「花子様、我々の運んできたのをお使いください!」
「いえ、我々のを!」
「なんの、なんの、我々のを、是非是非!」
花子は差し出された三振りの刀を交互に見比べている。
「おい!」
ブサシが花子に声をかける。花子は面倒くさそうにブサシを見た。
「……何よ!」
「そんなに悩んでいるんなら、全部もらっちまえば良いんじゃねえか? あ?」
花子はブサシを睨みつけた。しかし、すぐに、何かを思いついたように笑顔になった。
「……そうね、それが良いわね」花子はサムライたちに向き直った。「じゃあ、それ全部頂くわ」
花子は、三振りとも柄を釣り鐘に向け、釣り鐘と少し距離を取って地面に並べて置くように指示した。
「おい、どうするんだ?」ブサシがいぶかしむ顔で言った。「女の力じゃ、鞘ごと持ち上げるのは無理だぜ?」
「……いちいち、うるさいわねえ!」花子は言った後、ふと気がついたように付け足した。「……まさか、あなたがわたしに惚れてんじゃないの?」
「……な、何をたわけた事を、ぬかしてやがんだ!」
ブサシは怒鳴ったが、顔が赤くなっている。
「あらあら、本当なの?」花子は驚いた顔をして見せた(コーイチにはそれがわざとらしく見えた)。「そんなに赤くなっちゃって……」
サムライもカンフーもこらえきれずに笑い出した。
「ちょっと、皆さん!」洋子が怒った顔で前に出た。笑い声がぴたりと止んだ。「誰かが誰かを好きになる事が、そんなに笑える事なんですか!」
「おい、違うって言ってんだろうが!」
ブサシは洋子に怒鳴るが、洋子の耳には入ってこないようだった。洋子は続けて話し始める。
「たとえ、大男で、見てくれが汚くて、口も悪くて、力馬鹿で、でもすごい技を持っていて…… そんなブサシさんが、花子さんを好きになったって、良いじゃないですか! 花子さんに嫌われているってわかっていたとしても!」
……褒めているのか、落としているのか、わからないなぁ、コーイチは思った。
「おい! カンフー娘! いい加減にしねえか!」
ブサシは洋子の前に立ち、ぐっと顔を近づける。洋子はにこっと微笑んで見せた。
「とか何とか言って、本当は、花子さんの事、好きなんでしょ?」
「ふざけるな! オレにはそんな気はさらさらねえんだよ!」
「あら、そう……」花子はがっかりした声で言い、ため息をついた(コーイチにはそれがわざとらしく見えた)。「わたしの事、好きじゃないのね……」
「いや、あの、その」ブサシはわたわたと両手を振り回している。「このオレに盾つく女なんて初めてで…… それが新鮮で…… そ、それだけだ!」
「おい、ブサシ!」
リー・チェンが立ち上がった。落ち込んでいた時期は過ぎたようで、全身に活気を取り戻していた。
「わしは、はっきりと言えるぞ!」リー・チェンは洋子にぐっと顔を近づけた。眉間にたてじわを寄せた、その恐ろしい顔が、いきなり満面の笑顔に変わった。「わしは、この娘、ヴァイオレット・シャンちゃんが好きになった!」
「えええええ~っ!」ストレートな告白に戸惑いながら、わたわたと両手を振り回した。「そんな……どうしましょ……心の準備が……いえ、わたしはコーイチさんが……あわわわわ……」
成り行きに付いて行けず、ぼうっと突っ立ったままのコーイチだった。
「いえ、我々のを!」
「なんの、なんの、我々のを、是非是非!」
花子は差し出された三振りの刀を交互に見比べている。
「おい!」
ブサシが花子に声をかける。花子は面倒くさそうにブサシを見た。
「……何よ!」
「そんなに悩んでいるんなら、全部もらっちまえば良いんじゃねえか? あ?」
花子はブサシを睨みつけた。しかし、すぐに、何かを思いついたように笑顔になった。
「……そうね、それが良いわね」花子はサムライたちに向き直った。「じゃあ、それ全部頂くわ」
花子は、三振りとも柄を釣り鐘に向け、釣り鐘と少し距離を取って地面に並べて置くように指示した。
「おい、どうするんだ?」ブサシがいぶかしむ顔で言った。「女の力じゃ、鞘ごと持ち上げるのは無理だぜ?」
「……いちいち、うるさいわねえ!」花子は言った後、ふと気がついたように付け足した。「……まさか、あなたがわたしに惚れてんじゃないの?」
「……な、何をたわけた事を、ぬかしてやがんだ!」
ブサシは怒鳴ったが、顔が赤くなっている。
「あらあら、本当なの?」花子は驚いた顔をして見せた(コーイチにはそれがわざとらしく見えた)。「そんなに赤くなっちゃって……」
サムライもカンフーもこらえきれずに笑い出した。
「ちょっと、皆さん!」洋子が怒った顔で前に出た。笑い声がぴたりと止んだ。「誰かが誰かを好きになる事が、そんなに笑える事なんですか!」
「おい、違うって言ってんだろうが!」
ブサシは洋子に怒鳴るが、洋子の耳には入ってこないようだった。洋子は続けて話し始める。
「たとえ、大男で、見てくれが汚くて、口も悪くて、力馬鹿で、でもすごい技を持っていて…… そんなブサシさんが、花子さんを好きになったって、良いじゃないですか! 花子さんに嫌われているってわかっていたとしても!」
……褒めているのか、落としているのか、わからないなぁ、コーイチは思った。
「おい! カンフー娘! いい加減にしねえか!」
ブサシは洋子の前に立ち、ぐっと顔を近づける。洋子はにこっと微笑んで見せた。
「とか何とか言って、本当は、花子さんの事、好きなんでしょ?」
「ふざけるな! オレにはそんな気はさらさらねえんだよ!」
「あら、そう……」花子はがっかりした声で言い、ため息をついた(コーイチにはそれがわざとらしく見えた)。「わたしの事、好きじゃないのね……」
「いや、あの、その」ブサシはわたわたと両手を振り回している。「このオレに盾つく女なんて初めてで…… それが新鮮で…… そ、それだけだ!」
「おい、ブサシ!」
リー・チェンが立ち上がった。落ち込んでいた時期は過ぎたようで、全身に活気を取り戻していた。
「わしは、はっきりと言えるぞ!」リー・チェンは洋子にぐっと顔を近づけた。眉間にたてじわを寄せた、その恐ろしい顔が、いきなり満面の笑顔に変わった。「わしは、この娘、ヴァイオレット・シャンちゃんが好きになった!」
「えええええ~っ!」ストレートな告白に戸惑いながら、わたわたと両手を振り回した。「そんな……どうしましょ……心の準備が……いえ、わたしはコーイチさんが……あわわわわ……」
成り行きに付いて行けず、ぼうっと突っ立ったままのコーイチだった。
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