お話

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シュタークスミス博士の大発明 10 ―天の恵み、地の恵み―

2008年03月04日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで気候問題は解決したぞ」
 博士の発明したものは、一定の区域の気候をコントロールできるバリアを発生させる装置だ。気候の条件と区域の広さを入力して作動させれば、外界の気候とまったく関係なく、広がったバリア内がその気候の状態となる。
「これさえあれば、水が足りなければ雨を、太陽が足りなければ晴天を、自由に作り出せるのだ。と言う事は、水不足も日照不足もなく、最高の作物が育つはずだ」
 博士は郊外に持っているトマト畑へ行き、畑の広さと、トマトが最高の出来となる気候の条件を装置に入力し、作動させた。
 装置は正常に作動を始めた。その日は曇り空だったが、バリアに包まれた畑には陽が射し込んでいた。
「大好物のトマトが、どれほど美味しくできるのか、今からとても楽しみだな」
 バリア内ではすでに芽が出て、すくすくと伸び始めている。
「これは通常より早く成長させる作用もあるようだ。最上の作物が早く収穫できるとは、我ながらすごい発明をしたものだ」
 博士は期待に胸をときめかせて帰って行った。
 数週間して畑に来てみたが、トマトは全て枯れてしまっていた。
 バリアを消し、博士は畑の土を手ですくい、それを見ながらつぶやいた。
「そうか、気候ではなく、土自体が問題なんだ」

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