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コーイチ物語 「秘密のノート」 57

2022年09月07日 | コーイチ物語 1 7) 赤い服の美女  
 昼食後も引き続き電話によって西川新課長(仮課長だ)昇進の報告と今夜のパーティへの案内が行われた。
 コーイチは主に先方から掛かってくる電話の応対係だった。
「もしもし、こちら……」
 コーイチが話し出す前に、相手がわっはっはっはっはと高笑いをした。
「いやいや、今回は昇進おめでとう。彼ならこんな日が来るのもそう遠くはないと思っていたよ。今後も順調に進んで欲しいものだね」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「わっはっはっはっは、これは失敬、失敬。わしは現職の総理大臣の倉井と言う者だよ」
「は、そうですか、ゲンショク株式会社様で。……えっ、総理大臣って…… えっ? えっ!」
「コーイチ、ちょっと電話を渡してもらおうか」
 西川が固まってしまったコーイチの手から受話器を取って応対を始めた。
「やあ、これは倉井さん。……はい、ありがとうございます。……あはは、ではいずれお伺いいたします」
 一通り話し終えた西川は受話器をコーイチに戻した。
 西川さんって、一体何者なんだろう…… やっと元に戻ったコーイチは西川の横顔をちらりと見た。
「コーイチ君も友達に電話して、今夜のパーティに来てもらったら良いんじゃないかな」
 林谷は言った。林谷さんは一体何人集める気なんだろう。
「はあ、そうさせてもらいます」
 コーイチは返事をしたものの、誰が良いか考えあぐねてしまった。友達のほとんどは郷里にいるし、こちらで知り合った同年の名護瀬富也は、普段は真面目で良い奴なのだが、パーティや宴会となると急にテンションが上がってしまって、とんでもない事をやりだしかねない。以前の宴会ではヒゲ面の名護瀬にコーイチは頬にキスをされたのだ。……やっぱり、奴はやめておこう。
 また電話が鳴った。コーイチが受話器を取り上げる。
「もしもし、こちら……」
 コーイチが話し出す前に、相手が、んふふふと可愛らしく笑った。
「コーイチ君…… でしょ?」
 可愛らしい女性の声だ。
「はあ、コーイチはコーイチですけど…… どちら様でしょうか?」
「あら、いやだ! 今日会ったじゃない!」
「えっ……」
 コーイチは記憶をたどってみた。今日会った女の人は、コンビニエンスストアの不思議なおばさん、ボクの顔を見て笑った女子高生、夢そっくりだった印旛沼さんの娘さん、そして清水さんと川村さんくらいかな…… その中の誰かかなぁ……
「んふふふ、まだ分かんない? さっき会ったじゃない。引き出しの中で……」
「えっ!!」
 コーイチは叫びながら立ち上がった。

       つづく

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