スキップ・ガール ８

「よければ、種明かししてもらえませんか」
「種明かしは先ほど済ませたはずです。ごく簡単にではありましたがね」「それは、そうだったかもしれないけど」わたしの納得のいかない様子を見て、男が話しだした。
「もう少し気楽に考えてみませんか。例えばですね、あなたの家で新しい電子レンジを買ってきたとします。あなたはすぐに使ってみますか？　それとも、まずは取扱説明書を読みはじめますか？　あるいは、それは最新機種で、新しい機能がたくさん付いているかも知れませんしね。もし、その説明書を全部、読み終えてしまわないと電子レンジを使えないとしたら不便ですよね。あなたは、とりあえずは説明書は置いて、使ってみるんじゃありませんか？　インターネットの場合はどうでしょう。インターネットの仕組みや機能のすべてを理解してからでなければ使えないとなれば、気軽にネットサーフィンを楽しむこともできませんね。さらにもっといえば、そのシステムを自身ですべて構築しでもしなければ、納得がいかないとなったらこれはやっかいです。わたしたちは、そんな難しいことを考えることなしに、それらを使えているのではありませんか？　意外に思われるかも知れませんが、パソコン教室に通ってさえ、インターネットを使えないなんて、ひともなかにはいたりします。まさに習うより慣れろです。あなたには簡単ではありますが、説明を聞いていただいた。そして、あなたは今それがどんなものかもその目で見た。あとは、あなたがそれを使ってみる、あるいは体験してみる。それでいいじゃありませんかね？」
　あぁ、またへんてこな例えできたか。アァ、もうなにがなんだかわからなくなってきた。気楽にとか言うわりに、かえって重苦しくなってるんだよ！　そもそも、わたしの聞きたかったのはそんな事じゃないんだし。
「あのォ・・・、もういいです！　つい言いそびれてたんだけど、実はこの後、用事があって・・・。ごめんなさい。」ぺこりとおじぎをして、わたしはかけだしていた。
　もっと早く、こう言えばよかったんだ。それだけで済むことだったんだ。街頭でティッシュだけもらって、立ち去る時みたいにクールにやればよかったんだ。
　ちょっと、からかってやろうなんて、バカな気を起したばっかりに、ずるずると、ややこしいことになっていくばかりなんだ。