日記のような…思いつきや、あれこれ?

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ドライマティーニと彼女                   ~素直になれないアナタへ~ 【1】

2010-12-12 03:52:21 | 0000
火曜日のバーは客もすくなく落ち着いていた。


「いらっしゃいませ」

バーテンの声に迎えられて、いつもの席に着く

「寒くなりましたねぇ。いつものでよろしいですか」

「うん、ドライマティーニで」

簡単なやりとりのアト 少ししてドライマティーニが目の前に置かれた。



今夜のドライマティーニはいつもにましてのどを灼いた



緊張しているのかな?

俺はそんなことを思いながらポケットの中にある

指輪を確かめるように握りしめた。



海外赴任の話がでて1ヶ月、いろいろ悩んだ末

俺は彼女にプロポーズすることに決めた。

そして、彼女に一緒についてきてもらいたいのだ。



バーのドアが開き、ひとの近づく気配を感じた。


「ごめんなさい。打ち合わせが長引いちゃって」

そういいながら、彼女が隣のスツールに腰をおろした。

「おひさしぶりです。ドライマティーニを?」

「ええ。ドライなオンナは仕事もお酒もドライなの」

彼女はウィンクしながらバーテンに応えてから

俺の顔をのぞきこみ、言った。

「やっと会えたわね。あら、ちょっとやせた? 忙しいの?」

「そうかな ここのところ転勤の引き継ぎやなにやらでゴタゴタしてるからね」

俺の応えに、彼女は一瞬、目を大きく見開くと、

カウンターに視線を移して言った。

「そう、決まったの… で、どのくらい?」

「3年くらいかな」

「そう、寂しくなっちゃうわね」



今だ!俺は、ポケットの指輪を握って、ありったけの勇気を

振り絞り、彼女の顔を見た。


しかし、彼女は明るい笑顔を俺に向けると

サバサバした口調で

「でも、私は大丈夫。仕事は忙しいけど面白いし、
そのうち誰かを好きになって結婚しちゃうかもしれない。
きっと、寂しがってるヒマなんてないわ」

そして

「栄転、おめでとう!がんばるのよ。
私もバリバリやるから。乾杯しましょ」

と、続けた。



そうだった、

彼女は仕事も私生活もきっぱりと割り切って、

つねに前向きに生きるドライな女性だった。

俺は彼女が落ち込んでる姿を見たことがない。

いつだって

「終わったことは気にしない。前に進みましょ」と、

笑顔で俺に言うのだった…



俺は力なく指輪をはなすとポケットから出した右手でグラスをあげ

彼女のグラスに軽く当てた。

一息に流し込むドライマティーニはとても苦い味がした。