そらんぢ堂

アーカイブ図書館として残します。

小咄『そらんぢ堂~あなたの走馬燈お預かりします~①話』🎅

2022年12月17日 19時00分00秒 | 小咄
【そらんぢ堂~あなたの走馬燈お預かりします~①話】

部屋の中は全体的に冷えていた。
うとうとする彼の足許には電気ストーブがあり、二段式の電熱部の上方だけを点けていて、ふわりと身近な空間だけを無音で優しく暖めていた。

時折音を発している画面と一体型のパソコンの画面には、雪夜のケベック旧市街地を歩きながら撮した映像が流れていた。

ふと、何者かの気配を感じて、彼は穏やかに覚醒してみる。

小さな女の子が立ったまま、パソコンの載るデスクに手をついて画面を覗き込んでいた。

「おじちゃん」
彼は答える。
「ん?なんだい」
「これはサンタさんのおうちの近く?」
彼は画面を確認する。
「残念だけどここは違うみたいだね」
そう言うとマウスとキーボードを動かせる左手だけで操作して、
「ほら、これがサンタさんの村だよ」
と、小さな女の子にサンタクロースビレッジの映像を見せた。

きらきらと輝く瞳で、食い入るように画面を眺める女の子。

「私ねぇ、病気が治ったらサンタさんに会うんだ」
「そうなんだね」
「うん、ママとパパと約束したの」
「じゃあ早く治さないとね」
「うん!」

にこやかに笑った女の子。
その頭を優しく撫でてやる事しか、彼には出来なかった。

どれくらいの時間が過ぎたろう。
短いような長いような。

彼の左手には、既に女の子を感じるものが何もなかった。

麻痺する右半身の足も手も、少し寂しそうな痛みを発した。

小さな女の子がサンタさんに会う事は叶わない。

ここは『そらんぢ堂』で私は主の『そらんぢ』、黄泉の国から戻されたもの。

なんの因果が、なんの意味があるのか分からない。

ただ…今こうして、さっきまで『生』を感じていた小さな女の子が最期に見た夢『走馬燈』を、この手に預かり、そして深淵の入り口にそっと流す役目を淡々とこなすだけ。

窓の外で風が鳴いた。
夜と一緒に誰かも泣いた。

パソコンの画面ではフィンランドの雪景色に、クリスマスライトが淡く反射していた。

ー①話完ー





1995~2010年の手帳(日記兼用)の処分🗑

2022年12月17日 15時30分00秒 | 日常記事
実は先日から、1995年から2010年までの日記とスケジュール兼用の手帳を処分していた🗑



処分といっても、養生テープでグルグル巻にして、燃えるゴミとして出すだけなのだが🔥



以前より終い作業中の実家から送られて来た古い写真を、スキャナでPCに取り込んだ後に、同じように養生テープでグルグル巻処分をしてきた(まだまだ続く)のだが、この手帳の数々が送られてきた事により、並行しての作業がめちゃくちゃ増えた😵

幸いここのところは、あまりブログに気持ちが向いてなかった(今回ネタが出来たので書きました)ので、黙々と作業に集中出来ました✨

しかし見返してみると、この手帳に書き込まれた日々の中に、初めの結婚や子供の誕生や離婚、二回目の結婚やその間の様々な流れが刻まれていたけれど、今となっては特別な感慨もなく『流れ去った時』でしかないのだなと再確認出来た💡

この先に逝く事しか待たない者の思考なんて、これくらいでちょうど良い😇

作業は今日も続く…💦