黄金の13貫井徳郎『慟哭』に続き連続4回、私に取って初めての作者の作品紹介となるが、今回はかなり砕けた奇想天外なパロディと言うかコメディと言うか、かなり笑わせてくれる作品であり、過去当ブログでは紹介した事がない分野です。
タイトルからも分かるように、瞬間的に面白さを感じる作品でもあり、書籍を取り上げた時に、ついまた図書館で借りてしまった。
前回の作品と言うか、私が取り上げる作品は何れも暗いサスペンス系、推理小説物が多いが、これははっきり言って、全くのコメディ作品であり、ある意味では、楡周平『プラチナタウン』のノリかも知れない。最も暗いところから出発する点ではドッチも同じかも知れないが、暗さと言う意味ではエリートとダメ男との違いはあるが・・・。
とりしまられやくしんにゅうしゃいん
書籍名:『被取締役新入社員』
著 者:安藤 祐介(あんどう ゆうすけ)
発行所:株式会社講談社
発 行:2008年3月10日初刊発行
定 価:1,429円(税別) 頁 数:縦一段組み270ページ
<ハードカバーの帯の作品紹介>
[第一回]ドラマ原作大賞受賞作TBS・講談社
コメディなのにジンと、涙こぼれる!?ダメ男の逆サクセスストーリー!
TBS系で3月31日(月)よる9時~放送決定!
キャスト:森山未來 陣内孝則 貫地谷しおり 宇津井健ほか
ラジオドラマはTBSラジオで4月6日(日)よる8時~放送 キャスト:カンニング竹山隆範ほか
応募1403作品の頂点!! 人間関係を逆転の発想で捉えた「爆笑&ハートウォーミング」の長編小説
ダメ男・鈴木信夫はたまたま試験を受けた一流広告代理店に入社する。社長から空に与えられた使命は、他の社員の軽蔑や罵言雑言を一身に浴び、社内ストレスの”はけ口”となること。表向きは制作局のアシスタントディレクター、実は役員待遇の被取締役(とりしまられやく)。
名前も「羽ヶ口信夫(はけぐちのぶお)」と改められた。天性のダメ人間ぶりを発揮し、他の社員の心に余裕をもたらした事で、会社の業績が急伸。「ひとりいじめられっこ政策は」は成功を収めたに見えたのだが・・・。
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何をやってもうまく行かなかった男、鈴木信夫。ふとした事(半分冷やかしのだめもと)で、多くのエリートに混ざって受けた、一流広告代理店に彼一人が何故か受かってしまう。しかし、受かった事には訳があった。根っからと言うか徹底的なダメ人間を活かし、そのままの行動で仕事する事で、社内でみんなの反感、虐め等を一気に引き受ける事が彼の特命だった(被取締役員)。従って、決して、他の人より、仕事をうまくしてはいけないし、一週間の内、数回は必ず遅刻や早退をする事等が被取締役員として就業規則に義務付けられていた。また同時に社内恋愛も厳禁となっていた。彼は表向きはアシスタントディレクターとして、裏では被取締役員として採用さてたのだった。しかも名前も羽ヶ口信夫(はけぐち のぶお)と勝手に改めさせられ。
その就業規則にもとづき、且つ、一生懸命に仕事する事(つまり事がうまく行かない)で、社内の反感や、怒られ役を彼が一身に買う事となった。結果、部門のみんながストレスを発散し、一致協力する形となり、業績が急激に向上する。この為の成果報酬(役員待遇)として、給料とは別に、年間3,000万円の報酬をもらう事になっていた。
彼としては、別に失敗する事を意図しなくとも、通常の仕事をしていれば、自然と失敗しており、上記の状態が続くかに思われたが、ある時に、大手電力会社の懇親会に参加し、絶対失敗すると思って宴会芸(おならのガスにより炎を出す)を披露したが、そこの役員に何故か気に入れらてしまう。
その大手電力会社からの企業広告の依頼が来るが、その条件として、プロジューサーに彼が指定されていた。これがうまく行ってしまうと被取締役の地位が危ない。その為に絶対失敗すると思うアイディアを提案するが、その案にもとづいて作成されたCM案も一発で通ってしまい、そのCMが彼の予想に反して大ヒットしてしまう。このヒットにより、彼のプロジューサーとしての手腕の噂が広がり、CMのヒットメーカーとなってしまう。
これでは、特命で受けた、被取締役の仕事の成果が出せなくなり、社内の反感や、ストレス発散のはけ口となっていた彼の変わりに他の人がその影響を被り、社内がぎすぎすしてくる。
彼は社長とお目付け役の役員から、注意をうけ、何とかダメ社員となる様に努力するが、勝手にうまく回ってしまう。
しかも、禁止事項で有った、あろう事か、同僚のなかなかかわいい女性沙紀と恋愛関係になり、これが露見してしまう。
社長からの厳重注意とその後も仕事がうまく行っている(つまり被取締役員の仕事は失格)事から、彼は会社を辞める事を決意し、辞表を提出する。
しかし、社長からの指示は、被取締役員の役目は既に無理である為、クリエイティブディレクターへの降格(表向きは、アシスタントディレクターから昇格)と被取締役員としての彼を知らない部署(つまり名古屋)への転勤の話だった。
彼は沙紀に名古屋への転勤の話と辞める話を相談するが、なんと彼女は転勤と昇格の話を受ける事を進める。彼女の実家は名古屋で、離れるのは辛いが、毎週実家に帰って会う事を約束する。つまり、彼の上司も社長もすべて知った上で、決めた事だった。
名古屋への出発の直前に、被取締役員としての就業規則のファイルを、直属の上司に見つかるが、その上司は「しんどかったろう」と声をかけ、それ以外は何も問わず「これからはやりたいようにやれる」と話してくれた。
彼は、名古屋に行く新幹線のプラットホームで沙紀と会いながら・・・。
まずこの設定がうらやま・・・いや、最高にいいです。
チカラ抜けます。
面白くて少しずつ読むつもりが、一気読みでした。
ネットで探すと作者安藤さん関連の記事がたくさん
ですが、
http://www.birthday-energy.co.jp/
ってところでよく分からない安藤さんの解説が
あったので、URL貼っておきます。
仕事はソコソコでいいなんて、なんか作品に通じる
ところがあるなぁ。