伯母にみかんを渡すとき
私はいつも宙に放り投げて渡しました
上手にキャッチした時に見せてくれる
伯母の笑顔が好きでした
文庫本で全8巻の大長編、吉川英治著「宮本武蔵」を
読み始めたのが、高校受験を控えた1月でした
読んだり読まなかったりを繰り返しながら高校に上がり
その年の6月頃でしょうか、8巻目に入りました
休み時間を使っては読み進めて行き、ある日とうとう
クライマックス、巌流島の場面まで来ました
英語の時間が始まってもここまで来るともう止められません
教科書で隠し、小次郎vs武蔵を堪能しました
宮本武蔵全8巻、読破した瞬間は英語の時間でありました
2年2組最後のお楽しみ会
班の出し物は「意地悪ばあさん」
脚本を作った私は、意地悪ばあさん役をNさんに
お願いしました
私は意地悪ばあさんと暮らす息子夫婦の「若奥さん役」
誰もやってくれないのです、仕方ありません
しかしこのキャスティングが功を奏しました
私の家もNさんの家もおばあさんが同居していて
おばあさんの意地悪がどんなものかを肌で知っていますから
Nさんと私の掛け合いは、ただのおふざけとは違う
どこかリアリティのあるコメディに仕上がったようでした
というのも本番は親御さんたちも観ている前で演ったのですが
大人たちになかなかの評判だったのです
ちなみに私の祖母とNさんのおばあさんは茶飲み友達でありました
冬場の練習に「坂ダッシュ」がありました
学校からすぐの場所に田んぼと神社があり
そこの地形を利用してダッシュを何本も何本も
しました ダッシュとダッシュの間は止まらずに
ジョギングでつなげます
有酸素運動能力を向上させるためのきつい練習でしたが、
水のない水田と鳥居に登って行く林の中の坂道が枯れ色に
染まった冬ざれた風景の中を走るのが、私は好きでした
歌のテストがありました
ふたりで歌う「つんつんつぼみ」
私は仲良しのタクミ君と組みました
🎵 つんつんつぼみ つんつんつぼみ
つんつんつぼみが なーらんだー 🎵
教室から小さな笑いが起こりました
タクミ君が緊張から私の背中をギュッと
つかんだせいで 服がはだけたままの歌唱に
なったのでした