・・・干しっぱなしにしていたんだったわ! すっかり忘れていた。三人の視線が痛い。
「あなた、落ち込んでいたわりには、こんなの部屋に干しているなんて・・・」由紀が低い声で言う。怒った時に出す声だ。「・・・電話に出たのって、本当にお兄さんだったの?」
・・・違う、違うのよう! これはあいつがわたしを笑いものにしたせいなのよう! 言いなりになるのが口惜しかったからなのよう! しかし、葉子の口は開かなかった。さらに下を向く。
「イヤらしいわねえ・・・」真弓も眉をひそめる。・・・真弓、誤解よう!「葉子がこんな下着を持っているなんて・・・」
「こりゃあ、穿いてもあちこちからはみ出すわよぉ・・・」敦子がさらにパンティを引き伸ばす。・・・敦子、やめてよう!「下着にならないじゃないのぉ」
「まさか、わたし達に心配させながら、こんなの穿いて、どこかの男と、・・・」由紀は葉子の両肩を掴んだ。・・・そうじゃない、そうじゃないのよう!「どうなのよ? こっちを見て、はっきりと答えなさいよ!」
何度もからだを揺すられた。葉子は抵抗しなかった。と言うより、出来なかった。ただただ腹立たしかった。犬歯を剥き出したあいつが蔑む様に葉子を嘲笑っていた。
「まあまあ、いいじゃないのぉ」敦子がパンティを持ったまま、由紀の隣に座り込んで言った。「きっとさ、わたしにぼっこを渡した女の子と、何か関係があるんだよ」
「・・・」揺する手を止め、由紀は敦子を見た。「たとえば?」
「う~ん・・・」敦子は腕組みをして考え込んだ。「・・・きっと、これはその娘からの預かりもので、ぼっこをもらったら返すように段取りが付いていて、だけど、わたし達がいるからそれが出来なくて、でも、わたし達といるのが楽しくって、すっかり忘れてて、ところが、わたしがついうっかり見つけちゃって、ってな感じじゃない?」
由紀はじっと敦子をにらみつけている。敦子は酔った眼差しで由紀をにらみ返す。真弓がはらはらして様子で、二人を見比べている。
「・・・あっははははは!」突然、由紀が笑い出した。涙まで流している。真弓が安心したように笑顔を作る。敦子は大真面目な顔をしている。「さすが、敦子ね。怒る気がすっかり失せちゃったわ」
「笑う事ないじゃない! わたしは真剣よぉ!」敦子が鼻息荒く言う。「・・・でも、楽しい雰囲気の方がいいから、良しとするか」
由紀は敦子の肩からブラジャーを、手からパンティを取り上げた。それぞれの手に持ち、自分の顔の前にぶら下げて見ている。
「ま、いいわ。これも責任を持って処分してあげる」由紀はにっこりと葉子に微笑みかけた。微笑みながら続けた。「って言う訳には、行かないわねえ・・・」
突然、由紀はそれらを葉子の腿の上に置いた。
「・・・」面食らった葉子が、腿の上の下着を見て、かすれた声で言った。「どうしろって言うの?」
「着てみてよ」由紀があっさりと言った。「葉子がこの下着を身に着けた姿が見たいわ」
「えっ?」葉子は絶句した。「・・・そ、そんなあ・・・」
「あら、男には平気なのに、同姓には恥ずかしがるわけぇ?」由紀の瞳が意地悪く光った。葉子はその瞳を見返した。吸い込まれそうだった。「真弓も敦子も見たがってるわよ」
葉子は由紀の肩越しに二人を見た。敦子は知らぬ顔でビールをグラスに注いでいた。真弓は困った顔をしている。・・・姐御格の由紀には言い返せないわよねえ。自分が二人の立場で、止めさせようと思っても、言えないだろう、葉子は思った。
「いいじゃないの。それで何もかも、元通りよ」由紀がほうっとした眼差しを葉子に向けた。「わたし、葉子のそんな姿が見てみたいのぉ・・・」
真弓があきらめてと言うように頷いて見せた。敦子も無言でグラスを掲げた。
「・・・分かったわ」葉子は下着を持って立ち上がった。「着替えてくるわ・・・」
「きちんと処理をしてきてね。敦子じゃないけど、あちこちからはみ出させないでね」由紀は笑いながら言った。「楽しみに待っているわよぉ・・・」
葉子は寝室へ入り、ドアを閉めた。
つづく
