ガラケーを、開いて時間を確認する(うちの親ときたら、ガラケーしか持たせてくれないんだ)。やっぱり間に合わない。わたしは必死になってかけた。
これじゃあ、あの公園を迂回なんてしている暇はないな。ゆうに20分は遠回りになってしまうし、だいじょうぶ、あの男だって朝にはいないだろう。
目が覚めた時、いつもの目覚ましの音がしないと思ったら、それは今朝、二度目の目覚めだったのだ。うちの親にも困ったもんだ。いつもの時間に起きてこなかったら、少しは心配してくれたっていいじゃないか。
たしかに部屋に入ってこないでとは、いつもは言っている。けど、それだって時と場合による。おとなって生き物は、ほんと頭がかたい。今時の親って、どこもそうなのだろうか。
どうせ、間にあわないと思いながらも、なんでわたしは走り続けるのか?すべては遅刻に課せられるあの罰則のせいだ。あの、わが校の歴史に脈々と受け継がれてきた伝統の校則。その罰を受けたくないがためだけに、今わたしは走っているのだ。
公園にかけこんで公園の時計をちらっと見る。あれ?こんなところに時計あったんだっけか。
次の瞬間、あのへんてこなスーツ姿が目に入ってきた。ウソでしょ?よしてよね、もうぉ!あなたにかまってる暇なんかないんだから!
わたしは、全力無視で男の前を走り抜けた。背後から「あれを試すなら今ですよ!」の声。「え?」
だから、ダメなんだって、止まっちゃあ。走りづづけなきゃ。しかし、勢いを一回失ったわたしの足は、完全に止まってしまっていた。
「あれを使えば、間にあいます。」その声は、今のわたしに、なんとも甘く響いた。
その時のわたしは、荒野を飛び続けて、やっとお花畑をみつけたミツバチだったかもしれない。その時のわたしの気持ちを、わたしじゃない誰かに伝えることはとても難しい。
あの魔の罰から逃れられる方法がもしあるのであれば、試してみる価値はあるのかもしれない。
「ほんとにまにあうの?」男は静かにうなずいた。
「だいじょうぶ。わたくしがしっかりアシストしますから。」イライラするくらい慌てた様子のない男。
「ですが、ただひとつ問題があります。」「えっ?」いまさら、それはないでしょ!?
「この前は時間の先送りでしたね。しかし、今回は時間を戻らなければなりません。」
だから何!? めんどくさい説明は後にしてさあ、いいから早くしてよっ!
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