これは名作です。
18話から最後までは1話完結だったので、いくらかからませながらも、基本的に1話ずつの感想です。
●18話「連峰は晴れているか」
中学の小木先生がヘリコプターが好きと言ったのは、好きだからではなくて遭難者の救助に向かうヘリコプターに一安心したからだという話。
それはさておき、「スコードロン」が「編隊」とは分からないのに、「AGM」が「空対地ミサイル」と分かる奉太郎。それでも、文化祭で銃に詳しそうだったことと合わせ、やっぱり、軍事には詳しいようで、意外でした。
但し、この回でも、軍事に詳しくなくても解決には問題ないので、どうして詳しいのかは不明ですが、20話で、中学のときはゲームセンターで里志とよくゲームをしていたようなので、そこで覚えたのかも知れません。
なお、このゲームセンターは1年ぶりと言っていたのでそれほどゲーム好きとは思えないこと、奉太郎の部屋にはパソコンもテレビもないこと、ポータブルゲーム機でゲームをしている可能性は否定しませんが、持っていそうな描写はなかったことから、自宅でゲームはしないと推測しています。
里志が、中学の時の小木先生が3回も雷に当たったのを、里志「サンダー!」、千反田が普通の顔で「三度も。良く御無事でしたね。」、里志「当たったのは、サンドダー!」、千反田「三度も。良く御無事でしたね。」。
奉太郎が、千反田も里志の扱い方が分かって来たな、と心の中でつぶやきます。
千反田が天然なだけで、里志の駄洒落に気付いたのかどうかは今一つ判断できませんでしたが、素直に、奉太郎の言葉どおりと思っておきます。
小木先生がヘリコプターが好きだから授業中にヘリコプターを見つめていたのかどうかが気になると言って、奉太郎が進んで図書館に調べに行こうとすると、3人とも、奉太郎の具合が悪いのではと心配する。失礼な、大袈裟な感じで。
特に、千反田が、天然を発揮して、かなり失礼に(千反田に失礼だという自覚はなさそう)。
失礼だけど、面白いシーンでした。
里志を誘うが宿題で来ないし、図書委員の摩耶花に来てもらえると助かったが頼める義理は無いと奉太郎が言うところ。
奉太郎にとって摩耶花は友達ではない(摩耶花にとってもそうに違いありませんが)ということでしょう。中学は同じクラスで、遠慮の無い関係で憎まれ口はたたき合っているものの、お願いをできるという意味での遠慮の無いということではないということなのでしょう。(結局、これだけ憎まれ口をたたき合う2人の関係は、里志を通じての、里志あってこその付き合いということなのでしょう。)
光の対比で、カップルが陰、奉太郎と千反田が光の中でした。
文化祭での奉太郎と里志のときが分かりやすかったですが、これまで、概ね、光と陰は対比されていて、光がハッピーな側、陰がその逆というように描かれてきました。
だから、現状を示すのであれば位置が逆だと思いましたが、未来を示すのであれば、これでも良いことになります。
このシーンだと、カップルは遠くないうちに別れ、奉太郎と千反田は遠くないうちに付き合うのだろうと解釈できます。
実際、徐々に奉太郎と千反田の距離が近づき、付き合うまでは行かなかったものの、最終話では明確に明るい未来を暗示した絵で終わっています。
となると、カップルはやっぱり別れると。それも青春ですけれど。
(冬が近くなってきた時期だったせいか、)かなり淡い陰と光だったので、ゆるやかな、穏やかな別れとハッピーを暗示したのかも知れませんが。
しかし、二人乗りをさけて千反田を先に図書館に行かせるとは、奉太郎は意識して照れています。千反田は二人乗りでも良いと言ったものの、ほんの少しの間を置いたり、ほんの少しうつむいたりしながら(ここは、最初は気付きませんでした)、結局は先に行けと言う奉太郎に従っています。
千反田も奉太郎を意識していることが読み取れます。
それでも一緒に歩いて行けば良いのですが、そうしない千反田。
奉太郎との距離を、まだ測りかねているのでしょう。
図書館で椅子にカバンを重ねて置いてあるシーン。仲の良さというか、これも今後の暗示でしょう。
野菜の本に目が行くとか、そこは農家の娘だから良いとして、ミツバチの本ではなくてフンコロガシの本を手にして、可愛いと言う千反田。奉太郎も(視聴者も)、何故それを選ぶのか、と心の中でつぶやく(つっこむ?)。
ミツバチだって花や果物や野菜の受粉の役に立つし、農家にとっては大事な昆虫なので、農家である千反田がミツバチの本を手にとってもおかしくないのですが、フンコロガシの方が面白いから制作者側がそれを取らせたのでしょう。
小木先生がヘリコプター好きと誤解して無神経とか人の気も知らないでと言われたくないから図書館に調べに行ったと言う奉太郎に、「折木さん、、それって、とっても、、、、上手く言えません。」千反田が何かを言おうとして結局、上手く言えません、と。
奉太郎も言っていましたが、私も、千反田が何を言おうとしたのか、良く分かりませんでした。
奉太郎に好意的な感情をあらためて持った、ということなのでしょうけれど。
獲れすぎたシイタケをあげると図書館で言っていたので、「明日、学校にシイタケを持っていきます。」と千反田が言い出しても、驚きませんけど。私は。多分。
そのあと、千反田が家に着くときは完全に夜になることを心配した奉太郎。ついて来たのは千反田で頼んだわけではないと言いつつ、「やっぱり、借りかな。これは。」と。
奉太郎と千反田は少なくとも友達ですが、親友ではないです。
視聴者にとっては互いに好き合っていることは概ね明白ですが、2人にとっては、互いの思いをまだ図りかねている状況で、友達以上恋人未満な関係といったところでしょう。
一方、親友同士のはずの里志と奉太郎とか、貸し借りの話は何回か出てきています。
でも、親友や恋人関係で貸し借りというのは、半分冗談みたいなのではあるとしても、真面目な感じのものとしては馴染まない気がしているのは私だけでしょうか。
仲が良ければ、ある程度は、互いに迷惑を掛け合っても良いのだよ、互いに本音をぶつけ合っても良いのだよ、その結果として(悪意ではなければ)互いに傷付け合っても良いのだよ、それらができないということは仲が良いというわけではないのだよ、それで壊れる関係なら仲が良いというわけではないのだよ、ということの例えでしょうか?
