『蕎麦がき研究入門』

知らない・映えない・バズらない。なのに昔からある食べ物“蕎麦がき”に今、光を当てます。普通に食卓に上がるその日まで。

新時代の蕎麦がきのリアル「ナイトフィッシング野外蕎麦がきとは何か?」

2020-09-20 00:26:56 | その他
まだ暑さが残る9月のある晩。東京は夜の8時。俺はお台場にいた。夜釣りだ。ナイトクルージングだ。
ルアーを正確にキャストする。リールを巻く速度は間違ってないか?Walkig in the rythm だ。
Wonder Wheel。ゆっくりでも良いよ、回ってくれ。
魚の気配がない。まだ夏の悪い水が残っているのか?Aguas de setembro。
粘ってはいけない。ポイントを変えよう。俺には聞こえる、夜のメロディが。
夜の散歩。海辺の遊歩道。そこでは思わぬものを目にする。
例えば橋の構造を真下から眺められるのに、ほとんどの人は知らない。これなら荒れた水にもビクともしなそう。Bridge Over Troubled Water.
高速道路の真下。フリーウェイ。右手にはレインボーブリッジ。
数か月前には、赤く染まっていた。コロナの馬鹿野郎。

全く釣れない。「釣りは釣れなくても楽しい」。釣り人以外には中々伝わらない感覚。しかし海を通過した夜風を浴び、美しい夜景を独り占めしてみろって。良いさ。誰にも伝わらなくたって。俺は風の王と踊る。

腹が減った。誰のせい?それはあれだ。夏のせい。だったら食えば良いんだ。蕎麦がきを。
俺は火が使える場所を探し、移動する。ちょうど良い場所を見つけ、シートを広げ、カセットコンロを取り出す。

鍋に蕎麦粉を投入だ。それが正論。
水はいろはす。さっき自販機で買った。
良いぞ。ほど良く混ざった。
今晩の俺は悪い子だ。こんなもんも買っておいた。
こういう時、ルアー釣りは助かる。手は汚れてないからな。
生ハムはこうだ。
チーズもこうだ。
フィッシングバッグのポケットには醤油を隠しておいた。
直接入れちまおう。今晩の俺はワイルドサイドを歩いているのか、それとも、メイン・ストリートのならず者か。
着火。のち、即ぐるぐる混ぜろ。

どうだ。手が早すぎて映らない。ローリンローリン、回り続けるよ。

出来た。みんな好きだね、蕎麦がきが。
蕎麦がき食べたい、美味いの食べたい。
うん、美味い!
しかし、今宵の俺は止められない。もっと良い景色を求めて、わざわざ移動。
良い東屋があった。
誰も知らない夜明けは、まだ明けないで。
だれも見てないなら、立ち食いだって、へいっちゃら。
完食。人類が初めて目にする、蕎麦がき食べ終わった後の空の鍋と東京の夜景。
ご馳走様。
適度な満腹感。この景色。今夜のいろはすには、ロマネ・コンティだって敵わない。
ヴゥホッ‼40間近になると、何食っても何飲んでもムせる。
良いな良いな。人間って良いな。本当は何やったって自由なんだ。外で蕎麦がき食って、腹いっぱいなら東屋で寝たって良いんだ。

釣り忘れてた!(完)

※野外で火を使う場合、場所選びと火の管理には十分に気を付けてください。