「あなたたちが強いって言ったって、どうせこの街の中だけの話じゃない!」花子は怒った顔で言う。「他の街じゃ、あなたたちなんて通用しないくらい強い連中がいっぱいいるわ!」
……おいおい、他の街って、街自体無いんじゃないのかな。コーイチは思った。
「そうです!」洋子が花子の話に乗っかった。「あなたたちよりも小柄でも、あなたたちより断然強い人を知っています!」
さては、ジョーカーのことだな。でもあれは技と言うよりも術って感じだったなあ。コーイチは思った。
「なんでぇ、なんでぇ! このリー・チェン様より強いだとぉ?」カンフーが怒鳴る。「そんなに言うんなら、そいつらを連れてきやがれ!」
……このカンフー、リー・チェンって言うんだ。ブルースとジャッキーを足したような名前だな。コーイチは苦笑いを浮かべた(しかし髭のおかげで見つかることはなかった)。
「その通りだ」サムライは大きくうなずく。「リー・チェンは知らんが、このブサシにかかれば、そいつらは秒殺だな」
「あら?」洋子が驚いたような顔をサムライに向ける。「ムサシの間違いじゃないんですか?」
「なんだとぉ!」サムライが洋子に顔をぐっと寄せる。「オレの名は、ブサシだ! ブ・サ・シ! ムサシなんて変な名前と間違うんじゃんねぇ!」
……ブサシの方が変な名前な気がするけどなあ。コーイチは思い、苦笑いを浮かべた(しかし髭のおかげで見つかることはなかった)。
「ま、リー・チェンだとかブサシだとか、ごちゃごちゃ言ってるけど」花子が馬鹿にしたように言う。「どうせすぐに忘れちゃうんだから、どうでも良いわ!」
「おう! いくら女だからって、わしにも限度ってものがあるぜぇ!」リー・チェンは右手をぐっと握り、花子の顔より大きな拳を作って、花子の前に突き出した。「見ろよ、この拳を!」
「あらあら、強そうには見えるけど……」花子はわざとらしく拳を眺めまわす。「本当はどうなのかしらね?」
「……」リー・チェンは怒りで全身が震えている。すると、突然周りのカンフーたちに振り返り、怒鳴った。「おう、お前ら、あれ持って来い!」
「えっ…… あれ、ですかい?」視線の合ったカンフーが躊躇するような声を出す。「あれは、ちょっと……」
「ごちゃごちゃぬかしてねぇで、さっさと持って来い!」
「へ、へいっ!」
十人ほどのカンフーがカンフー街へと走って行った。
「何をする気?」花子が走って行ったカンフーたちを見ながら言う。「何か見世物でもやる気なの? さっきも言ったけど、トラネコ様はお疲れなのよ。明日にしてくれないかしら?」
「おう、トラネコ!」リー・チェンがコーイチに怒ったままの顔を向ける。「まだまだ大丈夫だよな? あ?」
いきなり怖い顔を向けられたコーイチは、カクカクカクと何度もうなずいてしまった。花子が苦々しい顔をしてコーイチを見ている。
「お前たちのご主人様は、まだ大丈夫だそうだ」
リー・チェンは、がはがはと笑った。
「リー・チェン様……」視線の合ったカンフーが、ふうふうひいひいと肩で息をしながら、弱々しい声をかけてきた。「持って、来ましたぜ……」
そう言うとカンフーはその場にばったりと倒れてしまった。
「ちっ! 情けないヤツだ!」リー・チェンは冷たい視線を倒れたカンフーに向けた。「おう、おまえら、そいつを連れて、そこからどけ!」
同様に肩で息をしているカンフーたちは、倒れたカンフーを引きずりながら、そそくさとその場から離れた。
通りのややカンフー街寄りに、一辺が三メートルはあろうというコンクリート製の立方体がでんと置かれていた。カンフーたちはこれを運んで来たのだ。……そりゃ、息も切れるし、倒れもするな。コーイチは思った。
「おう、姉ちゃんたち! よく見ておきな!」
リー・チェンは言うと、ゆっくりと歩み、立方体の前に立った。
「くわあ! くおう!」
リー・チェンは大きな息吹を何度も繰り返しながら、両腕をゆっくりと回し始める。右拳を右脇腹に付けて動きが止まった。目を閉じる。
しばらくして目をかっと見開いた。
「ぬん!」
気合を入れて、右拳を立方体に撃ち付けた。
「おおおおおっ!」
周囲のカンフーとサムライがどよめいた。
立方体が粉々に砕けたのだ。
「どうだ? あ?」リー・チェンは拳を突き出したままで花子に顔を向ける。「わしの強さは分かっただろ?」
「あれ、そんなことを自慢するんですか?」
呆れたような声を洋子が出した。
「どう言うことだ? あ?」
「すみません」リー・チェンを無視して、洋子はカンフーたちに向かって言った。「申し訳ありませんが、これと同じものを持って来て頂けませんか?」
にこっと笑顔を見せると、数十人のカンフーが走り出した。
……芳川さんに火が点いたみたいだぞ。コーイチの喉がごくりと鳴った。