だったら、とてもしっくりと来ます。
21話のバレンタインの話を見ても、奉太郎と里志は、それに近い関係ですし。
●19話「心あたりのある者は」
教頭の慌てた呼び出しから、生徒が偽1万円札を使って警察が来たらしいと奉太郎が推理したことは置いておくとして、ここでは、いつのまにか心理的距離が近づいている奉太郎と千反田について。
2人だけの部室で「ご冗談でしょう、ファインマンさん」(岩波現代文庫)を読む奉太郎。
ためらいながら、もじもじしながら、関谷純の墓参りに誘う千反田。簡単にOKする奉太郎。
奉太郎が会ったことのない人の墓参りに誘うって、かなり踏み込んでいますね。千反田は。
いつも謎を解決する奉太郎を褒める千反田。「運がいいヤツだと言うのは構わないが、大したやつだと言うのはやめてもらいたい。」と奉太郎。相変わらず、自己評価が低いです。
更に、奉太郎は推論の達人という趣旨のことを言う千反田に、「違う。何で推論を導き出せたのか、俺自身分かってない。」と言う奉太郎。
「それは、折木さんが自分を見つめ直したことがないからでしょう?」と穏やかに言う千反田。
「まあ、そのとおりだが。」と心の中で思う奉太郎。
あまり自覚のない天然ぶりからして、千反田も自分を見つめ直したことがあるのか、疑問です。22話からして、名家の一人娘という自分の立場については十分に見つめたことがあることは間違いないですが、自分自身については、あまり見つめたことがあるような気がしないところです。
自己をよく見つめた人間があんなに天然でいられるものなのかどうか、私の直接的・間接的経験からは考えにくいところです。
里志や摩耶花には遠く及ばないにしても、奉太郎は自分を見つめたことがあると思っていたのですが、見つめた結果として自分は取るに足らない人間だと判断してのグウタラだと思っていたのですが、私の勘違いなのかな。
但し、見つめたとしても、その結果としての自己認識は過小評価し過ぎていますが。
自己評価が概ね妥当ではないということは、自分の見つめ方が足りないからだと言われれば、そのとおりですけれど。ということは、やっぱり千反田の言うとおりなのかなあ。
さて、ファインマンは読んだことはありませんが、ノーベル物理学賞を受賞したファインマンの自伝みたいなもので、有名な本です。
中身とは関係なく題名から想像するに、奉太郎が千反田に言っていることを、千反田が奉太郎に言っていることを、互いに「ご冗談でしょう」と思っているという、単純な解釈でよいのでしょう。
謎解きが始まり、奉太郎の横に移動して肩越しにのぞき込む千反田と奉太郎の目が合い、照れあう2人。
奉太郎の隣に座り、奉太郎が説明を少しはしょったときにジトーとした目をして奉太郎の肩に手を当ててゆすって、「おーれーきーさん」と言う千反田。ちょっと甘えた感じが可愛い千反田。
千反田が「ところで、きな臭いの「きな」って何でしょうね。」とあまり脈絡もなく聞いて奉太郎に「知らん。」と冷たく言われ、頬を少し膨らませて、困ったような甘えたような、こんなときに恋人同士とか親しい仲だとするような目をする千反田。
なんか、いつの間にか2人の心理的距離が近づいた感じです。
(千反田の髪の輝きが天使の輪のように描かれているのに、奉太郎のは白髪かゴミにしか見えない点は、触れないでおこう。)
18話での、千反田が自転車で先に行くシーンに千反田が意識している感じが見受けられましたが、どういう経緯でそうなったのかは描かれていません。
描かれた範囲では、文化祭の話(12~17話)の13話の中で、千反田が奉太郎にコスプレ写真を見られ、互いに無言で照れるところくらいか。
それだけでは弱いです。それで近づいたのなら、18話でもっと近づいていても良い気がします。図書館に向かうときに千反田は先に行かずに、自転車から降りて奉太郎と一緒に歩くとか。
描かれなかったところで何かあった、若しくは、何があったというわけではなくても一緒にいるうちの小さな出来事の積み重ねの中で互いの気持ちをそれとなく探りあい、感じあい、ということなのでしょう。
後者は、普通の恋模様ですね。比較的リアルなこのアニメでは大袈裟には描けないので、それを描いても、なかなか楽しめる話にならないのでしょう。
想像するのも楽しいので、別にそれでいいですが。
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shin
ざっく
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