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ミュージカル映画「レ・ミゼラブル」感想。一般向けには良い

 ミュージカル映画の「レ・ミゼラブル」の感想です。


○ レ・ミゼラブルはフランス語で「悲惨な人々」といった意味ですが、「ああ無常」と訳している本も出ています。

 手元にはありませんが、大学生(もしかしたら高校生)の時、文豪ヴィクトル・ユゴーの名作「レ・ミゼラブル」(1862年刊)を読みました(細かいところは既に忘れていますが。)。
 ハードカバーのぶ厚い本で確か3巻の超長編。

 ダンベルの代わりに出来るくらいの重さ。

 小説以外を含めても、今まで読んだ本で一番長いです。

 今は、岩波文庫で出ています。4巻で約2400ページ(各巻1000円位)、純文学なので字が小さく、ぎっしりです。

 その後、ジャン・バルジャンが逃げ、ジャベール警部が追う話に多くがさかれた映画をTVで見ました。

 これは、2012年12月21日から全国公開の、全編が歌のミュージカル映画。
 1%くらい、歌というよりは普通に話しているような台詞もありましたが、そういうのがある歌もありますし、台詞は100%歌で歌っていると言うことで良いのでしょう。


 「スクリーンで出会う、至高の感動。 世界が泣いた。ミュージカルの金字塔、ついに映画化!」
 「愛とは、生きる力。」
 「愛、勇気、希望―――世界が泣いた、永遠に語りつがれる物語」


 だそうです。日本でも帝国劇場でロングランのミュージカルです。
 チケットを買ってから、ミュージカル映画だと気付きました。

 ミュージカルは苦手なのです。


○ 1789年のフランス革命を経ても、貧しくて物乞いか泥棒以外に生活の糧がない者が多く、格差と貧困にあえぐ民衆が自由と希望を求めて立ち上がろうとしていた1815年から1833年のフランスが舞台。


 下は、HPにあるあらすじ。(→公式ホームページ)
 「 ジャン・バルジャンは、パンを盗んだ罪で19年間服役(※)した後、仮出獄するが、生活に行き詰まり、再び盗みを働いてしまう。
 その罪を見逃し赦してくれた司教の真心に触れた彼は、 身も心も生まれ変わろうと決意し、過去を捨て、市長となるまでの人物になった。

 そんな折、不思議な運命の糸で結ばれた女性ファンテーヌと出会い、彼女から愛娘コゼットの未来を託されたバルジャンは、ジャベールの追跡をかわしてパリに逃亡。
 彼女に限りない愛を注ぎ、父親として美しい娘に育てあげる。

 しかし、パリの下町で革命を志す学生たちが蜂起する事件が勃発。
 誰もが激動の波に呑まれていく・・・ 」

 ※確か、パン1個を盗んで5年、脱獄の罪を足して19年の重労働の服役。


○ 俳優の歌は、一部を除いて特に上手いとも思えず。
 演奏がオーケストラのためか、メロディが今一つはっきりせず、字幕の台詞が頭に入って来にくいです。

 台詞の全てを歌にするミュージカルを私が見るのは初めてだと思いますが、普通に話す台詞と歌とを混ぜるよりはいいです。
 混ざっていると、急に歌いだすところに違和感を感じるので。


 しかし、やはり、ロックやポップスのような日常語に近いメロディと歌い方だと、まだ入って来やすいのですが、オーケストラをバックにしたオペラっぽい歌い方とメロディでは、どうもすんなりとは入って来ないし入っても行けず。


○ さて、このミュージカル映画を見て、原作を知らない人はどう思ったのでしょうか。

 概ね好評のようなのですけれど。
 私は、これはこれで、原作の一面を上手くまとめた良い映画だと思います。


 ミュージカル自体が許容範囲ならば、見て損はないと思います。

 映画の流れは次のような感じ。
********************
 貧困にあえぐ人々、差別、
 繰り返し罪を犯すバルジャンと改心・更生、
 仮出獄時は定期的に警察に出頭しないといけないのにそれをしなかったバルジャン、
 それを悪として追いかけるジャベール警部の執拗さ、

 改心して偽名で、民衆から敬愛される市長になったバルジャン、
 ファンテーヌとその娘のコゼットと出会って幸せを手に入れるバルジャン、
 それでも執拗に法に反したバルジャンを追いかけるジャベール警部、
 逃げるバルジャンとコゼット、

 刑務所で生まれたこともあってか悪人は更生せずいつまでも悪人だと考えるジャベール警部、

 貧困と差別から逃れるために武装蜂起する若者と追随しない他の民衆、
 失敗してほとんどが殺される若者達、

 バルジャンに命を助けられるジャベール警部、
 悪人と思ってきたバルジャンに助けられ、自分がこれまで信じてきた、法を守ることこそ全て、悪人は更生しない、ということが正しかったのかが分からなくなって、アイデンティティ・クライシスを起して苦悩のうちに自殺するジャベール警部、

 愛する人と結婚するコゼット、
 コゼットらに見守られて安らかに死ぬバルジャン、

 今回の蜂起は失敗したが、続く者がいることを信じて高らかに歌われるフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を模した「民衆の歌」。
********************



 原作は約2400ページの長編で、1ページ2分で読んでも80時間かかります。それを2時間38分の映画にまとめています。

 原作を知らない人でも分かりやすいように概要を示しつつ、多くの人が楽しめ、感動する映画になっていると思います(ウィキペディア程度で良いので、フランス革命の基礎知識はほしいところですが。)。

 貧困や格差はきちんと描かれています。
 武装蜂起もそれなりに描かれています。
 コゼットの恋もそれなりに描かれています。


○ ただ、バルジャンが何が何でも生き抜いてやる・逃げ抜いてやるという、そんな、言葉では表現しにくい位の、何故だか分からない位の、イヤになる位の、圧倒的な迫力はほとんど感じられず。

 また、ジャベール警部の、言葉では表現しにくい位の、何故だか分からない位の、イヤになる位の、圧倒的な執拗さもそれ程感じられず。



 ここをきちんと描いても、ヒットするような、楽しめる映画にもミュージカルにもならないからでしょう。
 見る方も読む方も、ここはギリギリと辛くなるところです。

 それに、ここは別の映画で描いていますし。


 この長編小説を読むと、バルジャンとジャベール警部の執拗さと、この長編を読み切ろうとする自分の何故だか分からない位の執拗さが入り混じって、バルジャンとジャベール警部の執拗さがまた格別のものになります。

 他人にお勧めするものではありませんが。



【shin】

コメント一覧

shin
http://yaplog.jp/shin99shin/
>マリスステラさん
 長編小説のなかから、一般的に感動しやすい場面を抜き出し、一般のウケが良さそうに作った映画です。

 でも、何度も見たい映画に出会えたことは良いことですね。
マリスステラ
私は大感激しました。楽曲がどれも素晴らしく出演者の歌唱力も見事です。楽曲は名曲揃いなので舞台のCDをお聞きになる事をお勧めします。「夢やぶれて」「On My Own」「民衆の歌」「彼をかえして」「One Day More」などなどどれも名曲です。    特にエポニーヌが雨の中で歌うシーンやマリウスの腕の中で死ぬシーンなどは涙が止まりませんでした。本当に至高の名作です。  今までに5回見ましたが後3回は見たいです。
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