妖介の前に現われたのは裸の葉子だった。
目は半開きでうつろだった。うっすらと開いた唇の端からよだれが滴っている。
両の脇の下から、てらてらと光る緑色の細い管のようなものが伸び、胸を覆っていた。膝を曲げ、大きく拡げられた股間を、同じ色をした塊が覆っている。それらは絶えず蠢いていた。葉子の口から淡い喘ぎが漏れた。
覆っているものが葉子を刺激しているのだった。管は乳首を、塊は二穴を。
葉子は不意に妖介の頭上高く浮き上がった。妖介は咄嗟に『斬鬼丸』を構えた。葉子はそのまま妖介の上に落ちてきた。妖介は『斬鬼丸』を使う事なく、後ろへ飛び後退った。葉子はゆらゆらとその場に浮かんでいる。
葉子の背後に緑色をした細身で小柄な妖魔が立っていた。葉子の胸と股間を覆っている塊は、この妖魔の胸と股間から伸びたものだった。浮かび漂う葉子越しに、釣りあがった白目を細め、妖介を睨みつけている。
「お前が大グソか」妖介は『斬鬼丸』から白い刀身を立てた。「取り憑いていた幸久から真似やがったか」
幸久が得た快楽をこの妖魔が引き継いだのだ。絶えず蠢く管と塊は、快楽を執拗に貪るための物なのだ。それだけではない。他の妖魔をまとめ、集団として妖介と敵対させたのも、幸久から得たものだ。
「人の悪い面ばかり真似しやがる、さすがクソどもだぜ!」
妖介は横に飛びながら『斬鬼丸』の刀身を妖魔に向けて伸ばした。妖魔は葉子を『斬鬼丸』に向けた。刀身が葉子を貫いた。しかし『斬鬼丸』の刀身は消えた。
「ちっ! 馬鹿女はまだ生身って事か!」妖介は吐き捨てるように言った。「楯代わりに使うとは、つまらないことばかり真似しやがるぜ!」
不意に妖介の足元が大きく窪んだ。体勢を崩された妖介は倒れた。起き上がる間も無く、天井を形作っていた赤い瘤が無数に落ちて来て、妖介を埋め尽くした。べちゃべちゃと粘着質な音を立て、唸りや喘ぎが無数に重なっている。しかし、すぐにそれらは白い揺らめきを立てる妖介によって霧散した。妖介は起き上がろうとしたが、再びその上に赤い瘤が降り注ぎ、埋め尽くした。また霧散させる。
「この大グソ、オレをへたばらせるつもりか・・・」
うつ伏せたまま顔を上げた妖介は、歯のない口を開けひゅうひゅう息の漏れるような声で笑う妖魔を睨みつけた。赤い瘤が降って来た。倍以上の数だった。
「馬鹿女! 葉子! 目を覚ませ!」
妖介の叫びはすぐに粘着質な音と呻きや喘ぎにかき消された。
「ユウジ!」
階段の上からエリが言う。
階段の下で倒れて唸っていたユウジは、ゆるゆると起き上がり、階段の手摺りにつかまってエリを見上げた。
「・・・お嬢、何も蹴落とさなくても・・・」
「お前がドスケベな事を言うからじゃない! それに、そんな場合じゃないんだから!」
「・・・へい・・・申し訳ありやせんでした・・・」
「分かれば良いの。でさ、ちょっと上がって来てくんない? 思いついたことがあるんだ」
言うとエリの姿が消えた。ユウジは溜め息をついて、一足ごとに唸りながら階段を上った。
上がりきるとエリが不満そうにブーツの踵をカツカツと鳴らしていた。
「遅いわねえ! 一刻を争うのよ! お前のせいでお姉さんはともかく、妖介に何かあったら承知しないわよ!」
「そうおっしゃられても、あちこちの骨にひびでも入ったようで・・・」
「はん! 自業自得よ!」エリは鼻で笑った。「それよりも、お姉さんの部屋のドアを開けてちょうだい」
「でやすから、全身に痛みがありやして、どうも力が出やせん・・・」
「で? それは自業自得だって、言ったじゃない? 言い訳しないでね!」
