される病気で、三叉神経が血管に圧迫されることでおこると考えられており、高周波の電磁波で神経を熱凝固させて神経伝達を遮断するもので、局所麻酔薬による神経ブロック治療に比べて長期的な効果が期待できる。
○脊髄刺激療法は背骨(脊髄)の中の硬膜外膣というスペースに、電気刺激を出す線(リード)を入れ、電気刺激を発生させる装置を、下腹部またが臀部に埋め込む(心臓のペースメーカーに似た装置)もので、治療の流れは、最初はリードだけを挿入して約1週間試験刺激を与え、効果が期待できれば、刺激装置を植え込み、自身でプログラマを使用して痛みをコントロールする。
講演④『いろいろな痛みに効く漢方治療』・・園田 拓郎先生
○痛みに対する西洋医学と東洋医学の違いは、西洋医学では構造的な異常を発見するのが得意であるが、東洋医学では、東洋医学的な診察、診療を行い、西洋医学的に診断がつかない場合でも漢方でなんとななる場合がある。
○東洋医学では体の中を、気・血・水がめぐり、そのバランスが崩れると症状がでる。・・気(のぼせ、動悸、不安感、抑うつ気分)・・血(肌のくすみ、皮膚の乾燥、月経異常)・・水(むくみ、めまい、浮腫)・・漢方治療では、中庸~心と体の状態をベストバランスに
○漢方の診察法・・望診(顔色や雰囲気、匂い)、脈診(脈を診る)、舌診(舌を診る)、腹診(お腹をさわる)・・それぞれの体質や状態に合わせたオーダーメイドの治療を行う(同じ症状でも患者ごとにお薬が違う・・体にあったお薬をみつけるのが大変)・・漢方が得意な痛み(冷え性、寒さで悪くなる痛み、胃腸が弱い、長引いている痛み)
休憩の後に・・座長(鹿児島大学医学部・歯学部付属病院 麻酔科 教授 上村 裕一先生)の司会で、あらかじめ、書いてもらった質問を整理して講師の4人の先生より回答があったが内容は省略します。
今回の公開講座はペインクリニックについて、専門家より詳しく説明があり、痛みからの解放について理解を深めることができたので、痛みが継続する場合は、専門の医療機関を受診して、痛みから解放される生活ができるように努めたいと思っています。
パワーポイント画面の一部と資料をスキャンしたものを添付します。
会場全景
講演①『痛み治療の最前線~ペインクリニックとは~』・・田代 章悟先生
講演①の内容の一部
講演②『急な痛みから長引く痛みまで~神経ブロックの治療~』・・大納 哲也先生
講演②の内容の一部
講演③『治りにくい痛みの時に~先進治療:脊髄刺激療法など~』・・清永 夏絵先生
講演③の内容の一部
講演④『いろいろな痛みに効く漢方治療』・・園田 拓郎先生
講演④の内容の一部
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