「さあ、スミ子、分かってるわね……」
ブロウが言いながら、スミ子を座卓の上に置いた。コーイチの名前が書かれた最後のページが開かれていた。
「始めなさいよ、スミ子」
シャンも言って、スミ子を覗き込む。
二人の魔女の厳しい眼差しにさらされたスミ子は、心無しかガタガタと震えているようだ。
「どうしたの? 大人しく言っているうちに、早くなさいな……」ブロウが静かに言った。「わたし、思っているよりも気が短いのよぉ……」
「そうよ、スミ子」シャンも深刻そうな顔で言った。「ブロウを怒らせて、姿を見せなくなったって話は、ペットノートに限らず、魔女の中にもあるのよぉ……」
スミ子の震えが大きくなった。ブロウは右の手の平でバンと大きな音を立てて座卓を叩いた。こわい顔でスミ子を見下ろす。スミ子の震えがピタリと止まった。
「もう十分すぎるくらいに満足したでしょ? スミ子」シャンがなだめるように言い、続いて小声でささやいた。「ブロウ、そろそろ本気で怒り出すわよぉ……」
ブロウは右の人差し指をピンと立て、その指先をゆっくりとスミ子に向けた。
「あああ、見てられない! もう手遅れかもよぉ……」シャンが両手で自分の顔を覆いながら言った。「スミ子…… さよなら……」
シャンの最後のあいさつに被さるように、コーイチの名前が金色に縁取られ始めた。それは、全くくすみの無い純金の色だった。その輝きにブロウは目を細め、顔から手を放したシャンは再び顔を覆った。コーイチの名前はしばらく金色に縁取られ、ゆっくりと消えて行った。
「やったわね、ブロウ! 『スミ子脅かし作戦』大成功って感じね!」
シャンが嬉しそうに言い、右目を軽くつぶってウィンクを送った。
「ええ、大成功ね!」ブロウもコーイチ好みの可愛い笑顔でウィンクを返す。「後は最後の仕上げね!」
ブロウはスミ子を見下ろした。その顔は、またこわいものになっていた。
「スミ子、金色にしてくれたのは当然よ……」立てた人差し指の先が再びスミ子に向いた。「次は、その効力、今すぐ発揮しなさい!」
「ブロウ、そんな無茶させて大丈夫なの?」シャンが心配そうに聞いた。「スミ子がどうにかなっちゃったら、まずいんじゃない?」
「平気よ。コーイチ君があれだけの量の名前を短い時間でしっかりくっきり書き込んだんだから、普通のペットノートの何十倍もの能力が宿ったはずだわ。出来ないはずがないわ」
ブロウはスミ子を見下ろした。
「スミ子……」ブロウの目が妖しく光り始めた。「これが最後の最後のチャンスよ……」
突然、スミ子の全体が白っぽく光りだした。明るさが朝の陽射しよりも強くなり、室内が白一色になったようだった。
「うわあ、まぶしい!」シャンがきつく目を閉じ、顔を横に向けた。「ペットノートの魔力発揮の瞬間って初めて見たわ!」
「これはかなり激しいわ!」ブロウも目を閉じて叫んだ。「普通はちょっとだけ光るのよ! しっかりくっきりの大量名前が効いているのね!」
「あなたの脅しが効いているのよ!」
スミ子の光が徐々に弱まり始め、やがて消えた。
つづく
ブロウが言いながら、スミ子を座卓の上に置いた。コーイチの名前が書かれた最後のページが開かれていた。
「始めなさいよ、スミ子」
シャンも言って、スミ子を覗き込む。
二人の魔女の厳しい眼差しにさらされたスミ子は、心無しかガタガタと震えているようだ。
「どうしたの? 大人しく言っているうちに、早くなさいな……」ブロウが静かに言った。「わたし、思っているよりも気が短いのよぉ……」
「そうよ、スミ子」シャンも深刻そうな顔で言った。「ブロウを怒らせて、姿を見せなくなったって話は、ペットノートに限らず、魔女の中にもあるのよぉ……」
スミ子の震えが大きくなった。ブロウは右の手の平でバンと大きな音を立てて座卓を叩いた。こわい顔でスミ子を見下ろす。スミ子の震えがピタリと止まった。
「もう十分すぎるくらいに満足したでしょ? スミ子」シャンがなだめるように言い、続いて小声でささやいた。「ブロウ、そろそろ本気で怒り出すわよぉ……」
ブロウは右の人差し指をピンと立て、その指先をゆっくりとスミ子に向けた。
「あああ、見てられない! もう手遅れかもよぉ……」シャンが両手で自分の顔を覆いながら言った。「スミ子…… さよなら……」
シャンの最後のあいさつに被さるように、コーイチの名前が金色に縁取られ始めた。それは、全くくすみの無い純金の色だった。その輝きにブロウは目を細め、顔から手を放したシャンは再び顔を覆った。コーイチの名前はしばらく金色に縁取られ、ゆっくりと消えて行った。
「やったわね、ブロウ! 『スミ子脅かし作戦』大成功って感じね!」
シャンが嬉しそうに言い、右目を軽くつぶってウィンクを送った。
「ええ、大成功ね!」ブロウもコーイチ好みの可愛い笑顔でウィンクを返す。「後は最後の仕上げね!」
ブロウはスミ子を見下ろした。その顔は、またこわいものになっていた。
「スミ子、金色にしてくれたのは当然よ……」立てた人差し指の先が再びスミ子に向いた。「次は、その効力、今すぐ発揮しなさい!」
「ブロウ、そんな無茶させて大丈夫なの?」シャンが心配そうに聞いた。「スミ子がどうにかなっちゃったら、まずいんじゃない?」
「平気よ。コーイチ君があれだけの量の名前を短い時間でしっかりくっきり書き込んだんだから、普通のペットノートの何十倍もの能力が宿ったはずだわ。出来ないはずがないわ」
ブロウはスミ子を見下ろした。
「スミ子……」ブロウの目が妖しく光り始めた。「これが最後の最後のチャンスよ……」
突然、スミ子の全体が白っぽく光りだした。明るさが朝の陽射しよりも強くなり、室内が白一色になったようだった。
「うわあ、まぶしい!」シャンがきつく目を閉じ、顔を横に向けた。「ペットノートの魔力発揮の瞬間って初めて見たわ!」
「これはかなり激しいわ!」ブロウも目を閉じて叫んだ。「普通はちょっとだけ光るのよ! しっかりくっきりの大量名前が効いているのね!」
「あなたの脅しが効いているのよ!」
スミ子の光が徐々に弱まり始め、やがて消えた。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます