Set me free!!!

storytellerです。本当に短い物語を書いたり、思い出話や日常の諸々について綴ります。

40年前、一緒に中国へ行けなかった仲間たち

2024-07-01 06:10:40 | 思い出

1985年5月。ハワイ(オアフ島)の東西センターで1か月間のセミナーが開かれた。対象は大学教員や研究機関の研究員などであったが、研究所の事務職に就いていたわたしも特別枠で参加が許可された。それは、勤務先の研究所が東西センターと共同で定期的に国際セミナーや国際会議を開催しているため、運営面での知識や技術を習得するという名目であった。

参加者は主催国アメリカはもちろん、アジア・オセアニア地域の十数か国から来ていて、いろいろな文化的言語的背景の人達と知り合った。中には帰国後もしばらく文通を続けたり、再会したりするほど親しくなった人もいた。彼らはわたしにとって「仲間」であった。

参加者は4つのグループに分かれて研修を受けた。わたしは同じグループの中で、特にアメリカ人男性、台湾人女性、中国人男性、ニュージーランド人女性、インド人男性と親しくなった。インド人からは熱烈ラブコールを受けて、みんなに冷やかされたが、わたしが気になっていたのは、別のグループにいた韓国人男性であった。その人は物静かで穏やか、優しい表情が印象的であった。同じグループではないので言葉を交わす機会はあまりなかったが、たまに顔を合わせるたび、わたしは胸がときめいた。

ハワイでのセミナーが終了した後は、中国の西安で1週間の海外研修を受けることになっていた。わたしは、当然参加者全員が中国へ行くものと思っていた。ところが、とても親しくなった台湾人女性と台湾人男性、そしてわたしが秘かに憧れていた韓国人男性の3人は、中国への渡航が認められないので参加できないという。3人からそういった国の事情を知らされ、国際政治関係に疎かったわたしは無知な自分を恥じた。

出発当日、中国での海外研修に参加する人達はバスでホノルル空港へと向かったが、バスの前でわたし達はとても悲しい別れを経験した。ハワイでの1か月間で心を通わせ合った中国人女性と台湾人女性は、抱き合って泣きながら別れを惜しんでいた。会えるのはこれが最後かもしれない、と互いに悲痛な思いを抱えて。その姿を見て、わたしももらい泣きをしてしまった。

わたしは、前日に韓国人男性とお別れを済ませていた。夕方2人で散歩をしたとき、いろいろなことを話した。わたしは、「いつかどこかでまた会えることを願っています」と彼に伝えた。彼は優しい笑顔で頷いてくれた。そして、「中国での研修が実りあるものになるように」と、わたしにエールを送ってくれた。

約40年前の出来事。今は、台湾の人も韓国の人も、中国へ渡航することができるようだ。いつ渡航禁止が解けたのだろうか。相変わらず国際政治事情には詳しくないわたしだが、東アジアの国々の関係は、40年前より良くなったとは言えないのではないか、むしろ悪化しているような気がしてしまう。ニュースで中国や台湾の話を聞くたび、ハワイでのセミナーで出会った仲間たちの顔が頭に浮かぶ。

写真は4枚とも、1985年の西安の風景。


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4 コメント

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Unknown (fairy333)
2024-07-01 11:19:49
storytellerさん

こんにちは
切ないお話しに胸が締め付けられるようでした。
同じ時間と空間を1ヶ月も共有して過ごした仲間との今生の別れ!
中国人女性と台湾人女性の別れのシーンが頭に浮かびます。
storytellerさんも韓国人男性とはそれきりになってしまったのですか?

拉致被害者の子供さん達も、お友達や先生達と二度と会えない別れをして複雑な気持ちで来日したと思います。
今生の別れ、悲しいですね。

storytellerさんの人生ってドラマよりドラマチックで圧倒されっぱなしです。
それにLove Storyもlots of loveで羨ましい〜
いつかの留学生男性との九州旅行、今回のインド人からの求愛...
まだまだありそうですね〜
楽しみにしてますね。
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国と国との関係 (storyteller)
2024-07-01 12:41:34
fairyさん、こんにちは。
あの時初めて中国対台湾、中国対韓国の複雑な関係を認識し、
今までなんて世の中のことに無関心でいたんだろう、と猛省したのでした。
拉致被害者のことも、いまだに解決せず、
ニュースを見聞きするたび胸が痛みますね。

もし、あの2人(中国人と台湾人)のどちらかが男性だったら、
それこそ悲恋物語になっていただろうと想像すると、切なすぎます!

韓国人男性とは何もありませんでした。わたしの一方的な片思いでしたもん。
すみません、恋に恋をしていた時期なので、
気が多くていろんな人を好きになって 笑。
今はだいぶ落ち着きました、もうこの年齢ですから~。

恋愛って人生のスパイスになっていいな、と思うので、物語もつい恋愛がテーマになってしまいます。笑。

コメントありがとうございました♪
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Unknown (storytellerさんへ)
2024-07-02 23:01:33
storytellerさんは、いろんな国に行って
たくさんの経験をされてきたのですね。
その頃の国際情勢が、そんなことだったなんて
私も、全く知りませんでした。
ちょうど、働きだした頃で、自分のことに精一杯だったかもしれません。
研修での素晴らしい人たちとの出会いは
今も、storytellerさんの宝物ですね。
韓国人の男性は、ドラマの影響か
女性にすごく優しいイメージです♪
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国際情勢 (storyteller)
2024-07-03 06:17:52
k-24さん、おはようございます。

高校生の頃、外国に住みたい病が始まって、
社会人になってからはますますそれが強くなって
止まらなくなりました 笑。
3年勤めたこの研究所での経験は、とても貴重だったと今も思います。
いろいろな国の人と知り合えて、視野も広がって。
でも、国際情勢、特に政治については本当に無知でした。
知らないことが多すぎて、情報収集が追い付かなくて。

韓国人男性には激しい気性の人が結構いるような気がするけど(笑)、
彼は特別穏やかでした。怒っている顔が想像できなかったくらい。

コメントありがとうございました♪
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