〜2016年3月の終わりから4月8日のできごと〜
この時期になるといけません
記憶の波がちょっとした隙に押し寄せ
閉じておいた思いのふたを押し流していきます
ふたを失った箱からは思いが溢れていくばかり
ベッドに横たわる母のむくんだ足をしばらく撫で
そして手を握る
私が母を見舞う時のルーティンでした
「握り返して」と言って私は2回、ギュッギュッと握る
すると母も2回、ギュッギュッと握り返してきます
それが日に日に弱くなり、亡くなる1週間前くらいからは
全く握り返さなくなりました
おかしなもので、
今でも私の手に残る感触は
握り返さない母の手なのです