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平成の伊能忠敬

「江戸時代の測量家 伊能忠敬は数え年56歳で精度の高い実測の日本地図を作り始めた。それなら自分もと昨年、56歳で測量を始めた-----」
「平成の伊能忠敬めざして」と題しての K氏の寄稿文が 日本経済新聞平成18年10月18日付けにでていた。

会社のリストラにあって早期退職した測量士が、一念発起して、あへて GPSなど使わずに アナログ的手法だけで 日本地図を作ろうと、全国を測量しているという内容であった。

「GPSがあれば一瞬にして事足りる作業だ。だが、私も忠敬と同じように、自分の目で測量し、自分の足で歩き回って地図を作ってみたいと思った。」

第二の人生を豊かに こだわりを持って 自分で地図を作る。

そういえば、
● 伊能忠敬(延享2年[1745]---文政[1818])は50歳で隠居し、56歳で測量、地図つくりを始め、全国をくまなく歩き、精巧な伊能図を完成させた。

● 長久保赤水 (享保2年[1717]--享和元年[1801])は、52歳で郷士格となり、水戸藩に召し抱えられ、安永8年[1779]63歳で『改正日本輿地路程全図

● 石黒信由 (宝暦10年[1760]--天保7年[1836]) は 享和3年[1803]、いまの富山県射水市で 伊能忠敬と会い、測量機器を見る。文化2年[1819]から地図作成に従事、「加越能三州郡分略絵図」を作成。

江戸時代、その当時の平均余命は 50歳を切っていただろう。仮に「人生50年」としても、地図製作に関わった方々は 当時の水準からみて、比較的高齢になって 測量 地図に関わって 大仕事を成し遂げた 偉大な人たちであった。
たとえるなら 人生の「ロスタイム」で 大きな仕事をなしたようなものである。

GPSなど 今日 の デジタルデータ処理のできる測量器械と違い 当時の測量器械の粗末なものでありながら、運搬にはとても不便なほど大掛かりであり、実際に 現地を踏破し、歩測、実測、計測、天測 色々な苦労を重ね、大掛かりな道具を 率いて移動する困難さは、今日の交通機関の発達、車などの機動性が活かせる時代に比べれば どれほどのものであったか想像がつかないほどである。

そうした長年の苦労を重ねて やっと完成させた地図。
文字通り 人生の「ロスタイム」で大きな歴史に残る業績を刻んだのであった。
たとえ高齢でも 大きな 目標を持って 地道に努力すれば 歴史に名を残すことができた ということは 今日でもただ驚くばかりである。

一方 現在 我々は簡単に 国土地理院のwebサイトなどから 測量成果を閲覧し、デジタルデータなども容易く手に入れることができる。

欲しいものが何でも すぐ手に入る、贅沢な時代になっているのである。

飽食の時代、豊かな便利さで、苦労しなくても手に入るのになれてしまって、こと地図データについていえば、欲しいものがいつでも どんどん 手にはいるので 何が欲しいのかさえも分からないような 全く贅沢な環境なのだ。

たとえ 地図のデジタルデータを提供されても 使いこなし 生かし切れる 能力がないと何もならないのは当然のことで、 登山用に二万五千地形図を もっていっても 磁石の活用 地図の読図力がないのでは 宝の持ち腐れで活かしきれないのである。

満腹感に浸り 何となく 満ち足りたような気持ちでいると、 何か自分で目標を立て 追い求め続けることがない限り 無気力のまま 時間が過ぎてしまうことにもなる。

世の中 今 戦後の団塊の世代の大量退職時代を迎えつつあり、第二の人生の活かし方 中高年の生き甲斐などが さかんにいわれている。

人生の「ロスタイム」に大きな仕事をなした 江戸時代に比べ 今では平均寿命も延びて 定年後は第二 第三 第四の人生を十分 楽しめるだけの 時間がたっぷりある。

「ロスタイム」とは言えない時間的余裕は十分あるのである。
その間 一点で 同点。
二点で試合は逆転などいくらでもできるチャンスはある。

新聞に出ていた K氏の場合 「リストラ」ということが契機になり、新たなバネが働いて、アナログ手法にこだわった地図作りの目標ができた。

歴史に名をはせた 江戸の忠敬を見習い 平成の忠敬を目指すK氏の前向きの気持ち。
気の遠くなるような作業に打ち込む K氏のチャレンジ精神に拍手を送り、敬服する次第だ。

やはり 人生 目標を持って チャレンジ精神を常にもって 前向きに いかなくてはいけないのだろう。

平成の伊能忠敬

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