「『ブラックタイマー』復活の噂は耳にしていたよ」
「そ、そうなんだ……」アツコは答えた。事前に逸子と打ち合わせていて、まずは支持者の話を聞こうと言う事になっていた。「それで? 何の用なの?」
「噂が本当なのかどうかを確かめていたのだ。単なる噂なのか本当なのかをね」
「それで?」
「わたしがここへ来たと言う事で分かってくれたと思う。噂が本当だったと確信したからだよ」
「じゃあ……」
「そうだ。これからも支持者として協力をしたいと思っている。……異存はないだろうな?」
アツコはほっと息をつく。取り敢えず支持者が現われたのだ。作戦は成功と言えるだろう。
「異存は無いけど……」アツコは何食わぬ顔で続ける。「まだまだ人は集まっていないわ」
「分かっている。だが、近いうちに集まるだろう」
「あら、大胆な預言ね」
「預言ではない。わたしがメンバーが集まるような提案をしたいと思っているからだ」
「それはそれは、ご親切な話ね」アツコは笑う。「……でも、タイムパトロールが黙っていないんじゃない?」
「ははは……」支持者は軽蔑したように笑う。「どうせ、タイムパトロールなど何も出来ん張りぼてだ。いや、それ以下だ。しかも、何をやったところで厳重注意以上の事は出来ないのだよ。役立たずのヘボ集団だ。そんな連中は、アツコのグループで右往左往させてやれば良いのだ」
「自分が所属しているタイムパトロールを、良くそこまで言えるわね」
「タイムパトロールは役立たずの組織だ。わたしはずっと歯痒く思っていたのだよ。君もそれが分かっていたから、やりたい放題だったのではないか?」
「まあ、そう言う所はあったわね……」アツコは過去を思い出しながら言う。「……でも、話だと、今度長官が変わるみたいよ。新しく就任する長官は、逮捕できる権限を持てるように各省庁に働きかけると言う噂を聞いたわ。そうなれば、わたしたちは犯罪者になっちゃうわ」
「何だね? 怖気づいたのかね?」支持者の言葉に嘲りが含まれていた。「あの偉大なリーダーのアツコも、組織を離れていると、そう言う弱気な単なる小娘になってしまうのか。残念だな……」
「そうじゃないわ! 逆に燃えるわよ!」下手な事を言っていたら支持者がどこかへ行ってしまう。そう思ったアツコはわざとらしいほどのきっぱりとした口調で言う。「犯罪者上等な連中を集めれば良いだけの話じゃない? そして、その方が結構面白おかしくやれそうだしね」
「それでこそ、偉大なリーダーのアツコだ」支持者も満足したようだ。「では、今回もわたしが導こう。君のわたしに対するわだかまりは、わたしなりに反省をしている」
「あら、わだかまりなんか無いわよ?」アツコは笑顔を見せる。「そんな事よりも、これからもよろしくね」
「それならば良いのだ。タイムパトロールも歴史も破壊してしまおうではないか!」
アツコは素早く逸子に視線を送った。逸子は支持者の居る光をアツコと挟み込むような位置へとゆっくりと移った。そして、光に向かって右の手の平をかざした。アツコもそれを確認すると同じように右の手の平を光に向けた。
「何の真似だ?」支持者の声に少し戸惑いの色があった。「わたしは、アツコ、君に協力をしようと言っているのだよ」
「ふざけないで! わたしがあなたを許すわけないでしょうが!」アツコは怒鳴った。「何よ、偉そうにして! あなたはわたしを利用して、好き勝手をやりたいだけなんでしょ? それに何ですって? 歴史を破壊する? 馬っ鹿じゃないの! それにね、今回の復活話は、あなたをここにおびき出すための作戦だったのよ! わたしの前に現われたのが運の尽きよ!」
言い終わると、アツコの全身からオーラが噴き上がった。それに呼応するように逸子のオーラも噴き上がる。
「思い知るが良いわ!」アツコが叫ぶ。「『烈風庵空手秘奥義・赤龍乱舞』!」
「あっ、先に言われた!」逸子も叫ぶ。「『真風会館空手秘奥義・赤虎烈動』!」
二人の秘奥義が同時に炸裂した。支持者の居る光にかざした二人の手の平から強力なオーラが光線のように連続して撃ち出され、光を包んだ。オーラの赤い光は、溶鉱炉の強烈な光すら凌駕する輝きを放ち、支持者の光が見えないほどになった。
「うわあああああ……!」
支持者の断末魔の絶叫が響いた。
「アツコ! やり過ぎだ!」
側近の一人がアツコに向かって叫ぶ。その声にはっと我に返ったのは逸子だった。逸子はオーラを止めた。しかし、アツコは止めない。
「アツコ! もう終わりよ!」逸子はそう叫びながらアツコに駈け寄り、アツコの右手をつかんで下げさせた。地面に深い穴を開けてアツコのオーラが止まった。「……もう、充分よ……」
アツコは顔を上げた。その頬に涙が流れているのを逸子は見た。逸子はアツコを抱き締めた。アツコは声を出して泣き出した。逸子はその背中を何度も優しく叩いた。
「う…… うう……」
タイムマシンの光の中から声がもれて来た。支持者のうめき声だった。光の中からふらふらした足取りをした支持者が姿を見せた。光が消えた。
「……あなたは……」
逸子はその姿に絶句した。アツコも振り返り、支持者を見た。途端に涙に濡れた目は驚きで見開かれた。
「あなた、タケルさん!」
「へ…… へへへ……」
タケルは力無く笑うと、その場に倒れてしまった。
つづく
