ハービィが操縦席に座り、自ら三本のケーブルを頭に取り付ける。ジェシルは前方の三人掛けの椅子の一番右端に座った。オーランド・ゼムはジェシルの隣に座った。ジェシルはオーランド・ゼムを睨む。
「ジェシル……」オーランド・ゼムはジェシルの睨みに苦笑する。「そろそろ、そんなこわい顔をするのは止めて、笑顔の一つでも見せてくれないかね?」
「この顔は生まれつきよ」ジェシルは言うと、ぷいと向こうを向いてしまう。「ボディガードは引き受けたけど、笑顔のサービスは引き受けてはいないわ」
「そうか。ボディガードの条件に笑顔も含めておけば良かったな」オーランド・ゼムは笑う。「……今から追加と言うのは……」
「無いわ!」
「やっぱりな……」ジェシルに言下に否定され、オーランド・ゼムは苦笑する。「まあ、それは追い追いと言う所だな……」
ジェシルは返事もせず、オーランド・ゼムを見ようともしなかった。
「間もなく惑星ベルダが見えてきます」ハービィが言う。気まずそうな、殺伐としたこの場の雰囲気をハービィは理解はしていないようだ。「どこに着陸をしますか?」
「ほう、もう着いたのか…… やはり若い娘と話していると時間が経つのが早いものだ」
「また下らない事を言って!」ジェシルはからだを回してオーランド・ゼムに背中を向けた。「さっさと着陸して、アーセルを迎えに行くんでしょ?」
「まあ、落ち着きたまえ……」オーランド・ゼムはジェシルの背中を見ながら言う。「ふむ、その制服は君のボディラインを余すところなく披露してくれているようだ」
「馬鹿な事を言わないでよ!」ジェシルは大あわてで立ち上がると、オーランド・ゼムに振り返り、むっとした顔を向けた。「何を考えているのよう!」
「ほう、正面も相変わらず良い眺めだ……」
「ふざけないで!」
「ジェシル、そう怒るな」オーランド・ゼムは笑む。「本当に君のような若い娘と会うのは久し振りなのだよ。年甲斐も無くはしゃいでしまうのは許して欲しいものだな」
「年甲斐も無くって…… あなた、幾つなのよう!」
「まあ、冗談はそこまでにしてだ」オーランド・ゼムは真顔になる。ジェシルは翻弄されている自分に腹が立ち、更にむっとした顔になる。「先程、攻撃をされたのは覚えているだろう?」
「そうね。ドクターのおかげで助かったわね」
「そこで考えて欲しいのは、敵が襲って来たと言う事は、敵はわたしたちの動きを把握していると言う事だ」
「……そう言う事になるかしらね……」
「だとすると、わたしたちがベルダに着陸すれば、すぐに見つかってしまうとは思わないかね?」
「でも、それだとアーセルはどうするの?」ジェシルはオーランド・ゼムを見る。笑顔のオーランド・ゼムからは何も読み取れない。ジェシルは負けるものかと思う。「分かったわ! アーセルを諦めて、このまま宇宙パトロール本部へ向かうのね!」
「本気で言っているのかね?」オーランド・ゼムが言う。相変わらず笑顔だが、目が笑っていない事にジェシルは気がついた。「アーセルは盟友だ。是が非でも連れて来なければならない」
「でも、着陸すれば、すぐに見つかっちゃうんでしょ?」
「監視されているのはこの宇宙船だ。だから、宇宙船を着陸させなけば良いのだよ」
「何を言っているのか、さっぱり分からないわ!」ジェシルはいらいらして声を荒げる。「何をどうしたいのよ?」
「相変わらず辛抱が足りないな、若い連中と言うのは……」オーランド・ゼムはわざとらしく溜め息をつく。「それをこれから話そうと言うのさ」
ジェシルは答えず、じっとオーランド・ゼムを見る。オーランド・ゼムは立ち上がった。
「ハービィ、ベルダが見えたら、その位置で停止してくれ」
「かしこまりましてございます」
「何をするつもりなの? 宇宙船を止めたら、ベルダには行けないわよ……」
「ジェシル、付いて来てくれたまえ」
オーランド・ゼムはジェシルの問いには答えず、コックピット後方の自動ドアから出て行った。ジェシルはハービィを見る。
「ハービィ…… 付いて行って大丈夫かしら……」
「ハニー」ハービィは頭を百八十度回転させ、ジェシルを見る。ケーブルが外れそうになっている。「君はあのオーランド・ゼムに招かれたのだから、何も心配はいらない、大丈夫だ」
「でも……」
「もしもの時は、わがはいが守る」
「あら、本当?」突然のハービィの言葉に、ジェシルは思わず笑顔になった。「じゃあ、その言葉を信用するわね」
ジェシルはそう言うと、自動ドアに向かう。……まあ、アンドロイドのリップサービスにしては良く出来ているわね。ジェシルはそう思い、ドアから出て行った。
ハービィはジェシルが出て行くのを見届けると、頭を元に戻した。
ジェシルがドアから出ると、オーランド・ゼムが待っていた。ジェシルはまたむっとした表情になる。
「ジェシル、何をしていたのかね?」
「ハービィとちょっと話していただけよ」
「ほう、愛を確かめ合っていたのかね?」
「下らない事を言わないでちょうだい!」
「ははは、若い娘はからかいがいがあるよ。ちょっと何か言うと、むきになって言い返してくるからね」オーランド・ゼムは笑う。ジェシルはむっとし続ける。「……一緒に来たまえ」
ジェシルはオーランド・ゼムの後に付いて行く。長い通路の端まで行くと自動ドアがあった。ドアが開く。
「ここは?」
「転送装置のある部屋だよ」そう言いながらオーランド・ゼムが振り返る。「君に惑星ベルダへ行ってもらおうと思ってね」
