「どおう?」肩に座ったまま、花は得意げな声を出した。「思った通りの体型になったでしょ?」
「・・・え、あ、ああ・・・」まだ戸惑っているコーイチだった。「それにしても、スゴいなあ・・・」
「ね? わたしって役に立つでしょう?」花は言いながらコーイチの耳たぶを軽く引っ張る。「わたしがいないと、あなたは何にも出来ないでしょぉぉぉぉぉ・・・」
押し付けがましい言い方に続いて、花は耳たぶを強く引っ張る。
「いてててててて・・・」コーイチは顔をしかめる。「うんうん、君はとっても役に立つよ! 君がいなければ、僕は何にも出来ないよ! だから、耳を引っ張るのは止めてくれよぉぉぉぉぉ!」
「いいわ、分かってくれたようだから、許してあげる」
花は耳を離し、その葉を前方と向けた。
「さ、前進よ! この体型なら、本当に丘なんて、ひとまたぎよ!」
コーイチは足を動かした。長くなってはいるが、重くはない。普通に歩いているつもりで、丘まで一歩でたどり着いた。・・・こりゃあ、スゴイや! 自転車でも結構、時間がかかったのに。コーイチはよっこらしょと掛け声を掛けながら、丘をまたいだ。
「まあ、掛け声なんて、オジサンね!」
「楽々とまたげたぞ」コーイチは花の悪口を無視した。「走ってみても大丈夫かな?」
「走るねぇ・・・」花は両方の葉で腕組みをした。「よいしょ、こらしょなんて、オジサンな掛け声を掛けなきゃ大丈夫よ」
「・・・」・・・無視した事を根に持っているらしいぞ。「そんな掛け声は出さないよ」
「じゃあ、大丈夫よ。でも、転ばないでね」
「へえ、意外と優しい事を言ってくれるんだね」
「そうじゃないわ。もし、転んでわたしが下敷きになっちゃ、たまらないもの」
「・・・そう・・・」コーイチはため息をついた。しかし、すぐに気を取り直した。・・・この花にいつまでも振り回されていちゃ、いつまで経ってもたどり着けない事になるぞ。そう、気にしない、気にしない。「じゃ、走るよ!」
コーイチは走り出した。普通に走っている。丘を軽く飛び越える。顔に当たる風が心地良い。しかし、いつまで経っても丘の連続だった。さすがに疲れる。立ち止まり、肩で息をする。
「まだ、お城が、見えないけど、あと、どれくらい、かかるんだい?」
息も絶え絶えで花に語りかけた。
花はコーイチの激しい肩の上下に振り落とされまいとして、耳たぶにしがみついていた。
「そうねえ、あと二十ばかり超えれば、見えてくるわ」
「まだ、そんなに・・・」
「何よ、男でしょ? 助けに行くんでしょ? 取り返すんでしょ?」
「ああ、そうだった」コーイチは背筋を伸ばした。気合を入れ直す。「こんな所で、いつまでも、ぐずぐずしてられない!」
「そうよ、それでこそ、男よ!」花は軽く耳たぶを引っ張った。「それにしても、あなたって、足が遅いのねえ・・・」
「・・・」
コーイチはぶすっとしたまま、走り出した。・・・くそう! こうなったら、わざと転んで潰してやろうかな! でも、助けてもらったわけだしなあ・・・ コーイチは足元に気をつけながら、走り続けた。
つづく
web拍手を送る


「・・・え、あ、ああ・・・」まだ戸惑っているコーイチだった。「それにしても、スゴいなあ・・・」
「ね? わたしって役に立つでしょう?」花は言いながらコーイチの耳たぶを軽く引っ張る。「わたしがいないと、あなたは何にも出来ないでしょぉぉぉぉぉ・・・」
押し付けがましい言い方に続いて、花は耳たぶを強く引っ張る。
「いてててててて・・・」コーイチは顔をしかめる。「うんうん、君はとっても役に立つよ! 君がいなければ、僕は何にも出来ないよ! だから、耳を引っ張るのは止めてくれよぉぉぉぉぉ!」
「いいわ、分かってくれたようだから、許してあげる」
花は耳を離し、その葉を前方と向けた。
「さ、前進よ! この体型なら、本当に丘なんて、ひとまたぎよ!」
コーイチは足を動かした。長くなってはいるが、重くはない。普通に歩いているつもりで、丘まで一歩でたどり着いた。・・・こりゃあ、スゴイや! 自転車でも結構、時間がかかったのに。コーイチはよっこらしょと掛け声を掛けながら、丘をまたいだ。
「まあ、掛け声なんて、オジサンね!」
「楽々とまたげたぞ」コーイチは花の悪口を無視した。「走ってみても大丈夫かな?」
「走るねぇ・・・」花は両方の葉で腕組みをした。「よいしょ、こらしょなんて、オジサンな掛け声を掛けなきゃ大丈夫よ」
「・・・」・・・無視した事を根に持っているらしいぞ。「そんな掛け声は出さないよ」
「じゃあ、大丈夫よ。でも、転ばないでね」
「へえ、意外と優しい事を言ってくれるんだね」
「そうじゃないわ。もし、転んでわたしが下敷きになっちゃ、たまらないもの」
「・・・そう・・・」コーイチはため息をついた。しかし、すぐに気を取り直した。・・・この花にいつまでも振り回されていちゃ、いつまで経ってもたどり着けない事になるぞ。そう、気にしない、気にしない。「じゃ、走るよ!」
コーイチは走り出した。普通に走っている。丘を軽く飛び越える。顔に当たる風が心地良い。しかし、いつまで経っても丘の連続だった。さすがに疲れる。立ち止まり、肩で息をする。
「まだ、お城が、見えないけど、あと、どれくらい、かかるんだい?」
息も絶え絶えで花に語りかけた。
花はコーイチの激しい肩の上下に振り落とされまいとして、耳たぶにしがみついていた。
「そうねえ、あと二十ばかり超えれば、見えてくるわ」
「まだ、そんなに・・・」
「何よ、男でしょ? 助けに行くんでしょ? 取り返すんでしょ?」
「ああ、そうだった」コーイチは背筋を伸ばした。気合を入れ直す。「こんな所で、いつまでも、ぐずぐずしてられない!」
「そうよ、それでこそ、男よ!」花は軽く耳たぶを引っ張った。「それにしても、あなたって、足が遅いのねえ・・・」
「・・・」
コーイチはぶすっとしたまま、走り出した。・・・くそう! こうなったら、わざと転んで潰してやろうかな! でも、助けてもらったわけだしなあ・・・ コーイチは足元に気をつけながら、走り続けた。
つづく
web拍手を送る


※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます