1,
会社のトイレで用を足していると、掃除のおばちゃんが入ってきて、おかまいなしにぼくの隣の便器を掃除し始めた。端からだと、ぼくとおばちゃんが並んで立小便をしているように見えていたはずだ。
用を足したあとも、おばちゃんはぼくの横にいた。「このおばちゃん、女を捨てとるわい」と思いながら、ぼくはチャックを閉めた。
おばちゃんとはいえ、いちおう女性である。ちゃんと手を洗って出ないと、あとで変な噂を流しかねない。ということで、普段やらない手洗いをして、ぼくはトイレを出た。
2,
トイレの後に手を洗う。常々ぼくはこのことに疑問を抱いている。
何年か前、親しい人たちとドライブに行った時、トイレの後に手を洗うかどうかで、討論したことがある。
「えーっ、しんちゃん、トイレの後に手を洗わんとぉ? 汚ーい」
「何が汚いか。ちゃんと毎日手入れしよるわい。いつつまんでもいいようにの!」
「でも、ちゃんと洗わんと手にばい菌が付くやん」
「だから、おれのあそこには、ばい菌なんかおらん。それを言うなら、ばい菌のおる奴に言え!」
おしっこが手に付いたのならともかく、いつも清潔にしているものをつまむだけなのに、どうして事後に手を洗う必要があるのだろうか。
ぼくはトイレの後に手を洗うより、トイレをする前に洗うほうが大切だと思っている。毎日清潔にしている部分、それも清潔な下着に覆われているのである。そういうものが汚いとは、到底思えない。それよりも、いろいろなところを触る手のほうが充分に汚い。汚い手で触るからこそ、ばい菌が発生するのだ。
・・・あくまでも2003年の日記です。さすがにコロナ禍以降は手を洗うようになりました。