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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第二章 骸骨標本の怪 5

2021年11月25日 | 霊感少女 さとみ 2 第二章 骸骨標本の怪
「と言う訳でですね……」
 しのぶが言う。さとみ、アイ、朱音、そして松原先生が椅子に座っている。
 ここは、放課後の北側校舎の三階の空き教室だ。松原先生が早速動いてくれて、この教室を「百合恵会(同好会からサークルに格上げされたので名前を変更したのだ)」の部室にしてもらったのだ。北階段の一件を解決したご褒美と松原先生は言っていた。本当のところは、単に空いている場所が無かっただけの事だ。
 しのぶは、やっと骸骨標本の話が出来るので、うきうきしている。朱音と松原先生は興味津々な表情だ。アイは興味無さそうで、ただここに居ると言うだけだ。さとみは一刻も早く解放されたがっている。
「……あの、さとみ会長? 聞いてますか?」
 しのぶの言葉に、さとみは振り向く。無理矢理な笑みを浮かべる。
「ええ、もちろん、聞いているわよ。骸骨標本でしょ? 第一理科室の」
「そうです」しのぶはうなずく。「これは、不確実な情報なので検証が出来ていないんですけど、一階の第一理科室の黒板横にぶら下がっている骸骨の標本が、呟くんだそうです……」
「どんなふうに?」
「それがですねぇ……」しのぶはこほんと咳払いをし、わざと暗い表情をして見せる。「こう言うんだそうです…… 『寒いよう、寒いよう』って。そして、がたがたと震えるんだそうです……」
「あはははは!」アイが突然笑い出した。「そりゃ、そうだろうさ!」
「……アイ先輩、どう言う事ですか?」しのぶが口を尖らせる。「怖かったり、不思議だったりとか思わないんですか?」
「だって、骸骨だろう? あんなガリガリのスカスカじゃ、風通しが良すぎるぜ。当然、寒いに決まっている。寒きゃあ、震えもするさ」
「でも、先輩、あれは標本ですよ?」しのぶが呆れた顔をする。「いわば、作り物です。寒いも暑いもないですよ」
「じゃあ、喋るわけねぇじゃん!」アイは逆切れ気味に言う。「嘘っぱちじゃねぇのか?」
「だから、それを調査するんですよ」しのぶは諭すように言う。「で、これから標本を見に行きたいんですけど」
「あ~あ! そん面倒な事は、お前と朱音の舎弟コンビがやれば良いんだよ」アイは言うと立ち上がった。「わたしは結果が知りたいだけさ。……ねっ? 会長もそうでしょ?」
「いいえ、これはみんなで確認をした方が良いと思います」
 しのぶが言い返す。アイはむっとする。
「会長、どうします?」
 朱音がさとみに言う。皆の視線がさとみに集まった。
「……先生……」
 さとみは困った顔を松原先生に向ける。
「そうだ、これだよ、これ!」松原先生は立ち上がる。感動したような顔つきだ。「みんなが自主的に話し合って決める、これぞ生徒の自立と自覚だ。先生からは特に言う事は無い。皆で決める事が大切なのだ!」
「そんなぁ……」
 さとみは途方に暮れたように言うと、おでこをぴしゃぴしゃしはじめた。
「会長!」朱音が立ち上がる。「それはダメって言ったじゃないですか!」
「え?」さとみは手をおでこに当てたまま答える。「……あ、そうか、そうだったわね」
「さとみ会長」アイが薄っぺらい鞄を手にする。「わたし、麗子の様子を見てきます。調査はその舎弟コンビに任せちゃえば良いんですよ。じゃあ、失礼します」
 アイは教室を出て行った。
「……会長、アイ先輩、帰っちゃいましたけど、良いんですか?」しのぶが言う。「まだ何にも決まっていないのに……」
「そうねぇ……」さとみの手が動き始めて、止まった。朱音の視線を感じたからだ。案の定、朱音が怖い顔をしてさとみを見ている。「……まあ、アイは実践派だから、その標本が本当に寒いって言ったり震えたりしたら、手伝ってもらえば良いわ」
「手伝ってもらうって事は、アイ先輩にも霊能力があるんですか?」朱音が身を乗り出す。「あんな感じなのに、凄いですね!」
「う~ん、朱音ちゃんが思っているのとは、ちょっと違うかもしれないけど、まあ、能力はあるのかな」
 さとみが言うのは、アイは霊体が憑きやすい体質だと言う事だ。これは麗子にも言える。
「じゃあ、調査はわたしと朱音でやります。任せて下さい!」しのぶが言う。オカルトの話になると周りが見えていないようだ。「それで、本当だって分かったら、その時にどうするか、また話し合えば良いと思います」
「朱音ちゃんもそれで良いの?」
「はい、大丈夫です。しのぶ、護符もお守りも、一杯持っていますから」
「でも、一年生の二人に任せるなんて、ちょっと心配だわ」さとみが言って、松原先生を見る。「先生は顧問なんですから、二人を見て下さい」
「まあ、それはやぶさかではないが……」松原先生は言って、しのぶを見る。「で、栗田、骸骨標本の話、どこで聞いたんだ?」
「生物の井村先生です」
「井村先生か……」松原先生の顔が曇る。「……あの先生、ちょっと変わり者だからなぁ……」
 松原先生も変わり者だと思うけど、と、さとみは思ったが、口にしなかった。


つづく


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