つづく
「ジェシル……」オーランド・ゼムはジェシルの睨みに苦笑する。「そろそろ、そんなこわい顔をするのは止めて、笑顔の一つでも見せてくれないかね?」
「この顔は生まれつきよ」ジェシルは言うと、ぷいと向こうを向いてしまう。「ボディガードは引き受けたけど、笑顔のサービスは引き受けてはいないわ」
「そうか。ボディガードの条件に笑顔も含めておけば良かったな」オーランド・ゼムは笑う。「……今から追加と言うのは……」
「無いわ!」
「やっぱりな……」ジェシルに言下に否定され、オーランド・ゼムは苦笑する。「まあ、それは追い追いと言う所だな……」
ジェシルは返事もせず、オーランド・ゼムを見ようともしなかった。
「間もなく惑星ベルダが見えてきます」ハービィが言う。気まずそうな、殺伐としたこの場の雰囲気をハービィは理解はしていないようだ。「どこに着陸をしますか?」
「ほう、もう着いたのか…… やはり若い娘と話していると時間が経つのが早いものだ」
「また下らない事を言って!」ジェシルはからだを回してオーランド・ゼムに背中を向けた。「さっさと着陸して、アーセルを迎えに行くんでしょ?」
「まあ、落ち着きたまえ……」オーランド・ゼムはジェシルの背中を見ながら言う。「ふむ、その制服は君のボディラインを余すところなく披露してくれているようだ」
「馬鹿な事を言わないでよ!」ジェシルは大あわてで立ち上がると、オーランド・ゼムに振り返り、むっとした顔を向けた。「何を考えているのよう!」
「ほう、正面も相変わらず良い眺めだ……」
「ふざけないで!」
「ジェシル、そう怒るな」オーランド・ゼムは笑む。「本当に君のような若い娘と会うのは久し振りなのだよ。年甲斐も無くはしゃいでしまうのは許して欲しいものだな」
「年甲斐も無くって…… あなた、幾つなのよう!」
「まあ、冗談はそこまでにしてだ」オーランド・ゼムは真顔になる。ジェシルは翻弄されている自分に腹が立ち、更にむっとした顔になる。「先程、攻撃をされたのは覚えているだろう?」
「そうね。ドクターのおかげで助かったわね」
「そこで考えて欲しいのは、敵が襲って来たと言う事は、敵はわたしたちの動きを把握していると言う事だ」
「……そう言う事になるかしらね……」
「だとすると、わたしたちがベルダに着陸すれば、すぐに見つかってしまうとは思わないかね?」
「でも、それだとアーセルはどうするの?」ジェシルはオーランド・ゼムを見る。笑顔のオーランド・ゼムからは何も読み取れない。ジェシルは負けるものかと思う。「分かったわ! アーセルを諦めて、このまま宇宙パトロール本部へ向かうのね!」
「本気で言っているのかね?」オーランド・ゼムが言う。相変わらず笑顔だが、目が笑っていない事にジェシルは気がついた。「アーセルは盟友だ。是が非でも連れて来なければならない」
「でも、着陸すれば、すぐに見つかっちゃうんでしょ?」
「監視されているのはこの宇宙船だ。だから、宇宙船を着陸させなけば良いのだよ」
「何を言っているのか、さっぱり分からないわ!」ジェシルはいらいらして声を荒げる。「何をどうしたいのよ?」
「相変わらず辛抱が足りないな、若い連中と言うのは……」オーランド・ゼムはわざとらしく溜め息をつく。「それをこれから話そうと言うのさ」
ジェシルは答えず、じっとオーランド・ゼムを見る。オーランド・ゼムは立ち上がった。
「ハービィ、ベルダが見えたら、その位置で停止してくれ」
「かしこまりましてございます」
「何をするつもりなの? 宇宙船を止めたら、ベルダには行けないわよ……」
「ジェシル、付いて来てくれたまえ」
オーランド・ゼムはジェシルの問いには答えず、コックピット後方の自動ドアから出て行った。ジェシルはハービィを見る。
「ハービィ…… 付いて行って大丈夫かしら……」
「ハニー」ハービィは頭を百八十度回転させ、ジェシルを見る。ケーブルが外れそうになっている。「君はあのオーランド・ゼムに招かれたのだから、何も心配はいらない、大丈夫だ」
「でも……」
「もしもの時は、わがはいが守る」
「あら、本当?」突然のハービィの言葉に、ジェシルは思わず笑顔になった。「じゃあ、その言葉を信用するわね」
ジェシルはそう言うと、自動ドアに向かう。……まあ、アンドロイドのリップサービスにしては良く出来ているわね。ジェシルはそう思い、ドアから出て行った。
ハービィはジェシルが出て行くのを見届けると、頭を元に戻した。
ジェシルがドアから出ると、オーランド・ゼムが待っていた。ジェシルはまたむっとした表情になる。
「ジェシル、何をしていたのかね?」
「ハービィとちょっと話していただけよ」
「ほう、愛を確かめ合っていたのかね?」
「下らない事を言わないでちょうだい!」
「ははは、若い娘はからかいがいがあるよ。ちょっと何か言うと、むきになって言い返してくるからね」オーランド・ゼムは笑う。ジェシルはむっとし続ける。「……一緒に来たまえ」
ジェシルはオーランド・ゼムの後に付いて行く。長い通路の端まで行くと自動ドアがあった。ドアが開く。
「ここは?」
「転送装置のある部屋だよ」そう言いながらオーランド・ゼムが振り返る。「君に惑星ベルダへ行ってもらおうと思ってね」
つづく
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