ユウジは大きな溜め息をつくと、手摺りを手繰るように歩き、葉子のドアの前に立った。
「前のときは、ドアノブは回りやしたが、開きやせんでした」
「開けるのよ!」エリは冷たく言った。「それが出来るか出来ないかが、分かれ目なのよ!」
「・・・じゃあ、お嬢も手を貸して下せえよお」
「わたしはダメなの。妖介が、来るな覗くなって、言ってたんだもん。それに大の大人が、なに泣き言を言ってるのよ!」
「・・・へえ・・・」
ユウジはあきらめたのか、それ以上何も言わず、ドアノブを握った。
ドアノブは回った。ユウジが引く。やはりびくともしなかった。
困惑した顔でエリを見る。
エリは『斬鬼丸』を取り出すと短い刀身を立てた。両手で持って、ドアに近づく。両手を上げ、ドアと枠との間に刀身を差し込んだ。そのまま横へ斬り通す。
「ユウジ、邪魔よ!」
ユウジは後ろに下がり、手摺りの寄りかかる。斬り通し終えると、今度は下へ向かって斬り進む。上半身を屈めながら下まで斬り終えると、しゃがみ込んだ。
「ユウジ、ノブを握って!」
上半身を屈めた際に、ミニスカートから丸見えになったエリの下着と太腿を一心に覗いていたユウジは、あわてて身を起こした。
「ううううう・・・」
急な体勢の変化で痛みが戻り、呻いた。
「何やってんの? 早くしなさいよ!」
エリは振り返りもせずに言うと、そのまま横へ斬り進んだ。
ユウジはノブを握る。
「さ、引っ張って!」
斬り終えるとエリが叫んだ。ユウジは言われた通りにした。ドアが開いた。
エリはとっさに顔をそむけた。
「どう、ユウジ? 何が見える?」
「・・・へえ・・・」ユウジはゴクリと喉を鳴らした。「何って言いやしても、葉子さんのお部屋のようでやすが・・・」
つづく
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目は半開きでうつろだった。うっすらと開いた唇の端からよだれが滴っている。
両の脇の下から、てらてらと光る緑色の細い管のようなものが伸び、胸を覆っていた。膝を曲げ、大きく拡げられた股間を、同じ色をした塊が覆っている。それらは絶えず蠢いていた。葉子の口から淡い喘ぎが漏れた。
覆っているものが葉子を刺激しているのだった。管は乳首を、塊は二穴を。
葉子は不意に妖介の頭上高く浮き上がった。妖介は咄嗟に『斬鬼丸』を構えた。葉子はそのまま妖介の上に落ちてきた。妖介は『斬鬼丸』を使う事なく、後ろへ飛び後退った。葉子はゆらゆらとその場に浮かんでいる。
葉子の背後に緑色をした細身で小柄な妖魔が立っていた。葉子の胸と股間を覆っている塊は、この妖魔の胸と股間から伸びたものだった。浮かび漂う葉子越しに、釣りあがった白目を細め、妖介を睨みつけている。
「お前が大グソか」妖介は『斬鬼丸』から白い刀身を立てた。「取り憑いていた幸久から真似やがったか」
幸久が得た快楽をこの妖魔が引き継いだのだ。絶えず蠢く管と塊は、快楽を執拗に貪るための物なのだ。それだけではない。他の妖魔をまとめ、集団として妖介と敵対させたのも、幸久から得たものだ。
「人の悪い面ばかり真似しやがる、さすがクソどもだぜ!」
妖介は横に飛びながら『斬鬼丸』の刀身を妖魔に向けて伸ばした。妖魔は葉子を『斬鬼丸』に向けた。刀身が葉子を貫いた。しかし『斬鬼丸』の刀身は消えた。
「ちっ! 馬鹿女はまだ生身って事か!」妖介は吐き捨てるように言った。「楯代わりに使うとは、つまらないことばかり真似しやがるぜ!」
