「えっ?」
ユウジの言葉に思わずエリは振り返った。
間の抜けたユウジを、ドアから漏れる赤い光が染めている。
「やっぱり、わたしには無理なんだわ・・・」再び顔をそむけた。「ユウジ、お前にはお姉さんの部屋が見えているのね?」
「へい」ユウジはエリに顔を向けた。顔をそむけているエリを不思議そうに見ている。「お嬢もご一緒に・・・」
「馬っ鹿ねえ! それが出来るんならとっくにやってるとは思わないの?」顔をそむけたままエリが言った。「・・・でも、思った通りだわ」
「何がでやす?」
「こっちの話よ! ユウジ、中に入って様子を見て来て」
「良いんでやすか? 勝手に入って・・・」
「良いのよ。とにかく様子を見て来て!」
ユウジは小声で遠慮がちに「失礼いたしやす・・・」と言いながら靴を脱ぎ部屋に上がった。
「やっぱり、ユウジみたいに妖魔が見えない奴には、何にも無いのとの同じなんだ・・・」エリがつぶやいた。「ホント、気が付かない人って、妖魔と紙一重な生活を送ってるのよね・・・」
しばらくしてユウジが戻って来た。エリは顔をそむけたまま手招きをする。ユウジが近寄ってくる。
「わっ!」
振り返ったエリのすぐ目の前にユウジの顔があった。驚いたエリは反射的に突き飛ばす。ユウジは通路に転がり、呻いた。
「・・・お嬢、ひどいじゃねえですかぁ・・・ 手招きしておきながら突き飛ばすたぁ・・・」泣き声交じりで転がったままのユウジが抗議した。「骨のひびが増えやしたよぉ・・・」
「だって、こんなに近くにお前の顔があったのよ! どんな人だって驚くわよ! 少し考えて行動しなさいよ!」エリは腰に拳を当て、転がっているユウジを見下ろした。不意にユウジの視線に気がついた。開いていた脚を閉じ、数歩下がる。「また見てたわね・・・」
「・・・すいやせん・・・ 見たってよりも見えたって感じでして・・・」
「ふん!」
エリはそっぽを向いた。付き合い切れないと言った表情だ。ユウジは蹴りが飛んでこないのでほっと胸を撫で下ろす。
「で、どうだったの?」
「どう・・・ って言いやすと・・・」ユウジは不安そうな顔でエリの横顔を見た。失策をしでかしたと思っている。「若い女の部屋って感じでやすが・・・」
「・・・」エリは振り返ってユウジを睨みつけた。「お前って、本当に、救いようの無い馬っ鹿ね! お姉さんが若いのは分かってる事じゃない! そんな事じゃなくて、状況よ!」
「・・・へ、へい!」
ユウジはあわてて葉子の部屋へと入って行った。骨にひびが入ったという割には素早い行動だ。転がされるよりは賢明な判断だろう。エリはユウジが飛び込んで行った葉子の部屋を通路から見つめた。赤い光は治まってはいない。
「妖介・・・」
エリは弱々しくつぶやいた。
つづく
web拍手を送る
ユウジの言葉に思わずエリは振り返った。
間の抜けたユウジを、ドアから漏れる赤い光が染めている。
「やっぱり、わたしには無理なんだわ・・・」再び顔をそむけた。「ユウジ、お前にはお姉さんの部屋が見えているのね?」
「へい」ユウジはエリに顔を向けた。顔をそむけているエリを不思議そうに見ている。「お嬢もご一緒に・・・」
「馬っ鹿ねえ! それが出来るんならとっくにやってるとは思わないの?」顔をそむけたままエリが言った。「・・・でも、思った通りだわ」
「何がでやす?」
「こっちの話よ! ユウジ、中に入って様子を見て来て」
「良いんでやすか? 勝手に入って・・・」
「良いのよ。とにかく様子を見て来て!」
ユウジは小声で遠慮がちに「失礼いたしやす・・・」と言いながら靴を脱ぎ部屋に上がった。
「やっぱり、ユウジみたいに妖魔が見えない奴には、何にも無いのとの同じなんだ・・・」エリがつぶやいた。「ホント、気が付かない人って、妖魔と紙一重な生活を送ってるのよね・・・」
しばらくしてユウジが戻って来た。エリは顔をそむけたまま手招きをする。ユウジが近寄ってくる。
「わっ!」
振り返ったエリのすぐ目の前にユウジの顔があった。驚いたエリは反射的に突き飛ばす。ユウジは通路に転がり、呻いた。
「・・・お嬢、ひどいじゃねえですかぁ・・・ 手招きしておきながら突き飛ばすたぁ・・・」泣き声交じりで転がったままのユウジが抗議した。「骨のひびが増えやしたよぉ・・・」
「だって、こんなに近くにお前の顔があったのよ! どんな人だって驚くわよ! 少し考えて行動しなさいよ!」エリは腰に拳を当て、転がっているユウジを見下ろした。不意にユウジの視線に気がついた。開いていた脚を閉じ、数歩下がる。「また見てたわね・・・」
「・・・すいやせん・・・ 見たってよりも見えたって感じでして・・・」
「ふん!」
エリはそっぽを向いた。付き合い切れないと言った表情だ。ユウジは蹴りが飛んでこないのでほっと胸を撫で下ろす。
「で、どうだったの?」
「どう・・・ って言いやすと・・・」ユウジは不安そうな顔でエリの横顔を見た。失策をしでかしたと思っている。「若い女の部屋って感じでやすが・・・」
「・・・」エリは振り返ってユウジを睨みつけた。「お前って、本当に、救いようの無い馬っ鹿ね! お姉さんが若いのは分かってる事じゃない! そんな事じゃなくて、状況よ!」
「・・・へ、へい!」
ユウジはあわてて葉子の部屋へと入って行った。骨にひびが入ったという割には素早い行動だ。転がされるよりは賢明な判断だろう。エリはユウジが飛び込んで行った葉子の部屋を通路から見つめた。赤い光は治まってはいない。
「妖介・・・」
エリは弱々しくつぶやいた。
つづく
web拍手を送る
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます