社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

江上剛『円満退社』

2014-03-15 15:04:30 | 政治
江上氏の『人生に七味あり』が大変おもしろかったので、氏の他の作品を探した。帯の紹介などから、今回の作品を選んだ。がタイトルがおかしい?と言うかこれはひねくれ?敢えて嫌味なタイトルとしたのだろうか?そしてまた登場人物がひねくれている。岩沢千秋(いわさわちあき)、家は吉祥寺駅近くで、専業主婦の聡子と二人暮らし。勤め先は京王井の頭線の浜田山支店(杉並区)で、そこの支店長だ。
東大の経済学部を卒業して、ひまわり銀行に入社、エリート(?)として大手町支店へ配属・・・。しかしその後エリートとして昇進する事はなかった?本人の回顧に「あの質問がいけなかったかな」
「あれは年金口座を獲得する運動をやっている時だった。年寄り客に頼み込んで年金口座を開設してもらうのだ。そうすることで支店の預金が増える。支店長が営業担当者と集めて拳をつき上げ、ガンバローと気勢をあげている。岩沢は、そのつき上げた拳に合わせて、「質問ですが・・・」と手を挙げた。「なんだ、岩沢」支店長は気勢を削がれ、複雑な表情を浮かべて機嫌悪そうに訊き返した。「なぜ、こんなにみんなで必死に年金を集めるのですか」岩沢は訊いた。「な、なんだって」支店長は目を丸くして。回りの営業担当者の視線が一斉に岩沢に集まった。「いや、そんなに驚かれることだとは思いませんでした。国民経済にとって、この支店に年金口座を集めることにどのような意義があるのかと思いまして・・・。年金というものは国から高齢者に支給されるわけですが、すでに支給年齢に達した人は郵便局を含む金融機関のどこかであっても手続きさえすれば、受け取ることができるわけで、その金が市中に回り、景気を下支えすることは理解できます。しかし私たちが必死に口座を集めなくとも、どこかの金融機関には口座があるわけですから、国の経済に対する効果は等しいわけです。そうなれば私たちの年金口座を獲得するという行為はまったく国民経済的には無駄といいますか、なんのプラスももたらさない行為といえます。むしろこうした無駄な行為に費やされる時間や年金用紙などの資源が浪費されているといえるでしょう岩沢は、滔々とまくし立てた。「もういい!」支店長は苛々した様子で叫んだ。「あの・・・・」「もういい!黙れ!難しいことはわからん。だが年金口座を獲得しろ、命令だ」岩沢は支店長のものすごい剣幕に驚き、次の言葉を呑み込んだ。それは、「無駄なことにエネルギーを割いていますね」という言葉だった。「あの質問はまずかったな」岩沢は呻いた呟いた。

この部分を読んだ時に思わず、笑ってしまった。そして漫画家の山科けいすけ氏を思い出した。山科氏の4コマ漫画が、朝日新聞のbe on Saturdayのb9に毎週掲載されている。がまさにこの氏の作品の乗りだ。だから逆に白けた。そしてその設定が面白い。以下にも東大卒のエリートとして・・・。

江上氏の前回の作品『人生に七味あり』もその登場人物が東大経済学部卒業だった。江上氏は逆に東大経済学部というのをひねくっているのだろうか?東大卒でもおかしな人間がいると?あるいは東大卒でもえらく(出世)はなれないと???

さて、この岩沢が、定年で、浜田山支店支店長として、最後の日を迎える。岩沢にもその妻の聡子も、岩沢の退職金が手に入ったらそれを元に、新しい人生をスタートさせる事を考えていた。そして支店に岩沢が出社すると、入社3年目の若手営業マンが行方不明となっていた・・・。

以降は目次にあるように、各章が時間だ。そうまるでアメリカの大ヒットドラマの「24」のように、つぎから次に事件が起こる。岩沢は今日一日過ごせば終わりなのだが、終わることなく、次から次にトラブルが発生する。最初に紹介される関連する全ての人物が全て繋がる様に登場する。

そして最後のオチもよろしく、収まっています。

飽きのこない、スリルな!そしてアホな、そしてアット言う間に読ませる作品です。決してまじめに読まないように!

しかし、少しだけ最後に方に、金融庁へ言いたかった事、銀行への規制などその方針が間違っていたこと、その責任は金融庁にあると言う意見も述べれらています。私も違う意味で、今の銀行等の貸し渋りの原因を作っているのは金融庁だと思っています。

いずれにしても、なかなか面白い、しかし、かなり一般庶民からするとレベルの高い設定です。

岩沢が今回貰える設定の定年の退職金は3,000万円でした。これが銀行の支店長の退職金として高いと思うが安いと思うかはやはり人それぞれだと思う。そこには東大の経済学部卒なら安い?

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書籍名:円満退社
著 者:江上剛(えがみ ごう)
発 行:2005年11月10日初版発行
発行者:見城 徹
発行所:株式会社幻冬舎
価 格:1700円+税

※この作品は「ポンツーン」に2004年5月号から2005年2月号まで掲載されたものを、加筆修正

ついにやってきた大定年時代
すべてのサラリーマンに捧げる衝撃の笑劇。
俺は退職金で絶対に
人生をやり直す!
東京大学を出て一流銀行に勤めるも、出世とは無縁。うだつの上がらぬ宮使えを34年、悪妻に虐げられた結婚生活を26年続けてきた岩沢千秋、56歳。
定年退職を迎える日、彼は人生最大の賭けに打って出る。
その仰天計画とは?
人生最良の日は最悪の日!?笑うに笑えぬトラブルの連続に、サラリーマン人生を問う選択を迫られる岩沢・・・ははたして夢は成就するのか!?

「サラリーマンは落ち度を少なくした方が最後に笑うからの。問題を起こしそうなことは穿(ほじくり)出さないほうがいい。ミスを犯すからだが、ゲームで言えばゴルフみたいなものだ。最初にいくらドライバーが飛んでも何にもならん。もちろん、そのまま順調に纏まれば、それにこしたことはなにのだが、最後に笑うのは、ミスが少なかった者だ。だからサラリーマンはゴルフが好きなのだよ」(本文より)

会社員を知り尽くした著者だからこそ描きえた哀愁に満ちたサラリーマンコメデイの快作、誕生!

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