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「あなた、落ち込んでいたわりには、こんなの部屋に干しているなんて・・・」由紀が低い声で言う。怒った時に出す声だ。「・・・電話に出たのって、本当にお兄さんだったの?」
・・・違う、違うのよう! これはあいつがわたしを笑いものにしたせいなのよう! 言いなりになるのが口惜しかったからなのよう! しかし、葉子の口は開かなかった。さらに下を向く。
「イヤらしいわねえ・・・」真弓も眉をひそめる。・・・真弓、誤解よう!「葉子がこんな下着を持っているなんて・・・」
「こりゃあ、穿いてもあちこちからはみ出すわよぉ・・・」敦子がさらにパンティを引き伸ばす。・・・敦子、やめてよう!「下着にならないじゃないのぉ」
「まさか、わたし達に心配させながら、こんなの穿いて、どこかの男と、・・・」由紀は葉子の両肩を掴んだ。・・・そうじゃない、そうじゃないのよう!「どうなのよ? こっちを見て、はっきりと答えなさいよ!」
何度もからだを揺すられた。葉子は抵抗しなかった。と言うより、出来なかった。ただただ腹立たしかった。犬歯を剥き出したあいつが蔑む様に葉子を嘲笑っていた。
「まあまあ、いいじゃないのぉ」敦子がパンティを持ったまま、由紀の隣に座り込んで言った。「きっとさ、わたしにぼっこを渡した女の子と、何か関係があるんだよ」
「・・・」揺する手を止め、由紀は敦子を見た。「たとえば?」
「う~ん・・・」敦子は腕組みをして考え込んだ。「・・・きっと、これはその娘からの預かりもので、ぼっこをもらったら返すように段取りが付いていて、だけど、わたし達がいるからそれが出来なくて、でも、わたし達といるのが楽しくって、すっかり忘れてて、ところが、わたしがついうっかり見つけちゃって、ってな感じじゃない?」
由紀はじっと敦子をにらみつけている。敦子は酔った眼差しで由紀をにらみ返す。真弓がはらはらして様子で、二人を見比べている。
「・・・あっははははは!」突然、由紀が笑い出した。涙まで流している。真弓が安心したように笑顔を作る。敦子は大真面目な顔をしている。「さすが、敦子ね。怒る気がすっかり失せちゃったわ」
「笑う事ないじゃない! わたしは真剣よぉ!」敦子が鼻息荒く言う。「・・・でも、楽しい雰囲気の方がいいから、良しとするか」
由紀は敦子の肩からブラジャーを、手からパンティを取り上げた。それぞれの手に持ち、自分の顔の前にぶら下げて見ている。
「ま、いいわ。これも責任を持って処分してあげる」由紀はにっこりと葉子に微笑みかけた。微笑みながら続けた。「って言う訳には、行かないわねえ・・・」
突然、由紀はそれらを葉子の腿の上に置いた。
「・・・」面食らった葉子が、腿の上の下着を見て、かすれた声で言った。「どうしろって言うの?」
「着てみてよ」由紀があっさりと言った。「葉子がこの下着を身に着けた姿が見たいわ」
「えっ?」葉子は絶句した。「・・・そ、そんなあ・・・」
「あら、男には平気なのに、同姓には恥ずかしがるわけぇ?」由紀の瞳が意地悪く光った。葉子はその瞳を見返した。吸い込まれそうだった。「真弓も敦子も見たがってるわよ」
葉子は由紀の肩越しに二人を見た。敦子は知らぬ顔でビールをグラスに注いでいた。真弓は困った顔をしている。・・・姐御格の由紀には言い返せないわよねえ。自分が二人の立場で、止めさせようと思っても、言えないだろう、葉子は思った。
「いいじゃないの。それで何もかも、元通りよ」由紀がほうっとした眼差しを葉子に向けた。「わたし、葉子のそんな姿が見てみたいのぉ・・・」
真弓があきらめてと言うように頷いて見せた。敦子も無言でグラスを掲げた。
「・・・分かったわ」葉子は下着を持って立ち上がった。「着替えてくるわ・・・」
「きちんと処理をしてきてね。敦子じゃないけど、あちこちからはみ出させないでね」由紀は笑いながら言った。「楽しみに待っているわよぉ・・・」
葉子は寝室へ入り、ドアを閉めた。
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