不意に妖介の足元が大きく窪んだ。体勢を崩された妖介は倒れた。起き上がる間も無く、天井を形作っていた赤い瘤が無数に落ちて来て、妖介を埋め尽くした。べちゃべちゃと粘着質な音を立て、唸りや喘ぎが無数に重なっている。しかし、すぐにそれらは白い揺らめきを立てる妖介によって霧散した。妖介は起き上がろうとしたが、再びその上に赤い瘤が降り注ぎ、埋め尽くした。また霧散させる。
「この大グソ、オレをへたばらせるつもりか・・・」
うつ伏せたまま顔を上げた妖介は、歯のない口を開けひゅうひゅう息の漏れるような声で笑う妖魔を睨みつけた。赤い瘤が降って来た。倍以上の数だった。
「馬鹿女! 葉子! 目を覚ませ!」
妖介の叫びはすぐに粘着質な音と呻きや喘ぎにかき消された。
「ユウジ!」
階段の上からエリが言う。
階段の下で倒れて唸っていたユウジは、ゆるゆると起き上がり、階段の手摺りにつかまってエリを見上げた。
「・・・お嬢、何も蹴落とさなくても・・・」
「お前がドスケベな事を言うからじゃない! それに、そんな場合じゃないんだから!」
「・・・へい・・・申し訳ありやせんでした・・・」
「分かれば良いの。でさ、ちょっと上がって来てくんない? 思いついたことがあるんだ」
言うとエリの姿が消えた。ユウジは溜め息をついて、一足ごとに唸りながら階段を上った。
上がりきるとエリが不満そうにブーツの踵をカツカツと鳴らしていた。
「遅いわねえ! 一刻を争うのよ! お前のせいでお姉さんはともかく、妖介に何かあったら承知しないわよ!」
「そうおっしゃられても、あちこちの骨にひびでも入ったようで・・・」
「はん! 自業自得よ!」エリは鼻で笑った。「それよりも、お姉さんの部屋のドアを開けてちょうだい」
「でやすから、全身に痛みがありやして、どうも力が出やせん・・・」
「で? それは自業自得だって、言ったじゃない? 言い訳しないでね!」
ユウジは大きな溜め息をつくと、手摺りを手繰るように歩き、葉子のドアの前に立った。
「前のときは、ドアノブは回りやしたが、開きやせんでした」
「開けるのよ!」エリは冷たく言った。「それが出来るか出来ないかが、分かれ目なのよ!」
「・・・じゃあ、お嬢も手を貸して下せえよお」
「わたしはダメなの。妖介が、来るな覗くなって、言ってたんだもん。それに大の大人が、なに泣き言を言ってるのよ!」
「・・・へえ・・・」
ユウジはあきらめたのか、それ以上何も言わず、ドアノブを握った。
ドアノブは回った。ユウジが引く。やはりびくともしなかった。
困惑した顔でエリを見る。
エリは『斬鬼丸』を取り出すと短い刀身を立てた。両手で持って、ドアに近づく。両手を上げ、ドアと枠との間に刀身を差し込んだ。そのまま横へ斬り通す。
「ユウジ、邪魔よ!」
ユウジは後ろに下がり、手摺りの寄りかかる。斬り通し終えると、今度は下へ向かって斬り進む。上半身を屈めながら下まで斬り終えると、しゃがみ込んだ。
「ユウジ、ノブを握って!」
上半身を屈めた際に、ミニスカートから丸見えになったエリの下着と太腿を一心に覗いていたユウジは、あわてて身を起こした。
「ううううう・・・」
急な体勢の変化で痛みが戻り、呻いた。
「何やってんの? 早くしなさいよ!」
エリは振り返りもせずに言うと、そのまま横へ斬り進んだ。
ユウジはノブを握る。
「さ、引っ張って!」
斬り終えるとエリが叫んだ。ユウジは言われた通りにした。ドアが開いた。
エリはとっさに顔をそむけた。
「どう、ユウジ? 何が見える?」
「・・・へえ・・・」ユウジはゴクリと喉を鳴らした。「何って言いやしても、葉子さんのお部屋のようでやすが・・・」
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