「そ、そうなんだ……」アツコは答えた。事前に逸子と打ち合わせていて、まずは支持者の話を聞こうと言う事になっていた。「それで? 何の用なの?」
「噂が本当なのかどうかを確かめていたのだ。単なる噂なのか本当なのかをね」
「それで?」
「わたしがここへ来たと言う事で分かってくれたと思う。噂が本当だったと確信したからだよ」
「じゃあ……」
「そうだ。これからも支持者として協力をしたいと思っている。……異存はないだろうな?」
アツコはほっと息をつく。取り敢えず支持者が現われたのだ。作戦は成功と言えるだろう。
「異存は無いけど……」アツコは何食わぬ顔で続ける。「まだまだ人は集まっていないわ」
「分かっている。だが、近いうちに集まるだろう」
「あら、大胆な預言ね」
「預言ではない。わたしがメンバーが集まるような提案をしたいと思っているからだ」
「それはそれは、ご親切な話ね」アツコは笑う。「……でも、タイムパトロールが黙っていないんじゃない?」
「ははは……」支持者は軽蔑したように笑う。「どうせ、タイムパトロールなど何も出来ん張りぼてだ。いや、それ以下だ。しかも、何をやったところで厳重注意以上の事は出来ないのだよ。役立たずのヘボ集団だ。そんな連中は、アツコのグループで右往左往させてやれば良いのだ」
「自分が所属しているタイムパトロールを、良くそこまで言えるわね」
「タイムパトロールは役立たずの組織だ。わたしはずっと歯痒く思っていたのだよ。君もそれが分かっていたから、やりたい放題だったのではないか?」
「まあ、そう言う所はあったわね……」アツコは過去を思い出しながら言う。「……でも、話だと、今度長官が変わるみたいよ。新しく就任する長官は、逮捕できる権限を持てるように各省庁に働きかけると言う噂を聞いたわ。そうなれば、わたしたちは犯罪者になっちゃうわ」
「何だね? 怖気づいたのかね?」支持者の言葉に嘲りが含まれていた。「あの偉大なリーダーのアツコも、組織を離れていると、そう言う弱気な単なる小娘になってしまうのか。残念だな……」
「そうじゃないわ! 逆に燃えるわよ!」下手な事を言っていたら支持者がどこかへ行ってしまう。そう思ったアツコはわざとらしいほどのきっぱりとした口調で言う。「犯罪者上等な連中を集めれば良いだけの話じゃない? そして、その方が結構面白おかしくやれそうだしね」
「それでこそ、偉大なリーダーのアツコだ」支持者も満足したようだ。「では、今回もわたしが導こう。君のわたしに対するわだかまりは、わたしなりに反省をしている」
「あら、わだかまりなんか無いわよ?」アツコは笑顔を見せる。「そんな事よりも、これからもよろしくね」
「それならば良いのだ。タイムパトロールも歴史も破壊してしまおうではないか!」
アツコは素早く逸子に視線を送った。逸子は支持者の居る光をアツコと挟み込むような位置へとゆっくりと移った。そして、光に向かって右の手の平をかざした。アツコもそれを確認すると同じように右の手の平を光に向けた。
「何の真似だ?」支持者の声に少し戸惑いの色があった。「わたしは、アツコ、君に協力をしようと言っているのだよ」
「ふざけないで! わたしがあなたを許すわけないでしょうが!」アツコは怒鳴った。「何よ、偉そうにして! あなたはわたしを利用して、好き勝手をやりたいだけなんでしょ? それに何ですって? 歴史を破壊する? 馬っ鹿じゃないの! それにね、今回の復活話は、あなたをここにおびき出すための作戦だったのよ! わたしの前に現われたのが運の尽きよ!」
言い終わると、アツコの全身からオーラが噴き上がった。それに呼応するように逸子のオーラも噴き上がる。
「思い知るが良いわ!」アツコが叫ぶ。「『烈風庵空手秘奥義・赤龍乱舞』!」
「あっ、先に言われた!」逸子も叫ぶ。「『真風会館空手秘奥義・赤虎烈動』!」
二人の秘奥義が同時に炸裂した。支持者の居る光にかざした二人の手の平から強力なオーラが光線のように連続して撃ち出され、光を包んだ。オーラの赤い光は、溶鉱炉の強烈な光すら凌駕する輝きを放ち、支持者の光が見えないほどになった。
「うわあああああ……!」
支持者の断末魔の絶叫が響いた。
「アツコ! やり過ぎだ!」
側近の一人がアツコに向かって叫ぶ。その声にはっと我に返ったのは逸子だった。逸子はオーラを止めた。しかし、アツコは止めない。
「アツコ! もう終わりよ!」逸子はそう叫びながらアツコに駈け寄り、アツコの右手をつかんで下げさせた。地面に深い穴を開けてアツコのオーラが止まった。「……もう、充分よ……」
アツコは顔を上げた。その頬に涙が流れているのを逸子は見た。逸子はアツコを抱き締めた。アツコは声を出して泣き出した。逸子はその背中を何度も優しく叩いた。
「う…… うう……」
タイムマシンの光の中から声がもれて来た。支持者のうめき声だった。光の中からふらふらした足取りをした支持者が姿を見せた。光が消えた。
「……あなたは……」
逸子はその姿に絶句した。アツコも振り返り、支持者を見た。途端に涙に濡れた目は驚きで見開かれた。
「あなた、タケルさん!」
「へ…… へへへ……」
タケルは力無く笑うと、その場に倒れてしまった。
つづく
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