……おいおい、他の街って、街自体無いんじゃないのかな。コーイチは思った。
「そうです!」洋子が花子の話に乗っかった。「あなたたちよりも小柄でも、あなたたちより断然強い人を知っています!」
さては、ジョーカーのことだな。でもあれは技と言うよりも術って感じだったなあ。コーイチは思った。
「なんでぇ、なんでぇ! このリー・チェン様より強いだとぉ?」カンフーが怒鳴る。「そんなに言うんなら、そいつらを連れてきやがれ!」
……このカンフー、リー・チェンって言うんだ。ブルースとジャッキーを足したような名前だな。コーイチは苦笑いを浮かべた(しかし髭のおかげで見つかることはなかった)。
「その通りだ」サムライは大きくうなずく。「リー・チェンは知らんが、このブサシにかかれば、そいつらは秒殺だな」
「あら?」洋子が驚いたような顔をサムライに向ける。「ムサシの間違いじゃないんですか?」
「なんだとぉ!」サムライが洋子に顔をぐっと寄せる。「オレの名は、ブサシだ! ブ・サ・シ! ムサシなんて変な名前と間違うんじゃんねぇ!」
……ブサシの方が変な名前な気がするけどなあ。コーイチは思い、苦笑いを浮かべた(しかし髭のおかげで見つかることはなかった)。
「ま、リー・チェンだとかブサシだとか、ごちゃごちゃ言ってるけど」花子が馬鹿にしたように言う。「どうせすぐに忘れちゃうんだから、どうでも良いわ!」
「おう! いくら女だからって、わしにも限度ってものがあるぜぇ!」リー・チェンは右手をぐっと握り、花子の顔より大きな拳を作って、花子の前に突き出した。「見ろよ、この拳を!」
「あらあら、強そうには見えるけど……」花子はわざとらしく拳を眺めまわす。「本当はどうなのかしらね?」
「……」リー・チェンは怒りで全身が震えている。すると、突然周りのカンフーたちに振り返り、怒鳴った。「おう、お前ら、あれ持って来い!」
「えっ…… あれ、ですかい?」視線の合ったカンフーが躊躇するような声を出す。「あれは、ちょっと……」
「ごちゃごちゃぬかしてねぇで、さっさと持って来い!」
「へ、へいっ!」
十人ほどのカンフーがカンフー街へと走って行った。
「何をする気?」花子が走って行ったカンフーたちを見ながら言う。「何か見世物でもやる気なの? さっきも言ったけど、トラネコ様はお疲れなのよ。明日にしてくれないかしら?」
「おう、トラネコ!」リー・チェンがコーイチに怒ったままの顔を向ける。「まだまだ大丈夫だよな? あ?」
いきなり怖い顔を向けられたコーイチは、カクカクカクと何度もうなずいてしまった。花子が苦々しい顔をしてコーイチを見ている。
「お前たちのご主人様は、まだ大丈夫だそうだ」
リー・チェンは、がはがはと笑った。
「リー・チェン様……」視線の合ったカンフーが、ふうふうひいひいと肩で息をしながら、弱々しい声をかけてきた。「持って、来ましたぜ……」
そう言うとカンフーはその場にばったりと倒れてしまった。
「ちっ! 情けないヤツだ!」リー・チェンは冷たい視線を倒れたカンフーに向けた。「おう、おまえら、そいつを連れて、そこからどけ!」
同様に肩で息をしているカンフーたちは、倒れたカンフーを引きずりながら、そそくさとその場から離れた。
通りのややカンフー街寄りに、一辺が三メートルはあろうというコンクリート製の立方体がでんと置かれていた。カンフーたちはこれを運んで来たのだ。……そりゃ、息も切れるし、倒れもするな。コーイチは思った。
「おう、姉ちゃんたち! よく見ておきな!」
リー・チェンは言うと、ゆっくりと歩み、立方体の前に立った。
「くわあ! くおう!」
リー・チェンは大きな息吹を何度も繰り返しながら、両腕をゆっくりと回し始める。右拳を右脇腹に付けて動きが止まった。目を閉じる。
しばらくして目をかっと見開いた。
「ぬん!」
気合を入れて、右拳を立方体に撃ち付けた。
「おおおおおっ!」
周囲のカンフーとサムライがどよめいた。
立方体が粉々に砕けたのだ。
「どうだ? あ?」リー・チェンは拳を突き出したままで花子に顔を向ける。「わしの強さは分かっただろ?」
「あれ、そんなことを自慢するんですか?」
呆れたような声を洋子が出した。
「どう言うことだ? あ?」
「すみません」リー・チェンを無視して、洋子はカンフーたちに向かって言った。「申し訳ありませんが、これと同じものを持って来て頂けませんか?」
にこっと笑顔を見せると、数十人のカンフーが走り出した。
……芳川さんに火が点いたみたいだぞ。コーイチの喉がごくりと鳴った。
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