オーディオの理屈の話も結構ですが、では良い音とはどの様な音だと思いますか? よく耳にする答えは「フラットで低歪みな音」です。否定はしません。けれども、これが本当に音楽を愉しむための重要音質要件なのでしょうか?
さて、5月27日に上野の文化会館での花房晴美「パリ・音楽のアトリエ第21集」を聴きに行ってきました。花房(ピアノ)コンサートは、優れた演奏を聴ける「知る人ぞ知る」のコンサートです。花房氏は自身のピアノの腕前は勿論ですが、強力な人脈がある様で、ヴァイオリンの徳永二男(つぎお)氏をはじめ、ソリストの重鎮や実力者があっけらかんと登場したりします。日本版のルガーノ・フェスティバルと言っても恥ずかしくないものと思います。
今回の花房コンサートは、後半のフォーレ:ピアノ四重奏曲第1番が特に素晴らしいものでした。ピアノ+ヴァイオリン+ビオラ+チェロ(各1台)の小編成ですが、その濃厚で強い音力のハーモニーによる熱くて芳醇な響きは、正に愉悦の音空間、音楽の醍醐味でありました。この強力な音がオーディオ装置で出せるのか・・・
閑話休題
オーディオの話の続きです。私は、音楽ジャンルの趣味趣向とは関係なしに、オーディオの音質指標の基準は(PAスピーカーを音源としない)クラシック音楽であると考えます。前記の花房コンサートもそうですが、生のアコースティックは、再現の難易度が桁違いに高いのです。
この難易度の高さは(敢えて表現すれば)「中音の質の高さ」であり、音の好み論を越えた、本来要求されるべき基礎体力の様な物と思います。例えば前衛芸術は、素人が出鱈目な絵を描くのとはわけが違い、岡本太郎でもデッサンをさせれば超一流の「基礎」があって、その上で製作されています。翻ってオーディオでは低音とか高音の話ばかりをしています、基礎となる肝心の「中音の質」はどうなっているのでしょうか・・・
その様なわけで、是非より多くの方にクラシックコンサートを楽しんでいただければと思います。無料コンサートも結構ですが、演奏家の実力次第で音の良さもピンキリである事にご留意ください。但し、海外の有名演奏家のコンサートは、スケジュールの詰まったツアーをこなすために、案外力を抜いた演奏だったりします。ここに、渾身の演奏が聴ける定期コンサートの価値があると思います。花房コンサートはその一つとしてお勧めです。他にも上杉清仁と門下生によるコンサートもお勧めです。
ご参考に秋の花房コンサートのフライヤーも下記に添付しました。