第22首「めぐりあひて」
めぐりあひて
見しやそれとも
わかぬ間(ま)に
雲がくれにし
夜半(よは)の月かな
(紫式部。百人一首の57番目の歌。)
〔意味〕
(旧友と)久しぶりに会ったのに、その人であるか見分けがつかない内に、雲間に隠れてしまった夜ふけの月のように、(旧友は)そそくさと帰ってしまった。
◎ 怪我のせいでしょう、千早、少し元気なし。
フダを並べてから始まるまでの間、詩暢が「つまらんTシャツ。」と残念そうに小さくつぶやく。
ここの、巻き戻して再生、もう一回、巻き戻してスロー再生のシーンは、笑いました。
それを聞いて更に元気がなくなったかに見えた千早が、おもむろに かるた部のTシャツをめくり、ドヤ顔で下に着ているMAMMYベア(熊)の激レアのタンクトップを見せ、驚きと羨望の眼差しでキラキラとする詩暢というコメディは、真剣勝負の前の息抜きでもあり、かるた で負ける前に詩暢に一矢むくいておくといったところでしょうか。
次のシーンでの詩暢の悪態。
いつもの、ちょっと憎たらしい感じの笑顔と口調で「利き手の怪我、大変そうやねえ。私も、右手で取りましょか。」
驚いて少しの間の後、「冗談でもそんなこと言わないで!」と怒る千早。
驚く詩暢。
昨年負けてから詩暢に勝つことを目標にしてきて、最後まで諦めない千早の真剣な気持ちが伝わったのか、最初から本気でくる詩暢。
○ ところで、何だかんだ言って今の千早では詩暢に勝てないと千早は分かっているはずですが(それが分からないほどには千早は馬鹿ではないですし、昨年の対戦で思い知らされた差の大きさに気付かないほど馬鹿でもないと思うので。)、ここで、勝てる、若しくは、少し運があれば勝てるかも、といった気持ちが千早に本当にあったなら、どういう反応をしたでしょうか。
千早は、じゃあ私は左手で取りましょう、とか、じゃあ私は足で取りましょう、といったイヤミのようなことを明るく言うようなタイプではないので、「詩暢ちゃん、そんなことを言っていられるのは今のうちだよ。」とか、無難なところで「詩暢ちゃんは以前よりも強くなった。でも、私は、もっと強くなったんだよ。」と真顔で言うかですかね。
あのように強く怒ったことで、右手が完全でもまだ敵わないことは本音では良くも悪くも分かっている千早を表したといったところ。
勝てると思っていたら、言わせておいて後で後悔させればいいだけですから、あそこまで怒らずにもう少し軽く流せるはずです。
○ さて、話を戻して、ここの詩暢の悪態は、千早に親近感を持っていることが素直に出なかっただけでしょう。
友達が欲しかったから かるた で手を抜いていた幼少時、別の強い人と本気でやってから疎遠になってその「友達」が去ってしまった幼少時。友達と「友達」の区別が付かなかった幼少時。
このシーンは全国大会になってから何度か詩暢が回想していますが、千早との対戦中や対戦後にも回想しています。
詩暢は かるた が好きだから手抜きはしたくないけれど、それほど自覚的には思えませんが千早を「友達」候補だと思ったので、少し手を抜いても良いかなと思ったのでしょう。それが、「右手で取りましょか。」とイヤミに聞こえるものとなって口に出たのでしょう。
23枚差で詩暢の勝ち。
対戦後に涙を流す千早を少し離れたところから見て、「もう何枚か、取らせてやったら良かったんかな。」と元気なさそうに思う詩暢。
歩いて行く詩暢の腕を後ろから千早が捕まえ、驚いて振り向く詩暢。
千早「ありがとう。手加減しないでくれて。」「また かるた しようね。」、
更に驚きの表情になって、そして、振り向いた顔を元に戻して、抑えた声で詩暢「いつ?」、
(ここで詩暢の顔は見えませんでしたが、泣きそうなくらい嬉しかったことでしょう。)
小さく、わずかに驚く千早「えっ。」、
抑えた声で、しかし、希望と喜びをわずかに感じさせる声で詩暢「いつや?」、
少し慌てて元気良く千早「く、クイーン戦で!」
千早が詩暢の腕を離し、振り向きもせずに黙って歩き出す詩暢。
静かな表情で幼少時の「友達」の名前を思い出そうとする詩暢。
これで、これまでの自分の かるた中心の人生が肯定され、幼少時に去っていった「友達」の名前を思い出しました。
幼少時の「友達」が、ひっかかり、わだかまりから、昇華され、思い出に変わったわけです。
タイトルの歌はその「友達」と同時に押さえた気まずい思い出のフダであり、「友達」は「見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれ」してしまいましたが、千早と「めぐりあひて」、詩暢は前に進めたわけです。
ここにおいて、詩暢は、千早なら「雲がくれ」しないし、(カギ括弧なしの)友達になれると思ったことでしょう。
次は千早に1枚も取らせない、と呪文のように唱えてやる気を高めている詩暢。
詩暢、もっと強くなりそう。千早、どうやって勝つんだ!?
◎ 後半の途中までが千早と詩暢のいい話でしたが、その後、菫や筑波の話をはさみ、太一とヒョロ(木梨浩)のB級決勝戦。相手が相手だけに、普段以上に互いに負けたくない、いいえ、どうしても勝ちたい1戦。
1枚目を太一が取ったところでエンディング、次回へ。
○ さて、途中で描くと千早と詩暢の対戦の興をそぐので、最初に菫と筑波とB級決勝戦の話を描いてから千早と詩暢の話を描き、千早が1人で床に座って涙しながら「終わっちゃった、私の夏。」のシーンからエンディング曲のセツナイ「茜空」へというセンチメンタルな終わりの方が私の好みですが、一般的には、次回につながる話を最後に持ってきた方が次回への期待も高まるので、今話のこの順番で正解なのでしょう。
まあ、世の中、そんなものですよね・・・・・
【shin】
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shin{流れ星}
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