
使い方は、このようにThe Brass Short Cutにマウスピースを付けてバズィング練習を行います。画像でおわかりのように、パイプの先に小さいベルが付いているので、マウスピースのみのバズィングに比べ、音程がハッキリわかります。またパイプの途中に小さい穴が2つ空いている事によって、程よい抵抗があり、トロンボーンを吹く時とだいたい同じ抵抗感でバズィングできます。極めてシンプルな構造ながら、なかなかよく考えられています。他の抵抗を付けるための器具やビニールホースを切ったもの等に比べ、高音域が非常にクリアにヒットしやすく、音程もわかりやすくて良いですね。

The Brass Short Cutの取り説には親切にウォーミングアップの譜面が書いてあります。楽器を吹く前のウォーミングアップとして、このThe Brass Short Cutで5分程度ロングトーン、リップスラー、タンギング等の練習を行ってから、楽器を吹くようにすると良いでしょう。つまり、唇の状態をしっかり整えてから楽器を吹けば、実際に楽器での練習は、唇の調子を整えるためにそれ程時間を割く必要がなくなるという事です。そういう意味から「Short Cut」というネーミングは上手いですね。
十分なウォーミングアップの時間を確保できないような本番前の調整にも良いですし、また社会人プレーヤーなどで週1日しか楽器を吹けないような人は、日頃このThe Brass Short Cutでトレーニングしておけば、唇のコンディションを良い状態にキープ(口の筋肉を衰えされないように)しておけるのではないかと思います。
マウスピースのみのバズィングでも十分なのでは、と考えられている方も多いと思いますが、マウスピースのみのバズィングは楽器吹奏時に比べ、抵抗がかなり少なくなるため、マウスピースのみのバズィング練習を長時間やり過ぎると、唇に必要以上の負担がかかり、逆に唇の状態を壊してしまう事もあります。楽器吹奏時と同じ抵抗を作ってバズィング練習する事によって、唇を柔らかく、振動効率の良い状態にしておく事が大切です。
The Brass Short Cutを楽器を吹く前のウォーミングアップとして使うのはもちろんですが、曲の練習時に高音域がクリアに当たらない、スラーがスムースにつながらない等の問題が出てしまった時に、The Brass Short Cutで問題のフレーズを練習し、再び楽器に戻すと、その問題が解決しやすくなります。楽器練習だけで問題を解決しようと何回も練習して唇を疲労させてしまうよりもずっと効率的な練習になります。演奏が上手くいかない原因は、決して楽器本体にあるのではなく、そのほとんどは身体の方にある訳ですから、一旦楽器から離れて自分の身体の問題点に集中し、解決するようにする事が大切です。
金管楽器演奏上の身体の問題点をいくつか上げると、例えば音がひっくり返ってしまう、早いフレーズになると音程感がぼやける等の問題は、譜面上の音程とバズィングの音程のずれが原因の場合が多いですし、高音域の音色が悪い(線が細くなる)、そもそも高音域を出せない等の問題は、呼吸法が間違っている、唇(バズィング)の状態が悪い、呼吸 - 唇 - 喉の開き - シラブル(舌の位置)等身体全体のコンビネーションが悪いという事です。いずれの問題にしても、まずは身体の問題を解決するという意識が大切です。
僕が今までレッスンしてきた学生さんでも、バズィングで音階、5度インターバル、リップスラー、タンギングが上手く出来ない人の方が圧倒的に多く、そのようなバズィング段階で問題を抱えてしまっている人は、実際に楽器を吹く際には、その問題が更に深刻化するようです。上手く楽器をコントロール出来ていないところで、非常に難易度の高いプロレベルの曲をレパートーとして演奏するため、身体に無理な力が入る事になり、結果とても不快な音となってしまっています。
バズィング練習時に気を付ける点としては、バズィングで美しく細かい振動音を作り出せる事、少ない息の量でも唇が振動するようにする事、正確な音程で音階が吹ける事、5度、オクターブ等の広いインターバルをスムースに移動できる事、音色、音量とも均等なタンギングが出来る事など。これら基本的な演奏法がバズィングで出来ていれば、実際の楽器での奏法的問題はほぼ無いはずです。
そういった意味でもこのThe Brass Short Cutは、音程と唇、呼吸など身体のコンディションだけに神経を集中させる事ができるとても有効な練習器具だと思います。ウォーミングアップだけではなく、曲練習にも活用される事をお薦めします。
僕が購入したのは細管トロンボーン用ですが、他に太管トロンボーン、トランペット用もあります。が、細管トロンボーン用は差し込み口の口径が小さいので、トランペットのマウスピースにも対応できます。
国内でも販売店いくつかあるようです。
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